ある日,トカゲに転生~ダンジョン暮らしの少年は外の世界の強さが分からない~

ルー

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二章 人間での生活

第八話 異変調査を任された件

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~サイド エンラルドに召喚された勇者,連~

 草原を三台の馬車が爆走していた。
「ねえ,連。まだ着かないの」
「まだだ。それにそのセリフ,さっきも聞いたぞ」 
 そのわけは,三日ほど前までさかのぼる。





――三日前――

 連たち勇者一行は群の魔窟を攻略した後,数々の魔窟の潜り,着実に実力をつけていた。そして,今いるのは国の中でも特に魔窟が近くに多い町,エンラである。ここは実力をつけるにはいい場所なのでここは半拠点になっていた。そしていつものように連たちが魔窟から帰ってきていつもと待っている宿にむかうと宿の入り口には何人かの騎士が立っていた。


 おいおい。なんでここに騎士がいるんだよ。もしかして何か問題ごとか。勘弁してくれよ。

 そして俺は騎士の一人に話しかける。

「ん? あんたたちはどうしてここにいるんだ。俺たちに何か用か」
話しかけられた騎士は一瞬驚いたが相手が勇者連であるとわかるとすぐに気を取り直した。
「おお,勇者様。今日も魔窟に潜られていたんですね」
「ああ。それよりなんでお前たちはここにいるんだ」
「えっと,それが騎士団長からお手紙を届けるように言われまして」
「手紙か」
「はい。それがこちらになります」
そう言って渡されたのはA4サイズの大きめな封筒だった。そして中を開けるとそこには何枚かの紙が入っていた。


 そして俺は手紙を読み始める。


 連は文字を読むのが決して遅い方ではない。むしろ親友の弘樹に付き合わされてラノベなどを読んでいたため早いほうであった。だがその連でもその手紙を読むのには二十分ほどかかった。その間に立夏以外のメンバーは宿に入ってしまったようだ。

 連が手紙から目を上げると立夏が話しかけてきた。
「ねえ,連。読み終わった?」
「これは,なかなかだな」
「で,内容はどうだったの」
「これは俺一人で決められることじゃないな。みんなで話し合ってから決めたい。騎士もそれでいいか」
「分かりました。何時くらいには答えが出そうですかね?」
「夕食のときに話し合うから,だいたい19時くらいかな」
「分かりました。ではそれまではこの街の騎士駐屯所にいます。結論が出たら駐屯所まで来てください」
そして俺は宿に入っていく。

 そして日は暮れ夕食を食べるときになった。ちなみに俺たちはもう王城暮らしではないため,自費で宿に泊まっている。費用は倒した魔物をギルドで売って得たお金で出している。そして,俺たちが止まっている宿は一階が食堂,二階,三階が宿泊用スペースになっている。なんとこの宿は連たちで貸し切りなのだ。これで誰かに配慮する必要もない。

 そして今回俺たちが話し合うのはこの宿の食堂でだ。

 食堂に八人全員が揃った。みんなの前に料理が運ばれてくるが食べ始める前に俺が話し始めた。
「みんな,少したべないで聞いてくれ。今日騎士団の人から団長からの手紙を預かった。そして,その内容がみんなで話し合ったほうがいいと思ったから今ここで話し合いたい」
それに反応したのは陽太だった。
「分かったぜ。で,どんな内容なんだ」
他のメンバーも異論は無いようで俺の方を見ている。全く,こいつらはいい奴だな。俺なら間違いなく不機嫌になっているぞ。そして俺は話し始める。
「それは,異変の調査だ」
「異変?」
「ああ。ベル団長の話だと,この近くのベルセルクって町で最近異変が起こっているらしい。それは,一つずつは大したことなくて,夜地下から何か音が聞こえるとか,怪しい人影があったとかだ。だが,それが数年前からやまないらしい。そこで俺たちに解決の依頼が出た」
それに真っ先に反応したのは剣士の勝だ。
「なるなる。それ行くっきゃないでしょ」
「同感デース」
「私たちで解決して,一気に手柄ゲットよ」

 その舞子の発現で一気にみんなのテンションが上がり,満場一致で行くことが決まった。
「よし,じゃあこの任務を受けるという形で報告しておく。形式としては国からの依頼だからあんまり他の人にしゃべらないようにな」
「分かったよ」
そして勇者一行は次の日,三台の場所でベルセルクにむかって南下を始めた。そして場面は冒頭へ戻る。


 馬車は森の中を走る。その中で俺たちはこの後のことについて話していた。
「ねえ,さっき冒険者から聞いた話本当かな」
「分からない。だけど警戒はしておこう」

 さっきの冒険者の話とは,先ほどすれ違った冒険者から聞いた話のことだ。その冒険者いわく,ベルセルクの近くの森で龍が二体暴れたらしい。そしてその音がやんだ後,今度は近くの森が爆発したらしい。これを見て,この冒険者はここにいたら死ぬと思って近くの町であるエンラまで行くことを決心したのだ,という。
「なんだか嫌な予感がするわね」
同感だな。これは何か用意をしておいた方がいいかな。




 そして時間は流れ夜になった。今はみんなで野営の準備をしているところだ。
「もしその話が本当なら俺たちは龍と戦わなけらばならないのか?」
料理をしていた勝がそんなことを言った。
「だとしたらかなりの問題よね。私たちは強くなったと言っても龍に勝てるかというと,ね」
立夏も賛同する。その言葉でまわりの人の顔にも影ができた。

「気にすることはない。龍だろうと何だろうと俺たちの敵は倒すのみだ」
それにあいつなら,弘樹ならこういうだろうな。本来みんなを勇気づけるのはあいつの役目なのにな。だがあいつが死んだ今,それは俺の役目だ。そして俺は言葉をつぐむ。
「それに必ず戦わないといけないわけじゃない。交渉で何とかなる可能性もあるからな」
俺のその言葉でひとまずは結論が出た。みんなの顔もだいぶ明るくなったようだ。

 だが,本当に龍と戦うことになったら,俺だけが残ってみんなを逃がさないとな⋯⋯。
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