なおこちゃんの手紙【モキュメンタリー】

武州青嵐(さくら青嵐)

文字の大きさ
33 / 53

33話 立花邸②

しおりを挟む
「家庭科室で、それをした?」
「……最初は、誰かのおうちの部屋でしようって話になったんだけど、これ以上呪われたらいやだって、みんなが……。だから学校の空き教室で、鍵がかかっていないところを探したの」

「なるほどなるほど。で、こっくりさんで、なおこちゃんを呼び出そうとしたんだ」
 涼子が言い、凛は頷くが、他の大人ふたりは置いてけぼりの顔をしていた。

「こっくりさんはご存じですよね? あれって一番簡単な交霊術なんです。なんか日本ではその辺にいる浮遊霊を呼び出すイメージですが、本来は死んだ家族とか、知り合いをおろすんですよね。だから、この場合、凛さんたちは、『なおこちゃん』を呼び出そうとした。そうだよね」

「うん。それで、なおこちゃんにもう……その、帰ってもらおうと思って。つきまとわないでって」

 彼女たちは日を合わせ、一斉下校の日にこっくりさんを決行した。
 集団下校ののち、それぞれがこっそりと再度校舎内に忍び込み、家庭科室に集まった。

 文字盤に「あいうえお」表を書いてきたのは丸田杏だったという。
 横書きに「あいうえお」が五十音順に書かれており、一番上には鳥居のマークと「はい・いいえ」が書かれたオーソドックススタイルなもの。

 5人の女児たちは、十円玉に指を置き、「こっくりさん、こっくりさん」と呼びだした。
 なおこちゃんを。

「来た?」
 涼子が尋ねる。凛は震えた。

「来た。すぐに、10円玉が動いて……。『なおこちゃんですか?』って仙田さんが聞いたら、『はい』のところに移動して……」

 涼子は興味津々だが、隣の石島はかなり冷静だ。
 まあ、涼子も言いたいことはわかる。どのようにでも説明がつく事例。

 だが、説明のつかないことがこの世ではまま、起こるのだ。

「アンにゃんが『ごめんなさい、私たちはあなたと遊べません。帰ってください』って言っても、『いいえ』のところから10円玉が動かなくて……。その、私、あんまりそんなことしちゃいけない、って言われたけど。怖いから、10円玉を『はい』のところに移動させようと指で引っ張ったのに、ぜんぜん動かなくて……。実はみんな、そうやってたのに、動かなくて……」

 ぽろりと凛の頬を涙が伝う。

「それでどうなったの?」
 涼子が尋ねる。

「しばらくしたら、10円玉が急に動き出して。『あそぼ』って。ずっと、あ・そ・ほ・“のところをぐるぐる動いてて……」
「かなり強情だったんだね」

 涼子が言うと、凛がうなずく。また、涙がこぼれた。

「ジュリアが、『じゃあ、一回だけだよ!』って言ったら、『はい』ってなって……。『なにする?』って仙田さんが尋ねたら、『おにごっこ』って」
「おにごっこ?」

 涼子は目を細めた。違和感がある。
 なおこちゃんは。
 かくれんぼをするのではないのか?

「じゃあ、鬼を決めようって……。それで10円玉から指を外していいかを聞いて……。『はい』って言うから、私たち、じゃんけんをしたの。負けた人が鬼ね、って」

 5人はまるく円になった。
 凛が、「最初はグー」と言ったのだそうだ。
 誰も言わないから。

 最初はグー、じゃんけんほい。
 誰がなにを出したかはわからなかったが、一回目はバラバラだった。

 凛は鬼になりませんように、と思いながら、「あいこで、ほい」と言った。

 今度は5人がみんなグー。
 ひとりだけがチョキ。

 凛はほっとした。
 みんなもホッとした顔で顔を上げた。
 丸田杏だけが、ひきっつた顔をしている。

 きっと彼女が負けたのだと思った。

 だけど。
 彼女が棒のようにのばしているのは、グー。
 丸田杏が震える声で言った。

「手が、6本ある、って」

 自分たちは5人。
 5人でじゃんけんをした。

 そして5人ともグー。

 では、このチョキを出したのは誰なのだ。
 凍り付いた家庭科室に、甲高い笑い声が響いた。

『なおこちゃんが、鬼!』

 その声を聞いた途端、みなが我先に教室を飛び出したのだという。
 結果的に、凛と仙田、佐藤、大林は階段と廊下付近で骨折。丸田は教卓の中に隠れているところを教員に保護されている。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

怪蒐師

糸世朔
ホラー
第8回ホラー•ミステリー大賞で優秀賞を受賞しました。ありがとうございました! ●あらすじ 『階段をのぼるだけで一万円』 大学二年生の間宮は、同じ学部にも関わらず一度も話したことすらない三ツ橋に怪しげなアルバイトを紹介される。 三ツ橋に連れて行かれたテナントビルの事務所で出迎えたのは、イスルギと名乗る男だった。 男は言った。 ーー君の「階段をのぼるという体験」を買いたいんだ。 ーーもちろん、ただの階段じゃない。 イスルギは怪異の体験を売り買いする奇妙な男だった。 《目次》 第一話「十三階段」 第二話「忌み地」 第三話「凶宅」 第四話「呪詛箱」 第五話「肉人さん」 第六話「悪夢」 最終話「触穢」 ※他サイトでも公開しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

霊和怪異譚 野花と野薔薇[改稿前]

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 本作は改稿前/改稿後の複数バージョンが存在します 掲載媒体ごとに内容が異なる場合があります。 改稿後小説作品はカイタとネオページで見られます

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...