紅の忍法帖 ~伊賀幕府・ラスト・アナログ~

TAKAHARA HIROKI

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第24章:阿吽(あうん)の呼吸

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最上階、司令室前。
 そこで二人を待ち受けていたのは、ヴォイドの近衛師団だった。
 全身をステルス迷彩で覆い、音もなく動く六体の強化兵士。彼らは個別の意思を持たず、一つのAIによって統率された「群体」として襲いかかってくる。
「……厄介だな。一人が攻撃すれば、他の五人が死角を突いてくる」
 疾風が刀を正眼に構える。
 揚羽は乱れた着物の裾を裂き、太ももに結び直して動きやすくした。
「疾風、言葉はいらないわ。……私の背中、空けておくから」
 戦闘開始のゴングはなかった。
 殺気が弾けた瞬間、六体の敵が同時に跳躍した。
 だが、二人は動じない。
 疾風が右へ踏み込むと、揚羽はまるで吸い寄せられるように左へ回る。
 疾風が上段から斬り下ろすと、その下を揚羽が滑り込み、敵の足を払う。
 インカムも無線もない。
 あるのは、背中に感じる互いの体温と、呼吸の音だけ。
 (疾風が息を吸った。次は大きく踏み込む)
 (揚羽の重心が傾いた。右からの攻撃を誘っている)
 思考ではない。反射と信頼。
 幼い頃から同じ里で育ち、共に修羅場を潜り抜けてきた二人だけが持つ**「阿吽の呼吸」**。
 それは、毎秒数億回の演算を行うAIですら予測不可能な「不確定なリズム」だった。
 ズバッ!
 疾風の刃が敵の首を飛ばすと同時に、その胴体を揚羽が踏み台にして高く跳ぶ。
 空中からの簪(かんざし)の乱れ打ち。
 六体の強化兵士は、二人の連携に翻弄され、互いに交錯して自滅していった。
 最後に立っていたのは、息を切らせながらも、背中合わせで微笑む二人だけだった。
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