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弐章 国づくり

62 面倒ごと

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 木箱を運ぶようにと蜘蛛たちに支持を出しルーク達は田畑の間に作られた道を歩き山の麓へたどり着く。
 
 「ああそうだこの木箱には農具の鍬や鎌、鋤、ピッケルが入ってる。
 これは皆で使ってくれ」
 
 今まで彼らは道具がなく手で耕す作業や地面を掘る作業をしていた。
 もしかすると必要無いのかもしれないがまあ…無いよりはマシだろう。
 
 最悪近くに住む村人に貸出せばいいし。
 
 そんな色々と取らぬ狸の皮算用を頭の中で計算していると
 突如ルークの耳に地響きが聞こえた。
 
 ……
 
 「おらぁ!!
 どうした人間共!
 もう終わりかぁ!?」
 
 アラネアの山頂にある社の近くで砂煙が上がり轟音が響く。
 
 四天王の一人、ギョクズイだ。
 ギョクズイは土蜘蛛の特徴である6本の腕で次々と拳を繰り出す。
 
 その巨体から想像もできない程、俊敏に動き、そこから放たれる拳木々をなぎ倒し拳圧は木々の枝を揺らしていた。
 
 「冗談きついぜ…。
 こりゃ、噂の天王山に住まう四天王じゃねえか…」
 
 シンゲンが統治する領地より派遣された忍び、サルトビは目の前の光景を目の当たりにし苦笑いを浮かべる他無かった。
 
 「やり合う気はねぇ…てのによ…。
 忍法…陽炎」
 
 サルトビがそう唱えた時。
 自身の影から複数、黒い影が浮き上がりサルトビの形と瓜二つの姿となった。
 
 「行け!」
 
 サルトビの影はその言葉を聞くや否や走り出し四天王に襲いかかる。
 
 少しでも時間稼ぎができるといいのだが…。
 
 サルトビはそう考え忍びの者達全員に撤退の合図を出す。
 
 サルトビの影達は火のついた煙玉を構えクナイと共に投げギョクズイの視界を遮る。
 
 「ぬお!
 ちょこざいな!!」
 「よし…」
 
 煙に怯み腕で掴めぬ煙を振払おうともがいている四天王の姿を見て逃げられると確信する…。
 
 チリン…。
 
 しかし…逃げようと背を向けた瞬間。
 
 サルトビは先行して逃げた仲間たちが次々と眠りにつき地面へと木々の枝からバタバタと落ちていく光景を目にした。
 
 「全く…我ら四天からそう簡単に逃げられる訳、無いでありんしょ?」
 
 そう声が聞こえた途端、気づけば前方に霧が立ち込み始め。
 そこには霧の中にで六本の尾を揺らす妖狐の影がぼんやりと浮かんでいた。
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