百合色雪月花は星空の下に

＃４

　美月さんとお弁当を食べた夜、私は菊花寮のお風呂でなぜか百合の間に挟まれていた。……どうしてこうなっちゃったんだろう。

「どう、星野さん新しいクラスには慣れたのかしら？」
「星野さんの心配をする志保ちゃん、素敵ねぇ」

　私を挟み込んでいるのは仲谷志保さんと仁井谷美夜さん。仲谷さんは普段下ろしているロングヘア―をタオルで包み、仁井谷さんは普段ツインテールにしているのをお団子にしてお湯につかないようにしている。二人は恋人同士で、普段からラブラブだって公言しているような仲で……なんだか、私とは違う世界の住人のように思えてしまう。二人とも、なんだか艶っぽいし。
　そういえば二人とも谷がつく苗字なんだなぁって思ったら、つい二人の胸元を見てしまう。確かにそこには谷があった。……でも、美月さんの方が大きかったなぁ。

「あ、ありがとう仲谷さん。今のところは大丈夫かな」
「そう、なら良かった。流れで私がクラス委員になっちゃったから、星野さんの方が良かったんじゃないかって一週間くらい考えていたのよね」
「そんな！　仲谷さんの方がいいよ。私、去年は押し付けられるように委員やってただけだし」

　自分で言ったのにうつむいてしまう。去年、なんだかんだクラス委員をやったが、あんまり……責務を果たせた覚えはない。同じクラスに生徒会役員の沢野さんがいたんだけど、彼女がクラス委員を兼ねられないから、私に回ってきたようなものだ。だけど、ほとんどの場面で沢野さんを頼って……。

「もう、志保ちゃんがせっかく心配してくれてるんだから、下ばっかり向くんじゃないの」
「……仁井谷さん」

　仁井谷さん、仲谷さん大好きっ子っていうイメージしかないんだけど、私のことを励まそうとしてくれている。いい人だ。私もいつか、仲谷さんと仁井谷さんみたいな関係になれる人を、見つけられるかな……。そんなことを考えたときに、ふと美月さんの顔が浮かんだ。……仲良くなりたいなんて言われたから、かな。

「そうだ、星野さんはお昼どうしてる？　私たちと一緒にどう？」
「え？　そんな、お二人の時間を邪魔するなんて……」
「ふふ、星野さんはおバカね。今更みやと志保ちゃんの関係が揺らぐはずないじゃない」

　つ、強い……。でも、今はまだ……。

「お天気のいい日に外で食べるの、好きだから。雨が降ってる日はご一緒させてもらおうかな……」

　美月さんは雨の降っている日はどこでごはんを食べているんだろう。明日にでも聞いてみようかな。