ガラケー魔法少女ふおり☆スピカ

楠富 つかさ

文字の大きさ
7 / 10

7話

しおりを挟む
 今日が金曜日でよかった。ふとそう思った。明日も学校だったら、スマホの闇に怯えて普段通りには過ごせなかったと思う。

『~~~♪』
「あ、お父さんからだ」

 メールを受信したケータイを開き、メールの内容を見る。買わなきゃいけないものの確認だろうか。

「……え、そんなぁ」

 前言撤回。メールには、今日は突然の仕事が立て続けで入ったから帰れない、という内容が記されていた。じゃあ、今日は私……一人なんだ。そう思ったら急に寂しくなった。恐くもなった。普段なら大丈夫なのに……今日は耐えられない。開いたままのケータイを持って下がったままの手に力を入れて、ケータイの画面を視界に持ってくる。迷い無く操作して電話をかける。相手は……

「もしもし。どうした、ふー?」

 あーちゃんだ。どうしても、あーちゃんの声が聞きたかった。

「あーちゃん、今日ね……家にお父さんが帰ってこないの。泊っていかない?」
「おぉ、そうしようかな。お泊りセットあるよね? 家には連絡しておく。すぐ行くね、今下校中だから。それじゃ」

 大丈夫、いつも通りな感じだった。きっと声に寂しさは篭ってないはず。でも、できれば電話はあーちゃんが家に来るまで続けたかった。スマホの闇にいつ襲われるか分からない。今日は大丈夫かもしれない。でも、大丈夫じゃないかもしれない。不安だよ……早く、早く来てよ。あーちゃん……。

「譜織!!」
「あーちゃん!」
「あ、ちょっ、待った! うおわ!!」

 不安のせいか知らず知らずのうちに玄関へ来ていた私に、扉を開けて駆け込んできたあーちゃんが、勢い余ってぶつかる。そのまま玄関先で押し倒された私をあーちゃんが抱きしめる。

「大丈夫? 譜織」
「えっと……あーちゃん?」

 この状態でぎゅっと抱き締められると、身長差のせいであーちゃんの胸に顔が埋もれてしまう。あーちゃん本来の石鹸っぽいにおいと汗のにおいが混じって、妙にクラクラしてしまう。

「電話での譜織の声、すごく不安そうだった。何があったの?」
「ね、ねぇ、あーちゃん」
「どうしたの?」

 あーちゃんが腕を伸ばして四つん這いの体勢になると、不安の色に満ちた瞳と目が合う。

「取り敢えず、お風呂入らない? もう沸いているから」

 きっと電話に出た場所から全速力で来てくれたんだろう。そんな親友にまずは感謝がしたい。

「ありがとうね、朱実ちゃん」

 彼女がそうするように、真面目な話の時には、ちゃんと名前で呼ぶ。一瞬だけ驚いたあーちゃんは、すぐに笑顔になった。

「行こうか、ふー」
「うん」

 やっぱり、あーちゃんがいるだけで心強い。あーちゃんになら、打ち明けてもいいと思えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...