キスから始まる異世界ハーレム冒険譚

楠富 つかさ

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第十七話 洞窟戦

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「洞窟の中、暗いですね」

 内部構造を知っているニーナさんを先頭に湿度の高い洞窟内を歩く。入り口の光が遠退き、既に目の前は暗闇である。だが、

「これで平気よ」

 ニーナさんがそう言った途端、まるで私の目が暗視カメラになったように、暗闇の中を見ることが出来るようになった。色がきっちり分かるわけではないが、緑色っぽい視界で何処が壁か、何処に岩があるか、というのが見える。

「これは……暗視の術? 確か高難易度の術じゃ……」

 暗闇で目が利くようになったことに驚きながらも、レリエが術についてニーナさんに問いかける。

「ええ、そうよ。火で明かりを点けた方が明るいけど、敵から丸見えだからね。かなり練習したのよ」

 術は使い込めば使い込む程、精度も上がるし構築にかかる時間も短くなる。レリエが高難易度と言った術をこうも素早く構築するということは、やっぱり彼女は凄い術士ということなのだろう。ふふ、彼女からどんな知識がもらえるか、今から楽しみになってきたや。

「そういやこの湿気の中、炎の術ってどこまで通用するんだ?」

 術の話をしていて思い出したのか、私の真後ろにいるステラが問いかけた。ちなみに、今の並びはニーナさんを先頭に、私、ステラ、レリエ、クレアになっている。前方の安全を確認しつつ後方の奇襲に対応できる布陣だ。

「一応、少しずつ乾燥の術は使っているのよ。とはいえ、生活魔法だから効果は薄いけど」

 乾燥の術……読んで字の如く、湿気を取り除く魔法だ。乾燥機の代わりに使う生活魔術。ここまで湿気ていると、流石に効果は……。まぁ、何もしないよりはいい、という程度か。

「レリエ、敵影は?」

 いくら目が利くとはいえ、敵もこの暗闇に紛れている。レリエによる索敵は必要だ。むしろ、目が利かないと出来ない索敵の為に暗視をかけている、ともいえるか。索敵は空間把握能力を空術で強化しているにすぎない。視界が利かなければ効力をなさないのだ。

「次の岩陰にゴブリンが2体と……なるほど。炎が効かないのはブラックハウンドでしたか……こちらも2体です」
「そう、そのイヌよ」

 このあまり広いとは言えない空間で、槍を振るうのは危険。ステラに教わった短剣術で戦わないと。支配領域から格安で購入したナイフを取り出す。格安とはいえ、ステラが見て大丈夫だと判断したナイフだ。戦闘には耐えられる。

「クレア、後ろを警戒していてね」
「承りました」

 レリエの索敵があれば後ろも平気だろうとは思うが、ここは洞窟。天井を駆ける魔物や蝙蝠みたいな飛行する魔物もいるかもしれない。警戒するに越したことは無い。

「皆さん、ゴブリンは一撃で焼き尽くします。ブラックハウンドをお願いします」

ゴブリンは説明するまでもないだろう。醜い顔をした50センチから80センチくらいの小人型の魔物。粗雑な鎧を纏い棍棒を持っている固体もいるが総じてレベルの低い魔物だ。ただし、単体で現れた時に限る。複数体が集まると、集団戦法で人間に危害を加える。また、ブラックハウンドは黒い体毛に覆われた大型犬サイズの魔物で、ゴブリンに飼われていることもある。高熱に強いが、他に特殊な力はないので、私とステラで相手できる!

「行こう、ステラ!」

 ニーナさんが唱える炎の術、その溢れた魔力によって紅色の粒子が舞う中、私とステラは駆け出し、黒犬の喉元にナイフを突き立てる。ステラは的確に急所を貫き、一撃で伏せたが私はそうもいかず、一度蹴り飛ばしてから腹に突き立てたナイフで斬り上げる。黒犬が絶命したのを見て、飛びかかろうとするゴブリンはニーナさんの火球で炭となった。

「ふぅ、魔物自体はさほど強くありませんね。進みましょう」
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