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022 草原を進む
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スタル村からフレッサの街までは早馬が全力で走って一日の距離とのこと。普通の人だと途中で野営をするのが無難らしい。まあ、俺たちならマイホームで寝ればいいのだが。
「レックス、そっちに行ったわ!」
「おう、任せろ!」
ワイルドラビットの体当たりを盾で受け止める。小さい身体のわりになかなか重い攻撃だが、なんとか踏ん張り耐えきる。
「今だ!」
俺の声に合わせてマリーがワイルドラビットを斬る。
このワイルドラビットは村と街までの間に広がる草原に多く生息している魔物で、等級は最低の七級魔物。十歳くらいの少年が束になれば倒せてしまうくらいの弱い魔物だ。ただ、毛皮や肉など使い道は多々ある魔物なので買い取ってもらえるため、冒険者にとっては狩りやすい獲物として人気があり、初心者の登竜門とされている。
「スライムもいるわ、警戒して」
セフィリアの索敵能力が高いおかげもあって、ここまで危なげなく戦闘ができている。俺たちはセフィリアよりレベルが低いから、まずは俺たちが戦う。ちょっと強い魔物がいればセフィリアの風魔術で削って、俺たちがとどめを刺す。この連携がけっこう安定してきた。
「よし、これで最後だな」
「レックス、油断しないでね」
最後の一匹はワイルドボア。猪型の魔物で、突進してくる相手には慣れが必要だ。ハンマーボアとは違ってその武器は大きな牙だ。五級魔物なので流石に単騎では戦えない。
「セフィリア、頼んだ」
「えぇ、疾風の刃、飛来せよ――ウィンドカッター!」
風の刃がワイルドボアを切り裂く。本能的に身をよじったのか急所を逸らされた。しかし、俺とマリーが両サイドから剣を突き立てると、力なく地に伏した。「ふぅ……セフィリア、助かったよ」
「いえ、こちらこそいつも助けてもらってます。杖がないとより集中しないといけませんから。仲間がいてこそよ」
「いやいや、俺とマリーじゃまだ戦力不足だし、セフィリアがいなかったら俺はとっくに死んでるよ。にしても、仲間かぁ。ちょっと面はゆいな」
俺がまだ冒険者じゃないこともあって、俺たちは正式なパーティメンバーというわけではない。けど、旅は道連れ世は情けっていうか、この三人で仲間意識が芽生えている。なんだか、それが無性に嬉しい。
「私もレックスさんとセフィリアさんと旅ができて嬉しいです!」
うんうん、やっぱり女の子は笑顔が一番だよな。
しばらく歩くと小川が見えてきた。この辺りは森や林もなく見通しもいいから休憩にはちょうどいい場所だな。
「ここで少し休んでから出発しよう」
マイホームで休むのもいいが、こうも風が心地いいと屋外にいたくなる。……ん? 風か。
「なあセフィリア、俺も風魔術が使えるようにならないかな?」
「えっ? レックスは剣士じゃないんですか?」
「あー、やっぱりダメか」
「あ、いえ、そんなことはありません。風属性の魔力自体は持っていますし、訓練次第では使えそうですよ」
「ほんとか! よし、頑張ってみるか」
「はい、一緒に頑張りましょう!」
セフィリアはニッコリ微笑む。
「ところで、風属性の魔力はどうやって使うんだ?」
「……うーん、基礎的な魔力の使い方からですか」
俺の質問にセフィリアががっくりとした表情になってしまった。ふと見ればマリーもちょっと残念なものを見るような目をしている。
……ひょっとして俺、変なこと聞いちゃったかな。
「レックス、そっちに行ったわ!」
「おう、任せろ!」
ワイルドラビットの体当たりを盾で受け止める。小さい身体のわりになかなか重い攻撃だが、なんとか踏ん張り耐えきる。
「今だ!」
俺の声に合わせてマリーがワイルドラビットを斬る。
このワイルドラビットは村と街までの間に広がる草原に多く生息している魔物で、等級は最低の七級魔物。十歳くらいの少年が束になれば倒せてしまうくらいの弱い魔物だ。ただ、毛皮や肉など使い道は多々ある魔物なので買い取ってもらえるため、冒険者にとっては狩りやすい獲物として人気があり、初心者の登竜門とされている。
「スライムもいるわ、警戒して」
セフィリアの索敵能力が高いおかげもあって、ここまで危なげなく戦闘ができている。俺たちはセフィリアよりレベルが低いから、まずは俺たちが戦う。ちょっと強い魔物がいればセフィリアの風魔術で削って、俺たちがとどめを刺す。この連携がけっこう安定してきた。
「よし、これで最後だな」
「レックス、油断しないでね」
最後の一匹はワイルドボア。猪型の魔物で、突進してくる相手には慣れが必要だ。ハンマーボアとは違ってその武器は大きな牙だ。五級魔物なので流石に単騎では戦えない。
「セフィリア、頼んだ」
「えぇ、疾風の刃、飛来せよ――ウィンドカッター!」
風の刃がワイルドボアを切り裂く。本能的に身をよじったのか急所を逸らされた。しかし、俺とマリーが両サイドから剣を突き立てると、力なく地に伏した。「ふぅ……セフィリア、助かったよ」
「いえ、こちらこそいつも助けてもらってます。杖がないとより集中しないといけませんから。仲間がいてこそよ」
「いやいや、俺とマリーじゃまだ戦力不足だし、セフィリアがいなかったら俺はとっくに死んでるよ。にしても、仲間かぁ。ちょっと面はゆいな」
俺がまだ冒険者じゃないこともあって、俺たちは正式なパーティメンバーというわけではない。けど、旅は道連れ世は情けっていうか、この三人で仲間意識が芽生えている。なんだか、それが無性に嬉しい。
「私もレックスさんとセフィリアさんと旅ができて嬉しいです!」
うんうん、やっぱり女の子は笑顔が一番だよな。
しばらく歩くと小川が見えてきた。この辺りは森や林もなく見通しもいいから休憩にはちょうどいい場所だな。
「ここで少し休んでから出発しよう」
マイホームで休むのもいいが、こうも風が心地いいと屋外にいたくなる。……ん? 風か。
「なあセフィリア、俺も風魔術が使えるようにならないかな?」
「えっ? レックスは剣士じゃないんですか?」
「あー、やっぱりダメか」
「あ、いえ、そんなことはありません。風属性の魔力自体は持っていますし、訓練次第では使えそうですよ」
「ほんとか! よし、頑張ってみるか」
「はい、一緒に頑張りましょう!」
セフィリアはニッコリ微笑む。
「ところで、風属性の魔力はどうやって使うんだ?」
「……うーん、基礎的な魔力の使い方からですか」
俺の質問にセフィリアががっくりとした表情になってしまった。ふと見ればマリーもちょっと残念なものを見るような目をしている。
……ひょっとして俺、変なこと聞いちゃったかな。
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