96 / 100
第五章 聖なる夜をいとし子と
ゆく年くる年
しおりを挟む
冴えた朝の空気が部屋の中にまで侵入してきている。
顔に当たる冷たい空気に目が覚めたセーラは冷え込んだ広い部屋を見て、田舎のクレイボーン邸に来ていたことを思い出した。同じように部屋が広くても、エミリーの家ではこんなに寒かったことがない。
「おお、寒いっ!」
暖房設備が違うのかしら。それともここが北部だから気温が低いのかもしれないわね。
大急ぎで服を着て、手早く部屋の暖炉に火を灯す。
じんわりと燃え始めた薪を見ながら、昨夜のデビッドのキスを思い出した。抱きしめられた安心感と、それとは相反するドキドキとうずくような高揚を感じたあの瞬間。
火照ってきた自分の頬が暖炉の照り返しのせいなのか、デビッドへの思いのせいなのかわからない。
朗らかで真っすぐなデビッド。
子ども達に好かれ、兄弟とも信頼し合っているようだ。見た目はいかにも仕事をバリバリしている大人の男の人と言う雰囲気だが、時折見せるやんちゃで子どもっぽい仕草に親しみを感じる。
そうやってデビッドのことを一つ一つあげていくたびに、この短期間でもうすっかり捉えられてしまっている自分に気がつく。
小さい頃から憧れてきたセドリックに対する思いとは全然違う別の何かがセーラの中に生まれていた。
「…覚悟を決める時が来たのかもね、セーラ。」
思い悩んでいてもしょうがない。なるようにしかならないもの。
デビッドがセーラ哲学と評した考え方を今こそするべきなのだろう。
「失うものは何もない、か…。」
デビッドとのことが上手くいかなくても元の生活に戻るだけ。失うものは何もないと最初は思っていた。けれど、今となっては失うものがたくさんある。
エミリーたち家族。メアリやミセスコナー。
そして…デビッド。
プロポーズを断って元の生活に戻れるわけがないじゃない。もし独りで生きていくことを決めたとしても、一生手放してしまった心を求めて悔いる自分が見える。
初めて目の前に差し出された愛。
チャンスには前髪しかないのよっ。この愛を捕まえる勇気を出しなさいっ!
セーラはシンと冷えた部屋を歩き回りながら、自分の中に勇気を呼び起こす。今、言わなければまた気持ちが挫けてしまうかもしれない。
セーラは意を決して、デビッドとの部屋を繋ぐ扉を叩いた。乾いたノックの音がセーラの心臓を締めつけて縮み上がらせるようだ。
「ん~、あぁ~。…ん、寒いなっ。…誰? セーラ?」
気の抜けたデビッドの声が帰って来る。彼はまだ眠っていたようだ。
「入ってもいい?」
「いいよ~。」
セーラが部屋へ入ると、寝ぼけ顔のデビッドがベッドの上に座ってガウンを羽織ろうとしていた。
「早いね。あ…ふぁ~、まだ夜明け前じゃん。」
カーテンの外が少し明るくなりかけてはいたが、まだ陽は登っていない。
目を覚まそうと顔を擦っているデビッドの側に行って、セーラは大声で宣言した。
「デビッド、私あなたと結婚することにしたわっ!」
「そう、そりゃあ良かった。…ん? なんだってー?!」
「もしまだ気が変わってなかったら、あなたの奥さんにしてください。」
「変わってるわけがないじゃないか!!」
それからのデビッドは素早かった。ベッドを飛んで下りると、セーラを力任せに抱きしめた。
まだ寝床の温もりのあるデビッドの暖かな身体が、冷え切ったセーラの身体を包み込む。
「ファイナルアンサー?」
「イエス。もう逃げないことにしたの。」
「イャッホーーーーーッ!!!」
デビッドは勢いのままセーラを抱き上げてくるくる回す。二人の喜びが弾けてどちらからともなく笑い声が漏れてきた。
「フフフッ、わかったわかったから降ろしてっ。」
「嫌だねっ!」
そこへデイビーの泣き声が聞こえてきた。
「クソッ、空気を読まない奴だ。」
「タオルが投げ込まれたようね。デイビーの支度が済んだらまたここへ来るわ。それまでに目を覚ましといてね。」
「目は完全に覚めたよっ! 行っておいで、マイラバー。」
デビッドに優しくオデコにキスをされて、セーラは隣の部屋へ帰った。
自分の口元がだらしなく緩んでいるのがわかる。こんなに高揚した気分はいつ以来だろう。
デビッドも喜んでくれていた。好きな人が自分のことで喜ぶことがこんなに嬉しいなんて。
ふと頭に浮かんだセディのクールな顔に顔をしかめたセーラは、心の中でセディに文句を言った。
お前を好きになる奴なんかいないですって? お生憎さま。
同情もあるのかもしれないが、デビッドの言った運命の人、魂のバディという言葉を信じてみよう。あの真っすぐな性格の人の愛を素直に受け止めよう。
そして、幸福を恐れることをやめなければならない。愛することに初心者であることを自覚して、勇気をもって前に進んで行かなくちゃ。
**********
今年最後の日にこんなどんでん返しがあるなんて…。
セーラの説得に長期戦を覚悟していたデビッドは、ウキウキする気分を押さえられなかった。明日から始まる新年が輝かしく希望に満ちたものに感じられる。
執務室から出て、表廊下の窓越しに深く雪を被った庭の木々を眺める。遠くにそびえるペナンシェラ山系の高い山々を背景に、こじんまりした地元の町並みが木々の間から見えている。
ドナシェラ大叔母さまにとんだお荷物を預けられてしまったと思っていたが、家庭持ちになろうとしている今、自分がこの上ない宝物を手にしていたということにデビッドは遅ればせながら気づき始めていた。
多くの人々の日々の営みを守っていく仕事。領地管理人のドッジスに丸投げをしていたクレイボーン伯爵としての職務を担っていこうという気概が、デビッドの胸の中に生まれようとしていた。
デビッドは昼食の前にリネン室にセーラを迎えに行った。
セーラが自分の婚約者として最初にしたいことが、まさかリネン室の片付けだとは思いもしなかった。下働きの二人の女の子に指示を出しながら、デイビーを抱っこしたままセーラが歩き廻っているのが見える。
あれほど無理をするなと言ったのに…。
「セーラ、君はまだ産後の疲れが取れてないんだからあまり動き回っちゃダメだよ。座ってるように言ったろ。」
セーラの腕からデイビーを抱きとりながらデビッドが窘めると、セーラがにっこり笑ってデビッドを歓迎してくれた。
「さっきまで座ってたのよ。お仕事は終わったの?」
「ああ、これでしばらくは大丈夫だと思う。」
「それじゃあ私も今日はここまでにしておくわ。アマンダもドラも急な仕事を引き受けてくれてありがとう。帰りに管理人室によってバイト代を貰って帰ってね。」
「はい、奥様。」
「あの…これからもこういう仕事があるんでしょうか? …だったら私、ストランドまで働きに出なくても家にいて兄弟の世話ができるんですが。」
「アマンダのお母さんは病気がちだって言ってたわね。」
セーラが問いかけるようにデビッドの顔を見上げたので、デビッドは笑ってセーラに頷いた。
「あなたは手際もいいし、これから私たちもこちらにくることが多くなると思うから、たぶん雇ってあげられると思うわ。詳しいことはドッジスさんと相談してまた連絡します。」
「ありがとうございます! 奥様、旦那様。ドラ、行こうっ。」
アマンダは満面の笑みで、ドラの手を引っ張って広い廊下を駆けていった。
デビッドはそんな若い娘たちの様子を見ながらクスクス笑った。
「どうしたの?」
「いや、ああいう元気のいいタイプは今までこの家にいなかったと思ってさ。ドナシェラ大叔母さんは慇懃ですましたタイプの人間が好きだったからね。屋敷の廊下をバタバタ走るような女中は見たことがないんだ。」
デビッドがそう言うと、セーラの顔色が変わった。
「不味かったかしら…?」
「いいや、ここはこれからセーラの家になるんだからね。セーラの色が出た家にするといい。僕も今までの女中よりアマンダみたいな子が家にいる方が元気が出るよ。お客さんへの対応なんかは少しずつ躾ければいいんだし。」
「はぁ~、その躾が難しいわ。エミリーに教えて貰わなくちゃ。」
「僕もセーラもこれから勉強だよ。」
「え? デビッドも?」
「僕も次男だからね。長男のアル兄さまほど領地経営について意識して考えてこなかった。今にして思えばもっとおじい様や父様のやってることをよく見ておけばよかったと反省してる。ま、これからさ。経験を積んで覚えていかなきゃならないことだしね。『意志あるところに道は通ず』諦めずに取り組む思いさえあればなんとかなるよ。最初から完璧な人なんているわけがない。失敗しながらやっていこう!」
「さすが社長さん、ありがたいお言葉ありがとうございます。」
ふざけて頭を下げるセーラに腰をぶつけてじゃれながら、デビッドは自分の言った言葉を反芻していた。
学生時代にタイラーと一緒に今の会社を立ち上げた時のような興奮を再び感じている。
新しい年に向かって、デビッドとセーラは前を向いて歩き出そうとしていた。
顔に当たる冷たい空気に目が覚めたセーラは冷え込んだ広い部屋を見て、田舎のクレイボーン邸に来ていたことを思い出した。同じように部屋が広くても、エミリーの家ではこんなに寒かったことがない。
「おお、寒いっ!」
暖房設備が違うのかしら。それともここが北部だから気温が低いのかもしれないわね。
大急ぎで服を着て、手早く部屋の暖炉に火を灯す。
じんわりと燃え始めた薪を見ながら、昨夜のデビッドのキスを思い出した。抱きしめられた安心感と、それとは相反するドキドキとうずくような高揚を感じたあの瞬間。
火照ってきた自分の頬が暖炉の照り返しのせいなのか、デビッドへの思いのせいなのかわからない。
朗らかで真っすぐなデビッド。
子ども達に好かれ、兄弟とも信頼し合っているようだ。見た目はいかにも仕事をバリバリしている大人の男の人と言う雰囲気だが、時折見せるやんちゃで子どもっぽい仕草に親しみを感じる。
そうやってデビッドのことを一つ一つあげていくたびに、この短期間でもうすっかり捉えられてしまっている自分に気がつく。
小さい頃から憧れてきたセドリックに対する思いとは全然違う別の何かがセーラの中に生まれていた。
「…覚悟を決める時が来たのかもね、セーラ。」
思い悩んでいてもしょうがない。なるようにしかならないもの。
デビッドがセーラ哲学と評した考え方を今こそするべきなのだろう。
「失うものは何もない、か…。」
デビッドとのことが上手くいかなくても元の生活に戻るだけ。失うものは何もないと最初は思っていた。けれど、今となっては失うものがたくさんある。
エミリーたち家族。メアリやミセスコナー。
そして…デビッド。
プロポーズを断って元の生活に戻れるわけがないじゃない。もし独りで生きていくことを決めたとしても、一生手放してしまった心を求めて悔いる自分が見える。
初めて目の前に差し出された愛。
チャンスには前髪しかないのよっ。この愛を捕まえる勇気を出しなさいっ!
セーラはシンと冷えた部屋を歩き回りながら、自分の中に勇気を呼び起こす。今、言わなければまた気持ちが挫けてしまうかもしれない。
セーラは意を決して、デビッドとの部屋を繋ぐ扉を叩いた。乾いたノックの音がセーラの心臓を締めつけて縮み上がらせるようだ。
「ん~、あぁ~。…ん、寒いなっ。…誰? セーラ?」
気の抜けたデビッドの声が帰って来る。彼はまだ眠っていたようだ。
「入ってもいい?」
「いいよ~。」
セーラが部屋へ入ると、寝ぼけ顔のデビッドがベッドの上に座ってガウンを羽織ろうとしていた。
「早いね。あ…ふぁ~、まだ夜明け前じゃん。」
カーテンの外が少し明るくなりかけてはいたが、まだ陽は登っていない。
目を覚まそうと顔を擦っているデビッドの側に行って、セーラは大声で宣言した。
「デビッド、私あなたと結婚することにしたわっ!」
「そう、そりゃあ良かった。…ん? なんだってー?!」
「もしまだ気が変わってなかったら、あなたの奥さんにしてください。」
「変わってるわけがないじゃないか!!」
それからのデビッドは素早かった。ベッドを飛んで下りると、セーラを力任せに抱きしめた。
まだ寝床の温もりのあるデビッドの暖かな身体が、冷え切ったセーラの身体を包み込む。
「ファイナルアンサー?」
「イエス。もう逃げないことにしたの。」
「イャッホーーーーーッ!!!」
デビッドは勢いのままセーラを抱き上げてくるくる回す。二人の喜びが弾けてどちらからともなく笑い声が漏れてきた。
「フフフッ、わかったわかったから降ろしてっ。」
「嫌だねっ!」
そこへデイビーの泣き声が聞こえてきた。
「クソッ、空気を読まない奴だ。」
「タオルが投げ込まれたようね。デイビーの支度が済んだらまたここへ来るわ。それまでに目を覚ましといてね。」
「目は完全に覚めたよっ! 行っておいで、マイラバー。」
デビッドに優しくオデコにキスをされて、セーラは隣の部屋へ帰った。
自分の口元がだらしなく緩んでいるのがわかる。こんなに高揚した気分はいつ以来だろう。
デビッドも喜んでくれていた。好きな人が自分のことで喜ぶことがこんなに嬉しいなんて。
ふと頭に浮かんだセディのクールな顔に顔をしかめたセーラは、心の中でセディに文句を言った。
お前を好きになる奴なんかいないですって? お生憎さま。
同情もあるのかもしれないが、デビッドの言った運命の人、魂のバディという言葉を信じてみよう。あの真っすぐな性格の人の愛を素直に受け止めよう。
そして、幸福を恐れることをやめなければならない。愛することに初心者であることを自覚して、勇気をもって前に進んで行かなくちゃ。
**********
今年最後の日にこんなどんでん返しがあるなんて…。
セーラの説得に長期戦を覚悟していたデビッドは、ウキウキする気分を押さえられなかった。明日から始まる新年が輝かしく希望に満ちたものに感じられる。
執務室から出て、表廊下の窓越しに深く雪を被った庭の木々を眺める。遠くにそびえるペナンシェラ山系の高い山々を背景に、こじんまりした地元の町並みが木々の間から見えている。
ドナシェラ大叔母さまにとんだお荷物を預けられてしまったと思っていたが、家庭持ちになろうとしている今、自分がこの上ない宝物を手にしていたということにデビッドは遅ればせながら気づき始めていた。
多くの人々の日々の営みを守っていく仕事。領地管理人のドッジスに丸投げをしていたクレイボーン伯爵としての職務を担っていこうという気概が、デビッドの胸の中に生まれようとしていた。
デビッドは昼食の前にリネン室にセーラを迎えに行った。
セーラが自分の婚約者として最初にしたいことが、まさかリネン室の片付けだとは思いもしなかった。下働きの二人の女の子に指示を出しながら、デイビーを抱っこしたままセーラが歩き廻っているのが見える。
あれほど無理をするなと言ったのに…。
「セーラ、君はまだ産後の疲れが取れてないんだからあまり動き回っちゃダメだよ。座ってるように言ったろ。」
セーラの腕からデイビーを抱きとりながらデビッドが窘めると、セーラがにっこり笑ってデビッドを歓迎してくれた。
「さっきまで座ってたのよ。お仕事は終わったの?」
「ああ、これでしばらくは大丈夫だと思う。」
「それじゃあ私も今日はここまでにしておくわ。アマンダもドラも急な仕事を引き受けてくれてありがとう。帰りに管理人室によってバイト代を貰って帰ってね。」
「はい、奥様。」
「あの…これからもこういう仕事があるんでしょうか? …だったら私、ストランドまで働きに出なくても家にいて兄弟の世話ができるんですが。」
「アマンダのお母さんは病気がちだって言ってたわね。」
セーラが問いかけるようにデビッドの顔を見上げたので、デビッドは笑ってセーラに頷いた。
「あなたは手際もいいし、これから私たちもこちらにくることが多くなると思うから、たぶん雇ってあげられると思うわ。詳しいことはドッジスさんと相談してまた連絡します。」
「ありがとうございます! 奥様、旦那様。ドラ、行こうっ。」
アマンダは満面の笑みで、ドラの手を引っ張って広い廊下を駆けていった。
デビッドはそんな若い娘たちの様子を見ながらクスクス笑った。
「どうしたの?」
「いや、ああいう元気のいいタイプは今までこの家にいなかったと思ってさ。ドナシェラ大叔母さんは慇懃ですましたタイプの人間が好きだったからね。屋敷の廊下をバタバタ走るような女中は見たことがないんだ。」
デビッドがそう言うと、セーラの顔色が変わった。
「不味かったかしら…?」
「いいや、ここはこれからセーラの家になるんだからね。セーラの色が出た家にするといい。僕も今までの女中よりアマンダみたいな子が家にいる方が元気が出るよ。お客さんへの対応なんかは少しずつ躾ければいいんだし。」
「はぁ~、その躾が難しいわ。エミリーに教えて貰わなくちゃ。」
「僕もセーラもこれから勉強だよ。」
「え? デビッドも?」
「僕も次男だからね。長男のアル兄さまほど領地経営について意識して考えてこなかった。今にして思えばもっとおじい様や父様のやってることをよく見ておけばよかったと反省してる。ま、これからさ。経験を積んで覚えていかなきゃならないことだしね。『意志あるところに道は通ず』諦めずに取り組む思いさえあればなんとかなるよ。最初から完璧な人なんているわけがない。失敗しながらやっていこう!」
「さすが社長さん、ありがたいお言葉ありがとうございます。」
ふざけて頭を下げるセーラに腰をぶつけてじゃれながら、デビッドは自分の言った言葉を反芻していた。
学生時代にタイラーと一緒に今の会社を立ち上げた時のような興奮を再び感じている。
新しい年に向かって、デビッドとセーラは前を向いて歩き出そうとしていた。
1
あなたにおすすめの小説
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる