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しおりを挟む「キラ、あの日、私の体に何が起きていたのか知っていたのね」
目を見ることが出来ないのか俯いたままのサラを見ると、首筋から耳元まで真っ赤に染っていた。あの日の甘い香りを思い出す。
「サラの部屋にあった緑の本を読んだよ」
サラの手を取りながら、そう話すと
「そうなんですね」
「本を持った途端魔法陣が発動したかな」
「えっ?」
サラのほんのりと熱い手がスルリと抜けていく。ずっと手の中に閉じ込めておきたいという衝動に我ながら困惑する。
「錬金魔法のこと、どこまで知っているの?」
サラは、例の本を持ってきながら、恐る恐ると言った感じで聞いてくるので、知りえた事を伝えた。
「失われた魔法だね。錬金術師達が欲しがるのはレシピが書かれた魔法書だと聞いている」
「持ち主を殺してでも、手に入れたいものらしいね」
そんな物騒な事を最後に付け加えながら。
「そんな事をしても、手に入らないことは、術師達は知っていると思いたいです」
サラからは否定も肯定もなかった。
現にこの本が手元に来るまで、沢山の血が流れてきたのかもしれない。
そんな物騒な本が、なぜサラの手に。
「本が人を選ぶらしいです。この本に選ばれたのは私だけなのだと思っていたのですけど。
魔法陣が発動したということはキラも選ばれているのですね」
サラが机の上に本を乗せ、表紙をそっと撫で表紙をめくる。
中に書かれていたのは植物の細密画と紙面を埋め尽くす文字。
「子供の頃、母の部屋で見つけたんです。母はいつ買ったのかしら?って仰って私に下さったの」
「全てのページの植物を理解し覚えたと思った時、魔法陣が展開したの」
サラが魔法陣を展開すると、植物の細密画は消え錬金の術式や様々な魔法レシピが現れた。
しかしそれは、かつて見たものとは、だいぶ内容が違った。
不思議そうに内容を見ていると、サラがパタンと本を閉じ、こちらに回してくる。
表紙に触れると、サラが展開した術式とは違う魔法陣が展開して、かつて見た、訳が分からない内容が表示されていた。
「わぁ、面白い。私が読んでいるのと、内容が全然、違うのね」
サラは、すっかり本の内容に気持ちが向いてしまい、今までの話のことなど、忘れてしまったようだった。
苦笑いをしながら、パラパラとページをめくり、黄色い花の部分を指さした。
「あ、、、これ。この花が原因だったんですね」
どうやら、今の今まで、自分の体に起きた原因を理解していなかったらしい。
「この国には時の巫女と呼ばれる魔女がいたらしくて。未来を見て国を導くっていう言い伝えがあって…」
ハッとする。
あの日、自分にせまっているというサラの譫言が気になって、どんな危険が迫っているのかと気をつけてはいた。
まさか、父が王位を剥奪処刑され、自分も命を狙われ追われる身になるとは予想もしていなかった。
運良く母は、故国の西の国に滞在していて、無事だったことは不幸中の幸いだった。
サラのうわ言が一連の出来事を言っていたのだとしたら...サラが時の巫女?
未来を見ることが出来るのなら、他国へ嫁がせるわけはない。一方的に婚約を解消してきたのも納得がいく。
時刻を逃れ、他国に入ったというのに、一向に攻撃が止まなかったのは、サラに会わせたくなかったということか。
「私、キラが背中を刺される夢を見たの。おびただしい血が広がっていって、、、
本を手に取ってから、色んな夢を見たわ。何度も見るのがキラが刺される夢。怖かった」
こうして居るのだから心配ないとサラの手を取る。
するとサラは指輪がはまっていた場所をそっと撫でてくる。
「はじめは、キラが元気かどうか知りたかった。そのうち、見た夢が現実に起こることに気がついて」
「そのうち、夢と夢の間に、キラが刺される夢を見るようになって。時期は分からないし怖かった」
本の表紙を撫でながら、ポツリ・ポツリとサラが話す。
「この本は人を選び、選ばれた人は欲しいと思う情報が得られるの。だから私はキラが助かる方法を知りたかった」
「焦ったの。時間が迫っていたことが分かったから。だから覚醒のポーションを飲んだの。でもキラは紳士すぎて...魔法は完結しなかった」
一瞬にして、サラの髪が見慣れた銀髪に変わり、胸ポケットをそっと抑えてくるので、そこから指輪を取り出しサラに差し出す。
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