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第9話
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「よし、まずは一匹!」
「ドロワ、張り切り過ぎて昨日みたいに無茶しちゃ駄目よ」
群れからはぐれたのか、単独でうろついていたフォレストウルフを一匹討伐し拳を突き上げるドロワをゴーシュがたしなめる。一応昨日の件は反省しているらしく、ドロワは素直にうなずいた。
「まぁ、なにかあったら私が治してあげますから」
ルーナも周囲を警戒しつつ軽口をたたく余裕がある。
ルーナの威力が制御できていない魔法はいざとなった時の最終手段ととらえ、もっぱら索敵や石を投げるなんかして牽制に動くことが多くなっていた。ナイフなんかが扱えれば多少は戦力になれるかもしれないが、対人の護身でしか使ったことないナイフを魔物相手に有用に使えるとはルーナも思っていなかった。
「近くに群れがいなければいいのだけれど」
樹の根が這う森を警戒しながら進む三人。ふと鳥が嘶くような声が聞こえ、三人は上を見上げる。
「むむ、ワイルドフェザントかしら」
前方だけでなく上にも意識を巡らせながら進んでいると――
「きゃ」
不意にルーナが小さく悲鳴を上げる。ゴーシュが振り向くと、ルーナは眉間にしわを寄せて立ち止まっていた。
「どうしたの?」
「根にひっかけて転びそうだったので踏ん張ったら少し足を捻ったみたいで……」
そう言いながらもルーナは左足をかばうようにひょこひょこと歩く。
「ちょっと見せてみて」
ドロワはルーナの足元にしゃがみ込むと、靴を脱がせて足首の様子を見る。その足は少し腫れていた。
「あちゃ~、これはぐねってるね」
「平気なの?」
ルーナに肩を貸すゴーシュも心配そうに問いかける。
「これくらい大丈夫です。私、聖女候補なんですから」
そう言うとルーナの身体が淡く燐光をまとう。
「ふう、これで大丈夫です。これも内氣功の一種ですね。自己治癒力を高めることで多少の捻挫や打ち身、切り傷だってあっさり治せます」
これもまたルーナの桁外れな魔力量の影響であり、普通はここまで即座には直らないのだが、そんなことを二人は気づけない。
「じゃあ、もう少し進みましょう。せめてワイルドフェザントの一羽や二羽は狩らないと」
ルーナの足の状態を確認した上で、三人は再び森を歩き始める。
「なんだかゴブリンが多いな」
その後の戦闘はゴブリンを相手にすることが多く、ワイルドフェザントはおろかホーンラビットも見当たらない。
「食べられる魔物を狙えば食費の足しになると思ったんだけどなぁ」
ゴーシュとドロワが木々から葉を千切って剣についた血を拭う。
「まぁ、そういう日もあるよ。今日は諦めてそろそろ戻ろうか」
そう言ってきた道を引き返そうとした時だった。三人はワイルドフェザントが二羽で休んでいるのを発見した。
「むむ、どうします止まり木を魔法で倒しますか」
「そんなことしたら普通に飛んで逃げちゃうわよ。もう、弓矢でもあればいいんだけど」
「弓矢……矢、それなら――」
ルーナが杖を構え魔力を練り上げる。細く鋭く矢のように。
「当たれ!!」
魔力で生まれた光の矢を放つルーナ――だが、矢はワイルドフェザントを素通りして別の樹を貫いていった。
「当たらないのか」
「だったら!」
構え続ける杖に魔力を込めるルーナ、再び生み出される矢しかしそれは一本ではなく……。
「今度こそ!!」
異変に気付き飛び立つワイルドフェザントだったが、針山のように迫りくる光の矢に翼を射抜かれ墜落する。
「やった!」
喜ぶドロワとゴーシュだったが、その喜びは瞬く間にかき消える。
墜落したワイルドフェザントはそれなりの高さから落ちたこともあり、見るに堪えない肉塊へとなり下がっていた。
「……羽根もボロボロ、肉もぐちゃぐちゃ、正直……骨くらいしか価値がないかも」
「待って、光の矢と墜落のせいで骨も粉々よ」
「ひょっとして……」
「「これはお金にならない」」
双子からステレオで告げられ、がっくりと肩を落とすルーナだった。
「ドロワ、張り切り過ぎて昨日みたいに無茶しちゃ駄目よ」
群れからはぐれたのか、単独でうろついていたフォレストウルフを一匹討伐し拳を突き上げるドロワをゴーシュがたしなめる。一応昨日の件は反省しているらしく、ドロワは素直にうなずいた。
「まぁ、なにかあったら私が治してあげますから」
ルーナも周囲を警戒しつつ軽口をたたく余裕がある。
ルーナの威力が制御できていない魔法はいざとなった時の最終手段ととらえ、もっぱら索敵や石を投げるなんかして牽制に動くことが多くなっていた。ナイフなんかが扱えれば多少は戦力になれるかもしれないが、対人の護身でしか使ったことないナイフを魔物相手に有用に使えるとはルーナも思っていなかった。
「近くに群れがいなければいいのだけれど」
樹の根が這う森を警戒しながら進む三人。ふと鳥が嘶くような声が聞こえ、三人は上を見上げる。
「むむ、ワイルドフェザントかしら」
前方だけでなく上にも意識を巡らせながら進んでいると――
「きゃ」
不意にルーナが小さく悲鳴を上げる。ゴーシュが振り向くと、ルーナは眉間にしわを寄せて立ち止まっていた。
「どうしたの?」
「根にひっかけて転びそうだったので踏ん張ったら少し足を捻ったみたいで……」
そう言いながらもルーナは左足をかばうようにひょこひょこと歩く。
「ちょっと見せてみて」
ドロワはルーナの足元にしゃがみ込むと、靴を脱がせて足首の様子を見る。その足は少し腫れていた。
「あちゃ~、これはぐねってるね」
「平気なの?」
ルーナに肩を貸すゴーシュも心配そうに問いかける。
「これくらい大丈夫です。私、聖女候補なんですから」
そう言うとルーナの身体が淡く燐光をまとう。
「ふう、これで大丈夫です。これも内氣功の一種ですね。自己治癒力を高めることで多少の捻挫や打ち身、切り傷だってあっさり治せます」
これもまたルーナの桁外れな魔力量の影響であり、普通はここまで即座には直らないのだが、そんなことを二人は気づけない。
「じゃあ、もう少し進みましょう。せめてワイルドフェザントの一羽や二羽は狩らないと」
ルーナの足の状態を確認した上で、三人は再び森を歩き始める。
「なんだかゴブリンが多いな」
その後の戦闘はゴブリンを相手にすることが多く、ワイルドフェザントはおろかホーンラビットも見当たらない。
「食べられる魔物を狙えば食費の足しになると思ったんだけどなぁ」
ゴーシュとドロワが木々から葉を千切って剣についた血を拭う。
「まぁ、そういう日もあるよ。今日は諦めてそろそろ戻ろうか」
そう言ってきた道を引き返そうとした時だった。三人はワイルドフェザントが二羽で休んでいるのを発見した。
「むむ、どうします止まり木を魔法で倒しますか」
「そんなことしたら普通に飛んで逃げちゃうわよ。もう、弓矢でもあればいいんだけど」
「弓矢……矢、それなら――」
ルーナが杖を構え魔力を練り上げる。細く鋭く矢のように。
「当たれ!!」
魔力で生まれた光の矢を放つルーナ――だが、矢はワイルドフェザントを素通りして別の樹を貫いていった。
「当たらないのか」
「だったら!」
構え続ける杖に魔力を込めるルーナ、再び生み出される矢しかしそれは一本ではなく……。
「今度こそ!!」
異変に気付き飛び立つワイルドフェザントだったが、針山のように迫りくる光の矢に翼を射抜かれ墜落する。
「やった!」
喜ぶドロワとゴーシュだったが、その喜びは瞬く間にかき消える。
墜落したワイルドフェザントはそれなりの高さから落ちたこともあり、見るに堪えない肉塊へとなり下がっていた。
「……羽根もボロボロ、肉もぐちゃぐちゃ、正直……骨くらいしか価値がないかも」
「待って、光の矢と墜落のせいで骨も粉々よ」
「ひょっとして……」
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双子からステレオで告げられ、がっくりと肩を落とすルーナだった。
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