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49話 11月28日 伊勢+御子柴邸
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「どうしたの、涼ちゃん」
「手紙読んでる」
「なおこちゃん⁉」
「違う。編集部経由で届けられたやつ」
「よかった……」
「風呂どうだった?」
「快適でした」
「膝枕」
「はいはい。……酔ってる?」
「なんで」
「涼ちゃんがくっついてくるなんてそれ以外考えられない」
「失礼だな。夫婦やろ?」
「ぼくが涼ちゃんにさわるのは許可いるのに、自分はがんがん触ってくるよね」
「語弊がある」
「髪の毛、さわっていい?」
「ええよ」
「編み込みつくっていい?」
「うん」
「それ、読者さんから?」
「読者というか……。なおこちゃんの手紙を読んだ人から」
「またなおこちゃん!」
「いた!」
「あ、ごめん!」
「この人たちさぁ、自分もなおこちゃんの手紙を出したんだって。で、いじめから救われたって人」
「……いじめから? へぇ」
「4通来てるんやけどさ」
「4通も⁉ 編集部って、△じゃないでしょ? ◎◎出版の霜田さんでしょ?」
「うん」
「……気の毒……。あの人も、ぼくと同じぐらいホラー耐性ないのに……」
「どの人も『なおこちゃんにお礼を伝えてほしい』って」
「ん? お礼?」
「みんな、いじめられてて自殺を考えたときに、なおこちゃんに出会ったんやって。で、なおこちゃんから『なおこちゃんの手紙』を受け取って。それをいじめっこに……加害者やな、こんなもん。加害者に出した。で、いじめから解放されて、いまでは幸せに暮らしているらしい」
「そんなにみんな出してるのに、広がらなかったの? 『なおこちゃんの手紙』」
「加害者が自分のところで留めたらしい。『こんなんにおびえるんはアホや』みたいな感じで」
「いきったんだ」
「みたいやな。で、なおこちゃんがお友達認定して訪問した、と」
「いじめるやつって、自分は絶対的に安全だって勘違いしてるからねぇ。そこから敵襲受けたらパニックになるだろうなぁ」
「この4通。共通点がいくつかあってな」
「うん」
「◎◎小学校の在校生だったこと。なおこちゃんに出会ったのは3年生だったこと。出会う場所は駐車場。そして、みんな自死しようとしている」
「……」
「今回の『なおこちゃんの手紙』ってさ」
「うん」
「仙田さんって女子児童が手紙をもらって、それを友人に出したことから起こってる」
「確かに」
「じゃあ、仙田さんに出したのは誰か」
「確か、三沢さんのお嬢さんじゃなかった?」
「そう。長女の佳花さん」
「だよね? そもそも三沢さんがお子さんが受け取った手紙のことで相談したい、ってのが発端だったよね」
「もしこの佳花さんがなおこちゃんの手紙を受け取った最初の児童だったとしたら」
「……自殺を、考えていたってことだよね?」
「だよなぁ……。昼間、ちらっと石島先生に聞いたけど、彼女がカウンセリングルームに来たことはないらしい。妹ちゃんは来てるけどね」
「いっつも思うんだけどさ」
「なに?」
「福祉とか医療って、必要な人のところに届かないよね」
「それは……まあ、なぁ。……あとな?」
「うん」
「もうひとつ、気になっていることがあって」
「うん」
「なおこちゃんの手紙は5人に出すことになってるやん?」
「そうだね。10日以内に、だったっけ」
「佳花さんから受け取った仙田さんは、友達に出した」
「だから5人は困って、こっくりさんをしたんだよね?」
「その5人は仙田さんを含めての人数やん?」
「うん? ……まあ、そうか」
「だとしたら、仙田さんは4人にしか出してへんことになる」
「なる……ねぇ?」
「そんなことあるか?」
「どういうこと?」
「いままでの加害者は、いきがって誰にも出さなかった。だけど仙田さんは違う。おびえて、怖くなって手紙を出した。『なおこちゃんの手紙』に書かれているようにちゃんと日数をあわせて。それなのに人数を間違えていることってあるか?」
「……じゃあ、ほかにもまだ『なおこちゃんの手紙』をもらった児童がいるってこと?」
「たとえば、やで?」
「うん」
「仙田さんの気持ちになってみ?」
「……うん」
「こんな貰って困る手紙を出すとしたら、一番に誰を選ぶ?」
「そりゃ……どうでもいい相手?」
「そやろ? そしたら、一番に上がる名前って誰?」
「……え。まさか」
「佳花さんがもらってる可能性もあらへん?」
「……ある……かも」
「彼女。出したけど、さらにもらった可能性もあるねんな……」
「そうなる……かもね」
「あとな」
「うん」
「……」
「なに?」
「よーたくん、さ」
「うん」
「またうつ再発とかしてへん?」
「ぼく? え。なんで。してない、つもりだけど……」
「ほんまに?」
「うん」
「なんかあったら、絶対言ってよ」
「うん。……ちょっと、なに。なんかいろいろ怖いんだけど。ぼく大丈夫だよ?」
「……私、駐車場でなおこちゃんに会ったねん」
「……ちょ、待ってよ。え、涼ちゃ……」
「私は自死について考えたことない。なおこちゃん自身も『おばさんと違うかも』とは言ってて……。それってさ……。その、」
「あ……。うーん……確かにね。ちらっとこの前、考えちゃったことあったけど。すぐに気持ちが切り替えられたよ? こうやって浮き沈みを繰り返して落ち着いていくもんだろうし」
「……そうやな」
「心配かけてた? ごめんね。でも絶対死なない。だって涼ちゃんをひとりにしておけないからね」
「……なんか複雑」
「涼ちゃんは、ぼくの生きる目標だから」
「……ありがと」
「こちらこそ、ありがと」
「手紙読んでる」
「なおこちゃん⁉」
「違う。編集部経由で届けられたやつ」
「よかった……」
「風呂どうだった?」
「快適でした」
「膝枕」
「はいはい。……酔ってる?」
「なんで」
「涼ちゃんがくっついてくるなんてそれ以外考えられない」
「失礼だな。夫婦やろ?」
「ぼくが涼ちゃんにさわるのは許可いるのに、自分はがんがん触ってくるよね」
「語弊がある」
「髪の毛、さわっていい?」
「ええよ」
「編み込みつくっていい?」
「うん」
「それ、読者さんから?」
「読者というか……。なおこちゃんの手紙を読んだ人から」
「またなおこちゃん!」
「いた!」
「あ、ごめん!」
「この人たちさぁ、自分もなおこちゃんの手紙を出したんだって。で、いじめから救われたって人」
「……いじめから? へぇ」
「4通来てるんやけどさ」
「4通も⁉ 編集部って、△じゃないでしょ? ◎◎出版の霜田さんでしょ?」
「うん」
「……気の毒……。あの人も、ぼくと同じぐらいホラー耐性ないのに……」
「どの人も『なおこちゃんにお礼を伝えてほしい』って」
「ん? お礼?」
「みんな、いじめられてて自殺を考えたときに、なおこちゃんに出会ったんやって。で、なおこちゃんから『なおこちゃんの手紙』を受け取って。それをいじめっこに……加害者やな、こんなもん。加害者に出した。で、いじめから解放されて、いまでは幸せに暮らしているらしい」
「そんなにみんな出してるのに、広がらなかったの? 『なおこちゃんの手紙』」
「加害者が自分のところで留めたらしい。『こんなんにおびえるんはアホや』みたいな感じで」
「いきったんだ」
「みたいやな。で、なおこちゃんがお友達認定して訪問した、と」
「いじめるやつって、自分は絶対的に安全だって勘違いしてるからねぇ。そこから敵襲受けたらパニックになるだろうなぁ」
「この4通。共通点がいくつかあってな」
「うん」
「◎◎小学校の在校生だったこと。なおこちゃんに出会ったのは3年生だったこと。出会う場所は駐車場。そして、みんな自死しようとしている」
「……」
「今回の『なおこちゃんの手紙』ってさ」
「うん」
「仙田さんって女子児童が手紙をもらって、それを友人に出したことから起こってる」
「確かに」
「じゃあ、仙田さんに出したのは誰か」
「確か、三沢さんのお嬢さんじゃなかった?」
「そう。長女の佳花さん」
「だよね? そもそも三沢さんがお子さんが受け取った手紙のことで相談したい、ってのが発端だったよね」
「もしこの佳花さんがなおこちゃんの手紙を受け取った最初の児童だったとしたら」
「……自殺を、考えていたってことだよね?」
「だよなぁ……。昼間、ちらっと石島先生に聞いたけど、彼女がカウンセリングルームに来たことはないらしい。妹ちゃんは来てるけどね」
「いっつも思うんだけどさ」
「なに?」
「福祉とか医療って、必要な人のところに届かないよね」
「それは……まあ、なぁ。……あとな?」
「うん」
「もうひとつ、気になっていることがあって」
「うん」
「なおこちゃんの手紙は5人に出すことになってるやん?」
「そうだね。10日以内に、だったっけ」
「佳花さんから受け取った仙田さんは、友達に出した」
「だから5人は困って、こっくりさんをしたんだよね?」
「その5人は仙田さんを含めての人数やん?」
「うん? ……まあ、そうか」
「だとしたら、仙田さんは4人にしか出してへんことになる」
「なる……ねぇ?」
「そんなことあるか?」
「どういうこと?」
「いままでの加害者は、いきがって誰にも出さなかった。だけど仙田さんは違う。おびえて、怖くなって手紙を出した。『なおこちゃんの手紙』に書かれているようにちゃんと日数をあわせて。それなのに人数を間違えていることってあるか?」
「……じゃあ、ほかにもまだ『なおこちゃんの手紙』をもらった児童がいるってこと?」
「たとえば、やで?」
「うん」
「仙田さんの気持ちになってみ?」
「……うん」
「こんな貰って困る手紙を出すとしたら、一番に誰を選ぶ?」
「そりゃ……どうでもいい相手?」
「そやろ? そしたら、一番に上がる名前って誰?」
「……え。まさか」
「佳花さんがもらってる可能性もあらへん?」
「……ある……かも」
「彼女。出したけど、さらにもらった可能性もあるねんな……」
「そうなる……かもね」
「あとな」
「うん」
「……」
「なに?」
「よーたくん、さ」
「うん」
「またうつ再発とかしてへん?」
「ぼく? え。なんで。してない、つもりだけど……」
「ほんまに?」
「うん」
「なんかあったら、絶対言ってよ」
「うん。……ちょっと、なに。なんかいろいろ怖いんだけど。ぼく大丈夫だよ?」
「……私、駐車場でなおこちゃんに会ったねん」
「……ちょ、待ってよ。え、涼ちゃ……」
「私は自死について考えたことない。なおこちゃん自身も『おばさんと違うかも』とは言ってて……。それってさ……。その、」
「あ……。うーん……確かにね。ちらっとこの前、考えちゃったことあったけど。すぐに気持ちが切り替えられたよ? こうやって浮き沈みを繰り返して落ち着いていくもんだろうし」
「……そうやな」
「心配かけてた? ごめんね。でも絶対死なない。だって涼ちゃんをひとりにしておけないからね」
「……なんか複雑」
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