魔法力0の騎士

犬威

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第二章 アルテア大陸

side カナリア=ファンネル ~強力な相棒~

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「カナリア、すまない… 悪い知らせだ」


 先に出ていたトリシアさんから声がかけられる。

 なんとなくわかっていた…

 そろそろ時間切れだっていうことを…


「さっきはよくもやってくれたな…」

「逃がしはしない」


 眠らせていたはずの門番のギガント二人が両手に武器を構え、目前に立ちふさがっていた。


 さすがタフなギガント族だけあるわね…


 その大きな巨体は天井すれすれまであり、魔法の効果も効きづらい。

 ちらりと横を見るとトリシアさんは茶髪の子を抱きかかえている状態なので戦闘には参加できないことが伺えた。

 通路はギガントの男が前を塞いでいる為、安易に通り抜けるなんてことはできない。

 ましてやかなりの戦力になるはずの天才セレスは魔力を遮断する腕輪を嵌められていて戦うことはできない。


 私がやるしかない…


「トリシアさん、あまり怒らないでくださいね」


 もう迷うことはない。

 あの時アルフレアに誓ったんだ。


 たとえこの手が血にまみれ汚れようと、自分の意志は変えないと…


 後ろで見ている後輩を助けないとね…


 先輩として。


 すっと足を前に踏み出し、男の前に出る。


「おい、ガキ、痛い目見たくなかったら、おとなしく…」

「アイスランス」


 手を突き出し、真っ白な氷槍を作り上げ、ギガントの男のその無防備な腹を突き破る。

 鮮血が辺りに飛び散り、腹を穿たれた男は臓物を零しながら、崩れるように地面に倒れ伏した。

 予想外だと言いたげなもう一人の男は、大きなハンマーを振りかざし、私の方へ勢いよく駆けだしていた。


「貴様! よくも!!」


 その攻撃は当たらない。

 空を切るようにハンマーは壁を打ち付けたり、地面にぶち当てたり、一向にあたる気配を見せない。


 なぜなら…


「チィ… ちょこまかと!!」


 私は体が小さいもの…

 図体がでかいだけで、動きもカルマンよりだいぶ遅いわね…


 するりするりと男の攻撃を難なく躱していくカナリア。


「サイクロン」


 足を狙い、中級の風属性魔法を飛ばす。


「ぐっうあああ!!足が!!」


 それだけで軽装な男の防具もろとも風の刃で切断していく。


「終わりよ、アイスランス」


 男の心臓めがけ、氷槍はその軽装な防具もろとも貫く。

 男の断末魔の声は響くこともなく静かに戦闘は終了した。

 最後に至近距離から貫いたおかげで、私の顔や服には男の血が降りかかった。


「カナリア……」

「わかってるわ、やりすぎだと… でも今は急いだ方がいいわ」


 トリシアさんは心配して言ってくれてるんだろうけど…


「クリーン」


 一瞬のうちに血の汚れは消える。


「あ、ありがとうございます」


 トリシアさんから浄化魔法が飛んでくるなんて…


「いいんだ、行こう」


 トリシアさんは悲しそうな顔をして前を向き進む。
 その足は雄弁に物語っていた。


 甘い考えは捨て去れと言い聞かせるように…


 男達を倒し、さらに来た道を戻るように進む。


 先ほどの戦闘で他の騎士も感づいた者がいるかもしれない。
 進行は慎重を極めた。


 まずはこの腕輪の鍵が置いてある場所に向かわないと…


 おそらくは、管理室なるものがあるはずだ。

 出くわす騎士を音を立てないように一撃で今度は仕留めていく。


 さながら暗殺者の気分だわ…


 アイスランスを鋭利な刃に変化させ、サイレンスで音を消し、後ろから近づき首を掻っ切る。


 これで12人目…

 この部屋には…

 ようやく当たりの部屋かしらね。


 入った部屋は様々な牢の鍵が立ち並ぶ。

 ここが管理室で間違いなさそう。


「私が探そう、この手錠は見たことがあるから私が適任だ、カナリアはその茶髪の子を回復してやってくれ」

「わかりました、ヒール」


 青白かった顔が徐々に色を取り戻していく。

 一時的には落ち着いたみたいね…
 疲労と心的ストレス、あとは…


「あの、パトラは大丈夫なんすか?」


 ふいに声をかけられる。

 振り返ると先ほどの灰色のエルフの子だ。

 この子もかなり殴られているはずなのに気丈に振舞っているな…


「ああ、疲労と心的ストレスが体に影響を及ぼしたんだろう、君も回復するわ」

「自分はいいっす、この痛みもこの悔しさも今はまだ覚えていたいんで」


 ああ、なるほどね、君はこの子の事が好きなんだね。

 悔しそうに歯噛みする彼の横で紫の髪のエルフの子は怒りを含んだ声で話す。


「誰も俺らの話なんか聞いちゃくれない、ジャスティンは必死に無実を証明しようとしたんだ、それなのにあいつらは…」

「もういいだろ、カナン、一番辛いのはセレスっす」


 セレスは悲しそうな顔でパトラの顔を眺めている。

 そうかまだ知らないはずだ。


「セレス、君の兄であるアリアはまったくの無実ですわ」


 その声にセレス、ジャスティン、カナンが反応する。


「やっぱり… 兄様は何者かに嵌められて…」

「ああ、間違いないっす、隊長があんなことするはずないっす!」

「当たり前だ! 俺らを裏切ったりなんかしない」


 どうやら、活力が戻ったみたいね…


「あったぞ、鍵だ」


 トリシアさんが棚から鍵を見つけて次々外していく。


「お待たせしました… 先輩」

「頼りにしてるわ… 後輩」


 セレスと目が合う。

 こんなにも頼れる相棒はアルフレア以来ね…


「もう遅れをとるわけにはいかないっす」

「ああ」

「まずは、一旦ここから引いて、キルクの森に向かう、話はそれからだ」

「「「「「はい」」」」」


 元来た道を戻るべく、今一度進む。


 私達の邪魔は誰にもさせない!!
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