異界門〜魔術研究者は小鬼となり和風な異世界を旅する〜

猫松 カツオ

文字の大きさ
36 / 90
弐章 国づくり

36 旋風

しおりを挟む
 ハチロクと話した翌日の早朝、俺達は鎌鼬狩りへと向かう。
 メンバーは陰陽師の一行と俺が連れている二人そして鉄石の侍が5人、動向していた。
 
 道中は陰陽師と3人の侍が前方そして俺達が後方でついていく様な形で進んでいく。
 
 そしてその内の侍にはハチロクが混ざっていた。
 
 「よぉ、ルークの坊っちゃん」 
 
 振り向くとそうハチロクが話しかけてくる。
 旅立つ前になぜか付いてきたのだ。
 おそらく鉄と同じ容量で見定めるつもりだろう。
 
 それにしても感情に出やすいタイプなのだろうか…。
 明らかに昨日初めて見た時とは対象的にウキウキとしている。
 
 余程外の世界を見て回りたかったのだろう。
 
 「あんたの、あれだアラネアとか言う都…。
 聞いたことが無いのだがどういった場所なのだ?」
 
 うっ……まずい、少し嫌な質問だ…。
 あそこは全く発展してない。
 あるとしても社(やしろ)が一つそれも蜘蛛の糸で補修してあるのみだ。
 
 俺の作戦では何も言わずアラネアに連れ帰りこのハチロクに武具や武器、家を建てさせて文明開化させようというつもりだったんだが…。
 
 「ふむ…」
 
 どう答えるのが正解か……。
 嘘を言ってもいいが後で信用を裏切る事になりかねない。
 しかし…作業用の家…ハチロクの住む場所も道具も無いと教えるのは…。
 
 ルークが悩み歩きながら空を見上げているとアンリが先に話し始めてしまった。
 
 「私達の里アラネアには何にも無いっすよ。
 でも変わったといえば、最近、私達の巣が森全体に広がった事くらいっすね」
 
 あ…終わったかも……。
 
 そのままルークは青空を見続けながらもチラチラとハチロクの様子を伺う。
 
 貴重な人材をここで手放す訳にはいかない。
 ここは…何かアイラにでも頼んで美味しい食べ物でも食べさせて……。
 
 「ほう! 何もないか!!
 これは腕がなる!!
 ちょうど1から都を作ってみたいと思っていた所だ」
 
 フハハハ
 
 とご機嫌に笑う姿を見て胸を撫でおろす。

 ふぅ…なんとかなった。
 
 「ま…まあそういう事…。
 ハチロクの仕事には期待してるよ」
 
 まあ…刀製造の腕しか見たこと無いけど。
 
 「んで、坊ちゃんはどんな都にしたい?
 立地はどんな所だ?」
 
 それも…言いづらい…。
 
 山だから起伏も激しいし何より未開発の場所だから木々も整備されず所かしこにはえているし岩もゴロゴロと転がっている。
 
 まあ…労働力は十分にあるからそこらへんは問題ないか…。
 
 ルークはそう考えながら土蜘蛛達の畑作業の姿を思い出す。
 
 「ああ、家を建てる場所は山の中だよ…」
 
 その答えにハチロクは少し考える素振りを見せ足元を見つめた。
 
 「それだと作り始める前に木や岩をどけたり平らにしたりしなきゃいけねぇな。
 資材運びも一苦労しそうだ…。
 まあ人間種が使いやすい用にしないってんなら話しは別だが…」
 
 そうハチロクが言い終わると同時にルークはテルマを見た。
 
 「テルマ」
 「は! 何でしょうかルーク様」
 
 そして目の前の道に倒れる大木を指差し。
 
 「あれをどけてくれ」
 
 そう命令しする。
 
 するとテルマは6本ある腕のうちの1本で木をミシミシと音を立て持ち上げると道外れに投げ捨てた。
 
 「嘘だろ…」
 「何あの怪力、力に長けた鬼族でも上位の個体じゃ無いとあれはできないでしょ…」
 
 鉄石の侍と陰陽師の一行はテルマが軽々と大木を持ち上げる姿に驚愕し口をあんぐりと開け何とも間抜けな表情をしている。
 
 ハチロクもまたそれは同じようでその光景に驚いていた。
 
 「と…言うわけだ。
 資材の運搬や土地の整備は任せろ。
 ハチロク殿は家を建ててくれればいい。
 後は公益都市にしたいから人も訪れやすい様に頼む。
 温泉とか観光地を作ってもいいな。
 後は都市の象徴に城も欲しい。
 それと外の人間を入れるのだから安全性を考えた城壁も作ってくれるとありがたい」
 
 ルークはそんな無理難題とも思える話をスラスラと話しテルマの捨てた大木を見た。
 
 しかし…この大木なんでこんな所に倒れてたんだ?
 それにその切り口は斜めに切り裂かれ明らかに強力な一撃で切断されている。
 
 それになんだか森の中…。
 いや…周囲から何か良からぬ気配を感じる。
 
 これは…。
 
 ルークはあたりを見渡した後ハチロクと自身の護衛2人を後方へと下げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

処理中です...