神隠しな戦国おたく

TAKAHARA HIROKI

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最終章:時を越える弾丸 第1章時の呼び声

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ギャレットとの決戦から十五年。
 椎葉(しいば)の地は、蒸気と緑が共生する、世界で唯一の美しい産業都市として静かに繁栄していた。
 鷹野博史は四十歳になっていた。
 かつての修羅の面影は消え、今では里の子供たちに科学を教える穏やかな「先生」として暮らしている。
 その隣には、変わらぬ美しさを持つ妻・小雪と、十歳になる一人娘がいた。
 娘の名は、時(とき)。
 博史が越えてきた「時」と、この時代で刻んだ愛おしい「時」への想いを込めて名付けられた。
 彼女は、小雪の涼やかな瞳と、博史の好奇心旺盛な性格を受け継いだ、聡明な少女に育っていた。
 だが、その平穏は、ある夏の嵐の夜に破られた。
 ズズズズズ……。
 地鳴りとともに、空が紫色に裂けた。
 それは雷ではない。博史がこの時代に来た日――十五年前のあの日と同じ、**「時空の歪み(タイムホール)」**だった。
「……来たか」
 博史は自宅の書斎で、時計の針が振り切れるのを見ていた。
 再び開いた帰還の扉。これが恐らく、最後のチャンスだ。
 2025年の日本へ帰る、唯一の道。
「お父様……空が、変よ」
 時(とき)が不安げに博史の袖を掴む。
「大丈夫だ、時。ただの嵐だよ」
 博史は娘の頭を撫でたが、その手は微かに震えていた。
 その直後。
 里の境界線にある警鐘が、悲鳴のように鳴り響いた。
 カンカンカンカンッ!!
「報告! 正体不明の武装集団が侵入! 工場地区へ向かっています!」
 駆け込んできた警備兵が叫ぶ。
 時の歪みが引き起こした磁気嵐に乗じて、この里の「オーバーテクノロジー」を狙う列強の傭兵団――プロの略奪者たちが動き出したのだ。
「小雪! 時を連れて裏山のシェルターへ逃げろ!」
 博史は叫んだ。
「あなたはどうするのですか!?」
「僕は工場の重要データを破棄してから行く。奴らに僕たちの『時』を渡すわけにはいかない!」
 小雪は何かを言いかけたが、博史の決意に満ちた目を見て、頷いた。
「時、行きましょう! お父様は後で来ます!」
「いや! お父様も一緒じゃなきゃ嫌!」
 泣き叫ぶ時を抱きかかえ、小雪は雨の中へと走っていった。
 家族の背中を見送った後、博史は書斎の隠し棚を開けた。
 そこには、油紙に包まれた一丁のリボルバーがあった。
 十五年前、多くの血を吸い、そして平和をもたらして封印された**「愛銃」**だ。
 博史は冷たい鉄の感触を確かめ、シリンダーを弾いた。
 装填されているのは六発。
 この六発の弾丸が、鷹野博史という男の、人生の残り時間の全てだ。
「……行こう。これが、最後の仕事だ」
 博史は愛銃を懐に入れ、紫色の稲妻が走る嵐の中へと飛び出した。
 頭上には、彼を元の世界へ誘う「光の穴」が渦巻いている。
 帰還か、それとも死か。
 時(とき)という名の愛娘を守るため、博史は最後の戦場へと走る。
(最終章 第1章 完)
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