異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

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弐章 国づくり

21 軍隊

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 その集団は西の方角より姿を表した。
 数は30人。
 全員が甲冑を纏い青い旗を掲げている。
 集団の目標は一つ。
 戦略重要拠点の確保であった。
 
 現在、今侵入した国は妖魔により荒れ、軍の機能が一時的ではあるが麻痺している状態だ。
 それを見逃すほど隣国、牡丹を収めている武将ケンシンは愚かでは無い。
 
 不楽が落ちたと聞きすぐさま行動を起こした。
 まず偵察を行い城を前々より目をつけていた築城に適した場所に兵を送り調べさせる。
 そしてそこに居る妖魔を屠りその土地を奪う事を決定させた。
 
 その場所は周囲の山よりも高く見渡せ、更には水源がある。
 守りやすく攻め難い城となる事だろう。
 ここを起点にシンゲンが統治する槿花へと攻め入る足掛かりにする考えだ。
 
 妖魔達による問題はあるがここ何十年と人界へは攻め入って来てはいない。
 それにもしこの場所に築城する事ができれば相手の虚をつくことができる。
 それだけでもやってみる価値はあると言うものだ。
 
 …
 
 あの後、俺は5人の冒険者と話をしていた。
 その過程で自己紹介をへて今に至る。
 
 「ルーク?ていうんだ君。
 変わった名前ね」
 「それにしてもよ、本当に蜘蛛は複数いんのか?
 嘘ついてたら承知しねぇぞ」
 
 先程から頭を撫でて来るのが陰陽師のアオイと言う女性。
 そしてこの脅して来ているのがイタズキと言う名の男だ。
 
 「ちょっと!
 この子が怖がったらどうするの!?」
 
 ゴン
 と鈍い音と共にイタヅキが頭を抑える。
 
 「いてぇな、アオイなにすんだ!」
 「ごめんねー、うちの馬鹿が脅かして」
 
 そして、交渉は難航していた。
 こちらの話をまともに相手せず小鬼である俺を可愛がっているらしい。
 複雑な気持ちだ。
 
 そんな事を考えてどうしようかと困っていると。
 蜘蛛の糸より通信が入った。

 数は大勢。
 人間。
 西の方角より進行中。
 一つ山先。
 
 その情報を受け訳が分からなくなった。
 てっきりこの冒険者パーティーの様な奴らが偵察がてら森を荒らしてたのかと思っていたのだが違ったらしい。
 
 「おい、あんたら、ここから逃げた方が良いと思うぞ…」
 
 そう言った後で一つの可能性に気づく。
 こいつらは先鋒部隊なのではと。
 しかし、合図の様な動作は全くしていなかった。
 何かしらの魔術を行使した可能性もあるがあまりその可能性は少ない様に見える。
 
 「えっ、どうして?
 ルークちゃん…」
 
 それはこの反応を見ても明らかな気がする。
 
 「今ここに人間の軍が向かっていると報告があった。
 お前らのか?」
 「へ?、そんなの知らないけど…」
 
 恐らく来るであろう方角を見るともうすでに遠くで蠢き進軍して来る人間達が見えた。
 
 「ねえ、あれって…牡丹の旗じゃ」
 「牡丹!? そんな馬鹿な ここは槿花だぞ!」
 「妖魔の混乱を利用して攻めて来たんだ…急いでこの事を国に伝えないと」
 
 5人組の会話はとても興味深い物だ。
 妖魔の混乱なる物は初耳であったが、アイノスケの言っていた周辺国の話は本当だったらしい。
 と言う事は…今攻めてきている奴らは侵略者と言うことになる。
 おそらく話が通じる様な相手では無いだろう。
 彼らは上の命令のもと忠実に行動する殺戮集団なのだから。
 
 「ふむふむ、すまないが一つ聞きたい事がある」
 
 俺が慌てて逃げようとしている一人の袖を掴みグイグイと引っ張るとアオイが反応した。
 
 「あっごめんね、さあ早く私達と一緒に逃げましょ!」
 「いや、そうじゃ無くて。
 君達はこの国、槿花の住人なんだろ?
 もし、俺があの軍勢を倒したらここらへんに住んでる人達はどう思うと思う?」
 
 これは確認だ。
 俺の予想では問題無いが正しいと思うのだが。
 価値観が違うかもしれないからな。
 
 「倒す?それは…喜ぶと思うけど…。
 ほら、そんなこと言ってないでこっちに早く!」
 
 手を広げ抱き上げようとしてくるアオイを躱し歩み始める。
 
 さてさて、敵はどれ程の強さなのか、恐らく一人一人が山賊の比ではなく強いだろう。
 本来であれば敵の強さや戦法、強さと弱さを知り戦うべきだが今はそれ程の余裕も無い。
 
 ならば最初から全力で行くべきか。
 とりあえず蜘蛛達はまだ地中に潜んでいる。
 
 「よし、移動を開始。
 方角は西方。
 合図が出るまでそれぞれの森で待機してろ」
 
 そう告げるが何も起こらない。
 それも当然である。
 その命令は合図を送れと言う意味で地中にいる蜘蛛が振動を送り伝えているのだ。
 それをキャッチしたのだろう。
 兵が進軍してくる左右の森で木々の葉が不自然に動いている。
 
 「シュラ、お前の出番になるかもな。
 手加減無用!
 これは戦争だ。
 話が通じる相手とは思えん」
 
 『ほう、話が分かるな。
 やっとか。
 ならば、貴様の言葉に期待するとしよう』
 
 一人進み行く青い子鬼を止めようとアオイが何事か叫んでいるが、事の重大さに仲間達がそれを止め逃げる様に連れて行く。
 
 戦争か…。
 まだ魔術師見習いの成果を上げていなかった時代。
 何度か魔術師として徴兵された覚えがある。
 人の焼ける匂い、自分の魔術で吹き飛びただの肉片となる人々。
 
 それを俺は知っている。
 その力を、その残虐さを。
 
 紅蓮の魔術師 
 
 いつからそう呼ばれる様になっただろうか…。
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