48 / 53
48話 11月26日 到着した手紙より②
しおりを挟む
拝啓 立冬の候、多々良先生におかれましては、お健やかにお過ごしのこととお喜び申し上げます。
突然の手紙、失礼いたします。
私は鈴木由良と申します。先生の作品はデビュー作の『男装少将シリーズ』から全部拝読しております。現在は『溺愛シリーズ』が先生の代表作のようにいわれていますが、私は『王妃アリアドネ』が大好きです。大学時代の友人たちもやはり『王妃アリアドネ』を上げるほどです。
たくさんのラノベを執筆される傍ら、先生がライフワークとして怪談実話をカクヨムにて掲載されておられるのは知っていました。
しかし私はホラーがとても苦手で……。先生の文章が読めないなんて、と悔しく思っていたところ、Ⅹで『多々良リョウの「なおこちゃんの手紙」なんか不気味』と流れてきました。
なおこちゃんの手紙。
私は思わず息が止まるかと思いました。
なぜなら、私も「なおこちゃんの手紙」を出したことがあるからです。
そうすることで、なおこちゃんに命を救われたと言っても過言ではありません。
◎◎小学校3年生のころ、私はいじめられていました。
このころからアニメやラノベが大好きで、休み時間にはひとりで本を読んでいるような子でした。
ついたあだ名は「キモオタク」でした。
ラノベや漫画は破かれ、ノートは落書きされ、トイレに閉じ込められて上から水をかけられ……。そのせいでしょうか、雨が続くと当時のことを思い出して気持ちがふさぎ、いまでも心療内科に通っています。
私はその日、死のうと思って駐車場にいました。
体操服を隠され、着替えられなかったのです。(しかもひどく汚され、書くのも憚られる文字が油性ペンで書かれていました)
最初はだれか先生が探しに来てくれるかとドキドキしたのですが、誰も来ませんでした。
そのせいかひどく落ち込み、私は駐車場と隣接している校舎の3階に行くことにしました。
あそこから駐車場にむかって飛び降りようとおもったのです。
そのとき、なおこちゃんが現れました。
「あそぼう」
と彼女は言い、私に「パン食べる?」と尋ねました。
パンはいらないし、遊べない。なぜならいまから死ぬから、となおこちゃんに伝えると、なおこちゃんはとても驚きました。
「もったいない」と。
生きられるのなら、生きればいいのに。どうして自ら死ぬのか、と。
私はなおこちゃんに、自分がどのような目に遭っているのかを切々と語りました。
なおこちゃんはずっとそれを聞いてから、半ズボンのポケットから一枚の手紙を取り出し、私に差し出してくれました。
「これをいじめっこに出せばいいよ。なおこちゃん、その子たちのところに行ってあげる」
なおこちゃんは胸を張ります。その姿は、アメコミのヒーローのようでした。
でも、そのあとちょっとだけ不安そうに目をきょどきょどさせました。
「その子たちのおうちには、お父さんいるかな」
「いるかもだけど……。みんな帰宅するのは夜じゃないかな」
当時の父親というのは、どこでも家事にたずさわらず、20時ぐらいに帰宅していたように思います。幼いながらも私はそう考えていました。
「そう。じゃあ、なおこちゃんがその子たちの家に遊びに行ってあげる」
なおこちゃんは歯の抜けた口を開けて笑いました。
そして、私が手紙を読んでいる間にきえてしまいました。
私は「なおこちゃんの手紙」をいじめっこたちに出しました。手紙には5人と書かれていたので、出す相手をしぼりました。もともと、烏合の衆だということはわかっていましたから、発言力の強い数人を黙らせることができればいじめからは逃れられます。
効果はてきめんでした。
彼らはおびえたものの「おびえている」ということを隠すために、手紙は誰にも出さず、そして手紙の存在を黙っていたようです。
10日後。なおこちゃんが訪問したのでしょうか。実際には私はわかりません。
父の仕事の関係で突然九州に引っ越すことになったからです。
その後、「なおこちゃんの手紙」を知る人は誰もいませんでした。
そう。Ⅹを見るまでは。
多々良先生がもし、なおこちゃんとまだ通じているのなら、私に代わってお礼を伝えていただけないでしょうか。
私はいま、小さいですがパン屋を開いています。なおこちゃんにもぜひ食べてほしいです。
住所を記しておきます。先生もお近くにお立ち寄りのさいはお越しください。
(〒***-**** □□市k・・・d町 25-3 ベーカリー ドロップス)
それでは、寒さが日ごとに増しております。どうぞお風邪など召されませんように。
先生の今後のご活躍をお祈りしつつ。
敬具
突然の手紙、失礼いたします。
私は鈴木由良と申します。先生の作品はデビュー作の『男装少将シリーズ』から全部拝読しております。現在は『溺愛シリーズ』が先生の代表作のようにいわれていますが、私は『王妃アリアドネ』が大好きです。大学時代の友人たちもやはり『王妃アリアドネ』を上げるほどです。
たくさんのラノベを執筆される傍ら、先生がライフワークとして怪談実話をカクヨムにて掲載されておられるのは知っていました。
しかし私はホラーがとても苦手で……。先生の文章が読めないなんて、と悔しく思っていたところ、Ⅹで『多々良リョウの「なおこちゃんの手紙」なんか不気味』と流れてきました。
なおこちゃんの手紙。
私は思わず息が止まるかと思いました。
なぜなら、私も「なおこちゃんの手紙」を出したことがあるからです。
そうすることで、なおこちゃんに命を救われたと言っても過言ではありません。
◎◎小学校3年生のころ、私はいじめられていました。
このころからアニメやラノベが大好きで、休み時間にはひとりで本を読んでいるような子でした。
ついたあだ名は「キモオタク」でした。
ラノベや漫画は破かれ、ノートは落書きされ、トイレに閉じ込められて上から水をかけられ……。そのせいでしょうか、雨が続くと当時のことを思い出して気持ちがふさぎ、いまでも心療内科に通っています。
私はその日、死のうと思って駐車場にいました。
体操服を隠され、着替えられなかったのです。(しかもひどく汚され、書くのも憚られる文字が油性ペンで書かれていました)
最初はだれか先生が探しに来てくれるかとドキドキしたのですが、誰も来ませんでした。
そのせいかひどく落ち込み、私は駐車場と隣接している校舎の3階に行くことにしました。
あそこから駐車場にむかって飛び降りようとおもったのです。
そのとき、なおこちゃんが現れました。
「あそぼう」
と彼女は言い、私に「パン食べる?」と尋ねました。
パンはいらないし、遊べない。なぜならいまから死ぬから、となおこちゃんに伝えると、なおこちゃんはとても驚きました。
「もったいない」と。
生きられるのなら、生きればいいのに。どうして自ら死ぬのか、と。
私はなおこちゃんに、自分がどのような目に遭っているのかを切々と語りました。
なおこちゃんはずっとそれを聞いてから、半ズボンのポケットから一枚の手紙を取り出し、私に差し出してくれました。
「これをいじめっこに出せばいいよ。なおこちゃん、その子たちのところに行ってあげる」
なおこちゃんは胸を張ります。その姿は、アメコミのヒーローのようでした。
でも、そのあとちょっとだけ不安そうに目をきょどきょどさせました。
「その子たちのおうちには、お父さんいるかな」
「いるかもだけど……。みんな帰宅するのは夜じゃないかな」
当時の父親というのは、どこでも家事にたずさわらず、20時ぐらいに帰宅していたように思います。幼いながらも私はそう考えていました。
「そう。じゃあ、なおこちゃんがその子たちの家に遊びに行ってあげる」
なおこちゃんは歯の抜けた口を開けて笑いました。
そして、私が手紙を読んでいる間にきえてしまいました。
私は「なおこちゃんの手紙」をいじめっこたちに出しました。手紙には5人と書かれていたので、出す相手をしぼりました。もともと、烏合の衆だということはわかっていましたから、発言力の強い数人を黙らせることができればいじめからは逃れられます。
効果はてきめんでした。
彼らはおびえたものの「おびえている」ということを隠すために、手紙は誰にも出さず、そして手紙の存在を黙っていたようです。
10日後。なおこちゃんが訪問したのでしょうか。実際には私はわかりません。
父の仕事の関係で突然九州に引っ越すことになったからです。
その後、「なおこちゃんの手紙」を知る人は誰もいませんでした。
そう。Ⅹを見るまでは。
多々良先生がもし、なおこちゃんとまだ通じているのなら、私に代わってお礼を伝えていただけないでしょうか。
私はいま、小さいですがパン屋を開いています。なおこちゃんにもぜひ食べてほしいです。
住所を記しておきます。先生もお近くにお立ち寄りのさいはお越しください。
(〒***-**** □□市k・・・d町 25-3 ベーカリー ドロップス)
それでは、寒さが日ごとに増しております。どうぞお風邪など召されませんように。
先生の今後のご活躍をお祈りしつつ。
敬具
0
あなたにおすすめの小説
怪蒐師
糸世朔
ホラー
第8回ホラー•ミステリー大賞で優秀賞を受賞しました。ありがとうございました!
●あらすじ
『階段をのぼるだけで一万円』
大学二年生の間宮は、同じ学部にも関わらず一度も話したことすらない三ツ橋に怪しげなアルバイトを紹介される。
三ツ橋に連れて行かれたテナントビルの事務所で出迎えたのは、イスルギと名乗る男だった。
男は言った。
ーー君の「階段をのぼるという体験」を買いたいんだ。
ーーもちろん、ただの階段じゃない。
イスルギは怪異の体験を売り買いする奇妙な男だった。
《目次》
第一話「十三階段」
第二話「忌み地」
第三話「凶宅」
第四話「呪詛箱」
第五話「肉人さん」
第六話「悪夢」
最終話「触穢」
※他サイトでも公開しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。
===
エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中
【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
霊和怪異譚 野花と野薔薇[改稿前]
野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。
静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。
『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。
一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。
語られる怪談はただの物語ではない。
それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。
やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。
日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。
あなたも一席、語りを聞いてみませんか?
完結いたしました。
タイトル変更しました。
旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
本作は改稿前/改稿後の複数バージョンが存在します
掲載媒体ごとに内容が異なる場合があります。
改稿後小説作品はカイタとネオページで見られます
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる