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1巻
1-2
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「……久しぶりじゃの、ヒスイよ」
「おう。俺が魔法学会で『闇魔法』の存在を認めさせて以来か?」
「あの時はどれだけの被害が出たことやら。憎ったらしいやつめ……」
どうやらセスティアは昔の因縁を思い出していたようだ。別にセスティアが直接被害を受けたわけでもないのに、まるで俺を親の仇かのように見てくる。
「いやいや、認めようとしなかった魔法学会のやつらが悪いんだよ」
「あの、なんのことですか?」
一人だけ会話に加われずにいたユアが、小声で質問をしてきた。
セスティアは俺を睨みつけながら答える。
「ユアは別の国にいたから知らんのじゃったな……こやつは昔、闇魔法を使って魔法学会の本部を半壊させたのじゃ!」
「ほえ!?」
「仕方ねーだろ。何度も闇魔法を見せたのに、存在を認めようとしなかったんだから」
「それでも限度があるじゃろうが!」
限度、ねぇ。
俺は魔法学会のやつらに何度も説明したのだ。俺が家から勘当されて、何度も何度も辛い目にあった過去を。
もしも闇魔法の存在が認知されていれば、俺みたいなやつも少しは減るだろう。そんな思いで必死だった。
それなのに嘲笑った。
『闇魔法? そんなもの〝賢者様〟も使われていないのだぞ。あるわけがないだろう』
『使用者が稀すぎるから、魔法として登録する必要性は全く感じられない』
『そもそも、貴様が使ったこの魔法は何か細工をしたのではないのか? 映像用のマジックアイテムとか――』
バカじゃないかと。
最初はタチの悪い冗談かと思ったが、一時間以上も付き合わされれば俺の血管が切れても仕方ない。
セスティアはおそらくこの辺りの経緯は何も聞かされていないのだろうが、今さら俺が説明しても信じてもらえそうにないから、気にしないようにしている。
「こほん。今はこの話をしている場合ではなかったな」
セスティアは一つ咳払いをしてから、真剣な顔で続けた。
「お主たちにはこれより学園の入学試験を受けてもらう」
「ん、それはそっちで上手いこと都合をつけて入れてくれよ」
「教師陣にはお主たちのことを言っておらん。だからそれは無理なのじゃ」
「……面倒だな」
俺が小さくぼやく横で、ユアは快活に応えた。
「いえ、試験くらいなら簡単ですよ!」
ユアはこう考えているのだろう。
教師陣に俺たちのことを知られたくないのだから、試験を受けるのは当然だ。それに、Aランク冒険者の自分には試験なんて簡単なので別に構わない、と。
だが、違う。本質はそこじゃない。
セスティアの言葉を言い換えると、「教師陣も信用できないから話していない」ということ。つまり、教師の中にもギルティアスのメンバーがいるかもしれないのだ。
ユアはその辺理解できていなさそうだが……こんなんで本当にギルティアスのメンバーを見つけられるのか不安になってきたな。
「では、二人には学園の第一演習場に向かってもらおうかの」
「その前にいいか? 試験ってどんな内容なんだよ?」
「教師と戦うのじゃ。そして教師から合格をもらえば、晴れて入学という流れじゃ」
なんていうか、雑だな。適当すぎるわ。
賄賂でもコネでも使って教師を抱き込めば簡単に入学できるじゃねーか。
ああ、だから貴族が多いのね……納得。
「第一演習場に茶髪の女教師がいるのじゃ。名はメシャフ。彼女に言って試験を受けさせてもらうのじゃ」
「分かりました!」
元気よく返事をしたユアが、一礼して扉を開けた。
俺はすかさず扉をすり抜ける。
「なっ! 私が開けたのに!」
俺はユアの声を無視して学園の廊下を足早に進んだ。
灰色の防壁で四方を囲まれた演習場は、魔法や模擬戦などでよく使われる場所らしい。
第五演習場など、観客席が設けられたものもあるんだとか。
「あれじゃないですか?」
隣を歩いているユアが指差した。
色々省略されすぎているが、彼女の指し示す方向を視線で追うと、何が言いたいか理解できた。
肩まである茶髪の女性がいたからだ。
おそらく試験を担当する教師だろう。名前は確かメシャフだったか。
彼女の隣には黒いロングヘアーのダークエルフの姿があった。
「あのダークエルフさんは誰なんでしょうか?」
「さぁな。俺たちと同じ試験を受けるやつじゃねーのか」
「なるほど」
しばらく歩いて教師メシャフと思しき女性の前に着いた。
「初めまして。試験を受けさせてもらいます、ユア・ミューリュッフィと申します」
ユアが一礼をした。
「初めまして~、あたしはメシャフだよ~。試験官を担当する教師なのだ~」
聞く人のやる気を削ぐような、間延びした声。
学園に入学したら、ぜひともこの女教師の授業を受けたい。よく寝られそうだからな。
俺も自己紹介をしようとしたが、その前にメシャフが手を叩いて合図をした。
「じゃ、これでみんな集合したね~」
どうやらこの三人で試験を受けるようだ。
まぁ今は入学シーズンじゃないし、このくらいの人数で妥当なんだろうな。
てか、俺は自己紹介しなくてもいいのか?
予め試験を受けるやつらの名前は知っているのだろう。二人が自己紹介したら、残りは消去法で決まるから必要ないということか。
やっぱりこの学園、適当だな……
理事長は賢者と称される大物なのに、これじゃあギルティアスのメンバーが潜り込むわけだよ。
「では、誰が最初にあたしとやりますか~?」
大きな演習場の中心で、メシャフが両手を広げて言った。
誰も反応しない。
ユアはメシャフの実力が不明だから用心して名乗り出ないのだろう。
俺は面倒だからやりたくない。
「むむむー。誰も手を挙げてくれませんか~。よし、ディティア・アシェルダさん~、前に出てきてください~」
しびれを切らしたメシャフが、ダークエルフの少女を見て言った。
決まったな。最初にメシャフとやるのは彼女だ。
「分かりました」
ディティア・アシェルダという名のダークエルフの少女は始終無言・無表情で、何を考えているのか分からなかったが、頷いて一歩前に出た。
「えーと。どうぞ、あたしを親の仇だと思って、かかってきてください~」
「……はい」
なんとバカにしたような言い草だろうか。ディティアが不愉快そうにしているじゃないか。
彼女は右手をメシャフに突きつけた。
「風炎!」
魔法名を発すると同時に、ディティアの右手から炎を帯びた風がメシャフめがけて飛んでいく。
これは混合魔法かな。魔力の量から見て中位レベルか。
「なかなかやりますね……」
ディティアの魔法を見たユアが、俺の隣で感嘆の声を漏らす。
確かに、俺もそう思う。
年齢的に十五くらい。俺とあまり歳が離れていないのに、結構すごいな。
混合魔法は、通常単一魔法よりも難易度が上だ。その分、威力や範囲が勝っている。混合魔法の中位レベルなら通常単一魔法の上位に相当する。
それを涼しい顔で放ったディティアは、それなりの実力者と見ていい。
「はい、合格ですぅ~。滝風」
ディティアの入学許可が出されるとともに、混合魔法の風炎が消えた。
いや、メシャフの滝風という天から降ってくる風の上位魔法に相殺されたのだ。
教師というだけであって、このくらいは簡単なのか。
ディティアは一礼して後方に下がった。
そしてメシャフが俺たちを見る。
「さて、じゃあ次はユアさん~、来てください~」
次に呼ばれたのはユア。なんてことないという顔ながらも、尻尾はピンと立っている。
ユアはいつだって真面目だ。依頼を受ける時も、雑事をこなす時も。
俺にSランクの心構えを説いて絡んでくるのが玉に瑕だけどな。
ユアはまだSランクの壁を越えられそうにないが、それでも同年代の中では圧倒的に優秀だ。
身体能力が高い獣人族に生まれたうえに、三つの適性魔法を持つ異端な存在。魔法だけで戦った場合、俺でも勝つのが難しいかもしれない。
そのレベルにあるユアが、本気で相対している。
「お~、もうこれだけで合格にしたいですね~」
ユアの圧に当てられながら、なおも笑顔を保ち続けるメシャフ。
力の程度は同じくらいと予想してみる。
「ユアさんだっけ、強いの?」
いつの間にか、俺の隣に移動していたディティアが聞いてきた。
ダークエルフ特有の長い耳をピクピク動かしている。
ユアの強さを感じたからか、さっきまでとは打って変わって興味津々な様子だ。
おそらくディティアとユアは同年代だろう。気になるのも無理はない。
人より才能がある者は、自分と同じくらいの才能を持つ者に興味を抱くものだ。
面倒だが、質問に答えてやることにした。
「強いよ。多分、お前以上にな」
「そう」
ディティアは俺の答えを聞くとすぐに会話を放棄した。ユアをもっと観察したいのだろう。なかなか研究熱心だな。
「行きます。氷床」
ユアが目を瞑ってそう言った。
普通なら戦闘中に目を閉じるのは愚かな行為だが、彼女の場合は違う。
ユアの足元にある土の地面がどんどん凍っていき、ついには演習場の半分が氷に包まれた。
メシャフは自身の足が凍らないように器用に避けている。しかし、ただ逃げているだけではない。目を瞑っているユアを見て隙があると判断したらしく、魔法を放った。
「風矢!」
下位魔法である風の矢がユアめがけて勢いよく飛んでいく。
だが、それは無駄だ。
半透明な風の矢は氷結領域に入ると、簡単に凍ってしまった。
「あらら、そういうことですか~」
「まだ続けますか? それとも合格ですか?」
ユアが目を開けて聞いた。
これ以上続けても無駄。
ユアが展開した氷床の『絶対領域』には、人はおろか、魔法すらも入ることができない。そして、ユアは絶対領域の中からいつでも好きに魔法を放てる。
つまり、やりたい放題できるのだ。
「ん~合格ですぅ~」
まだ余裕のある笑顔を保っているメシャフが言った。
もしかしたら彼女には絶対領域を破る策があるのかもしれない。
しかし、今は本気で戦う場面ではない。まだ教師としての立場を優先して、大人しく合格だけを伝えたんだな。
「お疲れ様でした」
ユアが氷床の魔法を解き、演習場を覆っていた氷がたちまち溶けていく。
隣にいたディティアはユアのもとに歩き出した。
「あなた強いのね。私はディティア・アシェルダ。ティアって呼んでね」
「ありがとう、ティア。私のことはユアって呼んで」
二人の強者が楽しそうに笑い合っている。俺は完全に蚊帳の外だ。
「じゃあ、次はヒスイ君~おいでおいで~」
「あいよ」
メシャフの呼び声に応じて演習場の真ん中に行く。
まいったな、俺はどうしようか。
目立ちたくないから本気は出さないとしても、合格基準が分からないので、どれくらい手加減をすればいいかも判断がつかない。
そう思っていると、メシャフが俺を挑発するように言ってきた。
「あー。ヒスイ君が一番強いって知ってるからさ~、本気でいいよ~?」
いやいや、俺が本気出したらこの学園潰れるぞ?
賢者のセスティアがいなければ、の話だけど。
俺は率直に合格基準を聞くことにした。
「なぁ、どれくらいで合格できるのよ?」
「ええ~、それを言ってしまっては、本気が見られないじゃないですか~。まあ、強いて言うなら……通常単一魔法の中位、混合魔法の下位で合格ですかね~」
「ふーん。じゃあ剣とか格闘は?」
「近接戦の合格は口で説明できませんね~」
おっけーおっけー。
俺は闇魔法で通常単一の王位までの威力と範囲を使える。しかし、そもそも闇魔法は他の属性と違って桁外れだ。魔法としての格が群を抜いている。
下位の闇魔法であっても、威力では火の上位に並び、範囲は風の上位と並ぶ。端的に言えば、魔法を使えば速攻で目立つ。
もしもメシャフがギルティアスのメンバーだったら、一発で警戒されてしまう。
――ってことで、俺は魔法以外の戦い方を選ぶべきだ。
「じゃ、俺は接近戦でいく」
「そうですか~」
ズボンの『ポケット』から木剣を取り出す。
「おお~、その黒いズボンはマジックアイテムですね~。どんな効果があるんですか~?」
「ポケットが無限の容量を持つ袋になっているだけだ」
どっかの地下迷宮に潜っている時に偶然見つけた代物だが、なかなか便利なので使っている。
メシャフは気の毒そうな目で俺を見た。
「学園に入学したら制服を着てもらわないといけないので、それは穿けませんよ~?」
「分かってるよ、それくらい」
「了解です~。では、カモンです~」
メシャフの突然の合図。
俺は足に力を込めて木剣を上段に構えた。
近づいてくるメシャフに対して、殺傷力を高めて一気に振り下ろす。
メシャフはそれを右に体を捻って避けた。
木剣を振り抜く前に、一瞬だけ止めて横になぎ払う。
メシャフはバックステップでさらに避ける。
俺が追撃を加えよう踏み出すと、メシャフが慌てて言った。
「はい! ストップですぅ~!」
「合格か?」
メシャフが手を上げて頭の上で丸を作った。
「そうです~。合格です~」
演習場が安全になると同時に、ユアとディティアが揃って俺に歩み寄る。
「あんたクズね」
開口一番、ディティアが吐き捨てた。
「ん?」
「この女教師は明らかに魔法寄りなのに、接近戦でここまで追い詰めるなんてね。それで合格して何が嬉しいの?」
急に何を言い出すんだ、こいつ。
「いえいえ~、試験の一環なので気にしないでください~」
メシャフがすかさずフォローを入れるが、ディティアはまだ納得のいかない表情をしている。
すると今度はユアがたしなめた。
「たとえどんな手段を使っても、合格は合格です。それに、それはあなたが気にすることではないですよ、ティア」
「う、ユア先輩がそう言うのなら……。だけど調子に乗らないことね、あんたみたいなズルいやつはすぐに淘汰されるわよ」
どうやらディティアよりもユアの方が年上だったらしい。俺が試験を受けている間に「先輩」などと呼ぶようになったのか。
「はいはい、忠告ありがとさん」
「――ふん」
俺が適当に流すと、思いっきり睨まれた。
おいおいおい。後輩のくせに面倒くせえやつだな。
「じゃ、これで試験は終わりかな~。ディティアさんは一年生担当の職員室に、ユアさんは二年生担当の職員室に向かってください~」
「「分かりました」」
二人はそう言って仲良く演習場から出ていった。
「ん、俺は?」
俺とユアは同い年だったはずだが、俺も二年生担当の教室に行けばいいのか?
俺の疑問にメシャフが答えた。
「闇魔法使いのヒスイさんは、ここであたしと戦ってもらいます~」
「ああ、なるほどね」
「あまり驚かないのですね~」
メシャフの戦い方は手加減しているというか、どこか力を温存している風だった。なんとなくだけど、こうなる可能性は頭の隅っこで予想していた。
「そりゃーね。俺の正体に気づいてそうだったし」
試験を始める前に、メシャフは「一番強いのはヒスイ君」とか言ってたからね。
俺もSランクだし、それなりに名は知られている。ある程度バレるのは織り込み済みだ。
ひょっとしたらギルティアスのメンバーを殺した過去があるから、学園に入った途端に狙われるかもしれない。
あえて俺が目立てば、ユアが動きやすくなる。それも作戦の一つだと考慮していた。
でもまさか、ここまで簡単に出てくるとは思わなかった。
ギルティアスのメンバーがさ。
「容赦しねーぞ?」
「うふふ~、そうしてくれると嬉しいです~」
メシャフを、俺が殺したギルティアスのメンバーの六人目にしないように気をつけないと。
生け捕りにして情報を引き出す必要があるからな。
しかし、なんでこのタイミングで戦闘を仕掛けてきたのか。釈然としない部分もある。
暗殺とか、逆に逃亡するとか、考えなかったのだろうか。
まあいい。今はただ目の前にいるおっとりした女を捕まえることだけに集中しなければならない。
余計な詮索は戦いに支障をきたすだけだ。
「うふふ~、行きますよ~」
メシャフの合図。
俺は木剣をポケットにしまい、黒く輝く鮮やかな『刀』を取りだす。
たいていの剣は切れ味よりもその重量で叩き潰すことを想定しているが、刀の切れ味は別格だ。
今回は首や心臓など、命に関わる部分を狙ってはダメなので、抵抗を封じるために手足の一本を斬る程度にしないとな。
「まずはこれです~、滝風」
さっきディティアに使った魔法か。
滝のように空から降ってくる高威力の風。
当たったら一瞬で肉塊と化すだろう。
だが俺は動かない。
動く必要がないのだ。
「――ッ!?」
メシャフに明らかな動揺が走る。
俺が全く動かないことに驚いたのだろうか。
滝風がついに俺の頭まで迫った。そこで俺は頭上を黒い刀で――斬った。
「わお~、すごいですね~……」
メシャフはまだ顔に笑みを貼り付けているが、その口調にはさっきまでの勢いがない。口元もやや引きつっている。
「魔法は魔力によって構成されている。この程度の魔法なら、刀に魔力を通せば余裕で斬れるぞ」
「あはは~。……その技術は放った魔法以上の魔力じゃないとできなかったような~。……そもそも、その量の魔力を通せる片刃の剣の容量って一体どれくらいあるんですか~」
「滝風は上位魔法だったな、それ以上の魔力なんて簡単に出せる。それと、この刀は特別な鍛冶屋が作った物でな、俺の莫大な魔力を入れても壊れないんだよ」
タネも仕掛けもないただの剣――というわけはないので、軽く説明をしてやった。
俺に逆らおうと考えないように、どっちが強者かを教えたわけだ。
「これは厳しいですかね~」
メシャフの顔から笑みが消え、真剣そのものの表情になった。それでも、間延びした喋り方だけは変わらないのか。
「少しだけ覚悟してもらいますよ~?」
メシャフが右手を空に突き上げた。
「雷天」
王位魔法。
俺の脳内にその魔法の威力を認識させるだけの魔力が、メシャフの右手から放たれた。
一瞬で空が曇り、メシャフの魔力が行き着いた先から、無数の雷が地面を貫く。
抉られ、打ち砕かれ、演習場の地面がボロボロになっていく。
幸いなことに、防壁には自動防御の結界が張られているため傷がつくことはない。
「くそっ!」
刀で雷を処理していくが、追いつかない。
魔力の塊といえど、自然現象を模した魔法なのだから、生身で触れれば感電してしまう。
最悪の場合は死ぬ。
無秩序に落ちていた雷が、だんだん俺に集中して降り注ぐようになった。
メシャフが自由自在にコントロールしているのだろう。
……仕方ない。使ってやるか、闇魔法を。
「黒靄」
俺の体中から黒色の靄が現れて、周りを漂いはじめる。絶対に俺のもとから離れない。
こいつは俺に多大な貢献をしてくれる。
自動防御、身体能力強化、第三の目、空間支配などなど。
まぁオマケがいっぱい付いている鎧のようなものだ。
強いて欠点を挙げるなら――手加減しても強すぎるところくらいか。
「なるべく殺さないように気をつけるが、そっちも死なないように注意しろよ?」
落ちてくる雷の向こう側にいるメシャフにそう言った。
「おう。俺が魔法学会で『闇魔法』の存在を認めさせて以来か?」
「あの時はどれだけの被害が出たことやら。憎ったらしいやつめ……」
どうやらセスティアは昔の因縁を思い出していたようだ。別にセスティアが直接被害を受けたわけでもないのに、まるで俺を親の仇かのように見てくる。
「いやいや、認めようとしなかった魔法学会のやつらが悪いんだよ」
「あの、なんのことですか?」
一人だけ会話に加われずにいたユアが、小声で質問をしてきた。
セスティアは俺を睨みつけながら答える。
「ユアは別の国にいたから知らんのじゃったな……こやつは昔、闇魔法を使って魔法学会の本部を半壊させたのじゃ!」
「ほえ!?」
「仕方ねーだろ。何度も闇魔法を見せたのに、存在を認めようとしなかったんだから」
「それでも限度があるじゃろうが!」
限度、ねぇ。
俺は魔法学会のやつらに何度も説明したのだ。俺が家から勘当されて、何度も何度も辛い目にあった過去を。
もしも闇魔法の存在が認知されていれば、俺みたいなやつも少しは減るだろう。そんな思いで必死だった。
それなのに嘲笑った。
『闇魔法? そんなもの〝賢者様〟も使われていないのだぞ。あるわけがないだろう』
『使用者が稀すぎるから、魔法として登録する必要性は全く感じられない』
『そもそも、貴様が使ったこの魔法は何か細工をしたのではないのか? 映像用のマジックアイテムとか――』
バカじゃないかと。
最初はタチの悪い冗談かと思ったが、一時間以上も付き合わされれば俺の血管が切れても仕方ない。
セスティアはおそらくこの辺りの経緯は何も聞かされていないのだろうが、今さら俺が説明しても信じてもらえそうにないから、気にしないようにしている。
「こほん。今はこの話をしている場合ではなかったな」
セスティアは一つ咳払いをしてから、真剣な顔で続けた。
「お主たちにはこれより学園の入学試験を受けてもらう」
「ん、それはそっちで上手いこと都合をつけて入れてくれよ」
「教師陣にはお主たちのことを言っておらん。だからそれは無理なのじゃ」
「……面倒だな」
俺が小さくぼやく横で、ユアは快活に応えた。
「いえ、試験くらいなら簡単ですよ!」
ユアはこう考えているのだろう。
教師陣に俺たちのことを知られたくないのだから、試験を受けるのは当然だ。それに、Aランク冒険者の自分には試験なんて簡単なので別に構わない、と。
だが、違う。本質はそこじゃない。
セスティアの言葉を言い換えると、「教師陣も信用できないから話していない」ということ。つまり、教師の中にもギルティアスのメンバーがいるかもしれないのだ。
ユアはその辺理解できていなさそうだが……こんなんで本当にギルティアスのメンバーを見つけられるのか不安になってきたな。
「では、二人には学園の第一演習場に向かってもらおうかの」
「その前にいいか? 試験ってどんな内容なんだよ?」
「教師と戦うのじゃ。そして教師から合格をもらえば、晴れて入学という流れじゃ」
なんていうか、雑だな。適当すぎるわ。
賄賂でもコネでも使って教師を抱き込めば簡単に入学できるじゃねーか。
ああ、だから貴族が多いのね……納得。
「第一演習場に茶髪の女教師がいるのじゃ。名はメシャフ。彼女に言って試験を受けさせてもらうのじゃ」
「分かりました!」
元気よく返事をしたユアが、一礼して扉を開けた。
俺はすかさず扉をすり抜ける。
「なっ! 私が開けたのに!」
俺はユアの声を無視して学園の廊下を足早に進んだ。
灰色の防壁で四方を囲まれた演習場は、魔法や模擬戦などでよく使われる場所らしい。
第五演習場など、観客席が設けられたものもあるんだとか。
「あれじゃないですか?」
隣を歩いているユアが指差した。
色々省略されすぎているが、彼女の指し示す方向を視線で追うと、何が言いたいか理解できた。
肩まである茶髪の女性がいたからだ。
おそらく試験を担当する教師だろう。名前は確かメシャフだったか。
彼女の隣には黒いロングヘアーのダークエルフの姿があった。
「あのダークエルフさんは誰なんでしょうか?」
「さぁな。俺たちと同じ試験を受けるやつじゃねーのか」
「なるほど」
しばらく歩いて教師メシャフと思しき女性の前に着いた。
「初めまして。試験を受けさせてもらいます、ユア・ミューリュッフィと申します」
ユアが一礼をした。
「初めまして~、あたしはメシャフだよ~。試験官を担当する教師なのだ~」
聞く人のやる気を削ぐような、間延びした声。
学園に入学したら、ぜひともこの女教師の授業を受けたい。よく寝られそうだからな。
俺も自己紹介をしようとしたが、その前にメシャフが手を叩いて合図をした。
「じゃ、これでみんな集合したね~」
どうやらこの三人で試験を受けるようだ。
まぁ今は入学シーズンじゃないし、このくらいの人数で妥当なんだろうな。
てか、俺は自己紹介しなくてもいいのか?
予め試験を受けるやつらの名前は知っているのだろう。二人が自己紹介したら、残りは消去法で決まるから必要ないということか。
やっぱりこの学園、適当だな……
理事長は賢者と称される大物なのに、これじゃあギルティアスのメンバーが潜り込むわけだよ。
「では、誰が最初にあたしとやりますか~?」
大きな演習場の中心で、メシャフが両手を広げて言った。
誰も反応しない。
ユアはメシャフの実力が不明だから用心して名乗り出ないのだろう。
俺は面倒だからやりたくない。
「むむむー。誰も手を挙げてくれませんか~。よし、ディティア・アシェルダさん~、前に出てきてください~」
しびれを切らしたメシャフが、ダークエルフの少女を見て言った。
決まったな。最初にメシャフとやるのは彼女だ。
「分かりました」
ディティア・アシェルダという名のダークエルフの少女は始終無言・無表情で、何を考えているのか分からなかったが、頷いて一歩前に出た。
「えーと。どうぞ、あたしを親の仇だと思って、かかってきてください~」
「……はい」
なんとバカにしたような言い草だろうか。ディティアが不愉快そうにしているじゃないか。
彼女は右手をメシャフに突きつけた。
「風炎!」
魔法名を発すると同時に、ディティアの右手から炎を帯びた風がメシャフめがけて飛んでいく。
これは混合魔法かな。魔力の量から見て中位レベルか。
「なかなかやりますね……」
ディティアの魔法を見たユアが、俺の隣で感嘆の声を漏らす。
確かに、俺もそう思う。
年齢的に十五くらい。俺とあまり歳が離れていないのに、結構すごいな。
混合魔法は、通常単一魔法よりも難易度が上だ。その分、威力や範囲が勝っている。混合魔法の中位レベルなら通常単一魔法の上位に相当する。
それを涼しい顔で放ったディティアは、それなりの実力者と見ていい。
「はい、合格ですぅ~。滝風」
ディティアの入学許可が出されるとともに、混合魔法の風炎が消えた。
いや、メシャフの滝風という天から降ってくる風の上位魔法に相殺されたのだ。
教師というだけであって、このくらいは簡単なのか。
ディティアは一礼して後方に下がった。
そしてメシャフが俺たちを見る。
「さて、じゃあ次はユアさん~、来てください~」
次に呼ばれたのはユア。なんてことないという顔ながらも、尻尾はピンと立っている。
ユアはいつだって真面目だ。依頼を受ける時も、雑事をこなす時も。
俺にSランクの心構えを説いて絡んでくるのが玉に瑕だけどな。
ユアはまだSランクの壁を越えられそうにないが、それでも同年代の中では圧倒的に優秀だ。
身体能力が高い獣人族に生まれたうえに、三つの適性魔法を持つ異端な存在。魔法だけで戦った場合、俺でも勝つのが難しいかもしれない。
そのレベルにあるユアが、本気で相対している。
「お~、もうこれだけで合格にしたいですね~」
ユアの圧に当てられながら、なおも笑顔を保ち続けるメシャフ。
力の程度は同じくらいと予想してみる。
「ユアさんだっけ、強いの?」
いつの間にか、俺の隣に移動していたディティアが聞いてきた。
ダークエルフ特有の長い耳をピクピク動かしている。
ユアの強さを感じたからか、さっきまでとは打って変わって興味津々な様子だ。
おそらくディティアとユアは同年代だろう。気になるのも無理はない。
人より才能がある者は、自分と同じくらいの才能を持つ者に興味を抱くものだ。
面倒だが、質問に答えてやることにした。
「強いよ。多分、お前以上にな」
「そう」
ディティアは俺の答えを聞くとすぐに会話を放棄した。ユアをもっと観察したいのだろう。なかなか研究熱心だな。
「行きます。氷床」
ユアが目を瞑ってそう言った。
普通なら戦闘中に目を閉じるのは愚かな行為だが、彼女の場合は違う。
ユアの足元にある土の地面がどんどん凍っていき、ついには演習場の半分が氷に包まれた。
メシャフは自身の足が凍らないように器用に避けている。しかし、ただ逃げているだけではない。目を瞑っているユアを見て隙があると判断したらしく、魔法を放った。
「風矢!」
下位魔法である風の矢がユアめがけて勢いよく飛んでいく。
だが、それは無駄だ。
半透明な風の矢は氷結領域に入ると、簡単に凍ってしまった。
「あらら、そういうことですか~」
「まだ続けますか? それとも合格ですか?」
ユアが目を開けて聞いた。
これ以上続けても無駄。
ユアが展開した氷床の『絶対領域』には、人はおろか、魔法すらも入ることができない。そして、ユアは絶対領域の中からいつでも好きに魔法を放てる。
つまり、やりたい放題できるのだ。
「ん~合格ですぅ~」
まだ余裕のある笑顔を保っているメシャフが言った。
もしかしたら彼女には絶対領域を破る策があるのかもしれない。
しかし、今は本気で戦う場面ではない。まだ教師としての立場を優先して、大人しく合格だけを伝えたんだな。
「お疲れ様でした」
ユアが氷床の魔法を解き、演習場を覆っていた氷がたちまち溶けていく。
隣にいたディティアはユアのもとに歩き出した。
「あなた強いのね。私はディティア・アシェルダ。ティアって呼んでね」
「ありがとう、ティア。私のことはユアって呼んで」
二人の強者が楽しそうに笑い合っている。俺は完全に蚊帳の外だ。
「じゃあ、次はヒスイ君~おいでおいで~」
「あいよ」
メシャフの呼び声に応じて演習場の真ん中に行く。
まいったな、俺はどうしようか。
目立ちたくないから本気は出さないとしても、合格基準が分からないので、どれくらい手加減をすればいいかも判断がつかない。
そう思っていると、メシャフが俺を挑発するように言ってきた。
「あー。ヒスイ君が一番強いって知ってるからさ~、本気でいいよ~?」
いやいや、俺が本気出したらこの学園潰れるぞ?
賢者のセスティアがいなければ、の話だけど。
俺は率直に合格基準を聞くことにした。
「なぁ、どれくらいで合格できるのよ?」
「ええ~、それを言ってしまっては、本気が見られないじゃないですか~。まあ、強いて言うなら……通常単一魔法の中位、混合魔法の下位で合格ですかね~」
「ふーん。じゃあ剣とか格闘は?」
「近接戦の合格は口で説明できませんね~」
おっけーおっけー。
俺は闇魔法で通常単一の王位までの威力と範囲を使える。しかし、そもそも闇魔法は他の属性と違って桁外れだ。魔法としての格が群を抜いている。
下位の闇魔法であっても、威力では火の上位に並び、範囲は風の上位と並ぶ。端的に言えば、魔法を使えば速攻で目立つ。
もしもメシャフがギルティアスのメンバーだったら、一発で警戒されてしまう。
――ってことで、俺は魔法以外の戦い方を選ぶべきだ。
「じゃ、俺は接近戦でいく」
「そうですか~」
ズボンの『ポケット』から木剣を取り出す。
「おお~、その黒いズボンはマジックアイテムですね~。どんな効果があるんですか~?」
「ポケットが無限の容量を持つ袋になっているだけだ」
どっかの地下迷宮に潜っている時に偶然見つけた代物だが、なかなか便利なので使っている。
メシャフは気の毒そうな目で俺を見た。
「学園に入学したら制服を着てもらわないといけないので、それは穿けませんよ~?」
「分かってるよ、それくらい」
「了解です~。では、カモンです~」
メシャフの突然の合図。
俺は足に力を込めて木剣を上段に構えた。
近づいてくるメシャフに対して、殺傷力を高めて一気に振り下ろす。
メシャフはそれを右に体を捻って避けた。
木剣を振り抜く前に、一瞬だけ止めて横になぎ払う。
メシャフはバックステップでさらに避ける。
俺が追撃を加えよう踏み出すと、メシャフが慌てて言った。
「はい! ストップですぅ~!」
「合格か?」
メシャフが手を上げて頭の上で丸を作った。
「そうです~。合格です~」
演習場が安全になると同時に、ユアとディティアが揃って俺に歩み寄る。
「あんたクズね」
開口一番、ディティアが吐き捨てた。
「ん?」
「この女教師は明らかに魔法寄りなのに、接近戦でここまで追い詰めるなんてね。それで合格して何が嬉しいの?」
急に何を言い出すんだ、こいつ。
「いえいえ~、試験の一環なので気にしないでください~」
メシャフがすかさずフォローを入れるが、ディティアはまだ納得のいかない表情をしている。
すると今度はユアがたしなめた。
「たとえどんな手段を使っても、合格は合格です。それに、それはあなたが気にすることではないですよ、ティア」
「う、ユア先輩がそう言うのなら……。だけど調子に乗らないことね、あんたみたいなズルいやつはすぐに淘汰されるわよ」
どうやらディティアよりもユアの方が年上だったらしい。俺が試験を受けている間に「先輩」などと呼ぶようになったのか。
「はいはい、忠告ありがとさん」
「――ふん」
俺が適当に流すと、思いっきり睨まれた。
おいおいおい。後輩のくせに面倒くせえやつだな。
「じゃ、これで試験は終わりかな~。ディティアさんは一年生担当の職員室に、ユアさんは二年生担当の職員室に向かってください~」
「「分かりました」」
二人はそう言って仲良く演習場から出ていった。
「ん、俺は?」
俺とユアは同い年だったはずだが、俺も二年生担当の教室に行けばいいのか?
俺の疑問にメシャフが答えた。
「闇魔法使いのヒスイさんは、ここであたしと戦ってもらいます~」
「ああ、なるほどね」
「あまり驚かないのですね~」
メシャフの戦い方は手加減しているというか、どこか力を温存している風だった。なんとなくだけど、こうなる可能性は頭の隅っこで予想していた。
「そりゃーね。俺の正体に気づいてそうだったし」
試験を始める前に、メシャフは「一番強いのはヒスイ君」とか言ってたからね。
俺もSランクだし、それなりに名は知られている。ある程度バレるのは織り込み済みだ。
ひょっとしたらギルティアスのメンバーを殺した過去があるから、学園に入った途端に狙われるかもしれない。
あえて俺が目立てば、ユアが動きやすくなる。それも作戦の一つだと考慮していた。
でもまさか、ここまで簡単に出てくるとは思わなかった。
ギルティアスのメンバーがさ。
「容赦しねーぞ?」
「うふふ~、そうしてくれると嬉しいです~」
メシャフを、俺が殺したギルティアスのメンバーの六人目にしないように気をつけないと。
生け捕りにして情報を引き出す必要があるからな。
しかし、なんでこのタイミングで戦闘を仕掛けてきたのか。釈然としない部分もある。
暗殺とか、逆に逃亡するとか、考えなかったのだろうか。
まあいい。今はただ目の前にいるおっとりした女を捕まえることだけに集中しなければならない。
余計な詮索は戦いに支障をきたすだけだ。
「うふふ~、行きますよ~」
メシャフの合図。
俺は木剣をポケットにしまい、黒く輝く鮮やかな『刀』を取りだす。
たいていの剣は切れ味よりもその重量で叩き潰すことを想定しているが、刀の切れ味は別格だ。
今回は首や心臓など、命に関わる部分を狙ってはダメなので、抵抗を封じるために手足の一本を斬る程度にしないとな。
「まずはこれです~、滝風」
さっきディティアに使った魔法か。
滝のように空から降ってくる高威力の風。
当たったら一瞬で肉塊と化すだろう。
だが俺は動かない。
動く必要がないのだ。
「――ッ!?」
メシャフに明らかな動揺が走る。
俺が全く動かないことに驚いたのだろうか。
滝風がついに俺の頭まで迫った。そこで俺は頭上を黒い刀で――斬った。
「わお~、すごいですね~……」
メシャフはまだ顔に笑みを貼り付けているが、その口調にはさっきまでの勢いがない。口元もやや引きつっている。
「魔法は魔力によって構成されている。この程度の魔法なら、刀に魔力を通せば余裕で斬れるぞ」
「あはは~。……その技術は放った魔法以上の魔力じゃないとできなかったような~。……そもそも、その量の魔力を通せる片刃の剣の容量って一体どれくらいあるんですか~」
「滝風は上位魔法だったな、それ以上の魔力なんて簡単に出せる。それと、この刀は特別な鍛冶屋が作った物でな、俺の莫大な魔力を入れても壊れないんだよ」
タネも仕掛けもないただの剣――というわけはないので、軽く説明をしてやった。
俺に逆らおうと考えないように、どっちが強者かを教えたわけだ。
「これは厳しいですかね~」
メシャフの顔から笑みが消え、真剣そのものの表情になった。それでも、間延びした喋り方だけは変わらないのか。
「少しだけ覚悟してもらいますよ~?」
メシャフが右手を空に突き上げた。
「雷天」
王位魔法。
俺の脳内にその魔法の威力を認識させるだけの魔力が、メシャフの右手から放たれた。
一瞬で空が曇り、メシャフの魔力が行き着いた先から、無数の雷が地面を貫く。
抉られ、打ち砕かれ、演習場の地面がボロボロになっていく。
幸いなことに、防壁には自動防御の結界が張られているため傷がつくことはない。
「くそっ!」
刀で雷を処理していくが、追いつかない。
魔力の塊といえど、自然現象を模した魔法なのだから、生身で触れれば感電してしまう。
最悪の場合は死ぬ。
無秩序に落ちていた雷が、だんだん俺に集中して降り注ぐようになった。
メシャフが自由自在にコントロールしているのだろう。
……仕方ない。使ってやるか、闇魔法を。
「黒靄」
俺の体中から黒色の靄が現れて、周りを漂いはじめる。絶対に俺のもとから離れない。
こいつは俺に多大な貢献をしてくれる。
自動防御、身体能力強化、第三の目、空間支配などなど。
まぁオマケがいっぱい付いている鎧のようなものだ。
強いて欠点を挙げるなら――手加減しても強すぎるところくらいか。
「なるべく殺さないように気をつけるが、そっちも死なないように注意しろよ?」
落ちてくる雷の向こう側にいるメシャフにそう言った。
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