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二章
044 今後の方針
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「ラキシス!」
「はいっ!」
――ドォン!!!
問答無用で襲い掛かる敵を、見えない力が強引に地べたにへばりつかせる。
俺の声に反応したラキちゃんは、このような輩が現れた時の撃退用にと決めておいた重力魔法を使い、一網打尽にした。
神聖魔法を使える、所謂 『聖女』 を攫いにくるような連中だ。腕に覚えのある連中ばかりだろう。そんな奴等にギフトを使わせる余裕なんて与えない。
はっきり言ってラキちゃんの魔法はどれも一撃必殺の威力過ぎて、殺さず捕縛するには重力魔法くらいしか思いつかなかったからだったりもする。
以前メカリス湖で竜人に打ち込んだ雷魔法も、あれ竜人だから半死半生で済んだんだと思うんだよね。
潰れたヒキガエルのように砂浜にへばりつかされている敵に向かって俺は言い放つ。
「この天使の翼が目に入らぬか! ――ここにおわすお方をどなたと心得る。恐れ多くも大天使ラキシス様にあらせられるぞ! 頭が高い、控え居ろう!」
……すみません、ちょっと言ってみたかったんです。
「おっさん、頭が高いって、こいつ等これ以上頭下げれねーぞ」
ぐふっ、リンメイに冷静に突っ込まれてしまった……。
「なっ、天使だと!? ……話が違うぞ」
「お前ら誰に雇われて聖女様を攫いにきたんだよ?」
「……言う訳が無いだろう」
だよねえ。もう面倒くさいなあ……。
「ラキちゃん、すまないんだけど、もう一度サラス様に連絡してこいつ等どうしたら良いか聞いてもらえる?」
「はーい」
再び 『ピンポーン』 と軽快な音が鳴って空間に光の筋が走り、ゲートが開かれた。
出てきたのはサラス様だったのだが、鬼のような形相をしており、めちゃめちゃ怖い……。
「こいつ等ね?」
「うっ、うん……」
ラキちゃんもサラス様の顏に怯えてるよ……。
「まさか、天使ラクスなのか!? …………最早これまでか」
サラス様をラクス様と勘違いした連中は、どうやら観念したようだ。
だが様子がおかしい。
何かの気配を感じ取ったサラス様は連中に掌を向けた後、くりんと掌を返し剣指を作り、指先をクンと上げた。
すると連中の体から魔石のような何かが飛び出し、頭上に飛び出していく。
そして飛び出した物体は派手に爆発をした。
「簡単に死ねると思わない事ね」
こいつ等、自爆用の何かしらを体の中に仕込んでいたのか!
「そんなっ!?」
「死にそうになる度に神聖魔法で治してあげる。何日強がる事ができるかしら」
そう言い、サラス様はちょっとラキちゃんに見せられないような残忍な笑顔を見せた。
「誰に雇われたのか、これまで何人聖女を攫ってきたのか、どこへ連れ去ったのか全て吐いてもらうわよ」
ゲートからわらわらと魔族の兵士さん達が現れ、聖女を狙った集団を引っ捕らえて行く。
「なっ!? 魔族だと!」
「待ってくれ! どこへ連れて行くつもりだ!」
「たっ、頼む! 助けてくれ!」
もう二度と生きて帰れない事を察した連中は必死に赦しを乞う。
「聖女を狙う輩に慈悲は無い。――覚悟なさい」
サラス様はそう言い、俺達に手を振りながらゲートから帰って行った。
「サラスお姉ちゃん怖かった……」
「「うん……」」
俺達はマジックバッグを貰った喜びも吹っ飛び、サラス様達が消えて行った後も暫し立ち尽くしていた。
後日サラス様の方から教えてもらう事になるのだが、ラキちゃんを狙った連中はとある国の貴族が送り込んできたらしい。
メカリス湖での騒ぎの時に、ラキちゃんが神聖魔法を使っていたのを覚えていた商人が貴族に漏らしたようだ。
ギリメカリスを倒したのもラキちゃんだぞ。なぜ攫ってこれると思ったんだ……。
「なんか、もーあたいらだけでダンジョン潜った方がいいんじゃないか?」
夕食後のゆったりとしたひと時の歓談の際、リンメイが今後のダンジョン探索について提案してきた。
「うーん、たしかに臨時パーティ探している時間勿体ないもんなあ。それにラキちゃんにも攻撃をお願いして三人で進んだ方がよさそうではあるんだよね。でも人目がなぁ……」
「深層に向かうにつれて他の冒険者との鉢合わせも減ってくるでしょうし、力量を測れる人達しかいなくなるので、寧ろ寄ってこなくなると思いますよ?」
俺達の話を聞いていた大家さんが、そんな事を教えてくれた。
たしかにまともな冒険者なら、中層以降を三人で徘徊している奴等は寧ろ警戒すると思う。俺だってする。
「そういえば前から気になっていたんですが、大家さんもダンジョンへ行かれた事はあるんですか?」
「はい、ありますよ。三十層のフィールドエリアが樹海なので、そこでの薬草採取がしたくて昔頑張っちゃいました」
「おお、高層冒険者でしたか! 凄い!」
「大家さんはもうダンジョン行かないのか?」
「うーん、お店がありますしね。……でも……そうですね、皆さんが三十層以降の階層ボスに挑む時だけお邪魔しちゃおうかしら。ラキちゃんが居れば怖いもの無しな気がしますし」
大家さんはそう言ってウフフと笑った。
「ボス戦だけでも来てもらえると、とても助かります。その時は是非お願いします」
「分かりました。こちらこそよろしくお願いしますね」
これは嬉しい。ボス戦の時は大家さんに助っ人を頼める事になった!
「皆深く潜って行くのはいいけど、ちゃんと装備を整えながら進まないとダメよ」
「そうですね、気を付けます」
そうだな、ミリアさんが言うように階層に合わせて装備も揃えて行かないとまずいな。
「あたいらだけで潜るようになれば、一々くじ引きとか借金して分配とか気にしなくていーもんな。装備も狙って箱開けて行こうぜ」
「だな。今度はその辺狙って行ってみようか」
たしかにアイテムの分配が結構手間なんだよね。欲しいアイテムがあった場合、下手したらその日の稼ぎがマイナスになるから。
信頼のおけるメンバーだけなら分配の手間が省ける。
結局、俺達は臨時パーティを探す位ならラキちゃんも戦闘に参加してもらったほうが良いと判断して、中層以降は三人で進む事に決めた。
今日はこの世界の日曜日に当たる日で休日のため、ダンジョン前広場には魔導学院や神学校の生徒と見られる少年少女が結構いる。
彼らは冒険者の護衛やパーティを探す場合、基本、直接冒険者と交渉はせずギルドを介して行う。
ギルドが最低限の節度を持った冒険者を斡旋し、冒険者狩りのような輩を組ませないようにするためだ。
なのだが……。
「もし、そちらを行かれる冒険者の方々。よろしければ私達と臨時パーティを組んでくださいませんか?」
ダンジョンへ向かう俺達に突然声を掛けてきたのは、神学校の生徒と思われるローブのフードを目深に被った少女だった。
後ろには同学年と思われる鎧を着込んだ少年が二人、護衛のように佇んでいる。きっと神学校でも騎士科の生徒だろう。
どちらも精悍な顔つきだが、片方は柔和な顔つきで、もう片方は威圧的な顔つきと対照的だ。
「ん? 俺達の事かな?」
「はい、そうです」
参ったな、折角三人で潜る事にしようと決めた矢先に俺達のパーティに声を掛けてくる存在が現れるなんて。
どうする? って感じに俺達三人は顔を見合わせてしまう。
「見たところ学生さんのようだが、ギルドを介さなくて良いのか?」
「ああ、えっと、それは…………、そちらに神官の身なりの方がおりましたので、問題なさそうなパーティと判断致しました」
「ふーん……。俺達はこれから十一層へ進む予定なんだが、君ら十層の転移門は使えるのか?」
「はい、使えます。私共も中層の一つ目を探索したいと思っておりました」
進む階層は問題無し……か、さてどうしよう。後ろの少年二人は身なりからして、どう考えても前衛だよな。
前衛ばかりのパーティになってしまうので、正直バランスが悪い。
更にこいつ等がいるとラキちゃんが攻撃に参加できない。となると回復魔法士二名になるのか……。
「正直、前衛過多でバランスが悪い気もするが、それでも良いのかい?」
「中層の一つ目はゴーレムが主要な魔物ですので、寧ろ都合が良いかと存じます」
「なるほど」
ゴーレムは攻撃魔法が効きにくく、倒すには核となる石を砕かないといけない。たしかにそうか。
俺はラキちゃんとリンメイを見ると、二人とも俺にお任せって感じだったので、パーティを許可する事にした。
まぁたまには良いだろ。
「分かった。――それでは今日のみの臨時パーティを組もう。よろしく頼む」
「はい! よろしくお願い致します」
交渉が成立し、お互い自己紹介をしようと思った矢先に、威圧的な顔つきをした少年が突然口を開いた。
「まず初めに言っておく。こちらのラムリス様は大変高貴なお方だ。失礼の無いように気を付けるんだな。後、君は教会関係者だな? ラムリス様はいずれ君の上に立つ存在となるお方だ。しっかりと尽くすように」
「なっ、なんてことを言うんですか!」
「ラムリス様、こういう事は初めが肝心です」
「黙りなさい!」
俺達は思わず呆気にとられた後、三人で顔を見合わせニンマリと笑って踵を返した。
「やっぱりパーティの件は無しだ。――さようなら高貴なお方」
「じゃあなー」
「ばいばーい」
「おっ、お待ちください! 連れの者が大変失礼致しました! 私が代わって謝罪致します! どうかお待ちを!」
「うちの大事なメンバーに小間使いをさせるつもりはない。もっとお行儀の良い冒険者を探してくれ」
「貴様ら何だその態度は! 失礼の無いようにと言ったばかりであろうが! 貴様ら覚悟はできているのだろうな!?」
「黙りなさいと言っているのですっ!」
ラムリスと呼ばれた少女は振り向きざまに威圧的な顔つきの少年の顔面にグーパンチを叩きこむ。
フードがめくれ露わになった少女は銀髪に赤い瞳と、どことなくラキちゃんに似た顔立ちをしていた。
「はいっ!」
――ドォン!!!
問答無用で襲い掛かる敵を、見えない力が強引に地べたにへばりつかせる。
俺の声に反応したラキちゃんは、このような輩が現れた時の撃退用にと決めておいた重力魔法を使い、一網打尽にした。
神聖魔法を使える、所謂 『聖女』 を攫いにくるような連中だ。腕に覚えのある連中ばかりだろう。そんな奴等にギフトを使わせる余裕なんて与えない。
はっきり言ってラキちゃんの魔法はどれも一撃必殺の威力過ぎて、殺さず捕縛するには重力魔法くらいしか思いつかなかったからだったりもする。
以前メカリス湖で竜人に打ち込んだ雷魔法も、あれ竜人だから半死半生で済んだんだと思うんだよね。
潰れたヒキガエルのように砂浜にへばりつかされている敵に向かって俺は言い放つ。
「この天使の翼が目に入らぬか! ――ここにおわすお方をどなたと心得る。恐れ多くも大天使ラキシス様にあらせられるぞ! 頭が高い、控え居ろう!」
……すみません、ちょっと言ってみたかったんです。
「おっさん、頭が高いって、こいつ等これ以上頭下げれねーぞ」
ぐふっ、リンメイに冷静に突っ込まれてしまった……。
「なっ、天使だと!? ……話が違うぞ」
「お前ら誰に雇われて聖女様を攫いにきたんだよ?」
「……言う訳が無いだろう」
だよねえ。もう面倒くさいなあ……。
「ラキちゃん、すまないんだけど、もう一度サラス様に連絡してこいつ等どうしたら良いか聞いてもらえる?」
「はーい」
再び 『ピンポーン』 と軽快な音が鳴って空間に光の筋が走り、ゲートが開かれた。
出てきたのはサラス様だったのだが、鬼のような形相をしており、めちゃめちゃ怖い……。
「こいつ等ね?」
「うっ、うん……」
ラキちゃんもサラス様の顏に怯えてるよ……。
「まさか、天使ラクスなのか!? …………最早これまでか」
サラス様をラクス様と勘違いした連中は、どうやら観念したようだ。
だが様子がおかしい。
何かの気配を感じ取ったサラス様は連中に掌を向けた後、くりんと掌を返し剣指を作り、指先をクンと上げた。
すると連中の体から魔石のような何かが飛び出し、頭上に飛び出していく。
そして飛び出した物体は派手に爆発をした。
「簡単に死ねると思わない事ね」
こいつ等、自爆用の何かしらを体の中に仕込んでいたのか!
「そんなっ!?」
「死にそうになる度に神聖魔法で治してあげる。何日強がる事ができるかしら」
そう言い、サラス様はちょっとラキちゃんに見せられないような残忍な笑顔を見せた。
「誰に雇われたのか、これまで何人聖女を攫ってきたのか、どこへ連れ去ったのか全て吐いてもらうわよ」
ゲートからわらわらと魔族の兵士さん達が現れ、聖女を狙った集団を引っ捕らえて行く。
「なっ!? 魔族だと!」
「待ってくれ! どこへ連れて行くつもりだ!」
「たっ、頼む! 助けてくれ!」
もう二度と生きて帰れない事を察した連中は必死に赦しを乞う。
「聖女を狙う輩に慈悲は無い。――覚悟なさい」
サラス様はそう言い、俺達に手を振りながらゲートから帰って行った。
「サラスお姉ちゃん怖かった……」
「「うん……」」
俺達はマジックバッグを貰った喜びも吹っ飛び、サラス様達が消えて行った後も暫し立ち尽くしていた。
後日サラス様の方から教えてもらう事になるのだが、ラキちゃんを狙った連中はとある国の貴族が送り込んできたらしい。
メカリス湖での騒ぎの時に、ラキちゃんが神聖魔法を使っていたのを覚えていた商人が貴族に漏らしたようだ。
ギリメカリスを倒したのもラキちゃんだぞ。なぜ攫ってこれると思ったんだ……。
「なんか、もーあたいらだけでダンジョン潜った方がいいんじゃないか?」
夕食後のゆったりとしたひと時の歓談の際、リンメイが今後のダンジョン探索について提案してきた。
「うーん、たしかに臨時パーティ探している時間勿体ないもんなあ。それにラキちゃんにも攻撃をお願いして三人で進んだ方がよさそうではあるんだよね。でも人目がなぁ……」
「深層に向かうにつれて他の冒険者との鉢合わせも減ってくるでしょうし、力量を測れる人達しかいなくなるので、寧ろ寄ってこなくなると思いますよ?」
俺達の話を聞いていた大家さんが、そんな事を教えてくれた。
たしかにまともな冒険者なら、中層以降を三人で徘徊している奴等は寧ろ警戒すると思う。俺だってする。
「そういえば前から気になっていたんですが、大家さんもダンジョンへ行かれた事はあるんですか?」
「はい、ありますよ。三十層のフィールドエリアが樹海なので、そこでの薬草採取がしたくて昔頑張っちゃいました」
「おお、高層冒険者でしたか! 凄い!」
「大家さんはもうダンジョン行かないのか?」
「うーん、お店がありますしね。……でも……そうですね、皆さんが三十層以降の階層ボスに挑む時だけお邪魔しちゃおうかしら。ラキちゃんが居れば怖いもの無しな気がしますし」
大家さんはそう言ってウフフと笑った。
「ボス戦だけでも来てもらえると、とても助かります。その時は是非お願いします」
「分かりました。こちらこそよろしくお願いしますね」
これは嬉しい。ボス戦の時は大家さんに助っ人を頼める事になった!
「皆深く潜って行くのはいいけど、ちゃんと装備を整えながら進まないとダメよ」
「そうですね、気を付けます」
そうだな、ミリアさんが言うように階層に合わせて装備も揃えて行かないとまずいな。
「あたいらだけで潜るようになれば、一々くじ引きとか借金して分配とか気にしなくていーもんな。装備も狙って箱開けて行こうぜ」
「だな。今度はその辺狙って行ってみようか」
たしかにアイテムの分配が結構手間なんだよね。欲しいアイテムがあった場合、下手したらその日の稼ぎがマイナスになるから。
信頼のおけるメンバーだけなら分配の手間が省ける。
結局、俺達は臨時パーティを探す位ならラキちゃんも戦闘に参加してもらったほうが良いと判断して、中層以降は三人で進む事に決めた。
今日はこの世界の日曜日に当たる日で休日のため、ダンジョン前広場には魔導学院や神学校の生徒と見られる少年少女が結構いる。
彼らは冒険者の護衛やパーティを探す場合、基本、直接冒険者と交渉はせずギルドを介して行う。
ギルドが最低限の節度を持った冒険者を斡旋し、冒険者狩りのような輩を組ませないようにするためだ。
なのだが……。
「もし、そちらを行かれる冒険者の方々。よろしければ私達と臨時パーティを組んでくださいませんか?」
ダンジョンへ向かう俺達に突然声を掛けてきたのは、神学校の生徒と思われるローブのフードを目深に被った少女だった。
後ろには同学年と思われる鎧を着込んだ少年が二人、護衛のように佇んでいる。きっと神学校でも騎士科の生徒だろう。
どちらも精悍な顔つきだが、片方は柔和な顔つきで、もう片方は威圧的な顔つきと対照的だ。
「ん? 俺達の事かな?」
「はい、そうです」
参ったな、折角三人で潜る事にしようと決めた矢先に俺達のパーティに声を掛けてくる存在が現れるなんて。
どうする? って感じに俺達三人は顔を見合わせてしまう。
「見たところ学生さんのようだが、ギルドを介さなくて良いのか?」
「ああ、えっと、それは…………、そちらに神官の身なりの方がおりましたので、問題なさそうなパーティと判断致しました」
「ふーん……。俺達はこれから十一層へ進む予定なんだが、君ら十層の転移門は使えるのか?」
「はい、使えます。私共も中層の一つ目を探索したいと思っておりました」
進む階層は問題無し……か、さてどうしよう。後ろの少年二人は身なりからして、どう考えても前衛だよな。
前衛ばかりのパーティになってしまうので、正直バランスが悪い。
更にこいつ等がいるとラキちゃんが攻撃に参加できない。となると回復魔法士二名になるのか……。
「正直、前衛過多でバランスが悪い気もするが、それでも良いのかい?」
「中層の一つ目はゴーレムが主要な魔物ですので、寧ろ都合が良いかと存じます」
「なるほど」
ゴーレムは攻撃魔法が効きにくく、倒すには核となる石を砕かないといけない。たしかにそうか。
俺はラキちゃんとリンメイを見ると、二人とも俺にお任せって感じだったので、パーティを許可する事にした。
まぁたまには良いだろ。
「分かった。――それでは今日のみの臨時パーティを組もう。よろしく頼む」
「はい! よろしくお願い致します」
交渉が成立し、お互い自己紹介をしようと思った矢先に、威圧的な顔つきをした少年が突然口を開いた。
「まず初めに言っておく。こちらのラムリス様は大変高貴なお方だ。失礼の無いように気を付けるんだな。後、君は教会関係者だな? ラムリス様はいずれ君の上に立つ存在となるお方だ。しっかりと尽くすように」
「なっ、なんてことを言うんですか!」
「ラムリス様、こういう事は初めが肝心です」
「黙りなさい!」
俺達は思わず呆気にとられた後、三人で顔を見合わせニンマリと笑って踵を返した。
「やっぱりパーティの件は無しだ。――さようなら高貴なお方」
「じゃあなー」
「ばいばーい」
「おっ、お待ちください! 連れの者が大変失礼致しました! 私が代わって謝罪致します! どうかお待ちを!」
「うちの大事なメンバーに小間使いをさせるつもりはない。もっとお行儀の良い冒険者を探してくれ」
「貴様ら何だその態度は! 失礼の無いようにと言ったばかりであろうが! 貴様ら覚悟はできているのだろうな!?」
「黙りなさいと言っているのですっ!」
ラムリスと呼ばれた少女は振り向きざまに威圧的な顔つきの少年の顔面にグーパンチを叩きこむ。
フードがめくれ露わになった少女は銀髪に赤い瞳と、どことなくラキちゃんに似た顔立ちをしていた。
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