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第十八話 落下
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洞窟内の道はどんどんと狭くなっていった。その上、森に生えている樹の根によって、塞がれたり妨げられたりしている道も多い。ゴブリンが生息している洞窟だ。彼らが通れればそれでいいということか。
「みんな、気をつけて渡るわよ。落ちたら川だからね」
先頭のニーナさんが私たちに注意を促す。目の前には川と両岸に架かる一本の木の根。人間が渡るには些か心もとないが、先に進まねばならない。
「なぁ。レリエの術で移動できないのか?」
後ろでステラが問いかける。レリエから知識を貰っている私には分かる。洞窟や狭い建物のような閉所で―しかも、この大所帯を―転移の術を発動すれば、消費する魔力も莫大な上に、岩や壁にめり込むような転移になってしまうかもしれない。つまり危険なのだ。
「ステラさん、ここは自分で進まなくては」
クレアの声には自分への励ましが含まれているように感じられた。この洞窟内の湿気の大元である川から、私たちが渡ろうとしている木の根までの高さはそれなりにある。ごうごうと音を立てる川は流れも急だろうに、落ちたらただではすまないだろう。だからこそ、慎重に、とはいえ、恐怖心は捨てて歩かないとならない。命綱もない。
「私から一人ずつ行きます」
そう言ってニーナさんは匍匐前進の要領で木の根を這い始めた。その次の瞬間だった。
「に、ニーナさん!」
レリエが対岸から近づく敵影を察知した。どうやら、今まで相手していたゴブリンよりも賢いゴブリンがいるようで、投石器を用いてこちらを狙っているようだ。このままではニーナさんが危ない!
「弾けろ火球!!」
ニーナさんも敵に気付いたのか、ゴブリンがいる方向へ火球をいくつか放つ。でも、術を練る時の余剰魔力が根に纏わりつき発火した。
「ニーナさん! 届いて!」
乾燥の術を常時発動していたせいか、ニーナさんの周りだけは火が付きやすい。すぐにこちら側に引っ張らないと。その一心でニーナさんの足首を掴むのだが……
「ゆ、ユールちゃん!」
自分のミスに気付いた時にはもう遅かった。私が木の根に足を乗せた瞬間に、ミシっという音が聞え、そのまま私とニーナさんは川へと落下していった。落下する最中、重力に従って役割を果たせていないスカートの裏地と、鮮やかな赤のパンツだけが私の意識を現実に留めていた。
「みんな、気をつけて渡るわよ。落ちたら川だからね」
先頭のニーナさんが私たちに注意を促す。目の前には川と両岸に架かる一本の木の根。人間が渡るには些か心もとないが、先に進まねばならない。
「なぁ。レリエの術で移動できないのか?」
後ろでステラが問いかける。レリエから知識を貰っている私には分かる。洞窟や狭い建物のような閉所で―しかも、この大所帯を―転移の術を発動すれば、消費する魔力も莫大な上に、岩や壁にめり込むような転移になってしまうかもしれない。つまり危険なのだ。
「ステラさん、ここは自分で進まなくては」
クレアの声には自分への励ましが含まれているように感じられた。この洞窟内の湿気の大元である川から、私たちが渡ろうとしている木の根までの高さはそれなりにある。ごうごうと音を立てる川は流れも急だろうに、落ちたらただではすまないだろう。だからこそ、慎重に、とはいえ、恐怖心は捨てて歩かないとならない。命綱もない。
「私から一人ずつ行きます」
そう言ってニーナさんは匍匐前進の要領で木の根を這い始めた。その次の瞬間だった。
「に、ニーナさん!」
レリエが対岸から近づく敵影を察知した。どうやら、今まで相手していたゴブリンよりも賢いゴブリンがいるようで、投石器を用いてこちらを狙っているようだ。このままではニーナさんが危ない!
「弾けろ火球!!」
ニーナさんも敵に気付いたのか、ゴブリンがいる方向へ火球をいくつか放つ。でも、術を練る時の余剰魔力が根に纏わりつき発火した。
「ニーナさん! 届いて!」
乾燥の術を常時発動していたせいか、ニーナさんの周りだけは火が付きやすい。すぐにこちら側に引っ張らないと。その一心でニーナさんの足首を掴むのだが……
「ゆ、ユールちゃん!」
自分のミスに気付いた時にはもう遅かった。私が木の根に足を乗せた瞬間に、ミシっという音が聞え、そのまま私とニーナさんは川へと落下していった。落下する最中、重力に従って役割を果たせていないスカートの裏地と、鮮やかな赤のパンツだけが私の意識を現実に留めていた。
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