15 / 17
フツウゾウムシの生息域
しおりを挟む
新たな仮説を想起してからと言うもの、本種の分布が赤道付近の低緯度地域に偏っていることが、あらためて気にかかるようになった。
熱帯性昆虫としては特別なことではない。
気温、湿度、植生といった要因で説明することもできる。
それでも、これまでの仮説を念頭に置いた状態で眺めると、単なる気候分布として片づけてよいのか、判断がつきにくくなっていた。
もし、この昆虫が利用している手がかりが、三次元空間に閉じたものではないとしたら。
その感度は、場所によって一様ではない可能性がある。
そう考えたとき、私は生息環境の中で、もう一つの空間的な量を無視できなくなっていた。
重力である。
地球の重力は一様ではない。
緯度、地形、地下構造の違いによって、重力加速度にはわずかながら地域差が存在する。
これらは地球物理学の分野ではよく知られた事実であり、全球的な分布データも公開されている。
私は、公開されている地球重力分布のデータを参照し、それをフツウゾウムシの既知の分布記録と重ね合わせてみた。
結果は、予想以上に明瞭だった。
重力加速度が相対的に大きい地域では、本種の分布記録は少なく、赤道付近を中心とした、比較的重力変動の小さい帯域に、観察例が集中していた(Fig.6)。
もちろん、これは因果関係を示すものではない。
生態学的、地質学的な要因による説明も、いくつも考えられる。
それでも、この偏りが偶然であると即断するには、分布の一致はあまりにも整って見えた。
私はこの結果をもって、仮説が立証されたとは考えていない。
ただ、「高次元空間を経由する物理的相互作用」という仮定と、この分布傾向とが、少なくとも矛盾しない形で並んでいることだけは、否定できなかった。
Fig.6 a.地球の重力分布 b.主なフツウゾウムシの生息分布
熱帯性昆虫としては特別なことではない。
気温、湿度、植生といった要因で説明することもできる。
それでも、これまでの仮説を念頭に置いた状態で眺めると、単なる気候分布として片づけてよいのか、判断がつきにくくなっていた。
もし、この昆虫が利用している手がかりが、三次元空間に閉じたものではないとしたら。
その感度は、場所によって一様ではない可能性がある。
そう考えたとき、私は生息環境の中で、もう一つの空間的な量を無視できなくなっていた。
重力である。
地球の重力は一様ではない。
緯度、地形、地下構造の違いによって、重力加速度にはわずかながら地域差が存在する。
これらは地球物理学の分野ではよく知られた事実であり、全球的な分布データも公開されている。
私は、公開されている地球重力分布のデータを参照し、それをフツウゾウムシの既知の分布記録と重ね合わせてみた。
結果は、予想以上に明瞭だった。
重力加速度が相対的に大きい地域では、本種の分布記録は少なく、赤道付近を中心とした、比較的重力変動の小さい帯域に、観察例が集中していた(Fig.6)。
もちろん、これは因果関係を示すものではない。
生態学的、地質学的な要因による説明も、いくつも考えられる。
それでも、この偏りが偶然であると即断するには、分布の一致はあまりにも整って見えた。
私はこの結果をもって、仮説が立証されたとは考えていない。
ただ、「高次元空間を経由する物理的相互作用」という仮定と、この分布傾向とが、少なくとも矛盾しない形で並んでいることだけは、否定できなかった。
Fig.6 a.地球の重力分布 b.主なフツウゾウムシの生息分布
0
あなたにおすすめの小説
おめでとう。社会貢献指数が上がりました。
水井伸輔(Mizui Shinsuke)
SF
「正しく」生きれば、どこまでも優しいこの国。
17歳のシュウは、社会貢献指数を高め、平穏な未来を手に入れようとしていた。しかし、システムに疑問を抱く父のランクは最低の「D」。
国家機能維持条項が発令された夜、シュウの端末に現れたのは、父の全権利を支配するための「同意」ボタンだった。
支配か、追放か。指先ひとつで決まる、親子の、そして人間の尊厳の行方。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恋愛リベンジャーズ
廣瀬純七
SF
拓也は、かつての恋人・純への後悔を抱えたまま生きてきた。ある日、過去へ戻れる不思議なアプリを手に入れるが戻った先で彼を待っていたのは、若き日の純ではなく――純そのものになってしまった自分自身だった。かつての恋人とやり直すはずが、過去の自分を相手に恋をするという奇妙で切ない関係が始まっていく。時間と心が交差する、不思議な男女入れ替わりストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
