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45話 11月21日 カクヨム『怪談実話 本当にあった話を集めてみた』29話
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「こっくりさん」
これは、小学3年生Rさんから聞いた話である。
当時、仲の良かった5人でこっくりさんをしようということになった。
きっかけは、疑心暗鬼だ。
5人はいわゆる上位カーストの女子たちだった。
家庭環境は様々だが、それなりに裕福で容姿にも恵まれていた。
女子たちは一目置くし、男子たちはときどき憧れの視線を向けてくる。
もちろん彼女たちに嫉妬する児童もいたが、そういう場合は、生贄を作って、徹底的にいじめた。
「次はあんたかもよ?」
そんなことを暗に示して見せた。
だからだろう。
女子児童たちはクラスの上位に君臨し続けた。
だが、ある日。
彼女たちは気づいたのだ。
『この中の誰かがもし自分を裏切ったら?』と。
上位カーストにいられるのは、数人でいい。
ほかの誰かが裏切って、蹴落とされたら?
次は自分かもしれない。
そんな疑念が生じたのは、Rさんだけではなかった。
「ねえ、こっくりさんしない?」
誰かがそう言いだした時、Rさんは即座にうなずいた。
この中に裏切者はいますか?
こっくりさんにそう尋ねてみよう、と。
「いいね、やろう」
ほかのみんなも乗り気だ。
ちらりと彼女たちの顔を見る。
その目の奥に疑念の色が隠れているのをRさんは見逃さなかった。
そして、誰もいない放課後の教室で、こっくりさんが始まった。
「こっくりさん、こっくりさん……」
やろうと言い出した児童が、召喚を始める。
やるまでは意気込んでいたRさんだったが、なんだか急速に熱が冷めていく。
子どもだましだ。
こんなもので何かが来るはずがない。
そう思ったが、ふと気づく。
だからこそ、誰かが自分に濡れ衣を着せるかもしれない。
『この中に裏切者がいますか』
誰かがそう尋ね、R以外のみんなが、10円玉を動かしてRだと示したら、それはそうなってしまう。
気を抜いてはいけない。
10円玉を押さえる人差し指に力を込めたとき。
するり、と。
その力をそぐように10円玉が動き出した。
「え?」「なに」「やだ」「う、動いた」「え……」
児童が口々に言う中、10円玉はするすると動く。
き・た・よ
「……こっくりさんですか?」
呼びかけに、10円玉は「はい」の文字に動いた。
「こっくりさん、お尋ねしたいことがあり……」
あ・そ・ぼ
「こっくりさん、あの。お尋ねしたいことが」
あ・そ・ぼ
「こっくりさん」
あ・そ・ぼ
10円玉はただただ、その文字を繰り返す。
児童たちは半泣きになった。
「どうしよう」「ぜんぜんいうこと聞いてくれない」「なんで?」「教えてくれるんじゃないの?」
あ・そ・ぼ
「……な、なにをして遊ぶんですか?」
執拗に繰り返される「あそぼ」から解放されたくて、ひとりが口を開いた。
お・に・ご・っ・こ
「おにごっこ……? え、と。私たちと一緒にってこと?」
はい
「鬼は、誰にするんですか?」
じ・ゃ・ん・け・ん
「じゃんけん」
ま・け・た・ら・お・に
児童たちは顔を見合わせ、10円玉に人差し指を置いたまま、空いた左手でじゃんけんをすることにした。
「最初はぐー、じゃんけんほい」
そう号令をしたのはRさんだ。
一回目はバラバラだった。みんながパーやチョキ、グーをだした。
「あいこで、しょ」
二回目も同じ。若干パーが多いかな、という感じだ。
「あいこで、しょ」
三回目。
今度はそろった。
Rさんも含めた5人がパー。ひとりだけがグーだった。
ほっとしてRさんは顔を上げた。
みなも顔をほころばせている。自分じゃなくてよかった。そんな身勝手な笑み。
ただひとり。
顔をひきつらせている児童がいた。
あの子が負けたのか。
だが、小刻みに震える彼女の手はパー。
「おかしい」
その児童が唇を震わせた。
「手が、6本ある」
え?
Rさんはまだパーのままの手を見た。
円を描いて突き出された手。
上位カースト5人の手。
ちがう。
手が。
6本ある。
「わたしがおに!」
聞き覚えのない甲高い声が宣言し、けたたましい笑い声が響いた。
Rさんたちは一目散に教室から駆け出したという。
応援コメント
chikapapa
2025年11月21日 こっくりさん、ダメ! 絶対!
作者からの返信 安易にはやっちゃいけませんねぇ……。
2025年11月21日 多々良リョウ you
横田ミラ
2025年11月21日 これはいけない( ノД`)シクシク… こっくりさんもだし、このお話も怖いです……
作者からの返信 そうです、そうです。学校が終わると早く家に帰らなくっちゃ!
2025年11月21日 多々良リョウ you
れいちゃん
2025年11月21日 私のころは上位カーストって名前がないころだったけど、こんな女子いたなぁ。いじわるでさ。もちろんオタクの私はいじめられたとさ(笑)
作者からの返信 集団で誰かをいじめるやつは、私が制裁にいきます!!
2025年11月21日
Simaumi1785
2025年11月21日
こっくりさんって指を終わるまで指を放しちゃいけないんだっけ? この子たち、勝手に放しちゃったよね
作者からの返信 ……本当ですね。あらあら^^;
2025年11月21日 多々良リョウ you
これは、小学3年生Rさんから聞いた話である。
当時、仲の良かった5人でこっくりさんをしようということになった。
きっかけは、疑心暗鬼だ。
5人はいわゆる上位カーストの女子たちだった。
家庭環境は様々だが、それなりに裕福で容姿にも恵まれていた。
女子たちは一目置くし、男子たちはときどき憧れの視線を向けてくる。
もちろん彼女たちに嫉妬する児童もいたが、そういう場合は、生贄を作って、徹底的にいじめた。
「次はあんたかもよ?」
そんなことを暗に示して見せた。
だからだろう。
女子児童たちはクラスの上位に君臨し続けた。
だが、ある日。
彼女たちは気づいたのだ。
『この中の誰かがもし自分を裏切ったら?』と。
上位カーストにいられるのは、数人でいい。
ほかの誰かが裏切って、蹴落とされたら?
次は自分かもしれない。
そんな疑念が生じたのは、Rさんだけではなかった。
「ねえ、こっくりさんしない?」
誰かがそう言いだした時、Rさんは即座にうなずいた。
この中に裏切者はいますか?
こっくりさんにそう尋ねてみよう、と。
「いいね、やろう」
ほかのみんなも乗り気だ。
ちらりと彼女たちの顔を見る。
その目の奥に疑念の色が隠れているのをRさんは見逃さなかった。
そして、誰もいない放課後の教室で、こっくりさんが始まった。
「こっくりさん、こっくりさん……」
やろうと言い出した児童が、召喚を始める。
やるまでは意気込んでいたRさんだったが、なんだか急速に熱が冷めていく。
子どもだましだ。
こんなもので何かが来るはずがない。
そう思ったが、ふと気づく。
だからこそ、誰かが自分に濡れ衣を着せるかもしれない。
『この中に裏切者がいますか』
誰かがそう尋ね、R以外のみんなが、10円玉を動かしてRだと示したら、それはそうなってしまう。
気を抜いてはいけない。
10円玉を押さえる人差し指に力を込めたとき。
するり、と。
その力をそぐように10円玉が動き出した。
「え?」「なに」「やだ」「う、動いた」「え……」
児童が口々に言う中、10円玉はするすると動く。
き・た・よ
「……こっくりさんですか?」
呼びかけに、10円玉は「はい」の文字に動いた。
「こっくりさん、お尋ねしたいことがあり……」
あ・そ・ぼ
「こっくりさん、あの。お尋ねしたいことが」
あ・そ・ぼ
「こっくりさん」
あ・そ・ぼ
10円玉はただただ、その文字を繰り返す。
児童たちは半泣きになった。
「どうしよう」「ぜんぜんいうこと聞いてくれない」「なんで?」「教えてくれるんじゃないの?」
あ・そ・ぼ
「……な、なにをして遊ぶんですか?」
執拗に繰り返される「あそぼ」から解放されたくて、ひとりが口を開いた。
お・に・ご・っ・こ
「おにごっこ……? え、と。私たちと一緒にってこと?」
はい
「鬼は、誰にするんですか?」
じ・ゃ・ん・け・ん
「じゃんけん」
ま・け・た・ら・お・に
児童たちは顔を見合わせ、10円玉に人差し指を置いたまま、空いた左手でじゃんけんをすることにした。
「最初はぐー、じゃんけんほい」
そう号令をしたのはRさんだ。
一回目はバラバラだった。みんながパーやチョキ、グーをだした。
「あいこで、しょ」
二回目も同じ。若干パーが多いかな、という感じだ。
「あいこで、しょ」
三回目。
今度はそろった。
Rさんも含めた5人がパー。ひとりだけがグーだった。
ほっとしてRさんは顔を上げた。
みなも顔をほころばせている。自分じゃなくてよかった。そんな身勝手な笑み。
ただひとり。
顔をひきつらせている児童がいた。
あの子が負けたのか。
だが、小刻みに震える彼女の手はパー。
「おかしい」
その児童が唇を震わせた。
「手が、6本ある」
え?
Rさんはまだパーのままの手を見た。
円を描いて突き出された手。
上位カースト5人の手。
ちがう。
手が。
6本ある。
「わたしがおに!」
聞き覚えのない甲高い声が宣言し、けたたましい笑い声が響いた。
Rさんたちは一目散に教室から駆け出したという。
応援コメント
chikapapa
2025年11月21日 こっくりさん、ダメ! 絶対!
作者からの返信 安易にはやっちゃいけませんねぇ……。
2025年11月21日 多々良リョウ you
横田ミラ
2025年11月21日 これはいけない( ノД`)シクシク… こっくりさんもだし、このお話も怖いです……
作者からの返信 そうです、そうです。学校が終わると早く家に帰らなくっちゃ!
2025年11月21日 多々良リョウ you
れいちゃん
2025年11月21日 私のころは上位カーストって名前がないころだったけど、こんな女子いたなぁ。いじわるでさ。もちろんオタクの私はいじめられたとさ(笑)
作者からの返信 集団で誰かをいじめるやつは、私が制裁にいきます!!
2025年11月21日
Simaumi1785
2025年11月21日
こっくりさんって指を終わるまで指を放しちゃいけないんだっけ? この子たち、勝手に放しちゃったよね
作者からの返信 ……本当ですね。あらあら^^;
2025年11月21日 多々良リョウ you
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