【R18】幼馴染たち(※全員美形)に婚カツを邪魔されるので困っています

茅野ガク

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後日談

年上の夫

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 鷹ちゃんはいつも余裕があって堂々としていて、彼が焦ったり怒声を上げたりしているところなんて見たことがない。
 詩音と司くんだって、鷹ちゃんとケンカしたことがないんじゃないかと思うくらい。

 けど――――。

(忘れてたけど、鷹ちゃんってボクシングのライセンス持ってるし、柔道も剣道も弓道も有段者なんだよね)

 騒然とする周囲をよそに、私は自分の旦那さまの勇姿に見惚れていた。


*

「なつみちゃん、このブレスレット可愛いよ。さっき買ったワンピースとも合うんじゃない? これもあとで家に届けてもらおうか」
「これ以上買わなくていいってば鷹ちゃん……! 今日はもう、お洋服もバッグも靴もたくさん買ってもらったし……!」

 鷹ちゃんと二人だけのデートに来たデパートの宝石店。
 パン屋さんでパンを買うような気軽なノリで鷹ちゃんが買おうとしているブレスレットの金額を見て、私の頭はクラクラしていた。

(ゼロの数がパッと見で数えられないくらい多い……! こんなの腕につけて歩けないよ……!)

 しかも今日はこれまでにも散々色んなものを鷹ちゃんに買ってもらっている。
 デパートの滞在時間はまだ二時間くらいなのに、一般的なサラリーマンの年収程度は軽く越えた額を使っているはずだ。

「じゃあもうちょっと気軽に、ピアスとかにしとく?」

 そう指さされたピアスは十万円で。
 もうこれ以上ここにいては危険だと判断した私は、どうにか鷹ちゃんを説得してお店を脱出することに成功した。

「鷹ちゃん、今日もいっぱいプレゼントありがとう。でも本当に毎回二人でお出かけするたびにこんなに買ってくれなくて大丈夫なんだからね」
「なつみちゃんのために買い物するのは俺の趣味なんだから、そんなに寂しいこと言わないでよ。それに大した額は使ってないんだし」
「鷹ちゃんにとってはそうかもしれないけど、私はまだ庶民の金銭感覚なのっ。それに……」
「それに?」
「私は鷹ちゃんとお出かけできるだけで嬉しいんだから」

 私がそう言うと、鷹ちゃんは何故か顔を片手で覆って上を向いた。

「鷹ちゃん?」
「ごめんちょっと理性が。今日が俺となっちゃんの二人だけの日で心底良かったなって噛み締めてたところ」
「ふぅん? でも鷹ちゃんがゆっくり丸一日デートできる日なんて珍しいもんね。私も嬉しい」

 今日は普段忙しいことの多い鷹ちゃんがゆっくりできる日で、せっかくなら私と二人だけで出かけておいでと詩音と司くんが送り出してくれたのだ。

 完全オフの鷹ちゃんはいつもみたいにスーツ姿じゃなくて、ラフなカットソーとチノパン姿。
 でも彼の持っている王者の風格のようなものが滲み出ていて、ハリウッド俳優のオフショットみたいだ。

「夜ご飯はいつもの料亭を予約してあるよ」
「ありがとう楽しみ。あ、車に乗る前にお手洗い行ってくるね」
「じゃあ俺はちょっと親父に電話をしてくる。仕事関係で確認したいことがあるらしくて着信が残ってたんだ」
「うん。あそこのソファのあたりで待ち合わせしよ」

(お手洗い混んでて遅くなっちゃった……)

 VIP専用のフロアなら買い物もトイレも待つことはないけれど、私は店員さんたちに特別扱いされるのに慣れていないので、鷹ちゃんとのデートのときでも一般のお客さんと同じようにお買い物をしていた。

(鷹ちゃんどこかな)

 待ち合わせ場所のソファに鷹ちゃんの姿はない。まだ電話が終わっていないのだろうか?
 キョロキョロと見回していると、不意に周囲の空気が慌ただしくなり、悲鳴なようなものが聞こえる。

「ひったくり!」

 振り向けば、マスクとサングラス姿の黒っぽい服を着た男が、すごいスピードで私のほうへ走ってくるところだった。

「えっ」

 荷物を奪って逃走中のひったくり犯。
 その男がこっちへ向かってきている。
 それはわかるのに、足がすくんでしまってどの方向に逃げれば良いのか咄嗟に判断できない。

(ぶつかる――――!)

 せめて頭は守ろうと、顔の前に手を出して衝撃を和らげようとしたそのとき。

 私に衝突する寸前だった男が派手な音を立てて倒れた。

 ううん。正確には私を守るように前に立った鷹ちゃんが、男の胸ぐらを掴んで足元を払い後ろ向きに床へ押さえ込んだ。

(なんだっけ、柔道の大外刈りって技だっけ……?)

 状況も忘れて思わず感心して見ていると、男が逃げようと暴れだした。
 でも、着痩せして見えるけど鍛えられた鷹ちゃんの腕はビクともしない。

「なつみちゃん、怪我はない?」
「うん。鷹ちゃんが来てくれたから大丈夫だよ」
「よかった。万が一にでもなつみちゃんが傷ついていたら、この男を殺しちゃうところだったよ」

 爽やかな笑顔で物騒な発言をする鷹ちゃん。
 声音も優しいけれど、たぶんアレは本気だ。
 鷹ちゃんの表情とは裏腹に、凄まじい殺気のこもったオーラを感じるもの。

「ひっ」
 男も鷹ちゃんの本気を察したのか、暴れるのをやめておとなしくなる。
 ちょうど到着した警備員さんに男を引き渡して、私たちは予定通りに夜ご飯を食べに行くことにした。

 ひったくられた荷物も無事に持ち主に戻ったみたいだし、良かった良かった。



「――っていうことが、こないだ鷹ちゃんと二人で出かけたときに有ったんだよね。鷹ちゃん有段者だから、過剰防衛とかにならなくて良かったよ」

 後日、事の顛末を詩音と司くんにランチついでに報告する。

「そこで『ひったくりに巻き込まれそうになって怖かった』みたいな感想より先に、兄貴に前科がつかないかどうか心配するあたり、お前も三条家の嫁って感じだよな」

「大丈夫だよなっちゃん。それくらいならいくらでも揉み消せるから」

「それな。マジでその男、ナツにぶつからなくて命拾いしたな」

「もしなっちゃんに何かあったら、鷹嗣兄さんだけじゃなく僕も詩音兄さんも黙ってないしね」

 良かった。三人を犯罪者にするような展開にならなくて本当に良かった。
 そう思いながら、私はアイスティーのストローに口をつけた。


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感想 6

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みんなの感想(6件)

タイガ
2024.05.04 タイガ

久しぶりの更新ありがとうございます。いつでも待ってます。

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Rinshi
2019.11.23 Rinshi

ラスベガスの勝負は詩音が勝ったのかな?三人との新婚生活がもっと見たいです。更新、ありがとうございます。

2019.11.23 茅野ガク

こちらこそ、お読みいただきありがとうございます♪
新婚編はネタがまとまりしだい三人ぶん書くつもりです(*^^*)

解除
チロル
2019.05.16 チロル

もっと特農複数Hをいっぱいお願いします!!せっかくなので♡(*/▽\*)キャッ 出来たら泣いて嫌がるヒロインを3人で攻める場面を♡

2019.05.18 茅野ガク

チロルさんコメントありがとうございます♪
四人でのラブシーンはもっと書きたいと思っているので、ネタが降ってきたら投下するつもりです(*^^*)

解除

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