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第二章 結婚生活
誕生日
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窓の外は今日も土砂降りの雨だ。
まだ雷の音も聞こえるが、だいぶ小さな音になったので遠くへ行ったのかもしれない。
セリカたちは小人の村から帰って来て、また馬車に乗り、ホルコット子爵領にあるコスモの街までやって来た。
その日の夜は旅館で、ホースラディッシュを添えたやわらかいローストビーフを堪能した。
お昼ご飯が残念なスープだったので、みんなすごい食欲だった。
ダニエルとコールは赤ワインを飲み過ぎて、早々に潰れてしまったので、セリカは女中のキム、護衛のタンジェントやシータとたっぷりと話を楽しんだ。
ずっとセリカたちを悩ませてきたコルマ関連の話も出た。
この宿に着いてからダニエルにかかってきた念話で、新しい情報が入って来たとタンジェントが言っていた。
ケリー達を誘拐したスミスと前回セリカを誘拐しようとしたコルマは、2人とも行政執行大臣の部下だったらしく、昨日、警備局が重い腰をあげて王宮のガサ入れをしたようだ。
そこで思っても見なかったことに、行政執行大臣とオエンド国との癒着が発覚したらしい。
…あの人は、権力欲が強そうだったもんね。
ダニエルと行政執行大臣が言い合いになった会議のことを思い出す。
その件でイモづる式に逮捕された人が何人か出たようで、王宮は大騒ぎになっていると聞いた。
そんなきな臭い話だけではなく、タンジェントやシータの母国であるオディエ国の話もした。
食べ物の話を聞くだけでも、日本によく似ていると奏子が言っていた。
一度行ってみたいものである。
話をしている途中に気づいたのだが、タンジェントがシータを見る目がやわらかくなったような気がする。
指摘はしなかったが、セリカとしては望み通りの展開だ。
あの2人は何かのきっかけ次第なのよね~。
次の日は馬車に乗って観光に行く予定だったが、朝起きると雨が降っていたので、出発を断念した。
それから雨は一日中降り続き、2日目の今日は雷を伴うほどの土砂降りだ。
「ついてないなぁ~。」
― でもたまにはゆっくりできていいじゃない。
一日中、馬車に揺られるのも疲れるでしょ。
奏子、今日は何の日か知ってる?
― 7月3日
あら、そう言えば誕生日だったわね。
「昼食か?」
椅子に座って雑誌を読んでいたダニエルが、ノックの音に気づいて顔を上げた。
「侯爵閣下、奥様、お食事の準備ができました。」
キムの声に、セリカも応える。
「はーい。すぐに行きます。」
「シータと先に行ってくれ。ちょっとコールに渡すものを寝室に取りに行ってくるから…。」
そう言われて、セリカが先に食事室に向かっていたら、すぐにダニエルが追い付いてきた。
「あったの?」
「ん、何が?」
「コールに渡す物よ。」
「ああ…バッチリ持って来たよ。」
そのわりには、ダニエルは手ぶらだ。
それにどこか挙動不審にも見える。
昼食はメインがナスとベーコンを使ったトマトソース味のパスタだった。
セリカが好きな具材の組合わせなので、とても嬉しい。
雨に足止めされている憂鬱も晴れていくようだ。
最後に出てきたデザートが豪華だった。
5種類のケーキがあって、どれを何個とってもいいらしい。
セリカはチョコレートケーキとピーチパイを選んだ。
ホクホクとした心持ちで、ケーキを食べようとしたら、ダニエルが咳ばらいをして話しかけてきた。
「セリカ…その…。」
「何?」
「…誕生日おめでとう。」
「え? 知ってたの?!」
朝、何も言われなかったから、セリカの誕生日を知る人はいないのだと思っていた。
「これを。気に入るといいんだが…。」
ダニエルがポケットから出して渡してくれたのは、長四角の箱だった。
開けてみると、宝石が散りばめられた豪華なネックレスが入っていた。
「まぁ………………。」
こんなネックレス、見たことない。
― お姫様がドレスアップした時につけるようなものね。
重たい。
これ、本物の宝石みたい。
銀細工もみごとなのだが、星屑を散りばめたようなダイヤモンドのきらめきに意識が引き込まれてしまう。
これ、ダレーナの町長さんの奥さんがつけていたダイヤの何個分あるんだろう。
ちょっと怖いね。
「…気に入らないのか?」
ダニエルが心配そうに聞いて来る。
「とんでもない! ありがとう、ダニエル! とても素敵ね。…私には恐れ多くて驚いてたの。」
セリカが笑顔でお礼を言うと、ダニエルはホッと安堵したようだった。
これ、ダニエルは旅行中ずっと持ってきてくれてたのかな?
― どうもそのようね。
コールに渡すものだなんて…ごまかし方が可愛いわね。
なんだかほっこりして心がじんわりと温かくなる。
ありがとう、ダニエル。
宝石よりもそんなダニエルの心遣いが嬉しいよ。
◇◇◇
昼過ぎに雨が上がったので、コスモの街の名所である、隕石の落下場所を皆で観に行くことになった。
宿屋からほど近い公園の中に、その跡はあった。
進入禁止の縄が張られた向こうを覗いてみると、黒々とすり鉢状に大きな穴が空いている。
「すごいね。こんなに深いとは思わなかった。」
「その日は、星が次々と降って来たらしい。」
「雨よりも星が降る方がロマンチックだけど、こうやって本当に星が降ってきたら大変だね。」
「ハハ、確かにな。」
「セリカ様! 虹が出てます!」
キムの叫び声に空を見上げると、長い雨が上がったことを祝福するかのように、くっきりとした虹がかかっていた。
「うわぁ~。綺麗ねぇ。」
「吉兆だな。何かいいことがありそうだ。」
ダニエルと腕を組んで、歓迎のアーチのようにもみえる大きな虹をセリカはウキウキとしながら眺めていた。
まだ雷の音も聞こえるが、だいぶ小さな音になったので遠くへ行ったのかもしれない。
セリカたちは小人の村から帰って来て、また馬車に乗り、ホルコット子爵領にあるコスモの街までやって来た。
その日の夜は旅館で、ホースラディッシュを添えたやわらかいローストビーフを堪能した。
お昼ご飯が残念なスープだったので、みんなすごい食欲だった。
ダニエルとコールは赤ワインを飲み過ぎて、早々に潰れてしまったので、セリカは女中のキム、護衛のタンジェントやシータとたっぷりと話を楽しんだ。
ずっとセリカたちを悩ませてきたコルマ関連の話も出た。
この宿に着いてからダニエルにかかってきた念話で、新しい情報が入って来たとタンジェントが言っていた。
ケリー達を誘拐したスミスと前回セリカを誘拐しようとしたコルマは、2人とも行政執行大臣の部下だったらしく、昨日、警備局が重い腰をあげて王宮のガサ入れをしたようだ。
そこで思っても見なかったことに、行政執行大臣とオエンド国との癒着が発覚したらしい。
…あの人は、権力欲が強そうだったもんね。
ダニエルと行政執行大臣が言い合いになった会議のことを思い出す。
その件でイモづる式に逮捕された人が何人か出たようで、王宮は大騒ぎになっていると聞いた。
そんなきな臭い話だけではなく、タンジェントやシータの母国であるオディエ国の話もした。
食べ物の話を聞くだけでも、日本によく似ていると奏子が言っていた。
一度行ってみたいものである。
話をしている途中に気づいたのだが、タンジェントがシータを見る目がやわらかくなったような気がする。
指摘はしなかったが、セリカとしては望み通りの展開だ。
あの2人は何かのきっかけ次第なのよね~。
次の日は馬車に乗って観光に行く予定だったが、朝起きると雨が降っていたので、出発を断念した。
それから雨は一日中降り続き、2日目の今日は雷を伴うほどの土砂降りだ。
「ついてないなぁ~。」
― でもたまにはゆっくりできていいじゃない。
一日中、馬車に揺られるのも疲れるでしょ。
奏子、今日は何の日か知ってる?
― 7月3日
あら、そう言えば誕生日だったわね。
「昼食か?」
椅子に座って雑誌を読んでいたダニエルが、ノックの音に気づいて顔を上げた。
「侯爵閣下、奥様、お食事の準備ができました。」
キムの声に、セリカも応える。
「はーい。すぐに行きます。」
「シータと先に行ってくれ。ちょっとコールに渡すものを寝室に取りに行ってくるから…。」
そう言われて、セリカが先に食事室に向かっていたら、すぐにダニエルが追い付いてきた。
「あったの?」
「ん、何が?」
「コールに渡す物よ。」
「ああ…バッチリ持って来たよ。」
そのわりには、ダニエルは手ぶらだ。
それにどこか挙動不審にも見える。
昼食はメインがナスとベーコンを使ったトマトソース味のパスタだった。
セリカが好きな具材の組合わせなので、とても嬉しい。
雨に足止めされている憂鬱も晴れていくようだ。
最後に出てきたデザートが豪華だった。
5種類のケーキがあって、どれを何個とってもいいらしい。
セリカはチョコレートケーキとピーチパイを選んだ。
ホクホクとした心持ちで、ケーキを食べようとしたら、ダニエルが咳ばらいをして話しかけてきた。
「セリカ…その…。」
「何?」
「…誕生日おめでとう。」
「え? 知ってたの?!」
朝、何も言われなかったから、セリカの誕生日を知る人はいないのだと思っていた。
「これを。気に入るといいんだが…。」
ダニエルがポケットから出して渡してくれたのは、長四角の箱だった。
開けてみると、宝石が散りばめられた豪華なネックレスが入っていた。
「まぁ………………。」
こんなネックレス、見たことない。
― お姫様がドレスアップした時につけるようなものね。
重たい。
これ、本物の宝石みたい。
銀細工もみごとなのだが、星屑を散りばめたようなダイヤモンドのきらめきに意識が引き込まれてしまう。
これ、ダレーナの町長さんの奥さんがつけていたダイヤの何個分あるんだろう。
ちょっと怖いね。
「…気に入らないのか?」
ダニエルが心配そうに聞いて来る。
「とんでもない! ありがとう、ダニエル! とても素敵ね。…私には恐れ多くて驚いてたの。」
セリカが笑顔でお礼を言うと、ダニエルはホッと安堵したようだった。
これ、ダニエルは旅行中ずっと持ってきてくれてたのかな?
― どうもそのようね。
コールに渡すものだなんて…ごまかし方が可愛いわね。
なんだかほっこりして心がじんわりと温かくなる。
ありがとう、ダニエル。
宝石よりもそんなダニエルの心遣いが嬉しいよ。
◇◇◇
昼過ぎに雨が上がったので、コスモの街の名所である、隕石の落下場所を皆で観に行くことになった。
宿屋からほど近い公園の中に、その跡はあった。
進入禁止の縄が張られた向こうを覗いてみると、黒々とすり鉢状に大きな穴が空いている。
「すごいね。こんなに深いとは思わなかった。」
「その日は、星が次々と降って来たらしい。」
「雨よりも星が降る方がロマンチックだけど、こうやって本当に星が降ってきたら大変だね。」
「ハハ、確かにな。」
「セリカ様! 虹が出てます!」
キムの叫び声に空を見上げると、長い雨が上がったことを祝福するかのように、くっきりとした虹がかかっていた。
「うわぁ~。綺麗ねぇ。」
「吉兆だな。何かいいことがありそうだ。」
ダニエルと腕を組んで、歓迎のアーチのようにもみえる大きな虹をセリカはウキウキとしながら眺めていた。
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