魔法力0の騎士

犬威

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第一章 ガルディア都市

模擬戦

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 第一部隊のある部屋に到着し、その冷たいドアノブをひねり中に入る。


「おかえりなさい兄様、会議の方は終わったのですね」

「ああ」

「なにかありました? 顔色が悪いようですけど……?」


 部屋に入ると一人セレスが椅子に座り、本を読んでいた。
 この勇者召喚の話は隊員であるセレス達には話す必要があるが、犠牲がでることは極力話さない方がいいだろう。


「いや、大丈夫だよちょっと食べすぎてしまってね! それと会議の内容を伝える必要があるから他の三人はどこに行ったかわかるか?」

「三人は近くの道具店に足らない道具を買いにいってるところですね、もう少ししたら帰ってきますよ」

「そうか、なら探しに行かなくても大丈夫だな!」

「……兄様…… やはり会議でなにかありましたか? いつもの兄様らしくありませんよ」


 どうにも嘘をつくのが昔から苦手な私は、セレスにはまるわかりなようだ……


「うっ!? やはりセレスはよくみているのだな……」

「当たり前です。 兄様は嘘が下手すぎるのです、まあその様子をみるとそのことは話してはくれないのですね……」


 しゅんと暗くなるセレスがパタンと読んでいた本を閉じる。 そう、この話はたとえセレスであっても話してはならない。


「すまないな機密事項なんだ…… いくら家族であるセレスであっても言えない内容なんだ……」

「わかっております。 兄様にも立場がありますものね、皆を集める理由は聞いてもいいですか?」

「それなら大丈夫だ。 今回また新しくブレインガーディアンの部隊が再編制されるからその報告だね」

「部隊の再編制…… なるほど……」

 戸惑う気持ちもわかる。 セレスはようやく慣れて来たばかりだからな……
 ふいに考え込んだセレスの背後のドアが開く。

「セレス~たっだいまー」

「……それであそこの道具屋は品物は昔から少ないよな」

「そうっす。 もう少し色々置いてほしいっすよね」


 パトラがご機嫌で入り、その後ろにカナンとジャスティンが話しながら入って来た。


「あ! たいちょー会議お疲れ様です!」

「おかえりなさいっす!」

「おかえりなさい、会議はなんでした?」

「ああ、今からそのことを話すよ」


 長めのテーブルに皆が席に着いたのを確認して話し始めた。


「今回の会議の内容は、ブレインガーディアンの部隊の再編制の話だ、これはとある力を持った方が我々に協力をしてくれるということで、私たちは騎士団ならではのチームプレーなどを協力者の方に伝授するために、その協力者の方も交えて訓練することを前提とした部隊編成を行うと言っていた」

「ほーなるほどっす」

「まぁ、多分私たちの隊はバランスがとれているという報告もしてあるから、このままの可能性が高いな」

多分トリシアさんの考えは偏った編成を減らすための案だと思う。 盾役、攻撃役、援護、回復とバランスよく第一部隊は構成されている。


「その力ある協力者は前線にいくのですか?」

「いずれはそうなる。なので私達騎士団でバックアップをとる形に決まったんだ。部隊は交代制で訓練することになるから準備とかちゃんとするようにな」

「たいちょー! その協力者の方の訓練はいつから始まるんですか?」

「まあ色々手続きとかの関係もあるだろうから四日後以降だと思う、詳しい話がでたらまた連絡するからな」


 嘘は言ってないが完全に本当の事は言っていない。
 召喚の儀は三日後だが、色々と異世界から来た人が気持ちの整理などをつけるのに少しの時間がかかるのはたしかだ。


「さて、じゃあある程度休憩もすんだことだし、今日は軽い模擬戦でもするか!」


 今日の任務は会議のこともあってか午前中だけで終わる内容であったため、訓練場で連携や魔法の訓練をするのが普通である。 だが三日後のことを考えると模擬戦をしていたほうがいい気がしていた。

その方がいざという時にお互いにフォローし合えるからな。


「チーム分けはどうするっすか?」

「私一人対四人で行おう」

「た…… 隊長も混ざるんですね……」

「ただ制限をつけて戦うことにするから、一つは私は木刀と盾しか使わない、二つ目は魔法職であるセレスは魔法回数を三回までとする、三つ目は勝敗は相手が気絶か降参で行うよ」

「魔法回数三回ですか…… 使いどころを考えないといけませんね……」

「たいちょー魔法での強化はありですかね?」

「ありで大丈夫だよ」

「おお、それなら勝ち目が見えてきました! ちなみに私たちが勝ったらおいしいご飯をおごってくださいね! たいちょー!」

「パトラは現金なやつだな……」


 カナンがあきれて笑うが内心は楽しそうである。


「よっしゃ! 隊長を倒すっすよ!」

「じゃあ作戦を考えて終わったら訓練場に集合するように」

「「「「はいっ!」」」」

 いまはこういったことで気を紛らわすしかないか……



 ■ ■ ■ ■



 騎士団の地下には訓練場があり、魔法も放てる大きな空間がある。 この場にいる人達は騎士団の人達がほとんどでみな訓練をしたり模擬戦をしたりしている。

カルマンさんは遠目でもよくわかるな……
ここを管理しているカルマンさんの姿を見つけ、手を振る。

「カルマンさん、ここを少し模擬戦でつかってもいいですか?」

「おお! アリアか! いいぞ模擬戦するんだな! おーい!!ちょっとそこ!! 今からアリア達が模擬戦すっから避けてろーーー!!!」


 カルマンさんが大きな声で誘導し、訓練場のスペースを作ってくれる。


「ほらよ! 思う存分やっちゃってくれていいぜ! ガハハハ! おもしれえから俺が審判してやるよ」

「ありがとうございます! カルマンさん!」


 距離にして二百メートルほど離れた位置に、私一人で木刀と盾を構える。 向こう側にはパトラが弓を構え、カナンが槍を持ち少し前に、さらに前にジャスティンが剣と盾を持って構えている。セレスは一番後ろでサポートに回るような感じだ。


「んじゃ準備はいいかぁ? 始めるぞ」


 カァン! というカルマンさんの武器を打ち鳴らす甲高い音が聞こえて私は走り出す。


「コンセントレイト! ホークアイ! オーバーパワー!」


 カナン、ジャスティン、パトラの三つの補助魔法が連続で紡がれる。 オーバーパワーは筋力強化魔法だったかな、三人が薄く赤い光をまとう。


「スピーダー! ディフェンダー!」


 カナンが素早さと防御力を上げ、ジャスティンが突進してくる。


「っ!! 隊長早すぎ!!」


 まだ色々と作戦があったのだろう、思ったよりも早く到達した私に驚いたパトラが、慌てて三連射の弓を射る

 放たれた矢は正確に急所を狙う。 だがあまりにも近すぎる為に正直すぎる狙いは避けることも容易い。 それらを半身でかわし走り進む。


「なっ!! この距離で外した!?」


 パトラが驚愕きょうがくし声をもらす。


「これは避けれないっすよ!!」


 ジャスティンが盾を構え矢を避けた瞬間を狙いタックルしてきた。
 盾同士がぶつかる甲高い音がなり、吹っ飛ばされていたのは筋力強化しているジャスティンのほうだった。


「ぐっ!! うう」


 はじかれたジャスティンは大きく態勢を崩し、のけぞる形になっている。


「それも読めている!」


 よろけたジャスティンの後ろに反撃の隙をうかがっていたカナンもろとも、タックルで吹き飛ばそうと一歩踏み込もうとした時に、とてつもない悪寒を感じその場から飛びのく。


「ストーン」


 さっきまでいた場所に地面から巨大な岩が隆起し、目の前をかすめていった。
 その岩は天井付近まで隆起し、激しい音を立てて砕け散る。


「っと危ない危ない! これでセレスの魔法はあと二回だよ」


 悔しそうな顔をするセレスはタイミングを的確に練っていたのだろう、あと一歩踏み出していれば巨大な岩に突き上げられるところだった。
 
 あっぶないほんとギリギリだった。
 魔法が発動する瞬間の空気、セレスのタイミングを伺う視線、それを読めていなかったら躱すのは困難だった。

 よろけていたジャステインもカナンも持ち直し、再び距離を開ける。
 パトラは弓を構えたままタイミングをうかがっている。


「デコイ」


 ジャスティンが注意を引く魔法をかけるが、この魔法は実力がある程度低い場合や魔物相手でないと効果を十分に発揮できない、だが今回は……
 あえて使っているんだな? ジャスティン。


 ジャスティンに向けて再び走り寄るとカナンは左にそれて槍を構え魔法を唱えた。


「スプラッシュエレメント」


 カナンの槍に水属性の魔法が付加される。


「アクアネイル!」


 三連撃の水属性の槍から放たれる斬撃は、デコイにかかった盲目となっているの者には効果は絶大であろう。

デコイにかかっていればの話だが……

 ジャスティンの足をスライディングの要領で蹴り倒し、後ろにそのまま回り込む。 土を切る音が置き去りになり、連携して滑り込んだところを狙ったパトラの一撃を剣で叩き落し、ジャスティンの首元の鎧をつかんでパトラに投げ飛ばす。


「うけとれっ!!」

「なっ! ああああああああ!!」

「え!? ちょ嘘!! きゃぁあああ!!」

「シールド!!」

 バァアアンッ!!!!

「ぐぇっ!!」

 パトラに当たる直前にセレスがシールドを張ったのだろう。 透明な厚みのある壁がパトラの前にできていて、投げ飛ばされぶつかったジャスティンは壁に叩きつけられた衝撃で短い悲鳴をあげ、そのまま地面に落ちた。


「あと一回だな」

「兄様のどこにそんな力があるのか毎回不思議でならないです」

「あ…… ありがどおおセレスぅう」

「えっ! ちょっとまってまだおわってないから」


 半泣きで感謝をのべるパトラに慌てるセレス、今が好機かな……


「うぉおおおお!アクアショット!!」


 カナンがすかさず反撃に転じて水属性の突きの弾丸を放ってくる。構えた盾を投げつけ弾丸を相殺そうさいし一気に足に力をため一歩踏み込む。
 地面の土がえぐれ、土砂を飛ばしながら自身が弾丸のようなスピードでカナンではなく、セレスの前に接近する。

狙っていたよな、それはあの森で見たライトニングなんだろ?


「っつ!?!!!!」


 とっさに後ろにセレスが下がるも間に合わず、私の剣の間合いに入る。


「すまないセレス私の勝ちだ」


 攻撃はせず首元に剣を置くとふいにセレスがかすんだ。


「油断大敵です兄様。」


 後ろから羽交はがい絞めにされ首元にナイフをあてられる。


「これでチェックメイトです」

「ふぅ…… 降参だ。 いつから偽物だった?」

「正確にいうと最初からです。 最初からひとつミラージュを使っていました。」


 ミラージュは鏡写しになる幻覚魔法だが…… セレスの魔力だとどんな効果になっているのかは想像が及ばない。

 本当にそこにセレスがいたと最初に思い込まされていた。
 
それにしてもこの体制は色々と不味いから…… セレス……


「これはちょっとした賭けでしたからうまくいって良かったです」


 この魔法も欠点があるのだろう。私は見つけることはできなかったが。


「じゃあ勝者は第一部隊隊員達だな! おいしいもんたくさんおごってもらえよ! ガハハッ!!」

「約束ですよーたいちょー!」


パトラが嬉しそうに駆け寄ってくる。 


「わかったわかった! ほらカナンとジャステインも連れて一回戻るぞ!」

「うーわ、ジャスティンボロボロ」

「超痛いっすよ隊長」


 そりゃあシールドに顔から突っ込んだら痛いさ。


「これでも加減はしてある大丈夫だ!」

「大丈夫じゃないっすー」


 ボロボロのジャスティンをかつぎ訓練場をあとにする第一部隊一行であった。


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