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弐章 国づくり

42 影に潜む者たち

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 「新しい仕事が入ったぞ…」
 
 暗闇に包まれた部屋にしわがれた男の声が響く。
 その部屋の明かりは一つの蝋燭のみ。
 
 だが彼らはそれで十分だ。
 
 黒装束を纏い 悪霊祓いと呼ばれている者達。
 またその黒い姿、行動理念により一部の者達からは八咫烏(ヤタガラス)とも呼ばれている
 彼らの目的は人類を裏より護る事。
 
 陰陽師の様に人類にあだなす可能性、危険性がある妖魔や人間を素早く影に紛れて摘み取る。
 
 それが彼らだ。
 
 「依頼主はマムシ…あやつの依頼が本当の事じゃったならば間違いなくいずれ人界の驚異となるはずじゃ。
 捕獲依頼じゃが構わん。
 妖術を扱う子鬼じゃ大きく成長する前に摘み取れ」
 
 「「は!」」

 跪きそれらの言葉を聞いていた複数名がそう返事を返す。
 
 「ムクロ様…それで誰を行かせましょうか?」
 
 一人、リーダーと思われる者が問う。
 
 「うむ、この驚異であればヒヨリを向かわせれば良かろう」
 
 「ヒヨリ…ですかあの者は腕は確かです。
 が、まだ歳が…それにあの者の…」
 
 ムクロは話をする者が言い終わる前に話を遮り言葉を発した。

 「我らに歳など関係ないこと…。
 知性も人間性も道徳心もいらん。
 女、子供それが例え老人であろうと同じ事…。
 ただ影より殺す技術があれば良い」
 
 ✿❀✿❀
 
 「ほれクロ。
 お手じゃ」
 
 黒死と呼ばれ恐れられた鎌鼬は今やシュラと俺の命令を聞く従順なペットに成り下がっていた。
 
 鎌鼬討伐、あれから数日が立ちルーク達はアラネアへと帰ることにした。
 
 
 黒死こと、クロの後ろには他にも4匹の鎌鼬がいる。
 
 彼らは最初に文句を言っていた様だがシュラが目の前でクロに腹を見せろと命令し一瞬で黙らせていた。
 
 動物と同じように腹を見せるという行為はもう好きにしてください降伏しますと言う意味らしい。
 
 彼ら鎌鼬は討伐と言う依頼だったがアラネアに連れて行くと言う条件で完了。
 つまり俺が引き取る事になった。
 
 だが…塗装されていない道の移動手段としては完璧だ。
 おまけに木の伐採にもってこいときた。
 これですぐにでもアラネアに帰ろうと思えば帰れる。
 
 「しかし…鼬鍋にできんのは残念じゃの…一匹くらい…」
 
 シュラはそう言うと涎を袖で拭う。
 クロ達はそれを見て危険を感じたのかぞわりと毛を逆立たせぷるぷるとまるで産まれたての子鹿の様に震えている。
 
 シュラが食べてしまい移動手段の一つがお腹の中に消える前に皆を乗せアラネアに帰ったほうがいいだろう。
 そうは思うが
 まだ、肝心のハチロクとその弟子のシュナと言う娘の姿は見えない。
 
 鎌鼬のせいで鉄石たたらの中には入れないがまあ恐らく皆と別れの挨拶でもしているのだろう。
 
 
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