ガラケー魔法少女ふおり☆スピカ

楠富 つかさ

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3話

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「ばいばい、ふー」
「また明日ね、あーちゃん!」

 小柄な私を心配して、帰りはいつもあーちゃんが家まで送ってくれる。あーちゃんには遠回りな帰り道になるけど、やっぱり嬉しい。あーちゃんの背中が見えなくなるまで待って、玄関を開ける。

「ただいま」

 そう言っても聞えてくる返事はない。一人っ子の私に兄弟姉妹はいない。父はまだ仕事の時間。でも、母はいる。

「ただいま、お母さん」

 でも、返事はしない。

「私ね、新しい友達が出来たんだ」

 相槌もくれない。

「お母さんが遺してくれた、これのおかげなんだよ?」

 でも、いつだって笑顔だ。

「また後でね、制服をかけてこなきゃ」

 ……どうしてかは、分かってる。知ってる。私だって、もう子供じゃない。人は誰でも、最後はこうなる。知ってる。だから、もう泣かない。階段を昇って自分の部屋へ行く。セーラー服を脱いで下着姿になる。

「あーちゃんみたいになりたいなぁ……。ううん! 私は私なんだから!」

 ハンガーに制服をかけて部屋着を着る。薄っぺらな自分のからだにコンプレックスがないわけではない。でもまだ13歳。悲観する歳でもないし、母に似てきたと言われる自分は嫌いじゃない。

「今日のお昼は何にしようかな?」

 再びリビングに戻って考える。冷蔵庫の中は今朝に確認したばかり。

「うん、オムライスにしよう。冷凍庫にご飯あったし」

 家事にも随分となれた。基本的なことは家庭科で習っていたし、父も快く教えてくれた。料理も、洗濯も、掃除も。料理は両親が溜めてきたレシピがあるし、洗濯は自分の分だけだから楽。掃除も、もとから好きでやっているから楽しい。一人は寂しいけれど、父が私のために頑張ってくれていることも十分に知っている。だから、文句なんて絶対に言わないし、反抗的な態度なんて取れるわけがない。

「やっぱりチキンライスにしよう」

 私が家を出た後に父がゆで卵を作ったようだ。卵が2つ減ってる。オムライスをキャンセルしてチキンライスに変更。まぁ、作業としては大きく変わりはしないけど。ケチャップを取り出しながら冷蔵庫の変化を確認。他には何もないみたい。

「夕飯のことも考えなきゃ……。お父さん帰ってくる時に買い物してくるかな?」

 牛乳やウインナーの類もなくなっていた気がする。あと、お弁当用の諸々も少なかった。

「取り敢えず、今はご飯にしよう」

 完成したケチャップライスを持ってテーブルへ。テレビを付けて寂しさを紛らわせることにも慣れてしまった。

「いただきます」

 家庭科で習ったが、この状況を孤食というらしい。あーちゃんを誘うべきだったかなぁ。あーちゃん、お昼どうしているかな? 共働きだったと思うんだけど、カップ麺とかで済ませていなければいいけど。

「このご飯、少なかったかも」

 自分でも思っていた以上に早く完食してしまった。

「せっかく暇な午後だし、ゲームしちゃおうかな」

 スマホが主流となった今ではあるが、据え置き機もポータブルなゲームハードも新しいのが作られている。そうしないと、スマホ製造に関係のない大手ゲーム会社は立つ瀬がなくなってしまうからだ。もちろん、旧世代のゲームのリメイクも盛んに行われていて、中年層から支持を受けている。

「まだフルダイブ技術は空想の世界……かな」

 ゲームの世界の中では完成しているフルダイブ技術。今遊んでいるゲームは、VR世界と現実世界を行き来しながら、ヒロインたちと仲良くなる、いわゆるギャルゲーだ。コンシューマ版なので、当然そういうシーンはないが、あーちゃんに勧められて始めたら思いの外はまってしまった。あーちゃんは従兄のお兄さんに勧められたらしいが。理由があるわけではないものの、お父さんがいる時にはやりづらい。という訳で、一人の孤独を癒すにはコレというくらい、熱中してしまっている。

「やっぱり飽きないなぁ」

 今日も、私の日常は平和です。
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