紅の忍法帖 ~伊賀幕府・ラスト・アナログ~

TAKAHARA HIROKI

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第20章:空の強襲

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海上、高度五百メートル。
 風切り音だけが耳を打つ世界。
 眼下には、敵のメガフロート『海神(わだつみ)』が、不夜城のように光り輝いている。
 無数の対空レーダーが回転しているが、木と紙で作られた大凧には反応しない。
 (……見える。甲板にひしめく機械兵たちが)
 疾風は凧を操り、揚羽にハンドサインを送る。
 『降下用意』。
 揚羽が頷き、簪(かんざし)を口にくわえた。
 要塞の真上。
 疾風は凧のロープを切断した。
 ヒュゴオオオッ!
 自由落下。
 胃が浮き上がるような浮遊感の後、極限の速度で甲板が迫る。
 二人は空中で風呂敷のような布を広げた。忍法・ムササビの術。空気抵抗を利用し、着地の寸前で急減速する。
 ドォン!!
 二人が甲板に降り立った衝撃音で、敵の警備ドローンが一斉に振り返った。
 だが、遅い。
「開演の時間よ!」
 揚羽が着地と同時に回転し、ドレスの中に隠していた無数の「まきびし」をばら撒いた。
 ただの鉄ではない。強力な磁力を帯びた磁石まきびしだ。
 殺到したドローンや機械兵たちが、足元の磁石に吸い寄せられ、互いに衝突して転倒する。
「斬り捨てろ!」
 疾風が抜刀し、混乱する敵陣へ斬り込む。
 鋼鉄のボディも、関節の隙間を狙えば脆い。
 次々と空から降りてくる百人の忍者たち。
 槍、鎖鎌、手裏剣。
 時代錯誤な武器を持った黒装束の集団が、最新鋭のサイボーグ部隊を圧倒していく。
 警報が鳴り響く中、揚羽は不敵に笑い、監視カメラに向かって投げキッスを送った。
「さあ、ヴォイド。人間様の底力、見せてあげるわ」
 鋼鉄の魔城で、最後にして最大の夜会が始まった。
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