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どこでも出てくる
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「零~」
廊下で。
「れ~い~」
教室で。
「零!」
時にはトイレで。
「れいれいれいれいうるさい!」
颯太が零と名を呼ぶ度に尻尾が揺れて耳が立つ。まったく気の収まらない学園生活だ。
ついに零は怒って颯太を怒鳴るが颯太はへらへら笑っている。
「何笑ってる!」
「尻尾」
指摘されて気づく。また揺れていたらしい。
零は己の尻尾を抱きしめながら颯太を睨む。これも全部昨日やってた番組のせいだ!
◇
「本能相性なんて本当にあるんですか?」
テレビから女性の声が聞こえる。獣人について深く知ろう! という人間向きの番組らしい。
「人間が相手の体臭をいい匂いだと思うのと同じです。相性のいい人の近くだと勝手に本能が出てしまうんですね」
「へえ~」
解説のおじさんの言葉を聞いて零が思い浮かべたのは颯太のことだ。颯太の近くにいるとどうも尻尾と耳が変になる。
……。
「まさか本能相性じゃないよな」
違うに決まってる。あんな性格の悪いヤツが本能相性なんて真っ平だ。
颯太はぷんぷん怒りながらテレビを消した。
これが昨夜のこと。
「零~別に何もしないってえ」
この前、颯太と触れ合ってから零は颯太を見る度に威嚇している。だからだろう、何もしないと言いながら彼は近づく。颯太を信じてない訳では無いが、尻尾と耳を触られるのは本当に嫌なのだ。
「ほら、仲直りのギュー」
言って抱きしめられる。瞬間颯太の匂いが鼻腔を通り抜け身体中に回る。尻尾の付け根がびびびと痺れ耳が勝手に垂れる。それに気がついた颯太が「どうしたの?」と言ってくるが零は今それどころではなかった。
(な、なにこれなにこれなにこれ!)
勝手に肩を組まれることはあっても正面から抱きしめられることはなかった。だからこんな彼の匂いに包み込まれるみたいになると思ってもみなかったのだ。
零は顔を真っ赤にして俯く。決して抱き締め返したりなどしないが、拒否もしなかった。
「……」
颯太の手があがる。そして零の頭に乗っかると毛並みにそって撫でられる。
「!」
「顔、真っ赤でかわいいね」
「!!!」
耳元で囁かれた。基本的な聴覚は丸い方の耳だが、細かい音などは三角耳から聞こえる獣人。零はその颯太の囁き声を三角耳から受け取ってしまった。
三角耳が勝手に動き尻尾がムズムズする。
「う、うるさい……」
辛うじて否定出来たが、声は頼りなかった。
「もっと触っていい?」
三角耳に囁かれる。尻尾を撫でられ変な声が出た。
——颯太に撫でられると変だ。
ぴりぴりしてゾクゾクして、むず痒いのは嫌なのに嫌じゃない。むしろ、もっと……いや、そんなはずはない。
否定しなきゃ、嫌だって言わなきゃ。
目の前にある制服を零は握りしめる。それしか出来ないのだ。体が動かず、プルプル震えて耐えるしか出来ない。
「ゃ、あ……」
耳。食べられた。
颯太は零の自慢の三角耳をぱくりと口に含んでしまった。
「っ!!」
耳の内側を舌でなぞられ、ゾワゾワする。甘噛みされるたび声が漏れた。いやだ、こんなの知らない! 零は必死に颯太の服を掴むが力が入らず震えている。
だめなのに、気持ち良くなってる場合じゃないのに……! そんなときだった。廊下から足音が聞こえたのだ。それと同時に予鈴のチャイムも鳴り始める。
助かったという思いと名残惜しいという思いが入り交じるが、ずっと抱き締められている訳にもいかないので零はほっと息をついたのだった。
◇
「零、お昼食べよ」
昼休み。颯太はいつものように零に声をかける。しかし、今日はいつもと違って零の機嫌が悪い。尻尾を逆立て、耳を尖らせて威嚇するみたいに颯太を睨んでいる。
「どうしたの?」
「うるさい!」
そう言って教室から出て行ってしまった。そんな様子にクラスメイトも驚いているようだ。
「なんかあったん? お前ら」
クラスメイトが聞いてくるが、颯太は首を傾げるしかない。何かしただろうか? いや、特に心当たりはないのだが……。
「わかんない」
颯太はそう言ったが、クラスメイトも流石にそれだけじゃ納得してくれない。
「なんかしたんじゃないの? 心当たりないの?」
言われて考える。昨日は特に何もしてないのだが……いや、尻尾を触ったな。もしかしてそれがいけなかったのだろうか? でもそんなことでここまで怒るか?
「……耳触っちゃったかも」
そんな颯太の答えにクラスメイト達は納得したように頷いた。そして「そりゃ怒るわ……」と言うのだ。
しかしそんな反応されても零が何に怒ってるのかさっぱりわからないのだから仕方ない。
「謝った方がいいんじゃないの?」
そんな助言をもらうが、果たして何が悪かったのか……。耳触ったこと? いやでも尻尾はいいのか? 颯太は考えた末、本人に聞くことにした。
颯太は人の話は基本聞いていない。
◇
零は一人廊下を歩いていた。昼休みなので教室から人が出てくるためあまり人気のないところに行くことは出来ないが、それでも人気の少ない場所を探すように歩く。そしてそんな時に限って人と出会すものだ。
「あれ? 零くん」
「あ」
それは一番会いたくない人間。最もこの世で怖いもの。カラスの獣人である。カラスは慎重な性格ではあるものの、その鋭い牙につつかれたら痛いし賢いので厄介だ。なので大抵の獣人の天敵はカラスまたはカラスの獣人である。
「どうしたの? こんなところで」
「……別に。あんたこそなんでこんなとこにいるの?」
零はカラスから視線を外しながら聞く。そんな零の様子にカラスは首を傾げるが、すぐに合点がいったのか笑った。
「ああ! もしかして僕に会いに来てくれたのかな? 嬉しいなあ」
「は!? なんでおれが!」
そんな訳あるかと否定したかったがそれは出来なかった。なぜならカラスに抱きつかれたからだ。そして尻尾を触られた。
「っ!!」
びくんと体が跳ねる。慌てて引き剥がそうとしても力で勝てるはずもない。
「尻尾、やっぱりかわいいね」
耳元で囁かれて力が抜ける。元々体格差もあるため抵抗らしい抵抗など出来ないのだ。それでもこの行為だけは許せないので零は必死に虎を引き剥がした。
「お前! もうおれに近づくな!」
そう言って逃げ去る零をカラスは笑って見ていたのだった。
廊下で。
「れ~い~」
教室で。
「零!」
時にはトイレで。
「れいれいれいれいうるさい!」
颯太が零と名を呼ぶ度に尻尾が揺れて耳が立つ。まったく気の収まらない学園生活だ。
ついに零は怒って颯太を怒鳴るが颯太はへらへら笑っている。
「何笑ってる!」
「尻尾」
指摘されて気づく。また揺れていたらしい。
零は己の尻尾を抱きしめながら颯太を睨む。これも全部昨日やってた番組のせいだ!
◇
「本能相性なんて本当にあるんですか?」
テレビから女性の声が聞こえる。獣人について深く知ろう! という人間向きの番組らしい。
「人間が相手の体臭をいい匂いだと思うのと同じです。相性のいい人の近くだと勝手に本能が出てしまうんですね」
「へえ~」
解説のおじさんの言葉を聞いて零が思い浮かべたのは颯太のことだ。颯太の近くにいるとどうも尻尾と耳が変になる。
……。
「まさか本能相性じゃないよな」
違うに決まってる。あんな性格の悪いヤツが本能相性なんて真っ平だ。
颯太はぷんぷん怒りながらテレビを消した。
これが昨夜のこと。
「零~別に何もしないってえ」
この前、颯太と触れ合ってから零は颯太を見る度に威嚇している。だからだろう、何もしないと言いながら彼は近づく。颯太を信じてない訳では無いが、尻尾と耳を触られるのは本当に嫌なのだ。
「ほら、仲直りのギュー」
言って抱きしめられる。瞬間颯太の匂いが鼻腔を通り抜け身体中に回る。尻尾の付け根がびびびと痺れ耳が勝手に垂れる。それに気がついた颯太が「どうしたの?」と言ってくるが零は今それどころではなかった。
(な、なにこれなにこれなにこれ!)
勝手に肩を組まれることはあっても正面から抱きしめられることはなかった。だからこんな彼の匂いに包み込まれるみたいになると思ってもみなかったのだ。
零は顔を真っ赤にして俯く。決して抱き締め返したりなどしないが、拒否もしなかった。
「……」
颯太の手があがる。そして零の頭に乗っかると毛並みにそって撫でられる。
「!」
「顔、真っ赤でかわいいね」
「!!!」
耳元で囁かれた。基本的な聴覚は丸い方の耳だが、細かい音などは三角耳から聞こえる獣人。零はその颯太の囁き声を三角耳から受け取ってしまった。
三角耳が勝手に動き尻尾がムズムズする。
「う、うるさい……」
辛うじて否定出来たが、声は頼りなかった。
「もっと触っていい?」
三角耳に囁かれる。尻尾を撫でられ変な声が出た。
——颯太に撫でられると変だ。
ぴりぴりしてゾクゾクして、むず痒いのは嫌なのに嫌じゃない。むしろ、もっと……いや、そんなはずはない。
否定しなきゃ、嫌だって言わなきゃ。
目の前にある制服を零は握りしめる。それしか出来ないのだ。体が動かず、プルプル震えて耐えるしか出来ない。
「ゃ、あ……」
耳。食べられた。
颯太は零の自慢の三角耳をぱくりと口に含んでしまった。
「っ!!」
耳の内側を舌でなぞられ、ゾワゾワする。甘噛みされるたび声が漏れた。いやだ、こんなの知らない! 零は必死に颯太の服を掴むが力が入らず震えている。
だめなのに、気持ち良くなってる場合じゃないのに……! そんなときだった。廊下から足音が聞こえたのだ。それと同時に予鈴のチャイムも鳴り始める。
助かったという思いと名残惜しいという思いが入り交じるが、ずっと抱き締められている訳にもいかないので零はほっと息をついたのだった。
◇
「零、お昼食べよ」
昼休み。颯太はいつものように零に声をかける。しかし、今日はいつもと違って零の機嫌が悪い。尻尾を逆立て、耳を尖らせて威嚇するみたいに颯太を睨んでいる。
「どうしたの?」
「うるさい!」
そう言って教室から出て行ってしまった。そんな様子にクラスメイトも驚いているようだ。
「なんかあったん? お前ら」
クラスメイトが聞いてくるが、颯太は首を傾げるしかない。何かしただろうか? いや、特に心当たりはないのだが……。
「わかんない」
颯太はそう言ったが、クラスメイトも流石にそれだけじゃ納得してくれない。
「なんかしたんじゃないの? 心当たりないの?」
言われて考える。昨日は特に何もしてないのだが……いや、尻尾を触ったな。もしかしてそれがいけなかったのだろうか? でもそんなことでここまで怒るか?
「……耳触っちゃったかも」
そんな颯太の答えにクラスメイト達は納得したように頷いた。そして「そりゃ怒るわ……」と言うのだ。
しかしそんな反応されても零が何に怒ってるのかさっぱりわからないのだから仕方ない。
「謝った方がいいんじゃないの?」
そんな助言をもらうが、果たして何が悪かったのか……。耳触ったこと? いやでも尻尾はいいのか? 颯太は考えた末、本人に聞くことにした。
颯太は人の話は基本聞いていない。
◇
零は一人廊下を歩いていた。昼休みなので教室から人が出てくるためあまり人気のないところに行くことは出来ないが、それでも人気の少ない場所を探すように歩く。そしてそんな時に限って人と出会すものだ。
「あれ? 零くん」
「あ」
それは一番会いたくない人間。最もこの世で怖いもの。カラスの獣人である。カラスは慎重な性格ではあるものの、その鋭い牙につつかれたら痛いし賢いので厄介だ。なので大抵の獣人の天敵はカラスまたはカラスの獣人である。
「どうしたの? こんなところで」
「……別に。あんたこそなんでこんなとこにいるの?」
零はカラスから視線を外しながら聞く。そんな零の様子にカラスは首を傾げるが、すぐに合点がいったのか笑った。
「ああ! もしかして僕に会いに来てくれたのかな? 嬉しいなあ」
「は!? なんでおれが!」
そんな訳あるかと否定したかったがそれは出来なかった。なぜならカラスに抱きつかれたからだ。そして尻尾を触られた。
「っ!!」
びくんと体が跳ねる。慌てて引き剥がそうとしても力で勝てるはずもない。
「尻尾、やっぱりかわいいね」
耳元で囁かれて力が抜ける。元々体格差もあるため抵抗らしい抵抗など出来ないのだ。それでもこの行為だけは許せないので零は必死に虎を引き剥がした。
「お前! もうおれに近づくな!」
そう言って逃げ去る零をカラスは笑って見ていたのだった。
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