22 / 53
22話 学校心理士石島のカウンセリング記録(◎◎小学校1年生 三沢真花 14/1/2025)
しおりを挟む
あら、こんにちは。
うん? いいよ、お約束なくってもこのお部屋は入っていいよ。今日はね、お昼からしかお客さんは来ないから。
大休みの時間を使ってきてくれたんだね、ありがとう。
私になにかお話したいこと、ある? そう。
じゃあ座って。
お名前は? みさわまなかさんね。
忘れないように、ここにあなたのお名前を書いてもいい? あと、メモもしたいんだけど。
……ありがとう。じゃあ、書くね。
何年生? 1年生。2組ね。はい。
私はいしじまと言います。
私とお話しする時間は45分間あるの。いまからだったら授業にかかっちゃうから、担任の先生に連絡をしておこうか? あ、ダメなのね。うん、大丈夫。座って。いいよ。休み時間が過ぎちゃっても、私と一緒に教室に行けば大丈夫。先生にも「真花さんとおしゃべりしてて時間を忘れちゃって」って言うから。そしたら平気だよ? クラスに入れるよ?
だからね、落ち着いて。
……そうか。真花さんは先生にここに来たことを知られたくないんだね。
どうして?
ああ、そう。お母さんが言ったんだね。「学校の先生や友達にも誰にも言っちゃいけない」って。
大丈夫だよ。
私も坂巻先生もね、守秘義務っていうのがあるの。
真花さんと私はいま、お約束をしました。
難しく言うと、契約、ね? だから、真花さんが「言ってほしくない」「知られたくない」ってお話は誰にもしません。安心した?
だけどね、約束を破らなくちゃいけないときもあるの。
それは、真花さんの命が危ないときとか、真花さんの身体が危ないとき。
そんなときは、私も坂巻先生も警察にお話をしないといけないの。
それはわかってくれる? うん、そっか。
じゃあ、先生と契約だ。
真花さんは、この話を先生とお友達に知られたくない。そして、真花さんのお母さんには、真花さんがここに来たことを知られたくないんだね。
わかった。
じゃあ、お話をしてくれるかな?
……そう、お姉ちゃんのお話なんだね。何年生? 3年生。お名前教えてくれる? よしかさんね。
……そうなんだ。夜にずっと話声が聞こえて来たら眠れないよね。わかるわかる。
……あ、そうか。携帯! ……真花さんはお姉ちゃんだけ携帯を買ってもらったって思ったんだね。それで夜更かしをしている、って。
……うん、別に私は真花さんのしたことを悪いって怒るつもりはないよ。気になったんだね。それでゴミ箱を……。
え……?
『なおこちゃんの手紙』?
ごめん、真花さん。それ、どんな漢字を書くのかな。なおこってどんな字?
ひらがな? そう。手紙だけ漢字なのね。
それを見つけた。うん、それで?
……そうだよね。私でもそう思うかも。お姉ちゃん、誰かから嫌がらせを受けていじめられているんじゃないかって。それでお母さんに相談して、お手紙を渡したんだね?
……いいよ。涙出ちゃうよね。待って、ティッシュが……。はい、どうぞ。ゴミ箱はここに置いておくね。
いいよ。ゆっくりでいいよ。お茶飲む? ここに冷蔵庫あるんだよ。お茶を入れるね。
(泣きじゃくる真花に紙コップにいれたお茶を渡す。しばらく、沈黙)
……そう。そのあと、事件のことを知ったんだね。
いま、学校の先生が「手紙をもらったひとは先生に言ってください」ってずっと言ってるもんね。それで怖くなっちゃった?
……ん? その手紙にそんなことが書いてあるの?
10日以内に誰かに手紙を出さないといけないのね? 5人に?
真花さんがその手紙を見たのはいつ? わからない? そっかそっか。大丈夫大丈夫。
怖くないよ。
……え? その手紙を出した? そうなの。誰に出したか、聞いてもいいかな?
いせりょうこ。
……お母さんのお友達。……ホラーの専門家?
小説家じゃなく? ああ、そう。ホラーの専門家ね。
で、しばっち……さんの友達でもあるのね。そのしばっちさんって人はお母さんの友達? そうなんだね。鶴川中学校で吹奏楽部のボランティアしてるんだ。
なるほど……。
……そっか。真花さんはそのいせりょうこさんにお手紙を書いてしまったことも苦しいんだね。そうだよね。真花さんはそれでよかったかもしれないけど、今度はいせりょうこさんがしんどいかもしれないもんね。
いいよ、いいよ。泣いたらいいよ。
そうか。真花さんはそのしんどい気持ちを誰にも言えなくってしんどかったんだね。
そうだよね。だって、先生にもお友達にも言ったらだめなんだもんね。
よく来てくれたね。私、うれしいよ。そんなときに、真花さんが私を選んでくれたこと、本当によかったって思うよ。
あ、ティッシュはここに捨てていいよ。お茶もどうぞ。
……すっきりした? そうか。そうだよ。誰かにお話をしたら心が軽くなるんだよ。
だからいつでもここにきていいよ。
もう戻る?
うーん、もうちょっとゆっくりしてから教室に行ってもいいんだよ? このまま保健室に行ってもいいし。
そう。保健室で休んでもいいよ。
じゃあ、このあと一緒に保健室に行こうか。
でも、その前に。
えへへへ。私、ここにチョコを隠してるんだー。坂巻先生には内緒だけど。
真花さん、今日はたくさん話してくれたから、チョコ、一個あげる。……うん、いいよ。私も食べちゃおう。真花さんも食べちゃえ。
おいしい? よかったー。
またいつでもお話に来てね。
うん? いいよ、お約束なくってもこのお部屋は入っていいよ。今日はね、お昼からしかお客さんは来ないから。
大休みの時間を使ってきてくれたんだね、ありがとう。
私になにかお話したいこと、ある? そう。
じゃあ座って。
お名前は? みさわまなかさんね。
忘れないように、ここにあなたのお名前を書いてもいい? あと、メモもしたいんだけど。
……ありがとう。じゃあ、書くね。
何年生? 1年生。2組ね。はい。
私はいしじまと言います。
私とお話しする時間は45分間あるの。いまからだったら授業にかかっちゃうから、担任の先生に連絡をしておこうか? あ、ダメなのね。うん、大丈夫。座って。いいよ。休み時間が過ぎちゃっても、私と一緒に教室に行けば大丈夫。先生にも「真花さんとおしゃべりしてて時間を忘れちゃって」って言うから。そしたら平気だよ? クラスに入れるよ?
だからね、落ち着いて。
……そうか。真花さんは先生にここに来たことを知られたくないんだね。
どうして?
ああ、そう。お母さんが言ったんだね。「学校の先生や友達にも誰にも言っちゃいけない」って。
大丈夫だよ。
私も坂巻先生もね、守秘義務っていうのがあるの。
真花さんと私はいま、お約束をしました。
難しく言うと、契約、ね? だから、真花さんが「言ってほしくない」「知られたくない」ってお話は誰にもしません。安心した?
だけどね、約束を破らなくちゃいけないときもあるの。
それは、真花さんの命が危ないときとか、真花さんの身体が危ないとき。
そんなときは、私も坂巻先生も警察にお話をしないといけないの。
それはわかってくれる? うん、そっか。
じゃあ、先生と契約だ。
真花さんは、この話を先生とお友達に知られたくない。そして、真花さんのお母さんには、真花さんがここに来たことを知られたくないんだね。
わかった。
じゃあ、お話をしてくれるかな?
……そう、お姉ちゃんのお話なんだね。何年生? 3年生。お名前教えてくれる? よしかさんね。
……そうなんだ。夜にずっと話声が聞こえて来たら眠れないよね。わかるわかる。
……あ、そうか。携帯! ……真花さんはお姉ちゃんだけ携帯を買ってもらったって思ったんだね。それで夜更かしをしている、って。
……うん、別に私は真花さんのしたことを悪いって怒るつもりはないよ。気になったんだね。それでゴミ箱を……。
え……?
『なおこちゃんの手紙』?
ごめん、真花さん。それ、どんな漢字を書くのかな。なおこってどんな字?
ひらがな? そう。手紙だけ漢字なのね。
それを見つけた。うん、それで?
……そうだよね。私でもそう思うかも。お姉ちゃん、誰かから嫌がらせを受けていじめられているんじゃないかって。それでお母さんに相談して、お手紙を渡したんだね?
……いいよ。涙出ちゃうよね。待って、ティッシュが……。はい、どうぞ。ゴミ箱はここに置いておくね。
いいよ。ゆっくりでいいよ。お茶飲む? ここに冷蔵庫あるんだよ。お茶を入れるね。
(泣きじゃくる真花に紙コップにいれたお茶を渡す。しばらく、沈黙)
……そう。そのあと、事件のことを知ったんだね。
いま、学校の先生が「手紙をもらったひとは先生に言ってください」ってずっと言ってるもんね。それで怖くなっちゃった?
……ん? その手紙にそんなことが書いてあるの?
10日以内に誰かに手紙を出さないといけないのね? 5人に?
真花さんがその手紙を見たのはいつ? わからない? そっかそっか。大丈夫大丈夫。
怖くないよ。
……え? その手紙を出した? そうなの。誰に出したか、聞いてもいいかな?
いせりょうこ。
……お母さんのお友達。……ホラーの専門家?
小説家じゃなく? ああ、そう。ホラーの専門家ね。
で、しばっち……さんの友達でもあるのね。そのしばっちさんって人はお母さんの友達? そうなんだね。鶴川中学校で吹奏楽部のボランティアしてるんだ。
なるほど……。
……そっか。真花さんはそのいせりょうこさんにお手紙を書いてしまったことも苦しいんだね。そうだよね。真花さんはそれでよかったかもしれないけど、今度はいせりょうこさんがしんどいかもしれないもんね。
いいよ、いいよ。泣いたらいいよ。
そうか。真花さんはそのしんどい気持ちを誰にも言えなくってしんどかったんだね。
そうだよね。だって、先生にもお友達にも言ったらだめなんだもんね。
よく来てくれたね。私、うれしいよ。そんなときに、真花さんが私を選んでくれたこと、本当によかったって思うよ。
あ、ティッシュはここに捨てていいよ。お茶もどうぞ。
……すっきりした? そうか。そうだよ。誰かにお話をしたら心が軽くなるんだよ。
だからいつでもここにきていいよ。
もう戻る?
うーん、もうちょっとゆっくりしてから教室に行ってもいいんだよ? このまま保健室に行ってもいいし。
そう。保健室で休んでもいいよ。
じゃあ、このあと一緒に保健室に行こうか。
でも、その前に。
えへへへ。私、ここにチョコを隠してるんだー。坂巻先生には内緒だけど。
真花さん、今日はたくさん話してくれたから、チョコ、一個あげる。……うん、いいよ。私も食べちゃおう。真花さんも食べちゃえ。
おいしい? よかったー。
またいつでもお話に来てね。
0
あなたにおすすめの小説
怪蒐師
糸世朔
ホラー
第8回ホラー•ミステリー大賞で優秀賞を受賞しました。ありがとうございました!
●あらすじ
『階段をのぼるだけで一万円』
大学二年生の間宮は、同じ学部にも関わらず一度も話したことすらない三ツ橋に怪しげなアルバイトを紹介される。
三ツ橋に連れて行かれたテナントビルの事務所で出迎えたのは、イスルギと名乗る男だった。
男は言った。
ーー君の「階段をのぼるという体験」を買いたいんだ。
ーーもちろん、ただの階段じゃない。
イスルギは怪異の体験を売り買いする奇妙な男だった。
《目次》
第一話「十三階段」
第二話「忌み地」
第三話「凶宅」
第四話「呪詛箱」
第五話「肉人さん」
第六話「悪夢」
最終話「触穢」
※他サイトでも公開しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。
===
エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中
【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
霊和怪異譚 野花と野薔薇[改稿前]
野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。
静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。
『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。
一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。
語られる怪談はただの物語ではない。
それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。
やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。
日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。
あなたも一席、語りを聞いてみませんか?
完結いたしました。
タイトル変更しました。
旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
本作は改稿前/改稿後の複数バージョンが存在します
掲載媒体ごとに内容が異なる場合があります。
改稿後小説作品はカイタとネオページで見られます
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる