魔法力0の騎士

犬威

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第一章 ガルディア都市

side セレス=シュタイン ~お出かけ1~

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朝寝苦しさで目が覚めると目の前に大きなふくらみがあった。


「っぷ、苦しっ」

「んっ」


 そのふくらみを押しのけ上体を起こす。


「パトラ…寝相悪すぎじゃない…」


 昨日一緒に寝たパトラは普通の起こし方では絶対に起きない。
 今はベットの上で幸せそうな顔で寝ている。目元が薄っすらと濡れた跡があり、どうやら私を抱いて眠りについていたようだ。
 昨日の話を聞き心配になったセレスはパトラを家に泊め、明日は一緒に出掛けようとの約束をしていたのだ。


「ん~~~~」


 背筋をのばし、大きく息を吐く。まだ朝は早い時間らしく部屋に入る日差しは弱い、この時間に起きることに毎日慣れてしまったセレスはもう少し日が昇るまでパトラを起こさずにすることにした。


「休みの日くらいはもう少し寝かせてあげようっと」


 ベットから降り、見慣れた自分の部屋を見回し、窓を開け空気の入れ替えをする。
 心地よい風が部屋の中を満たし、充満していた籠った空気を押し出す、それだけですっきりと頭が冴えわたってくる。
 クローゼットの前に行きタオルと今日着る用の服を引っ張り出す。
 荷物を籠に入れ、脱衣所のある部屋まで歩いていく。

 脱衣所にたどり着いた私は来ていた寝間着を脱ぎ去り、浴槽へとむかう。この時間は静かなもので流れる水の音が響き、その周囲の静かさを物語ってくれる。
 シャワーを浴び、最初に出た水に少しびっくりしつつも徐々に暖かくなるお湯をしっかりと体にかけ、洗っていく。


「パトラが元気になる為にどこに行こうかな…」


 体を洗いながら今日の計画を考えていく、ショッピングにカフェ巡り、この年の女の子なら知っている有名な場所をつらつらと考えていた。
 いくつか案がまとまり、泡を洗い流して浴槽を後にし、魔法で瞬時に髪を乾かす。


「うーん、もうこの時期だと暑いかなぁ」


 黒いお気に入りのストッキングに足を通しながら考える。季節はすでに夏に入ろうとしてる時期日中日が昇り切れば暑い可能性がある。


「んーまぁいっかな冷えたら困るからね」


 私は昔から寒さに弱く、体調を崩しがちだった。黒いストッキングを履き、その上からキャメルのペンシルスカートを履く、先端がフリルになっていて可愛いお気に入りのスカートだ。
 金色のベルトを結び、上は何にしようか持ってきた服を眺める。


「上はこれにしようかな」


 私が選んだのはネイビーのニットでこれを上から被るように着る。


「うん、いい感じかな」


 鏡の前に立ちくるくると回ってみる。
 あとは出かける前に黒い大きな帽子をかぶっていこう、そんなことを考え脱衣所のドアを開けるとその前をメイド姿のフリーシアさんが薄い布をもってパタパタと走っていた。


「あ!セレス様、おはようございます」

「おはよう、フリーシアさん。どうしたの?朝から急いでるようだけど」

「ええ、玄関のソファーでアリア様が寝ていらしたので掛けるものを持ってきていたのです」

「兄様が!?」

「ただの疲労に近い状態だと思います安心してください」

「よかった、私もいきます」

「わかりました、では行きましょう」


 玄関のほうにたどり着くとそこには本当にソファーに仰向けに寝ている兄様がいました。
 来ている服は昨日のまま、どうやら昨日は夜遅くまで走り回っていたに違いありませんね、もしかしたら朝方までかかっていたのかもしれません。
 ふと顔を見ると寝顔がとても可愛らしく心をときめかけされました。


「可愛い寝顔ですねぇ」


 フリーシアさんはニヤニヤと私を見て言ってくる。どうやら顔が緩んでいたらしい、気を付けないと!


「そ、そんなことはありません、まったく兄様はこんなとこにいては風邪をひいてしまいますよ」


 フリーシアさんから薄い布を受け取り兄様に掛ける。


「セレス様もう少しで食事の用意ができますのでこのままダイニングのほうへ」

「ちょっと友人を起こしてから行くわ、ありがとう」

「わかりました」


 フリーシアさんはぺこりと一礼してダイニングの方へ歩いて行った。
 私もパトラを起こしに戻らなきゃ、今日はすぐ起きてくれるといいんだけどね。


 部屋に戻ると驚いたことにパトラが起きていて既に着替えを済ませていた。


「え!?パトラ起きたの!?」

「あ!セレス、おはよう、うんなんか自然に目が覚めたよ。吹き抜ける風が気持ちよかったからかな?すんなり起きれたよ」

「珍しいというか初めてじゃない?」

「あはは、初めてかも」


 なにかしらの心境の変化があったのだろう、パトラの顔はうれいをおびていた。


「顔を洗ったら朝食を食べにいきましょうその後は街で買い物をしましょう」

「おお!いいねいこういこう!」


 パトラはぱあっと明るくなりタオルを持って洗面所まで歩いて行った。


 ーーーー
 ーー
 ー

 朝食を食べ終えた私たちは出かける準備をして玄関までやってきていた。

 パトラは今日は黒のショートパンツにカーキ色のジャケット、インナーは白い花柄のシャツを着こんでいる足元は素肌がよく見えるブーツを履いてカツカツと音を立てて歩いていく。


「まずは大通りにある雑貨屋に行ってみましょう」

「ああ、あそこの新しくできたとこだ!いこういこ…ん?あれは…たいちょー?」

「そうだった!?」


 なにかに気付いたパトラは一目散に兄様が寝ているところへ駆けていく。


「ずいぶんと変なとこで寝てるねたいちょー」

「パトラ!起こさないであげて」

「珍しいほど無防備ー、セレス今ならちゅーできるんじゃない?」

「な!?!?なにを!?言ってるんです!?」


 名案だとばかりにパトラはぐいぐいと押してくる、や!待って待って、心の準備が!


「ほらほら~既成事実つくっちゃいなよ~」


 ニヤニヤと楽しそうに背中を押す、元気になって嬉しいけどそれとこれとは話が別!!


「だ、ダメです!!今は!」

「ちえー、友人としては友達の恋路を応援しているのになー」

「こんな反則みたいなことはできません!まったく、行きますよ!」


 パトラの手を引き、そのまま玄関を後にする、玄関を出る瞬間ちらりと兄様を見てその可愛らしい寝顔を見るとちょっとやっておけばよかったかなと思ってしまうのであった。



 都市は中心街に行けば行くほど賑やかになっていく。それはここの都市でも言えることで、まだお昼にもなっていないというのにこの中心街の大通りは人で溢れかえっている。


「っとと、パトラ!あまり先行して進みすぎないでくださいね」

「大丈夫大丈夫!あっと、見えてきたね大型の雑貨屋」


 テラントランと大きく書かれた看板がでかでかと入り口に張り出され、セール中とさらにテープでいたるところに張られている。
 ここが最近できた大型の雑貨屋『テラントラン』である。
 置いてあるものは様々な日用品や雑貨、魔導書などその種類は数多にも及ぶ。
 建物自体も大きくギガント向けの商品なんかも置いてあるのが特徴的だ。それにしてもこのぬいぐるみはでかすぎませんか?私の身長よりも大きいのですが…
 そんなことを考えていると横からパトラではない聞いたことのある声が聞こえてきた。


「ほらこの編んである人形なんてアルフレアが好きそうだと思うのだけど」

「ば、バカいうんじゃないよ、もうそういうのは止めたんだ。でもちょっと可愛いと思うけど!」


 綺麗な色の編んである人形を見せながら楽しそうに笑いあうアルフレアさんとカナリアさんがそこにはいた。


「セレス~見てよ見てよ!ん!?」

「あれ?あなた達はアリアの所の」

「なっ!?セレスちゃんとパトラちゃんじゃないか!」

「どうもお疲れ様です、アルフレアさん、カナリアさん今日はお二人とも非番なのですか?」

「ええ、たまたま今回アルフレアと休みが被ってね、今日は彼女が前からずっと来てみたいといっていたここに来たのよ」

「ば、バカ!?そんなに来たいって言ってないだろ!話を盛るんじゃないよ」


 アルフレアさんがこういう可愛い感じの雑貨店を好むのはたしかに意外です。今日の姿のパンクっぽい黒のジャケットにパンツスーツ姿はそんなイメージを全然含んでいないんですもの。
 カナリアさんは今日はいつもの黒いドレス姿ではなく、白いワンピース姿だ髪型も今日はアップのポニーテール姿でとても可愛らしい。


「お二人は仲がいいんですね~」


 パトラがひょこっと私の横から話しかける。どうやらアルフレアさんを怖がっているようだ。


「ええ、結構アルフレアとは長い付き合いでね、よく色々なとこに行くのよ、あ!パトラちゃん怖がらなくても大丈夫よ、顔は怖いけど内面はすごく可愛い女の子だからアルフレアは」

「カナリア!!」


 アルフレアさんは見た目は怖いというよりは美人なクールな顔立ちの女性だ。ギガント種の女性で最近までは郊外で活動していて勇者召喚のおりに戻ってきて今回休日を過ごしているらしい。


「引き留めてわるかったな、まだ君たちは来たばかりなんだろ?アタシ達はそろそろ次のとこにいくから、アリアによろしく言っといておくれよ」

「はい、伝えておきます」

「それではごきげんよう」


 てくてくと歩いていく二人を見送るとパトラが話しかけてきた。


「意外な組み合わせだったね~」

「本当に仲がいいんですねアルフレアさんとカナリアさんは、よく騎士団内でも一緒に話してるのを見ますよ」

「え!?そうなの?知らなかった」

「パトラはおしゃべりに夢中になってますからね…」

「そ…そんなことないもん」


 ぷくっと頬を膨らますパトラはなんだかとても可愛らしかった。

 店内を色々見て回り、可愛い商品を眺めてみたり、これは何に使うのだろう?おおきなブヨブヨした柔らかい筒をさわってみたりと楽しい時間を過ごした。
 そろそろお昼時になろうとしたところでパトラから声がかかる。


「そろそろお腹が空いてきたね!この近くに美味しいオムライス屋さんがあるんだよ!そこに行こう!!」

「パトラはなんでもこのあたりのことを知っていますね」


 パトラはその性格も相まってか多くの知り合いがいて、こういった情報はいつも最新のものを次々見つけてくる。


「ふふーん、まぁね!私にまっかせなさーい」


 意気揚々とお店を後にした私たちはその噂になっているオムライス屋さんに向かうのであった。

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