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美也子が高橋との交際を始めて十日が過ぎた祝日の昼過ぎ。
友人とストリートバスケをするから見に来て欲しいと高橋に頼まれたが、断って美也子は家にいた。
バスケなど少しも興味はないし、高橋の友人たちに『彼女』として紹介されるなどまっぴらだ。先日出た小説の新刊を読んでいる方がよほど有意義な休日の過ごし方だろう。
なんだか酷く残念そうな顔をされたがそんなことはどうでも良い。むしろ縋る瞳が鬱陶しかった。
高橋から頻繁に入るメッセージを無視して自分の部屋でページをめくっていると、階下で玄関のドアが開く音がした。
『……もしかしてご家族がいらっしゃるの?』
『父は仕事だし、妹は居ても壁が防音だから大丈夫』
兄と女の声が聞こえる。
聞こえると言うことは、もちろん壁は防音などではない。
階段を上る二人分の足音は、隣の兄の部屋に入って行った。
やがて――――
ギシギシとベッドが鳴る音と女の媚びた声が響き始める。
その事態を認知した美也子は、読んでいた本を閉じるとそっと兄の部屋の方の壁へと近づいた。
壁に押し付けた耳に、女の声に混じって肉同士がぶつかり合う音と水音が届く。
しかし、そんな卑猥な音にも美也子の表情は動かない。
――と、ふいに聞こえた溜息の様な声に彼女の頬が赤くなる。
その声を何度も何度も頭の中で再生しながらそろそろと自分の胸と下半身に手を伸ばした。
最初は布越しだった手が次第に大胆に服の下へと潜って行く。
ぐじゅぐじゅと響く音はもはや隣の部屋のものなのか、この部屋のものなのか――――
収縮し指を締め付ける自分の体を感じながら、美也子の脳裏に浮かぶのはただ一人の顔だった。
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