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リベルの説明
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妖精のリベルが話していることは、ドルーとプリシラにはわからないらしい。
ドルーが言うには「リルリ、ルルルルル…。」というように羽音を擦り合わせて、微かに鈴を鳴らしているように聞こえるそうだ。
リベルにそのことを聞くと、波長や生態リズムが同じじゃないと言葉が聞き取れないのだと言っていた。
「あたしは守護妖精だもん。トティと同じ感性じゃないと聞き取れるわけないでしょ!」
わけないって言われてもね…知らないし。
リベルとゆっくり話をしたいので、トティは自室に戻ることにした。リベルは妖精の光の粉をまき散らしながら、トティの肩の辺りを飛んでついて来ている。トティが机の前の椅子に腰かけると、リベルは机の上に置いてあった分厚い辞書の上に腰かけて、羽を震わせながら足をブラブラさせた。
トティは最初に一番気になっていたことを、聞いてみることにした。
「おばあちゃんはどうしてリベルをここに寄越したのかな?」
「トティが外国に行くことになって心配だったこともあるけど、ムーンランドの泉があたしを産んだことで、変化の時が来てることがわかったんだよ。」
「変化の時?」
「うん。ポーラも結婚する前と、トティを産む時には、守護妖精が派遣されてたはずだよ。」
ポーラって、母様のことよね。
でもリベルが言った二回とも、私はまだ生まれてないから知らないし…。
「母様の例で考えると、私も結婚間近ということなのかな?」
「そんなこと知らない。大怪我をする時や死ぬ時かもしれないよ。守護がものすごく必要な変化の時にあたしたちは呼ばれるから。」
「ちょっとー、それって怖いじゃない。慣れない外国生活という変化の時なんじゃないかな? 守護が必要よね。」
「そうかもねー。」
おいおい。
この守護妖精って、本当に頼りになるのかな?
若干の不安を覚えながらも、否応なく妖精のリベルと一緒に生活をすることになってしまったトティだった。
◇◇◇
翌朝、スズメの声ならずリベルのお腹が空いたコールで、トティは朝早くに叩き起こされた。
「窓を早く開けて! 朝露がなくなっちゃうじゃないか。」
妖精というものは朝露と花の蜜が必要なのだそうだ。花が少ない冬場にはミルクに蜂蜜をといたものでもいいらしい。
…結構手間がかかる。ペットを拾ったみたいだな。
トティが一人でも着ることが出来るドレスを着て、学院へ行く準備をしていると、ノックの音がしてナサリーが入って来た。
「んまぁ、トティ嬢ちゃまがもう起きてらっしゃるなんて?!」
「ナサリー、おはよう。髪のセットをお願い。」
「おはようございます。まだ九月の始めなんですから、雪を降らせないでくださいよ。」
「もうっ。私だってたまには早く起きるもん。…でもこれからは、毎日たたき起こされそうだけど。」
「え?」
ナサリーにリベルのことを話すと、途端に懐かしそうな顔になった。
「まぁ…ポーラ様の守護妖精はクミンという名前でしたよ。リリリリって話をしてね。私らには何を言ってるのかさっぱりわかりませんでしたが、ポーラ様はそれは嬉しそうに妖精とお話をされてました。」
そうか、ナサリーは乳母だったんだから私が生まれた時のことを知ってたのね。意外なところに妖精のことを知ってる人がいたよ。
授業に出るために、ドルーやプリシラと一緒に部屋を出て、芝生の道を学院の建物の方へ歩いていると、男女の二人連れに声をかけられた。
「ごきげんよう、ドルー様。私たちもご一緒させていただいてよろしいかしら? ドルー様は親戚ですから彼のことはもちろんご存知ですよね。プリシラ様、トリニティ皇女様、こちら、パーシヴァル・ディロン様です。東部帯のディロン伯爵のご嫡男ですわ。彼も新入生ですの。」
「パーシヴァル・ディロンです。お見知りおきを。」
傍らのちょっと太めの気どった男は挨拶しながら、トティの方を値踏みするようにジロジロと見てきた。
…………。
なんだか押しの強そうな二人組だ。
プリシラは、軽く会釈をしただけで相手にしていない。ドルーは鼻の穴を膨らませて今にも怒り出しそうに見える。
そこへ頭の上の方から声が降ってきた。
「やぁミランダ、早いね。ちょっと妹たちに内輪の話があるから、ディロン君と一緒に先に行っててくれるかな?」
「マイケル様……。」
ズケズケと話しかけていたミランダと呼ばれた女の人は、後ろから来た身体の大きな男の人を見てポッと顔を赤らめると、パーシヴァル・ディロンを促して去って行った。
周りに人がいなくなってから、身体の大きな男の人は声を殺してクックックと笑い出した。
「入学早々、ミランダ・マーロウに捕まるとは災難だったな。」
「助かったわ、兄様。朝っぱらからパーシヴァルの厭味ったらしい顔を見るなんて、本当についてない。」
「ククッ、二年間同じクラスなんだから覚悟ができていいじゃないか。」
「はぁ~、やだやだ、出来る限り関わりたくないなぁ。あ、トティ…こちらうちの二番目の兄のマイケル・ラザフォード。兄様、こちらオディエ国のトリニティ皇女様よ。ルームメイトなの。」
ドルーが、状況がよくわかっていないトティに気づいて、お兄様を紹介してくれた。
「ああ、プリシラの婚約者の…。」
マイケルは大柄な身体をビシッと伸ばすと、とても綺麗なお辞儀をしてトティに挨拶をしてくれた。
「マイケル・ラザフォードと申します。拝謁に預かり光栄です。」
これが愉快なマイケルとの最初の出会いだった。
ドルーが言うには「リルリ、ルルルルル…。」というように羽音を擦り合わせて、微かに鈴を鳴らしているように聞こえるそうだ。
リベルにそのことを聞くと、波長や生態リズムが同じじゃないと言葉が聞き取れないのだと言っていた。
「あたしは守護妖精だもん。トティと同じ感性じゃないと聞き取れるわけないでしょ!」
わけないって言われてもね…知らないし。
リベルとゆっくり話をしたいので、トティは自室に戻ることにした。リベルは妖精の光の粉をまき散らしながら、トティの肩の辺りを飛んでついて来ている。トティが机の前の椅子に腰かけると、リベルは机の上に置いてあった分厚い辞書の上に腰かけて、羽を震わせながら足をブラブラさせた。
トティは最初に一番気になっていたことを、聞いてみることにした。
「おばあちゃんはどうしてリベルをここに寄越したのかな?」
「トティが外国に行くことになって心配だったこともあるけど、ムーンランドの泉があたしを産んだことで、変化の時が来てることがわかったんだよ。」
「変化の時?」
「うん。ポーラも結婚する前と、トティを産む時には、守護妖精が派遣されてたはずだよ。」
ポーラって、母様のことよね。
でもリベルが言った二回とも、私はまだ生まれてないから知らないし…。
「母様の例で考えると、私も結婚間近ということなのかな?」
「そんなこと知らない。大怪我をする時や死ぬ時かもしれないよ。守護がものすごく必要な変化の時にあたしたちは呼ばれるから。」
「ちょっとー、それって怖いじゃない。慣れない外国生活という変化の時なんじゃないかな? 守護が必要よね。」
「そうかもねー。」
おいおい。
この守護妖精って、本当に頼りになるのかな?
若干の不安を覚えながらも、否応なく妖精のリベルと一緒に生活をすることになってしまったトティだった。
◇◇◇
翌朝、スズメの声ならずリベルのお腹が空いたコールで、トティは朝早くに叩き起こされた。
「窓を早く開けて! 朝露がなくなっちゃうじゃないか。」
妖精というものは朝露と花の蜜が必要なのだそうだ。花が少ない冬場にはミルクに蜂蜜をといたものでもいいらしい。
…結構手間がかかる。ペットを拾ったみたいだな。
トティが一人でも着ることが出来るドレスを着て、学院へ行く準備をしていると、ノックの音がしてナサリーが入って来た。
「んまぁ、トティ嬢ちゃまがもう起きてらっしゃるなんて?!」
「ナサリー、おはよう。髪のセットをお願い。」
「おはようございます。まだ九月の始めなんですから、雪を降らせないでくださいよ。」
「もうっ。私だってたまには早く起きるもん。…でもこれからは、毎日たたき起こされそうだけど。」
「え?」
ナサリーにリベルのことを話すと、途端に懐かしそうな顔になった。
「まぁ…ポーラ様の守護妖精はクミンという名前でしたよ。リリリリって話をしてね。私らには何を言ってるのかさっぱりわかりませんでしたが、ポーラ様はそれは嬉しそうに妖精とお話をされてました。」
そうか、ナサリーは乳母だったんだから私が生まれた時のことを知ってたのね。意外なところに妖精のことを知ってる人がいたよ。
授業に出るために、ドルーやプリシラと一緒に部屋を出て、芝生の道を学院の建物の方へ歩いていると、男女の二人連れに声をかけられた。
「ごきげんよう、ドルー様。私たちもご一緒させていただいてよろしいかしら? ドルー様は親戚ですから彼のことはもちろんご存知ですよね。プリシラ様、トリニティ皇女様、こちら、パーシヴァル・ディロン様です。東部帯のディロン伯爵のご嫡男ですわ。彼も新入生ですの。」
「パーシヴァル・ディロンです。お見知りおきを。」
傍らのちょっと太めの気どった男は挨拶しながら、トティの方を値踏みするようにジロジロと見てきた。
…………。
なんだか押しの強そうな二人組だ。
プリシラは、軽く会釈をしただけで相手にしていない。ドルーは鼻の穴を膨らませて今にも怒り出しそうに見える。
そこへ頭の上の方から声が降ってきた。
「やぁミランダ、早いね。ちょっと妹たちに内輪の話があるから、ディロン君と一緒に先に行っててくれるかな?」
「マイケル様……。」
ズケズケと話しかけていたミランダと呼ばれた女の人は、後ろから来た身体の大きな男の人を見てポッと顔を赤らめると、パーシヴァル・ディロンを促して去って行った。
周りに人がいなくなってから、身体の大きな男の人は声を殺してクックックと笑い出した。
「入学早々、ミランダ・マーロウに捕まるとは災難だったな。」
「助かったわ、兄様。朝っぱらからパーシヴァルの厭味ったらしい顔を見るなんて、本当についてない。」
「ククッ、二年間同じクラスなんだから覚悟ができていいじゃないか。」
「はぁ~、やだやだ、出来る限り関わりたくないなぁ。あ、トティ…こちらうちの二番目の兄のマイケル・ラザフォード。兄様、こちらオディエ国のトリニティ皇女様よ。ルームメイトなの。」
ドルーが、状況がよくわかっていないトティに気づいて、お兄様を紹介してくれた。
「ああ、プリシラの婚約者の…。」
マイケルは大柄な身体をビシッと伸ばすと、とても綺麗なお辞儀をしてトティに挨拶をしてくれた。
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