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第五章 聖なる夜をいとし子と
踏み絵
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日本から帰って来たデビッドは会社への報告もそこそこにセーラとデイビーが待つビギンガムへ向かった。
一緒に日本から帰って来た長男のアル兄さまの家族は、先にストランド領に帰り、おじい様のお見舞いがてら敵情視察をしておいてくれることになっている。
空港で別れる時に、義姉のノッコに「お義父様たちに会わせる前にセーラさんに会わせてね。」と言われた。
ノッコの言いたいことはわかる。セーラが悪意を持って僕に近付いたのではないことを確かめたいんだろう。
それにセーラの前世も気になっているようだ。
でも、そう言われた時にドキッとした。
どうかセーラが前世で僕と出会ってますようにとつい祈ってしまった。自分としてはセーラが運命の相手だということは確信を持っているが、うちの家族はノッコの勘を頼りにしているところがある。
僕が一度、大人しそうな令嬢に騙されそうになった時に、ノッコに「相手の事情をもう少し調べたほうが良さそう。」と言われ、窮地を免れたことがあるのだ。
それ以来家族、特に母様はノッコの能力を信用している。
僕の恋人だったカリナは何人もの男を手玉に取っていた。
カリナは家族ぐるみで、家の借金を返すために権力のある家の息子を狙っていたようだ。そして僕もそのターゲットの一人になっていた。借金はいいのだ。しかしカリナにとって複数のお相手の中の一人でしかなかったことに、若かった僕はショックを受けた。
母様たちに注意を受けてもイマイチ信じられない思いでいた僕に「カリナの様子を自分の目で見たほうが早い。」とアル兄さまがこっそり連れて行ってくれたパーティ。
そこで見たカリナは、恥ずかしがりの女の子なんかじゃなくて、妖艶な女だった。他の男を骨抜きにして鼻で笑っている。その様子を見た時には、何かで頭を殴られたようだった。
女って、怖い。
そんな刷り込みを植え付けられた失恋経験だった。
その後も、キャスが王太子妃になると、第二第三のカリナが僕の周りをうろつき始める。この子は大丈夫だろうとノッコに会わせた女の子までダメだった時には、もう二度と女とは付き合わないと決心した。
それがセーラと出会ってからそんな決心はどこかに飛んで行ってしまった。
ノッコに会わせようと考えもしなかった。
しかし、やっぱり今回は会わせなきゃダメなんだよな。考えようによってはノッコの太鼓判が得られたら母様はこちら側についてくれるだろう。それは大きい。父様は母様には弱いからな。
デビッドが帰って来た!
セーラは車の音がした途端に外へ駆け出した。
執事のランベスには呆れられたが、仕方がない。デビッドから電話があって、今か今かと帰りを待っていたのだ。
「セーラ! 会いたかったよっ。」
「私も!」
デビッドに飛びつくと、身体を持ち上げてくるりと回されてからギュッと抱きしめられた。
ああ、この腕の中は安心する。そしてデビッドの匂い。
セーラはデビッドの胸に頬をこすりつけた。
「うーん、2週間ほどの出張とは思えない歓迎だね。エム、僕にもああやって抱きついてくれよ。」
「ロブはずっと家にいるでしょ。それに私がそんなことしないってわかってるくせに。」
「残念ながらね。ハイ、お二人さん。気持ちはわかるが続きは家の中でやってくれ。」
玄関でセーラ達の再会を見ていたロベルトとエミリーにそう言われた。
セーラは、デビッドと二人で顔を見合わせて笑った。
これからはずっと一緒にいられる。
セーラは自分が思っていたよりずっと激しくデビッドと結びついているということを感じていた。
離れているとこんなに寂しいなんて、信じられない。ちょっと前までは顔も見たことがなかった人なのに。
恋愛というのは不思議なものだ。
ということは、セディに対して持っていたのは、恋愛感情と言うより憧れていた人にたまたま振り向いてもらった喜びのほうが大きかったんだろうか。セディが去って行った時にも、ここまで狂おしいほどの寂しさは感じなかった。
自分の半身が側にいなくなったような落ち着かない感じ。この2週間のセーラは、そんな物足りないものを常に感じていた。
「デイビー、お前の顔が見れなくて寂しかったよ。何だか急に大きくなったな。もしかして目も見えてる?」
デイビーは声のする方をじっと見ている。最近、音にも敏感に反応するようになったし、お乳を飲みながらセーラの顔をじっと見ていることもある。
「まだはっきりとは見えないだろうけど、周りにいる人を覚えようとしているみたい。顔も丸くなって赤ちゃんらしくなって来たでしょ。」
「ああ、やっぱり実物と写真は違うな。な、バディ。お前は男前になってきてるぞ。」
夕食の後部屋へ引き取ってから、デビッドはデイビーを抱っこして離さない。自分が見ていない間にデイビーが大きくなったのが残念なようだ。
「成長をずっと見ていたかったな。デイビーが20歳になるまでは、もう出張なんか行かないぞっ。」
そんな風にブツブツ言っている。
我が子ではないのに、本当に二人の間には絆があるようだ。
セーラはそんな二人の様子を眺めながら、こうやって3人で一緒にいるのが一番くつろげるひと時だと思った。
今まで想像したこともない家族の形がそこにあった。
**********
ご両親との話し合いをする当日、セーラとデビッドはストランド伯爵邸に行く前に屋敷の近くにあるノッコ、ノリコ・カタオカ・サマーさんの店にやって来た。
店の中に入ると、シンとした静寂と笛の音のような音楽に包まれた。水の流れる音もしてカコーンという高い木の音も聞こえる。ロンドンにあったアジアンテイストの店とはちょっと違う雰囲気だ。
セーラは、最初、エミリーにここで働きたいと言ったこともあって、興味深く店の中を見た。たくさんの見たこともないような商品が綺麗にディスプレーされて棚の上に並んでいる。
「いらっしゃい。こっちに寄ってくれてありがとう。」
店の奥から出てきた背の高い黒髪のアジア人が、セーラとデビッドに親し気に挨拶をしてくれる。この人がノッコさんなのかしら? セーラがデビッドに目で尋ねると、頷いてくれた。
「義姉さん、この人がセーラ・クルー。僕の婚約者だ。」
婚約者だと人に紹介されたのは初めてだ。何だか顔が赤くなる。
「セーラ、私はアレックスの妻のノリコと言います。よろしくね。こちらに座って、少し手を握らせてもらってもいい?」
デビッドにあらかじめ聞いていたので、セーラは頷いてノッコさんの隣に座った。前世を視てもらうなんて初めてだ。温かいノッコさんの手に自分の小さい手を預けると、ノッコさんはうつむいたまま、目の焦点が合っていないように、しばらくどこかをぼんやりと眺め続けていた。
「ごめんなさい。あまりにもドラマチックな前世だったから見入ってたわ。」
「ノッコ…。」
「心配しなくてもいいわ。この人は大丈夫そうね、デビッド。」
息をつめて私たちを見ていたデビッドが、やっと溜めていた息を吐いた。
「やれやれ、緊張したよ。問題はないと思ってたけどさ。」
「ふふ、デビッドには嫌なお告げばかりしてたから私も安心したわ。でも…彼女には隠された才能があるかも。パートナーがデビッドだったら伸ばしてあげられるでしょうね。」
「え、何の才能なんですか?」
ノッコさんの言葉にセーラは驚いた。生まれてこの方、自分の中に何かの才能の片りんなんて見たことがない。
「それはお義父様たちの前で教えてあげる。このことで少しでもおじい様とお義父様の気持ちを動かせればいいんだけど。」
にこりと笑ったノッコさんは、セーラの手をギュッと握って力づけてくれた。
これから一緒に三人でストランド伯爵邸に行くことになる。セーラは深呼吸をして顔を真っすぐに上げた。
私は孤児だけど卑しい人間じゃない。デビッドのご両親にわかって頂けるように頑張ろう。
デイビーを連れて一足先にストランド伯爵邸に着いていたエミリーたちは、セーラ達の到着を心待ちにしていた。珍しいことに今日はおじい様の意識がハッキリしていたのだ。
「出来たらおじい様にもセーラのことを認めてもらいたいわ。」
「そうだね。その方がセーラにしても思い煩うことがないかもしれない。あのストランド伯爵が認めたとあれば社交界でも顔を上げて生きていけるからね。」
ロベルトが言うように、政治の中枢で長年活躍していたおじい様の意見はかなり広範囲の人たちに影響を与える。反対されている中で無理矢理、婚姻関係を結ぶのと、ストランド伯爵家の総意のもとで祝福されて結婚するのとでは、世の中の人たちが受ける印象も変わって来る。
エミリーたちが気をもむ中で、デビッドの車が車寄せに入って来た。
執事のパーマーが玄関に向かうのを見て、エミリーはブリーと目を見交わした。
一緒に日本から帰って来た長男のアル兄さまの家族は、先にストランド領に帰り、おじい様のお見舞いがてら敵情視察をしておいてくれることになっている。
空港で別れる時に、義姉のノッコに「お義父様たちに会わせる前にセーラさんに会わせてね。」と言われた。
ノッコの言いたいことはわかる。セーラが悪意を持って僕に近付いたのではないことを確かめたいんだろう。
それにセーラの前世も気になっているようだ。
でも、そう言われた時にドキッとした。
どうかセーラが前世で僕と出会ってますようにとつい祈ってしまった。自分としてはセーラが運命の相手だということは確信を持っているが、うちの家族はノッコの勘を頼りにしているところがある。
僕が一度、大人しそうな令嬢に騙されそうになった時に、ノッコに「相手の事情をもう少し調べたほうが良さそう。」と言われ、窮地を免れたことがあるのだ。
それ以来家族、特に母様はノッコの能力を信用している。
僕の恋人だったカリナは何人もの男を手玉に取っていた。
カリナは家族ぐるみで、家の借金を返すために権力のある家の息子を狙っていたようだ。そして僕もそのターゲットの一人になっていた。借金はいいのだ。しかしカリナにとって複数のお相手の中の一人でしかなかったことに、若かった僕はショックを受けた。
母様たちに注意を受けてもイマイチ信じられない思いでいた僕に「カリナの様子を自分の目で見たほうが早い。」とアル兄さまがこっそり連れて行ってくれたパーティ。
そこで見たカリナは、恥ずかしがりの女の子なんかじゃなくて、妖艶な女だった。他の男を骨抜きにして鼻で笑っている。その様子を見た時には、何かで頭を殴られたようだった。
女って、怖い。
そんな刷り込みを植え付けられた失恋経験だった。
その後も、キャスが王太子妃になると、第二第三のカリナが僕の周りをうろつき始める。この子は大丈夫だろうとノッコに会わせた女の子までダメだった時には、もう二度と女とは付き合わないと決心した。
それがセーラと出会ってからそんな決心はどこかに飛んで行ってしまった。
ノッコに会わせようと考えもしなかった。
しかし、やっぱり今回は会わせなきゃダメなんだよな。考えようによってはノッコの太鼓判が得られたら母様はこちら側についてくれるだろう。それは大きい。父様は母様には弱いからな。
デビッドが帰って来た!
セーラは車の音がした途端に外へ駆け出した。
執事のランベスには呆れられたが、仕方がない。デビッドから電話があって、今か今かと帰りを待っていたのだ。
「セーラ! 会いたかったよっ。」
「私も!」
デビッドに飛びつくと、身体を持ち上げてくるりと回されてからギュッと抱きしめられた。
ああ、この腕の中は安心する。そしてデビッドの匂い。
セーラはデビッドの胸に頬をこすりつけた。
「うーん、2週間ほどの出張とは思えない歓迎だね。エム、僕にもああやって抱きついてくれよ。」
「ロブはずっと家にいるでしょ。それに私がそんなことしないってわかってるくせに。」
「残念ながらね。ハイ、お二人さん。気持ちはわかるが続きは家の中でやってくれ。」
玄関でセーラ達の再会を見ていたロベルトとエミリーにそう言われた。
セーラは、デビッドと二人で顔を見合わせて笑った。
これからはずっと一緒にいられる。
セーラは自分が思っていたよりずっと激しくデビッドと結びついているということを感じていた。
離れているとこんなに寂しいなんて、信じられない。ちょっと前までは顔も見たことがなかった人なのに。
恋愛というのは不思議なものだ。
ということは、セディに対して持っていたのは、恋愛感情と言うより憧れていた人にたまたま振り向いてもらった喜びのほうが大きかったんだろうか。セディが去って行った時にも、ここまで狂おしいほどの寂しさは感じなかった。
自分の半身が側にいなくなったような落ち着かない感じ。この2週間のセーラは、そんな物足りないものを常に感じていた。
「デイビー、お前の顔が見れなくて寂しかったよ。何だか急に大きくなったな。もしかして目も見えてる?」
デイビーは声のする方をじっと見ている。最近、音にも敏感に反応するようになったし、お乳を飲みながらセーラの顔をじっと見ていることもある。
「まだはっきりとは見えないだろうけど、周りにいる人を覚えようとしているみたい。顔も丸くなって赤ちゃんらしくなって来たでしょ。」
「ああ、やっぱり実物と写真は違うな。な、バディ。お前は男前になってきてるぞ。」
夕食の後部屋へ引き取ってから、デビッドはデイビーを抱っこして離さない。自分が見ていない間にデイビーが大きくなったのが残念なようだ。
「成長をずっと見ていたかったな。デイビーが20歳になるまでは、もう出張なんか行かないぞっ。」
そんな風にブツブツ言っている。
我が子ではないのに、本当に二人の間には絆があるようだ。
セーラはそんな二人の様子を眺めながら、こうやって3人で一緒にいるのが一番くつろげるひと時だと思った。
今まで想像したこともない家族の形がそこにあった。
**********
ご両親との話し合いをする当日、セーラとデビッドはストランド伯爵邸に行く前に屋敷の近くにあるノッコ、ノリコ・カタオカ・サマーさんの店にやって来た。
店の中に入ると、シンとした静寂と笛の音のような音楽に包まれた。水の流れる音もしてカコーンという高い木の音も聞こえる。ロンドンにあったアジアンテイストの店とはちょっと違う雰囲気だ。
セーラは、最初、エミリーにここで働きたいと言ったこともあって、興味深く店の中を見た。たくさんの見たこともないような商品が綺麗にディスプレーされて棚の上に並んでいる。
「いらっしゃい。こっちに寄ってくれてありがとう。」
店の奥から出てきた背の高い黒髪のアジア人が、セーラとデビッドに親し気に挨拶をしてくれる。この人がノッコさんなのかしら? セーラがデビッドに目で尋ねると、頷いてくれた。
「義姉さん、この人がセーラ・クルー。僕の婚約者だ。」
婚約者だと人に紹介されたのは初めてだ。何だか顔が赤くなる。
「セーラ、私はアレックスの妻のノリコと言います。よろしくね。こちらに座って、少し手を握らせてもらってもいい?」
デビッドにあらかじめ聞いていたので、セーラは頷いてノッコさんの隣に座った。前世を視てもらうなんて初めてだ。温かいノッコさんの手に自分の小さい手を預けると、ノッコさんはうつむいたまま、目の焦点が合っていないように、しばらくどこかをぼんやりと眺め続けていた。
「ごめんなさい。あまりにもドラマチックな前世だったから見入ってたわ。」
「ノッコ…。」
「心配しなくてもいいわ。この人は大丈夫そうね、デビッド。」
息をつめて私たちを見ていたデビッドが、やっと溜めていた息を吐いた。
「やれやれ、緊張したよ。問題はないと思ってたけどさ。」
「ふふ、デビッドには嫌なお告げばかりしてたから私も安心したわ。でも…彼女には隠された才能があるかも。パートナーがデビッドだったら伸ばしてあげられるでしょうね。」
「え、何の才能なんですか?」
ノッコさんの言葉にセーラは驚いた。生まれてこの方、自分の中に何かの才能の片りんなんて見たことがない。
「それはお義父様たちの前で教えてあげる。このことで少しでもおじい様とお義父様の気持ちを動かせればいいんだけど。」
にこりと笑ったノッコさんは、セーラの手をギュッと握って力づけてくれた。
これから一緒に三人でストランド伯爵邸に行くことになる。セーラは深呼吸をして顔を真っすぐに上げた。
私は孤児だけど卑しい人間じゃない。デビッドのご両親にわかって頂けるように頑張ろう。
デイビーを連れて一足先にストランド伯爵邸に着いていたエミリーたちは、セーラ達の到着を心待ちにしていた。珍しいことに今日はおじい様の意識がハッキリしていたのだ。
「出来たらおじい様にもセーラのことを認めてもらいたいわ。」
「そうだね。その方がセーラにしても思い煩うことがないかもしれない。あのストランド伯爵が認めたとあれば社交界でも顔を上げて生きていけるからね。」
ロベルトが言うように、政治の中枢で長年活躍していたおじい様の意見はかなり広範囲の人たちに影響を与える。反対されている中で無理矢理、婚姻関係を結ぶのと、ストランド伯爵家の総意のもとで祝福されて結婚するのとでは、世の中の人たちが受ける印象も変わって来る。
エミリーたちが気をもむ中で、デビッドの車が車寄せに入って来た。
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