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一、プロローグ
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一、プロローグ
目が覚めたら、俺は知らない記憶を持っていた。なんて信じられるだろうか。
『俺』つまりアレンはごく普通の男で、妹が経営する食堂をお手伝いしたりと人当たりのいい人物のはず。
そんな俺に知らないはずの記憶が蘇る。
前世とでも言うべきか、そうだな。
例えば、この記憶が前世だとしよう。
前世での俺は、日本という国で普通の社会人として働いていた。ちょっと読書好きで、もらった賃金を書籍に溶かす時もあった。分かりやすくアレンと言うが、アレンの世界では本は高価なので信じられない気持ちだ。
さらに信じられないのは、その前世の男、俺が読んだ書籍の中にこの世界について書かれた書があったこと。タイトルは思い出せないが、内容は思い出せる。
たしか主人公でヒロインはアレンの妹、ヒナ。ヒナの経営する食堂には週に二日来る常連がおり、それがド級のイケメンだと。
ヒナは最初あしらっていたが彼の健気な姿にいつしか心奪われるようになって——という内容だった。一般的なファンタジーラブコメとでも言うか。
原作では、ヒナとその常連がくっついてハッピーエンド。俺(アレン)は名もないただのモブで、妹の幸せを見守るだけの存在だったはずだ。
しかしここにいる俺はこの先の展開を知ってしまった。このままだとバタフライエフェクトが起きてふたりは結ばれないのでは、と不安に駆られる。
バタフライエフェクトとは、ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスで竜巻が起こる。というのが由来で非常に小さな出来事や初期条件のわずかな違いが、最終的に予想もしていなかったような大きな出来事につながる……という前世で有名な概念である。つまりは予想不可能とでも言うか。
それと同時に原作パワーというのもあった。史実と異なる展開になった時、世界の原作パワーなるよく分からん巨大な力によって物語が史実へと修正することだ。
俺としても書籍では本編にあまりかかわらないキャラなので無事妹が常連とくっついてくれれば嬉しいが。さて一体どうなることやら。
ベッドの上で呆然と座っていたら、木製の扉がギイと音を立てて開き、肩くらいのピンクっぽい茶髪の少女がやってくる。この子がヒロインで俺の妹のヒナだ。
「お兄ちゃん! 遅いから迎えに来たよ!」
布団をひっぺ返してくるヒナはプンスコと怒りながら「心配したんだよ! いつも遅刻しないお兄ちゃんが遅いから!」と心配してくれる。そんな姿が可愛く思えて頭を撫でるとヒナは目をパチクリさせて「どうしたの?」と首を傾げた。
「いや、俺の妹は可愛いなって」
「なにそれ! そんなこと普段言わない癖に!」
思ったことを言えばヒナは頬を膨らませながら部屋から出て行った。照れ屋なのだ、俺の妹は。
前世の記憶がないアレンは、ヒナのことは大切にしていたがそれを表に出すタイプの人間ではなかった。
前世の疲れた社会人の記憶がある今の俺にとってはヒナが愛おしくて仕方ない。正直、癒される。前世での俺にも妹はいたが生意気で可愛くはなかった為余計そう思うのかもしれない。
ヒナが階段を降りていく音がする。少しして下から声をかけられる。
「早く降りてきて!」
「今行くー」
返事をして俺はベッドから立ち上がる。
今日も一日が始まる。
目が覚めたら、俺は知らない記憶を持っていた。なんて信じられるだろうか。
『俺』つまりアレンはごく普通の男で、妹が経営する食堂をお手伝いしたりと人当たりのいい人物のはず。
そんな俺に知らないはずの記憶が蘇る。
前世とでも言うべきか、そうだな。
例えば、この記憶が前世だとしよう。
前世での俺は、日本という国で普通の社会人として働いていた。ちょっと読書好きで、もらった賃金を書籍に溶かす時もあった。分かりやすくアレンと言うが、アレンの世界では本は高価なので信じられない気持ちだ。
さらに信じられないのは、その前世の男、俺が読んだ書籍の中にこの世界について書かれた書があったこと。タイトルは思い出せないが、内容は思い出せる。
たしか主人公でヒロインはアレンの妹、ヒナ。ヒナの経営する食堂には週に二日来る常連がおり、それがド級のイケメンだと。
ヒナは最初あしらっていたが彼の健気な姿にいつしか心奪われるようになって——という内容だった。一般的なファンタジーラブコメとでも言うか。
原作では、ヒナとその常連がくっついてハッピーエンド。俺(アレン)は名もないただのモブで、妹の幸せを見守るだけの存在だったはずだ。
しかしここにいる俺はこの先の展開を知ってしまった。このままだとバタフライエフェクトが起きてふたりは結ばれないのでは、と不安に駆られる。
バタフライエフェクトとは、ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスで竜巻が起こる。というのが由来で非常に小さな出来事や初期条件のわずかな違いが、最終的に予想もしていなかったような大きな出来事につながる……という前世で有名な概念である。つまりは予想不可能とでも言うか。
それと同時に原作パワーというのもあった。史実と異なる展開になった時、世界の原作パワーなるよく分からん巨大な力によって物語が史実へと修正することだ。
俺としても書籍では本編にあまりかかわらないキャラなので無事妹が常連とくっついてくれれば嬉しいが。さて一体どうなることやら。
ベッドの上で呆然と座っていたら、木製の扉がギイと音を立てて開き、肩くらいのピンクっぽい茶髪の少女がやってくる。この子がヒロインで俺の妹のヒナだ。
「お兄ちゃん! 遅いから迎えに来たよ!」
布団をひっぺ返してくるヒナはプンスコと怒りながら「心配したんだよ! いつも遅刻しないお兄ちゃんが遅いから!」と心配してくれる。そんな姿が可愛く思えて頭を撫でるとヒナは目をパチクリさせて「どうしたの?」と首を傾げた。
「いや、俺の妹は可愛いなって」
「なにそれ! そんなこと普段言わない癖に!」
思ったことを言えばヒナは頬を膨らませながら部屋から出て行った。照れ屋なのだ、俺の妹は。
前世の記憶がないアレンは、ヒナのことは大切にしていたがそれを表に出すタイプの人間ではなかった。
前世の疲れた社会人の記憶がある今の俺にとってはヒナが愛おしくて仕方ない。正直、癒される。前世での俺にも妹はいたが生意気で可愛くはなかった為余計そう思うのかもしれない。
ヒナが階段を降りていく音がする。少しして下から声をかけられる。
「早く降りてきて!」
「今行くー」
返事をして俺はベッドから立ち上がる。
今日も一日が始まる。
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