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第一章 ガルディア都市
side オクムラタダシ
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僕は走る。 大きな買い物袋を持って路地裏の人気の少ない所に。
「おい、遅ぇぞ!早く来いっていっただろ!」
「い、いやゴメン結構急いで買って持ってきたんだけど……」
「チッ、まぁいい、あ! 金はお前持ちだからな」
「え!? い、いやそれは困るよ」
「口答えしてんじゃねぇよ!!」
「うっ!?」
右の頬を思いっきり殴られて僕は地面に突き飛ばされた。 この路地裏はこいつらのいつものたまり場だ。
「ぐぅうう……」
「じゃまた明日も頼むわ、奥村クンあ、あと今月分の上納金もよろしくな! バックレたらわかるよな?」
「うっ、は、はい……」
僕は殴られた頬を抑え力なく立ち上がる。 口の中が切れているようで口の中は血の味がしている。 殴られた頬もじんじんしていてかなり痛い。
「じゃ…… 帰ってよーし、またな奥村クン」
「じゃ…… じゃあ」
後ろから大きな笑い声が聞こえてくるが、僕は気にせず歩き続ける。
路地を出ると一人のショートカットの黒髪の少女が不機嫌そうな顔で僕の行く手を遮る。
「なんでいつもいいなりになってんの!!」
「優希…… 仕方ないじゃないか…… 僕は弱いから……」
頬は腫れ、喋るのもつらい、彼女、田村優希は僕の昔からの幼馴染だ。 僕は昔からなにかといじめられてきていた。 それはもう慣れっこであったが最近はエスカレートしてきていてしょっちゅう僕は呼び出され殴られている。
それをいつも優希は心配そうにしていたが、今日はいつにもまして怒っているな。
「そんなんだからいつもいじめられてるんでしょ! もっとしゃきっとしなさいよ!」
「そ、そんなこと言われても、む無理だよ」
「顔も殴られて、あんたは悔しくないの!?」
「く、悔しくないわけないじゃないか!すごい痛いし、断っても殴られるし、でも、僕には力がない ……んだ」
目から涙が溢れる。 かっこ悪いな僕…… 優希の前で泣くなんて、視線は地面を向いたまま優希の顔を見れないでいる。
「私のほうが悔しいわよ!!」
なんで!! と言おうとしてふと顔を上げると優希が大粒の涙を流して僕を見ていた。
「私は毎回傷つくアンタを見て何も思わなかったと思ってるの!?」
言葉に詰まる。 正義感の強い優希のことだそれが許せないのだろう。
「私が…… 女だから…… 力が無いから…… アンタを助けてあげられない!」
「ぼ、僕は、そんなこと優希に頼んでなんかない!」
「バカ!! 頼まれてなくても私は助けたいの!」
「でも、優希があいつらに危害を加えるのは止めてくれ!! 殴られるのは僕だけでいいんだ…… 優希を巻き込みたくない……」
「それじゃあ何の解決もならないじゃない!!」
「いいんだ、僕なら耐えられる、そして今後はなんとかするよ」
「カッコつけちゃって、本当だからね、なんとか考えてよ!」
「うん……」
「じゃあとりあえず私の家に行くわよ」
「えっ!?」
「え!? じゃないでしょ、そんな怪我なんだから、ここからならアンタの家よりも私の家のほうが近いっていうだけじゃない!手当してあげるから早く来なさいよ」
「あ、ああ、うん、ありがとう」
「どういたしましてっ!!」
優希は本当にブレないなぁ…… 優希らしいというか、おせっかいなところも相変わらずだな。
それが優希のいいところであり、僕が惚れた所なんだよな……
殴られた頬は痛いままだけど、僕の心は充実していた。
僕は優希の家で手当てしてもらい、まだ夕食の時間まで時間があるということで一緒にテレビゲームをしていた。
昔からお互いの家に行きゲームをしていた僕たちであったが、よくやるのは決まってファンタジーの格闘ゲームだった。
「あー、また忠司に負けた~ずるいよねそのガードからのコンボ、躱したと思ったんだけどなぁ」
「僕も危ないとこだったよ、優希がパワーラッシュしてきたら僕が負けていたよ」
「ほんとかなぁ?」
「ほんとほんと、僕も瀕死だったし」
僕がよく使っていたのはガードタイプの反撃を得意とするキャラで優希がよく使うのはゴリゴリのパワータイプのキャラだった。 何回もこのゲームで遊んでいて今ではお互いの癖や好きな技の組み合わせで勝ったり負けたりを繰り返していた。
「うわっ、ほんとにガード邪魔だ、迂闊に攻撃できないよ」
「防御持ちは強キャラだからね、操作は難しいけどうまく攻撃を防ぐと楽しいしな!」
「もっと忠司も普段からそれぐらい明るいといいのにね」
「へっ!?」
「すきありぃ」
「ああ!? ちょ、ずるい!!」
「ずるくないですよー戦略的っていうんですー」
僕の操作していたキャラは優希にコンボを決められ敗北していた。
「あ! もうこんな時間だ、そろそろ帰るよ」
「え!? 晩御飯食べていけばいいのに」
「いや、今日はやめとくよ」
「そう? 明日はあいつらにどうするかちゃんと考えよう、結局今日もゲームして終わっちゃったし」
「そう…… だね」
急に現実に戻された気分だ。 気分がまたしても重くなっていく。
「ほら! またそんな顔して! 笑いなよこうやって」
優希は自分の口の両端を指でにぃーっと広げ笑って見せる。
「ぷっ、なにそれ」
思わず吹き出してしまった。
「ふふ、ようやくちゃんと笑ってくれたね、うん、やっぱり忠司は笑顔がいいよ、私は好きだな忠司の笑顔」
「え!?」
「え、や、何言ってるんだろ、じゃ、じゃあまた明日学校で」
「あ、う、うんまた明日」
優希に押し出されるような形で家を追い出され、帰路につく。
あの優希の照れたような顔はなんだったのだろう、もし明日あいつらをなんとかできたら優希にあの時の言葉の本当の意味を聞こう。
僕はそう思い眠りについた。
翌朝、僕が教室に入りホームルームを待っていると突然慌てた様子の担任の先生が入ってきた。
「奥村君、ちょっと来てくれないか」
「はい、なんでしょうか」
慌てているような担任の先生にクラスのみんなもざわつき始める、どうやら僕を呼んでいるみたいだ。
僕は先生に案内されるまま教室を出て、使われていない空き教室に入った。
「な、なんでしょうか先生こんなとこに呼び出して」
「落ち着いて聞いてくれないか」
「は、はい」
先生に肩をがっしり掴まれ落ち着けと言われる。 そんなことを言われ落ち着けるかどうかが微妙だが。
「君は田村優希君と仲がよかったね?」
「ええ、昔からの幼馴染ですから」
「彼女が今朝学校まで来る途中にダンプカーに撥ねられて亡くなった」
「え?」
「信じられないかもしれないがさっき〇〇病院から連絡があって…… おい!?」
僕は先生を引きはがすと無我夢中で走った、
なんだ?
優希が死んだ?
いやいやいや嘘だ、嘘だ、
あんなに昨日話したじゃないか、
笑ったじゃないか、
ゲームしたじゃないか、
また明日って言ったじゃないか
嘘だよな
嘘であってくれ
〇〇病院…… この学校の近くに……
息が切れる、だが、今はそんなことどうでもいい
お願いだ
病院の受付にたどり着いた僕は大声で話していた。
「すみません!! !田村優希さんはここに来ているでしょうか!!」
「ここは病院ですよ少しは静かに……」
「あなた田村さんの友人ね、こっちよ」
受付の人に怒られてしまったが、別の受付の女性に案内されとある部屋に向かう。
そう、そこは霊安室だった。
「ゆうきぃいいいいいいい!」
部屋に入ると優希の家族が優希に追いすがるように大声で泣いていた。
嘘だろ…… 本当に……
崩れそうな足を必死に動かし顔を覗き見る。
間違いない、昨日と変わらないいつもの優希の顔だ……
「な、んで、優希が、起きてくれよ…… またゲームするんだろ? ……あいつらに一泡ふかす作戦を考えるんだろ? ……うっ、いつも、み、たいに…… 笑ってくれ、よぉ…… 優希ぃ…… うぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
抑えきれない思いが、熱が、全身を駆け抜けていく、声にならない叫びが出る。
もう、ダメだ、 優希のいない世界なんて。
散々泣き喚いた僕は優希の家族に連れられて火葬場に行くように言われたがそれを断った。
そこに行っても優希がいるわけじゃない……
大丈夫ですと言い、僕はその日は家に帰ることになった。
そしてその夜、僕は制服に着替え学校の屋上に来ていた。
学校は施錠されていたが秘密の抜け道があり、そこを通って校内に侵入、屋上は鍵がついているが壊れているのですんなりここまで来れた。
夜風が吹いていて普段ならとても気持ちいいのだが今はただ不気味であった。
「なぁ…… 優希、どうして優希が死ななきゃいけなかったのかな……」
その声は闇に溶けて消えるかのように風に流されていく。
「いなくなってから…… 気づくなんてほんとに僕は馬鹿だなぁ」
この世界にいる意味それは優希がいたからだ。何も持っていない僕には優希しかいなかった。
それももうない、ここにいる意味はない。
これ以上生きていたって辛いだけだ。
「また来世でも優希と会えるといいな……」
僕は屋上の手すりから身を乗り出し、空を見上げる、相変わらず真っ暗で星も何も見えない、まるで僕の心の中のようだ。
「いま、会いにいくよ優希」
足を一歩踏み出すと体が浮遊感に包まれる。これで優希の元に行ける……
意識を失う寸前まばゆい光に包まれるのを感じた。
■ ■ ■ ■ ■
「起きろ」
「え!? うわあ!?」
「いつまで寝てんだ、そろそろ着くぞ」
「え、あちょっと待ってくださ…… うぇえええええええ」
「汚えなおい、そんなんで大丈夫かよ」
「これ、揺れがひどくて…… うぇええええええええ」
「あんまりばれない様に行動すんのは馬車が一番いいんだ小僧も慣れておけよ」
「無理…… です」
僕は今、夜中馬車の上で王宮に向かって進んでいる最中だった。いけない、気持ち悪すぎて昔の夢を見ていたようだ。 それにしても本当にここは地球と全然違うな。
世界観は中世ヨーロッパって感じだし、魔法があって、魔物がいる。
こんな世界でも優希と一緒に冒険できたら楽しかっただろうなぁ。
「たくしょうがない小僧だ、これでも飲んどけ、酔い止めだ」
「あ、ありがとうございます」
「最近の若者は貧弱じゃのう」
「うう、まだ慣れてなくて」
「儂の若いころなんざ、そのぐらいの歳で戦場に出とったぞ」
「ユーアールさんと一緒にしないでくださいよ」
「ふむ、異世界人にそれをいうのも酷なもんか、しかし小僧もだいぶ弱いのう、鍛え上げんとこれからきついな」
「が、頑張ります……」
「まあその状態でも第四部隊全員を倒すんだからさすが勇者であるな」
「隊長であるトロンさんは不意打ちですし、遠距離攻撃と魔法が多かったから楽にいけたくらいですよ」
「まあよい、それはそうと小僧、アルバラン様に何を願ったんだ?」
「国王の地位とお金ですかね」
「嘘つけ、お前のその目はそんなもの欲しくないだろ、儂の目はごまかせんぞ、これでも長いこと人を見る目は養ってきておる。 儂を甘くみんことだな」
「!? そうですか、ばれちゃいますか、ええ、僕はある人をこの世界に召還してもらうためにアルバランさんに協力してるんです。 その為ならたとえ人殺しでも平気でできますよ僕は」
「ほう…… その目は本物だな、嫌いじゃないぞ、惚れた女のために戦うのは」
「茶化さないでください! ほら着きましたよ」
「小僧もだいぶ砕けてきたな、どれ、とりあえずアルバラン様と合流するかのう」
馬車を飛び降り、王宮へ歩き出す。その足取りはすでにさっきまでの面影はなく、気持ちはすっきりとしていた。
いつか必ず、君に会うために僕は進む。
それまでどうか待っていてくれ、優希。
「おい、遅ぇぞ!早く来いっていっただろ!」
「い、いやゴメン結構急いで買って持ってきたんだけど……」
「チッ、まぁいい、あ! 金はお前持ちだからな」
「え!? い、いやそれは困るよ」
「口答えしてんじゃねぇよ!!」
「うっ!?」
右の頬を思いっきり殴られて僕は地面に突き飛ばされた。 この路地裏はこいつらのいつものたまり場だ。
「ぐぅうう……」
「じゃまた明日も頼むわ、奥村クンあ、あと今月分の上納金もよろしくな! バックレたらわかるよな?」
「うっ、は、はい……」
僕は殴られた頬を抑え力なく立ち上がる。 口の中が切れているようで口の中は血の味がしている。 殴られた頬もじんじんしていてかなり痛い。
「じゃ…… 帰ってよーし、またな奥村クン」
「じゃ…… じゃあ」
後ろから大きな笑い声が聞こえてくるが、僕は気にせず歩き続ける。
路地を出ると一人のショートカットの黒髪の少女が不機嫌そうな顔で僕の行く手を遮る。
「なんでいつもいいなりになってんの!!」
「優希…… 仕方ないじゃないか…… 僕は弱いから……」
頬は腫れ、喋るのもつらい、彼女、田村優希は僕の昔からの幼馴染だ。 僕は昔からなにかといじめられてきていた。 それはもう慣れっこであったが最近はエスカレートしてきていてしょっちゅう僕は呼び出され殴られている。
それをいつも優希は心配そうにしていたが、今日はいつにもまして怒っているな。
「そんなんだからいつもいじめられてるんでしょ! もっとしゃきっとしなさいよ!」
「そ、そんなこと言われても、む無理だよ」
「顔も殴られて、あんたは悔しくないの!?」
「く、悔しくないわけないじゃないか!すごい痛いし、断っても殴られるし、でも、僕には力がない ……んだ」
目から涙が溢れる。 かっこ悪いな僕…… 優希の前で泣くなんて、視線は地面を向いたまま優希の顔を見れないでいる。
「私のほうが悔しいわよ!!」
なんで!! と言おうとしてふと顔を上げると優希が大粒の涙を流して僕を見ていた。
「私は毎回傷つくアンタを見て何も思わなかったと思ってるの!?」
言葉に詰まる。 正義感の強い優希のことだそれが許せないのだろう。
「私が…… 女だから…… 力が無いから…… アンタを助けてあげられない!」
「ぼ、僕は、そんなこと優希に頼んでなんかない!」
「バカ!! 頼まれてなくても私は助けたいの!」
「でも、優希があいつらに危害を加えるのは止めてくれ!! 殴られるのは僕だけでいいんだ…… 優希を巻き込みたくない……」
「それじゃあ何の解決もならないじゃない!!」
「いいんだ、僕なら耐えられる、そして今後はなんとかするよ」
「カッコつけちゃって、本当だからね、なんとか考えてよ!」
「うん……」
「じゃあとりあえず私の家に行くわよ」
「えっ!?」
「え!? じゃないでしょ、そんな怪我なんだから、ここからならアンタの家よりも私の家のほうが近いっていうだけじゃない!手当してあげるから早く来なさいよ」
「あ、ああ、うん、ありがとう」
「どういたしましてっ!!」
優希は本当にブレないなぁ…… 優希らしいというか、おせっかいなところも相変わらずだな。
それが優希のいいところであり、僕が惚れた所なんだよな……
殴られた頬は痛いままだけど、僕の心は充実していた。
僕は優希の家で手当てしてもらい、まだ夕食の時間まで時間があるということで一緒にテレビゲームをしていた。
昔からお互いの家に行きゲームをしていた僕たちであったが、よくやるのは決まってファンタジーの格闘ゲームだった。
「あー、また忠司に負けた~ずるいよねそのガードからのコンボ、躱したと思ったんだけどなぁ」
「僕も危ないとこだったよ、優希がパワーラッシュしてきたら僕が負けていたよ」
「ほんとかなぁ?」
「ほんとほんと、僕も瀕死だったし」
僕がよく使っていたのはガードタイプの反撃を得意とするキャラで優希がよく使うのはゴリゴリのパワータイプのキャラだった。 何回もこのゲームで遊んでいて今ではお互いの癖や好きな技の組み合わせで勝ったり負けたりを繰り返していた。
「うわっ、ほんとにガード邪魔だ、迂闊に攻撃できないよ」
「防御持ちは強キャラだからね、操作は難しいけどうまく攻撃を防ぐと楽しいしな!」
「もっと忠司も普段からそれぐらい明るいといいのにね」
「へっ!?」
「すきありぃ」
「ああ!? ちょ、ずるい!!」
「ずるくないですよー戦略的っていうんですー」
僕の操作していたキャラは優希にコンボを決められ敗北していた。
「あ! もうこんな時間だ、そろそろ帰るよ」
「え!? 晩御飯食べていけばいいのに」
「いや、今日はやめとくよ」
「そう? 明日はあいつらにどうするかちゃんと考えよう、結局今日もゲームして終わっちゃったし」
「そう…… だね」
急に現実に戻された気分だ。 気分がまたしても重くなっていく。
「ほら! またそんな顔して! 笑いなよこうやって」
優希は自分の口の両端を指でにぃーっと広げ笑って見せる。
「ぷっ、なにそれ」
思わず吹き出してしまった。
「ふふ、ようやくちゃんと笑ってくれたね、うん、やっぱり忠司は笑顔がいいよ、私は好きだな忠司の笑顔」
「え!?」
「え、や、何言ってるんだろ、じゃ、じゃあまた明日学校で」
「あ、う、うんまた明日」
優希に押し出されるような形で家を追い出され、帰路につく。
あの優希の照れたような顔はなんだったのだろう、もし明日あいつらをなんとかできたら優希にあの時の言葉の本当の意味を聞こう。
僕はそう思い眠りについた。
翌朝、僕が教室に入りホームルームを待っていると突然慌てた様子の担任の先生が入ってきた。
「奥村君、ちょっと来てくれないか」
「はい、なんでしょうか」
慌てているような担任の先生にクラスのみんなもざわつき始める、どうやら僕を呼んでいるみたいだ。
僕は先生に案内されるまま教室を出て、使われていない空き教室に入った。
「な、なんでしょうか先生こんなとこに呼び出して」
「落ち着いて聞いてくれないか」
「は、はい」
先生に肩をがっしり掴まれ落ち着けと言われる。 そんなことを言われ落ち着けるかどうかが微妙だが。
「君は田村優希君と仲がよかったね?」
「ええ、昔からの幼馴染ですから」
「彼女が今朝学校まで来る途中にダンプカーに撥ねられて亡くなった」
「え?」
「信じられないかもしれないがさっき〇〇病院から連絡があって…… おい!?」
僕は先生を引きはがすと無我夢中で走った、
なんだ?
優希が死んだ?
いやいやいや嘘だ、嘘だ、
あんなに昨日話したじゃないか、
笑ったじゃないか、
ゲームしたじゃないか、
また明日って言ったじゃないか
嘘だよな
嘘であってくれ
〇〇病院…… この学校の近くに……
息が切れる、だが、今はそんなことどうでもいい
お願いだ
病院の受付にたどり着いた僕は大声で話していた。
「すみません!! !田村優希さんはここに来ているでしょうか!!」
「ここは病院ですよ少しは静かに……」
「あなた田村さんの友人ね、こっちよ」
受付の人に怒られてしまったが、別の受付の女性に案内されとある部屋に向かう。
そう、そこは霊安室だった。
「ゆうきぃいいいいいいい!」
部屋に入ると優希の家族が優希に追いすがるように大声で泣いていた。
嘘だろ…… 本当に……
崩れそうな足を必死に動かし顔を覗き見る。
間違いない、昨日と変わらないいつもの優希の顔だ……
「な、んで、優希が、起きてくれよ…… またゲームするんだろ? ……あいつらに一泡ふかす作戦を考えるんだろ? ……うっ、いつも、み、たいに…… 笑ってくれ、よぉ…… 優希ぃ…… うぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
抑えきれない思いが、熱が、全身を駆け抜けていく、声にならない叫びが出る。
もう、ダメだ、 優希のいない世界なんて。
散々泣き喚いた僕は優希の家族に連れられて火葬場に行くように言われたがそれを断った。
そこに行っても優希がいるわけじゃない……
大丈夫ですと言い、僕はその日は家に帰ることになった。
そしてその夜、僕は制服に着替え学校の屋上に来ていた。
学校は施錠されていたが秘密の抜け道があり、そこを通って校内に侵入、屋上は鍵がついているが壊れているのですんなりここまで来れた。
夜風が吹いていて普段ならとても気持ちいいのだが今はただ不気味であった。
「なぁ…… 優希、どうして優希が死ななきゃいけなかったのかな……」
その声は闇に溶けて消えるかのように風に流されていく。
「いなくなってから…… 気づくなんてほんとに僕は馬鹿だなぁ」
この世界にいる意味それは優希がいたからだ。何も持っていない僕には優希しかいなかった。
それももうない、ここにいる意味はない。
これ以上生きていたって辛いだけだ。
「また来世でも優希と会えるといいな……」
僕は屋上の手すりから身を乗り出し、空を見上げる、相変わらず真っ暗で星も何も見えない、まるで僕の心の中のようだ。
「いま、会いにいくよ優希」
足を一歩踏み出すと体が浮遊感に包まれる。これで優希の元に行ける……
意識を失う寸前まばゆい光に包まれるのを感じた。
■ ■ ■ ■ ■
「起きろ」
「え!? うわあ!?」
「いつまで寝てんだ、そろそろ着くぞ」
「え、あちょっと待ってくださ…… うぇえええええええ」
「汚えなおい、そんなんで大丈夫かよ」
「これ、揺れがひどくて…… うぇええええええええ」
「あんまりばれない様に行動すんのは馬車が一番いいんだ小僧も慣れておけよ」
「無理…… です」
僕は今、夜中馬車の上で王宮に向かって進んでいる最中だった。いけない、気持ち悪すぎて昔の夢を見ていたようだ。 それにしても本当にここは地球と全然違うな。
世界観は中世ヨーロッパって感じだし、魔法があって、魔物がいる。
こんな世界でも優希と一緒に冒険できたら楽しかっただろうなぁ。
「たくしょうがない小僧だ、これでも飲んどけ、酔い止めだ」
「あ、ありがとうございます」
「最近の若者は貧弱じゃのう」
「うう、まだ慣れてなくて」
「儂の若いころなんざ、そのぐらいの歳で戦場に出とったぞ」
「ユーアールさんと一緒にしないでくださいよ」
「ふむ、異世界人にそれをいうのも酷なもんか、しかし小僧もだいぶ弱いのう、鍛え上げんとこれからきついな」
「が、頑張ります……」
「まあその状態でも第四部隊全員を倒すんだからさすが勇者であるな」
「隊長であるトロンさんは不意打ちですし、遠距離攻撃と魔法が多かったから楽にいけたくらいですよ」
「まあよい、それはそうと小僧、アルバラン様に何を願ったんだ?」
「国王の地位とお金ですかね」
「嘘つけ、お前のその目はそんなもの欲しくないだろ、儂の目はごまかせんぞ、これでも長いこと人を見る目は養ってきておる。 儂を甘くみんことだな」
「!? そうですか、ばれちゃいますか、ええ、僕はある人をこの世界に召還してもらうためにアルバランさんに協力してるんです。 その為ならたとえ人殺しでも平気でできますよ僕は」
「ほう…… その目は本物だな、嫌いじゃないぞ、惚れた女のために戦うのは」
「茶化さないでください! ほら着きましたよ」
「小僧もだいぶ砕けてきたな、どれ、とりあえずアルバラン様と合流するかのう」
馬車を飛び降り、王宮へ歩き出す。その足取りはすでにさっきまでの面影はなく、気持ちはすっきりとしていた。
いつか必ず、君に会うために僕は進む。
それまでどうか待っていてくれ、優希。
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