転生兄が妹の王子を奪っちゃった件

ちなみ

文字の大きさ
1 / 12

一、プロローグ

しおりを挟む
    一、プロローグ


 目が覚めたら、俺は知らない記憶を持っていた。なんて信じられるだろうか。
『俺』つまりアレンはごく普通の男で、妹が経営する食堂をお手伝いしたりと人当たりのいい人物のはず。
 そんな俺に知らないはずの記憶が蘇る。
 前世とでも言うべきか、そうだな。
 例えば、この記憶が前世だとしよう。
 前世での俺は、日本という国で普通の社会人として働いていた。ちょっと読書好きで、もらった賃金を書籍に溶かす時もあった。分かりやすくアレンと言うが、アレンの世界では本は高価なので信じられない気持ちだ。
 さらに信じられないのは、その前世の男、俺が読んだ書籍の中にこの世界について書かれた書があったこと。タイトルは思い出せないが、内容は思い出せる。
 たしか主人公でヒロインはアレンの妹、ヒナ。ヒナの経営する食堂には週に二日来る常連がおり、それがド級のイケメンだと。
 ヒナは最初あしらっていたが彼の健気な姿にいつしか心奪われるようになって——という内容だった。一般的なファンタジーラブコメとでも言うか。
 原作では、ヒナとその常連がくっついてハッピーエンド。俺(アレン)は名もないただのモブで、妹の幸せを見守るだけの存在だったはずだ。
 しかしここにいる俺はこの先の展開を知ってしまった。このままだとバタフライエフェクトが起きてふたりは結ばれないのでは、と不安に駆られる。
 バタフライエフェクトとは、ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスで竜巻が起こる。というのが由来で非常に小さな出来事や初期条件のわずかな違いが、最終的に予想もしていなかったような大きな出来事につながる……という前世で有名な概念である。つまりは予想不可能とでも言うか。
 それと同時に原作パワーというのもあった。史実と異なる展開になった時、世界の原作パワーなるよく分からん巨大な力によって物語が史実へと修正することだ。
 俺としても書籍では本編にあまりかかわらないキャラなので無事妹が常連とくっついてくれれば嬉しいが。さて一体どうなることやら。
 ベッドの上で呆然と座っていたら、木製の扉がギイと音を立てて開き、肩くらいのピンクっぽい茶髪の少女がやってくる。この子がヒロインで俺の妹のヒナだ。
「お兄ちゃん! 遅いから迎えに来たよ!」
 布団をひっぺ返してくるヒナはプンスコと怒りながら「心配したんだよ! いつも遅刻しないお兄ちゃんが遅いから!」と心配してくれる。そんな姿が可愛く思えて頭を撫でるとヒナは目をパチクリさせて「どうしたの?」と首を傾げた。
「いや、俺の妹は可愛いなって」
「なにそれ! そんなこと普段言わない癖に!」
 思ったことを言えばヒナは頬を膨らませながら部屋から出て行った。照れ屋なのだ、俺の妹は。
 前世の記憶がないアレンは、ヒナのことは大切にしていたがそれを表に出すタイプの人間ではなかった。
 前世の疲れた社会人の記憶がある今の俺にとってはヒナが愛おしくて仕方ない。正直、癒される。前世での俺にも妹はいたが生意気で可愛くはなかった為余計そう思うのかもしれない。
 ヒナが階段を降りていく音がする。少しして下から声をかけられる。
「早く降りてきて!」
「今行くー」
 返事をして俺はベッドから立ち上がる。
 今日も一日が始まる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悩ましき騎士団長のひとりごと

きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。 ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。 『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。 ムーンライト様にも掲載しております。 よろしくお願いします。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しております

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

英雄の溺愛と執着

AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。 転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。 付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。 あの時までは‥。 主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。 そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。 そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。

交際0日婚の溺愛事情

江多之折(エタノール)
BL
死にたくはない。でも、生きたくもない。ふらふらと彷徨う根無し草は、世界の怖さを知っている。救いの手は、選ばれた者にだけ差し伸べられることも知っている。 だから緩やかに終わりを探して生きていた。 ──たった数回の鬼ごっこを経験するまでは。 誠実すぎて怖い人は、4回目の顔合わせで僕の夫となる。 そんな怖がりな男と誠実な男の、結婚生活の始まり。 ■現実だけど現実じゃない、そんな気持ちで読んでください。 ■家庭に関してトラウマを抱えている方は読まない方が良いと思います。

処理中です...