星の子ども

秋野 木星

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第一章 NICU

生後15日目 9回の裏、一発大逆転?!

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昨日の病状説明を受けて、ラクー一家は皆で話し合っていました。

ラクーの家は、お風呂だけが共有の二世帯住宅になっています。
二階にミニキッチンやトイレ・洗面所・洗濯機置き場などもあるので、かなり独立して生活ができます。
そして以前も話しましたが、亡くなった義母のララのためにバリアフリーの設計で建てているので、リノが寝たきりの状態で帰って来ても、ほんの少しの改装をするだけですみそうでした。

リノが呼吸器をつけて家に帰って来るのなら、ラクーたち老夫婦が二階に住んで、若夫婦が一階に降りてくる?
そして車椅子バギーで庭のウッドデッキに出られるように、ウッドデッキを玄関のアプローチと繋げて、広いテラスにしてもらう?

そんなことまで話をしていました。←気が早い(笑)


今日は遠方から、ムコーの両親が出産のお祝いとお見舞いに駆けつけてくれます。

ネムルーとムコーが病院のリノに会いに行った後、ラクーはお客様を迎えるために家中の大掃除をしていたんです。そしてお土産を用意しようと、ムコーのお母さんが好きなワッフルを買いに出かけた時に、ふと思い立ちました。
ムコーとネムルーは、今日リノに産まれて初めて服を着せて、命名の紙と一緒に記念写真を撮ってくると言って病院へ行きました。
ということは、お祝いの写真と両家の両親が揃うのです。

これは「お七夜」をするべきじゃね?

当の本人はここにいませんが、リノが退院するのを待っていたら、「お七夜」じゃなくて「ももか」か「お食いはじめ」になりそうな気がしました。

そこで掃除の後に急遽スーパーに行って、お膳にするのに必要な食材を買い求めることにしたのです。
気分が沈んでいるこんな時こそ、パアッと皆で美味しいものを食べて笑い合おう! うん。
美味しいものをお腹いっぱい食べたら、元気百倍ですよね。

最近のスーパーは何でも揃っているので、短時間で簡単にお膳をこしらえるのに必要な物が集まりました。
まずはお寿司、それに煮物をするためのレンコン・コンニャク・タケノコ、お吸い物用に豆腐と三つ葉、カマボコも買ったのにこれは入れるのを忘れました。(爆)
焼きものをするための鯛、出来合いの茶わん蒸し(いつも買うものよりもちょっとお高め)、アルコールゼロのビール、おひたし用のほうれん草と、緑の色どりにインゲン、酢の物のサラダにマカロニサラダ。そしてお膳に華やかさを添える生花とみかん。

大買い物をして一旦家に帰り、ラクーが煮物やお吸い物を作っている間に、ダンナーはホールのケーキやワッフルを買いに行ってくれました。
なんとじいじ、今日はいつになくいい仕事をしました。(〃▽〃)
チョコレートのプレートに「リノちゃん、誕生おめでとう!」と書いてもらってきていたのです。
でかした!

ラクーがほとんどお膳を用意し終えた時に、ムコーとネムルーが帰って来ました。
二人ともいやにニコニコしています。

「お母さん、いい報告があります!」

なになに何なの?

「リノの呼吸器が外れました!!!」

は? え?

やった、マジ?! ばんざぁーーーーーーい!! \(^o^)/

なんということでしょう。
本当にこんなことがあるんでしょうか?

「まだ続けて外しておけるかどうかはわかりませんが、大きな一歩です。」
「リノは空気が読める子かも……あっちのじいじとばあばに、いいとこ見せたかったみたい。」

昨日の落ち込みから一転して、家族みんなの笑顔が爆発しました。


ムコーのお父さんとお母さんに、出産から始まったリノの病状経過を詳しく説明した後で、ムコーが撮ってきたリノの動画を、皆で見せてもらいました。
ムコーとネムルーの弾ける笑顔とは対照的な『涙目のリノ』が、小さな身体全体を使って一生懸命に呼吸をしていました。
しんどいね、リノ。
でもここが踏ん張りどころだよ!

がんばれがんばれ!
皆が応援してくれてるよ!

病院ではNICUのスタッフの皆さんが、リノのベッドの周りに集まって喜んでくれていました。
そして主治医の先生は「リノちゃんの呼吸器が外れた!」と会う人ごとに興奮して伝えてくださっていたそうです。
先生も昨日の説明を親にするのは、気が重かったんでしょうね。

多くの人たちに支えられて、リノはここまで回復してくれました。

本当にありがたい。
その一言につきますね。ε-(´∀`*)
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