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二章 人間での生活
第三話 人間の町に潜入した件
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俺たちは森の一番近い町に来ていた。さあここから俺の冒険章が始まるぞ。そう思って町に歩いていく。
「あん。この中に入りたいだと。なら身分証明書か許可書を持ってこい。なに,ないだと。そんならここに入れることはできねえ。去った去った」
そんな俺たちの淡い希望は最初の町で砕け散った。
俺は仕方なく町から離れる。
まじかよ。ここに入るのには身分証明書が必要なのかよ。まあ,日本での入国許可書とかあったからわからんでもないが,俺たち持ってないぞ。こりゃあ,どうしようか。
(でしたら,もういっそこの門番を殺して侵入してしまえばいいのでは?)
何物騒なこと言ってんだよ。俺がそれを許すとでも思うか?
(そうでしたね。これは失礼)
でもほんとにどうしよう。確かラノベだと冒険者証が身分証明書になるんだったよな。でも登録するには町の中に入らないといけないし⋯⋯。まさに八方塞がりじゃないか。
そもそも今俺たちがいるのは要塞都市ベルセルク。外周部を塀で囲まれたかなりいかつい町である。ちなみにこの街の名前は初代町長の趣味である。触れないでおこう。
まったくこまったなぁ。もしかしてこの証明書システムって全部の町にあったりする? だとしたら俺,どの町にも入れないよ。これはいきなりピンチ?
んー。身分証明書を持っていなくても町に入る方法ってないのかな。
(ないことにはないですが,かなり危険ですよ)
え,あるんだ。どんな方法?
(潜入です)
潜入? それってあの門番を殺すっていう方法だろ。だめってさっき言ったじゃん。
(さっきにとは違います。今回のは強引に入るのではなく,誰にも知られずに入るのです。要はどこかで陽動を起こしてそのすきに塀を飛び越えるって感じです)
それ,完璧犯罪やに~。
まあ,そんなどこかの放送部の女の子はいいとして,これしかないか。なかにはいれたら冒険者になれるもんな。
(これで,二人なかよく犯罪者ですね)
◇
結論から言おう。うまく行った。順調すぎるくらいにうまく行った。多少火力調整ができなくて近くの森が消し飛び爆風で町の塀の一部が崩れたりもしたがうまく行った。
俺は今町の中のメインストリートっぽいところを歩いている。表情は堂々としているが内面がかなりおっかなびっくりである。
にしてもすごい火力だな。俺があんなかりょくだせるなんてしらなかった。
(そうですよ。あのへんな龍の爺さんがおかしかっただけで弘樹は強いんですからね)
全く,おだてても何も出てこないぞ。
(だからおだてでは,て,もういいですよ~)
そして俺はシーと会話しながらまわりの声に耳を傾けてみる。
「いまの爆発,なんだったんだろうかねぇ」
「昨日のあれと言い最近はこわいねぇ」
「ねえ,聞いた? 勇者様がこの街に来るってよ」
井戸端会議かな。よしよし。俺の侵入はばれていないぞ。
「全く,最近は恐ろしいよ」
「ほんとにねぇ。無事に生きられるといいけど」
この会話は夫婦のようだ。仲睦まじくて結構。それにしても少し耳を傾ければあの爆発のこととか将来のことだ。主に心配な方面で。そんなに生きるのが大変なのかな。
(弘樹,今貴重な人との初接触ですよ。もっと堪能しなくていいんですか)
はっ。そうだった。すっかり忘れてたよ。ただあんまり感動がないんだよな。
(淡泊ですね。まあ,いいでしょう。では無事に潜入できたことですし第二段階へ移りますよ)
ラジャー。フェーズ2へ移行。
(それかっこいいつもりですか)
そこは突っ込まないでね。
俺は今なかなか大きい建物の前にいた。
「ここか。突入するぜ」
(速く中に入ってください)
俺が中に入ると途端に酒の香りとバカでかい話声と喧嘩をしている声が耳に入ってきた。
これはなかなかすごいインパクトだな。やはりこの建物は期待を裏切らないぜ。
(はいはい。そうですね。早いとこ身分証を作りましょう)
ここまで言えばわかっていると思うが,そう,冒険者ギルドである。
それはファンタジーの鉄板中の鉄板。異世界転生したら何らかの形で出てくるもの。ストーリーによるが,主人公が初めに洗礼を受ける場所。基本的に冒険者は酒飲みで喧嘩好き。受付嬢は美人でギルマスはハゲかロりか巨乳。そう,それがギルドである。(偏見)
弘樹がギルドの活気にあっけに取られていると後ろから声がかけられた。
「おい,坊主。そこどきな。ここは坊主みたいな年齢のやつが来る場所じゃねえぞ」
「はっ。まさかこれが新米に対する洗礼。テンプレ中のテンプレ。まさか実際にあるとは」
「おいおい,急にどうしたんだ。よくわかんないことを話し始めやがって。まあいいか。坊主は帰りな。ここはあぶねえぞ」
ふつうのいい人である。ちなみにその声かけてきた人は中年のおじさんである。まだ髪のことでは悩んでなさそだ。
「あ,ありがとうございます。ですが,俺は今日冒険者登録をしに来ました」
「そうか。お前くらいの歳から働かなくちゃいけないんだな。がんばれよ,坊主」
まさかのすごくいい人だった。これは,テンプレなのか? まあ,いいか。
(弘樹,速く任務をしてください)
俺たちの任務とは冒険者証を作ることである。なぜなら,冒険者証は身分証明書にもなっているからだ。これはあればどの町にも出入り放題である。
俺はゆっくりと歩き始めた。向かう先は正面のカウンターである。そもそもこの冒険者ギルドは正面から入ってまっすぐにカウンター,右が酒場,左が訓練場に続く道である。そして,カウンターには,3つの窓口があり,使用用途で分けられてはいないようだ。
さあここから改めて俺の冒険が始まるぞ。
「あん。この中に入りたいだと。なら身分証明書か許可書を持ってこい。なに,ないだと。そんならここに入れることはできねえ。去った去った」
そんな俺たちの淡い希望は最初の町で砕け散った。
俺は仕方なく町から離れる。
まじかよ。ここに入るのには身分証明書が必要なのかよ。まあ,日本での入国許可書とかあったからわからんでもないが,俺たち持ってないぞ。こりゃあ,どうしようか。
(でしたら,もういっそこの門番を殺して侵入してしまえばいいのでは?)
何物騒なこと言ってんだよ。俺がそれを許すとでも思うか?
(そうでしたね。これは失礼)
でもほんとにどうしよう。確かラノベだと冒険者証が身分証明書になるんだったよな。でも登録するには町の中に入らないといけないし⋯⋯。まさに八方塞がりじゃないか。
そもそも今俺たちがいるのは要塞都市ベルセルク。外周部を塀で囲まれたかなりいかつい町である。ちなみにこの街の名前は初代町長の趣味である。触れないでおこう。
まったくこまったなぁ。もしかしてこの証明書システムって全部の町にあったりする? だとしたら俺,どの町にも入れないよ。これはいきなりピンチ?
んー。身分証明書を持っていなくても町に入る方法ってないのかな。
(ないことにはないですが,かなり危険ですよ)
え,あるんだ。どんな方法?
(潜入です)
潜入? それってあの門番を殺すっていう方法だろ。だめってさっき言ったじゃん。
(さっきにとは違います。今回のは強引に入るのではなく,誰にも知られずに入るのです。要はどこかで陽動を起こしてそのすきに塀を飛び越えるって感じです)
それ,完璧犯罪やに~。
まあ,そんなどこかの放送部の女の子はいいとして,これしかないか。なかにはいれたら冒険者になれるもんな。
(これで,二人なかよく犯罪者ですね)
◇
結論から言おう。うまく行った。順調すぎるくらいにうまく行った。多少火力調整ができなくて近くの森が消し飛び爆風で町の塀の一部が崩れたりもしたがうまく行った。
俺は今町の中のメインストリートっぽいところを歩いている。表情は堂々としているが内面がかなりおっかなびっくりである。
にしてもすごい火力だな。俺があんなかりょくだせるなんてしらなかった。
(そうですよ。あのへんな龍の爺さんがおかしかっただけで弘樹は強いんですからね)
全く,おだてても何も出てこないぞ。
(だからおだてでは,て,もういいですよ~)
そして俺はシーと会話しながらまわりの声に耳を傾けてみる。
「いまの爆発,なんだったんだろうかねぇ」
「昨日のあれと言い最近はこわいねぇ」
「ねえ,聞いた? 勇者様がこの街に来るってよ」
井戸端会議かな。よしよし。俺の侵入はばれていないぞ。
「全く,最近は恐ろしいよ」
「ほんとにねぇ。無事に生きられるといいけど」
この会話は夫婦のようだ。仲睦まじくて結構。それにしても少し耳を傾ければあの爆発のこととか将来のことだ。主に心配な方面で。そんなに生きるのが大変なのかな。
(弘樹,今貴重な人との初接触ですよ。もっと堪能しなくていいんですか)
はっ。そうだった。すっかり忘れてたよ。ただあんまり感動がないんだよな。
(淡泊ですね。まあ,いいでしょう。では無事に潜入できたことですし第二段階へ移りますよ)
ラジャー。フェーズ2へ移行。
(それかっこいいつもりですか)
そこは突っ込まないでね。
俺は今なかなか大きい建物の前にいた。
「ここか。突入するぜ」
(速く中に入ってください)
俺が中に入ると途端に酒の香りとバカでかい話声と喧嘩をしている声が耳に入ってきた。
これはなかなかすごいインパクトだな。やはりこの建物は期待を裏切らないぜ。
(はいはい。そうですね。早いとこ身分証を作りましょう)
ここまで言えばわかっていると思うが,そう,冒険者ギルドである。
それはファンタジーの鉄板中の鉄板。異世界転生したら何らかの形で出てくるもの。ストーリーによるが,主人公が初めに洗礼を受ける場所。基本的に冒険者は酒飲みで喧嘩好き。受付嬢は美人でギルマスはハゲかロりか巨乳。そう,それがギルドである。(偏見)
弘樹がギルドの活気にあっけに取られていると後ろから声がかけられた。
「おい,坊主。そこどきな。ここは坊主みたいな年齢のやつが来る場所じゃねえぞ」
「はっ。まさかこれが新米に対する洗礼。テンプレ中のテンプレ。まさか実際にあるとは」
「おいおい,急にどうしたんだ。よくわかんないことを話し始めやがって。まあいいか。坊主は帰りな。ここはあぶねえぞ」
ふつうのいい人である。ちなみにその声かけてきた人は中年のおじさんである。まだ髪のことでは悩んでなさそだ。
「あ,ありがとうございます。ですが,俺は今日冒険者登録をしに来ました」
「そうか。お前くらいの歳から働かなくちゃいけないんだな。がんばれよ,坊主」
まさかのすごくいい人だった。これは,テンプレなのか? まあ,いいか。
(弘樹,速く任務をしてください)
俺たちの任務とは冒険者証を作ることである。なぜなら,冒険者証は身分証明書にもなっているからだ。これはあればどの町にも出入り放題である。
俺はゆっくりと歩き始めた。向かう先は正面のカウンターである。そもそもこの冒険者ギルドは正面から入ってまっすぐにカウンター,右が酒場,左が訓練場に続く道である。そして,カウンターには,3つの窓口があり,使用用途で分けられてはいないようだ。
さあここから改めて俺の冒険が始まるぞ。
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