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プロローグ
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世界の全ては主人公を中心に流転する。
漫画やアニメといったフィクション作品において主人公という存在は必要不可欠であり、その主人公を中心に作品というものは展開していく。すなわち、世界の誕生は主人公の存在が絶対条件であり、世界の成長は主人公の成長とも言える。つまり、全ては主人公次第。そいつの言動ひとつで世界は進化も滅亡もあり得るのだ。では、俺の住むこの世界の誕生はいつなのか、それは二年前に遡る。この世界はたった一人の少女の願いによって誕生した。その少女こそ、この世界の主人公である。少女によって作られたこの世界は少女の誕生と共に動き始めた。俺のこれまでの生い立ちや家族構成など、この世界で生活した記憶はないはずなのに、記録として頭に流れ込んできた。とても不思議な感覚だったのを覚えている。しかし、そんなことは気にしてはいけないと頭が警告した。
俺だけが知っていた。
俺だけが気づいていた。
なぜ自分がここに居るのか、なぜこの世界が誕生したのか、この世界の主人公が誰なのか。
誰かに教えられたわけではない。ただ理解していたのだ。なぜ、頭にこの世界の記録や情報が流れ込むのか、考えるまでもない。そういうものだから、というのが答えであった。だから考えても仕方がない。なぜ気にせずにいられるのか、と聞かれても、そういうものだからと言うほかないのだ。
この世界の原理を知っているのは俺だけで、他の人間はなにも知らずに生活している。生活しているといっても、先程言ったように、この世界の全ては主人公を中心に流転する。つまり、世界は主人公の周辺でしか展開していかないのだ。
まあ、これについては、実際に見てもらった方が早いかもしれない。
カーテンの隙間から差し込む光に、ゆっくりと目を開ける。今日も空は晴れ模様だ。
今日も奴は元気いっぱいらしい。面倒くさいことこの上ない。そんなことを考えていると、部屋の外からドタドタと騒がしい足音が聞こえてくる。言うまでもない、奴である。
「綾義ぃ!起きろ!」
バンッと遠慮もなく他人の部屋のドアを開けて入ってきたこの女。先程何度も言っていたこの世界の主人公。川相霧奈。俺の幼馴染だ。家が隣ということもあり、毎朝こうして部屋までやってきては俺の二度寝の邪魔をする。生まれつき持つ綺麗な茶髪をツインテールにして揺らしながら、俺の寝籠るベッドへと近づくと、躊躇なく踏みつけてきた。
「痛ぇ…踏むんじゃねえ…」
「寝るな!また学校に遅刻するつもりか!」
「ちょっ、いてっ…てめぇ!わ、わかった!起きる!起きるから!」
ぐりぐりと踏まれた頭を押さえながら布団から出れば、この暴君は満足そうに俺を見下ろした。毎度のことながら本当に遠慮という言葉を知らない奴だ。
まあ、毎度起きない俺も俺だが…。
「全く…だらしないぞ。お前も一応生徒会の一員なのだぞ!シャキッとしないか!」
「朝からでけぇ声出すんじゃねぇよ…。こっちは寝不足なんだ。とりあえず、着替えるから外で待っててくれ…。」
「なんだ?気にしなくていいぞ?それよりも早く着替えろ。」
この世界の主人公様はこういう奴なのだ。この川相霧奈という女は、よく言えば真っすぐな奴で、悪く言えば自己中心的な奴だ。突っ走り始めたら周りが見えなくなり、これまでも何回も周りを——主に俺を——巻き込んでは暴走する。その上、自分がこの世界の主人公であると知らないのだから余計にたちが悪い。こいつの言動ひとつで世界がどうとでもなってしまうというのに、本当にこいつは自重するということを知らない。
早く着替えろと騒ぎ立てる霧奈を部屋から追い出し、学校に行く準備をする。
ああ、言い忘れていた。俺の名前は、如月綾義。この世界でたった一人、この世界の原理を知る人間。この世界の主人公の幼馴染として生まれてしまった。
俺がこの世界に呼ばれた理由を俺は知っている。知っていて、俺は知らないふりをする。今は、知らないふりをする。
——この世界の主人公、川相霧奈が望むまで。
漫画やアニメといったフィクション作品において主人公という存在は必要不可欠であり、その主人公を中心に作品というものは展開していく。すなわち、世界の誕生は主人公の存在が絶対条件であり、世界の成長は主人公の成長とも言える。つまり、全ては主人公次第。そいつの言動ひとつで世界は進化も滅亡もあり得るのだ。では、俺の住むこの世界の誕生はいつなのか、それは二年前に遡る。この世界はたった一人の少女の願いによって誕生した。その少女こそ、この世界の主人公である。少女によって作られたこの世界は少女の誕生と共に動き始めた。俺のこれまでの生い立ちや家族構成など、この世界で生活した記憶はないはずなのに、記録として頭に流れ込んできた。とても不思議な感覚だったのを覚えている。しかし、そんなことは気にしてはいけないと頭が警告した。
俺だけが知っていた。
俺だけが気づいていた。
なぜ自分がここに居るのか、なぜこの世界が誕生したのか、この世界の主人公が誰なのか。
誰かに教えられたわけではない。ただ理解していたのだ。なぜ、頭にこの世界の記録や情報が流れ込むのか、考えるまでもない。そういうものだから、というのが答えであった。だから考えても仕方がない。なぜ気にせずにいられるのか、と聞かれても、そういうものだからと言うほかないのだ。
この世界の原理を知っているのは俺だけで、他の人間はなにも知らずに生活している。生活しているといっても、先程言ったように、この世界の全ては主人公を中心に流転する。つまり、世界は主人公の周辺でしか展開していかないのだ。
まあ、これについては、実際に見てもらった方が早いかもしれない。
カーテンの隙間から差し込む光に、ゆっくりと目を開ける。今日も空は晴れ模様だ。
今日も奴は元気いっぱいらしい。面倒くさいことこの上ない。そんなことを考えていると、部屋の外からドタドタと騒がしい足音が聞こえてくる。言うまでもない、奴である。
「綾義ぃ!起きろ!」
バンッと遠慮もなく他人の部屋のドアを開けて入ってきたこの女。先程何度も言っていたこの世界の主人公。川相霧奈。俺の幼馴染だ。家が隣ということもあり、毎朝こうして部屋までやってきては俺の二度寝の邪魔をする。生まれつき持つ綺麗な茶髪をツインテールにして揺らしながら、俺の寝籠るベッドへと近づくと、躊躇なく踏みつけてきた。
「痛ぇ…踏むんじゃねえ…」
「寝るな!また学校に遅刻するつもりか!」
「ちょっ、いてっ…てめぇ!わ、わかった!起きる!起きるから!」
ぐりぐりと踏まれた頭を押さえながら布団から出れば、この暴君は満足そうに俺を見下ろした。毎度のことながら本当に遠慮という言葉を知らない奴だ。
まあ、毎度起きない俺も俺だが…。
「全く…だらしないぞ。お前も一応生徒会の一員なのだぞ!シャキッとしないか!」
「朝からでけぇ声出すんじゃねぇよ…。こっちは寝不足なんだ。とりあえず、着替えるから外で待っててくれ…。」
「なんだ?気にしなくていいぞ?それよりも早く着替えろ。」
この世界の主人公様はこういう奴なのだ。この川相霧奈という女は、よく言えば真っすぐな奴で、悪く言えば自己中心的な奴だ。突っ走り始めたら周りが見えなくなり、これまでも何回も周りを——主に俺を——巻き込んでは暴走する。その上、自分がこの世界の主人公であると知らないのだから余計にたちが悪い。こいつの言動ひとつで世界がどうとでもなってしまうというのに、本当にこいつは自重するということを知らない。
早く着替えろと騒ぎ立てる霧奈を部屋から追い出し、学校に行く準備をする。
ああ、言い忘れていた。俺の名前は、如月綾義。この世界でたった一人、この世界の原理を知る人間。この世界の主人公の幼馴染として生まれてしまった。
俺がこの世界に呼ばれた理由を俺は知っている。知っていて、俺は知らないふりをする。今は、知らないふりをする。
——この世界の主人公、川相霧奈が望むまで。
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