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束の間の休息
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ゴールデンウィークも近付く4月の末、食堂で日替わりランチセットを食べていると……。
「ふっ。ここにいたか、双神の巫女よ」
「ウィッグ没収」
「あ、いやいや待ってくれよ。分かった! 外そうじゃないか」
長浜先輩は珍しく人と一緒にいた。何となく、一人でいるイメージがあったが、あれでもクラスに馴染んでいるのだろうか。もっとも、余もそれなりに友が居るのだから推し量るべきか。
「理子、蝶子先に行っててくれ。……彼女らは演劇部の同級生でな。ゴールデンウィーク中にチャリティ公演があって、その打ち合わせを……。いや、我にだって友はいるさ。その目はなんだ? うぬにも友がいるじゃないか」
同じテーブルに座る渚と紅凪を一瞥する。話はそれだけかと思ったら、三番勝負の二戦目のアナウンスだった。
「先も言った公演の翌日、三日の日が空いている。勝負の会場は我が家だ。午前十時にこの学び舎の正門にて待て。我じきじきに迎えてやろう。その日の昼間は我が居城に我のみだからな! 思う存分しあうとしようぞ!」
わざわざ手間のかかる待ち合わせになるが、その理由は単純明快……互いの連絡先を知らないのだ。昼休みとはいえ、あまり校内で使いたくないのだが……ここは致し方あるまい。
「先輩、連絡先の交換をしましょう……否、余の前に曝け出すがいい」
刹那、瞠目した先輩はわずかに口角をあげながら黒の十字が描かれたスマホケースを取り出す。ご丁寧にチェーンまでさげられている。かっこいい。
「ふっ。後で位置情報を送ろう。自らの足で我が居城へ来るがいい、双神の巫女よ。さらばだ!」
ウィッグをかぶりなおし、その紫の髪をたなびかせ去って行くネクロマンサー。忠告するのも野暮だろう。視線を同級生二人の方へ戻すと、二人はにまにまとした笑みを表情に貼り付けていた。
「ねぇ、さっきのってお家デートのお誘いってこと? 家に二人きりなんて、もうすることしちゃう感じなの?」
渚がぐいぐいと聞いてくる。渚は子供っぽい外見のわりに言動が小悪魔のそれだ。ダンス部の大倉ゆら部長と付き合うようになってからは、小悪魔というよりサキュバス染みてきた。祓った方がいのではないかと思ってしまう。
「することしちゃうって、どういうこと?」
一方、紅凪は背も高く大人びた雰囲気を持っているが純朴で色恋沙汰なんて聞いたこと無い。風紀委員としては紅凪の方がよっぽど付き合いやすいが。
ただ、真面目な風間先輩の妹が奔放気味で、ほどよく手抜きしがちな土橋先輩の妹が生真面目というのも変な感じだが。
「紅凪は知らなくてもいいら。で、どうなの世音? どんなプレイするつもり?」
「普通に、ゲームのお誘い」
プレイって、流石に風紀委員としては注意したい発言だ。とはいえ余もアニメや物の本で男女あるいは性別すら関係なく、身体を……いや待て。どうして、そう……余とあのネクロマンサーが。ありえない。
「どうした突然」
首を高速で振る余を見て紅凪を驚かせてしまったが、なんでもないとだけ言って昼食に意識を戻した。家に呼ばれてゲームをするだけだ。三本勝負、次も勝てばあっさり余の勝利に終わるが……勝って何があるのだろうか。それすら知らずに戦いに身を投じていたなんて、余も物好きだな。
「楽しみなんだ。にこにこしちゃって」
「んな!? 違う!」
知らず知らず笑みがこぼれていたのを指摘され、妙に頬が熱かった。きっと初夏の陽気が迫っているせいだ。
「ふっ。ここにいたか、双神の巫女よ」
「ウィッグ没収」
「あ、いやいや待ってくれよ。分かった! 外そうじゃないか」
長浜先輩は珍しく人と一緒にいた。何となく、一人でいるイメージがあったが、あれでもクラスに馴染んでいるのだろうか。もっとも、余もそれなりに友が居るのだから推し量るべきか。
「理子、蝶子先に行っててくれ。……彼女らは演劇部の同級生でな。ゴールデンウィーク中にチャリティ公演があって、その打ち合わせを……。いや、我にだって友はいるさ。その目はなんだ? うぬにも友がいるじゃないか」
同じテーブルに座る渚と紅凪を一瞥する。話はそれだけかと思ったら、三番勝負の二戦目のアナウンスだった。
「先も言った公演の翌日、三日の日が空いている。勝負の会場は我が家だ。午前十時にこの学び舎の正門にて待て。我じきじきに迎えてやろう。その日の昼間は我が居城に我のみだからな! 思う存分しあうとしようぞ!」
わざわざ手間のかかる待ち合わせになるが、その理由は単純明快……互いの連絡先を知らないのだ。昼休みとはいえ、あまり校内で使いたくないのだが……ここは致し方あるまい。
「先輩、連絡先の交換をしましょう……否、余の前に曝け出すがいい」
刹那、瞠目した先輩はわずかに口角をあげながら黒の十字が描かれたスマホケースを取り出す。ご丁寧にチェーンまでさげられている。かっこいい。
「ふっ。後で位置情報を送ろう。自らの足で我が居城へ来るがいい、双神の巫女よ。さらばだ!」
ウィッグをかぶりなおし、その紫の髪をたなびかせ去って行くネクロマンサー。忠告するのも野暮だろう。視線を同級生二人の方へ戻すと、二人はにまにまとした笑みを表情に貼り付けていた。
「ねぇ、さっきのってお家デートのお誘いってこと? 家に二人きりなんて、もうすることしちゃう感じなの?」
渚がぐいぐいと聞いてくる。渚は子供っぽい外見のわりに言動が小悪魔のそれだ。ダンス部の大倉ゆら部長と付き合うようになってからは、小悪魔というよりサキュバス染みてきた。祓った方がいのではないかと思ってしまう。
「することしちゃうって、どういうこと?」
一方、紅凪は背も高く大人びた雰囲気を持っているが純朴で色恋沙汰なんて聞いたこと無い。風紀委員としては紅凪の方がよっぽど付き合いやすいが。
ただ、真面目な風間先輩の妹が奔放気味で、ほどよく手抜きしがちな土橋先輩の妹が生真面目というのも変な感じだが。
「紅凪は知らなくてもいいら。で、どうなの世音? どんなプレイするつもり?」
「普通に、ゲームのお誘い」
プレイって、流石に風紀委員としては注意したい発言だ。とはいえ余もアニメや物の本で男女あるいは性別すら関係なく、身体を……いや待て。どうして、そう……余とあのネクロマンサーが。ありえない。
「どうした突然」
首を高速で振る余を見て紅凪を驚かせてしまったが、なんでもないとだけ言って昼食に意識を戻した。家に呼ばれてゲームをするだけだ。三本勝負、次も勝てばあっさり余の勝利に終わるが……勝って何があるのだろうか。それすら知らずに戦いに身を投じていたなんて、余も物好きだな。
「楽しみなんだ。にこにこしちゃって」
「んな!? 違う!」
知らず知らず笑みがこぼれていたのを指摘され、妙に頬が熱かった。きっと初夏の陽気が迫っているせいだ。
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