上 下
94 / 137
6章 逢魔が時

6章ー18:源伝魔法の代償と、接触

しおりを挟む
 空を飛んでいた子犬姿のミサヤが、魔力物質製の靄に身を隠して瞬時に人化し、命彦へと駆け寄った。
「マヒコ!」
 呆然とする舞子の前で、足取りも怪しくフラついていた命彦が、その場で倒れかける。
 駆け寄ったミサヤの腕に倒れ込んだ命彦の表情には、勝利の感慨よりも、安堵の笑みがあった。
「……当たった、ぞ、ミサヤ? ……先に、足を……つぶしてて、良かった」
「はい、お見事でした。《魔竜の息吹》諸共にミズチは絶命しましたよ?」
 ミサヤが命彦に淡く美しい笑みを見せて、賞賛した。
 命彦がミズチの足を狙い、動きを止めることに腐心した理由。
 それは《魂絶つ刃》の欠点である、魔法の制御の難しさと、魔法自体の持つ効力のせいであった。
 この源伝魔法を制御するためには、そもそも魔法自体を集束させる触媒、呼び水とも言うべき集束器が必要であり、命彦の場合、魔力物質製の日本刀がこの集束器に当たる。
 魔法斬撃自体は一度具現化したら最後、使い手からの制御をほぼ受け付けず、ただ集束器を振るったとおりにまっすぐ伝播し、接触したモノを手当たり次第に消滅させて行くため、当然集束器を振るう範囲でしか魔法斬撃は伝播せず、頭の良い魔獣や敏捷性が高い魔獣達は、突き進んで来る魔法斬撃を容易く見切って回避する可能性があった。
 つまり、防御不能ではあっても、回避不能にはあらず。
 実はそれが、命彦が《魂絶つ刃》の使用を躊躇う、最たる理由である。
 また、集束器を用いずしてこの魔法の制御はまず不可能であるが、全てを破壊するその魔法的効力上、実は破壊の魔法波動に触れる集束器自体も消滅することが前提であり、集束器が壊れるまでに魔法を使い切り、事態を収拾する必要もあった。
 全てを斬り消す魔法波動の制御にあまり時間をかけると、集束器が先に壊れてしまい、源伝魔法の使い手たる命彦自身も消滅する。
 魔法の制御を間違えれば自滅する上、1度の戦闘につき1回しか放てず、しかも攻撃が見切られやすい。
 付け加えれば、魔法展開速度が非常に遅い源伝魔法でも、《魂絶つ刃》は格別に魔法の具現化に時間がかり、魔法の構築から展開まで、要するに魔力を放出してから魔法を実際に具現化するまでに、最短でも90秒近くかかるため、今の命彦では単独戦闘で使用するのが難しく、使い方の工夫や時間稼ぎの戦略、もしくは誰かの助力が必要不可欠であった。
 無詠唱や短縮詠唱による魔法の具現化も、効力が複雑過ぎてほぼ不可能であり、コンマ数秒で具現化された魔法弾の飛び交う戦場で、1分間以上も無防備に棒立ちであれば、真っ先に狙い撃ちにされ、魔法を具現化する前に普通は死ぬ。
 相当量の魔力を最初から放出していれば、【始源の魔力】を感知しやすく、また制御もしやすいため、魔法の具現化にかかる時間を短縮することは可能だったが、それでも現時点の命彦では具現化に30秒近くかかった。
 勿論、この源伝魔法により習熟すれば、魔法展開速度の遅さも改善できる余地はあるだろうが、使い手に重過ぎる負担を課す魔法はそもそも戦闘時には頻繁に使いにくいため、習熟する機会さえも限られてしまう。
 使い時や使い方を間違えると、一撃必殺の魔法が、一撃自滅の魔法と化し、おまけに使う機会も限られるため、習熟しにくい。
 こうした欠点を抱えている上で、絶対斬撃とも言われる《魂絶つ刃》の効力は、発揮されていたのである。
 命彦をしっかり抱き締めて、ミサヤが心配そうに問う。
「お身体に異常はありませんか?」
「ふふ……異常だらけだよ。けど、勝った。魂斬家の源伝魔法が……魔竜の魔法攻撃程度で、止まるかよ。ざまあみろ……くっ!」
 ようやく勝ち誇るように笑った命彦であったが、呼吸はかすかで体温も異常に低い。
 蒼白の顔色で虫の息の命彦は、視線もうつろにミサヤを見ていた。
 病人かと思えるほどに、命彦は一気に衰弱している。
 全身から脱力したかのように力が抜けており、自力では立つこともできず、ミサヤに全体重を預けている状態であった。
 手からも力が抜け、持っていた柄だけが残る魔力物質製の日本刀を取り落とした命彦。
 地面に落ちるまでに、魔力物質は空間に溶けるように消え去った。
 日本刀の魔法具を複数所有する命彦が、〈魔狼の風太刀:ハヤテマカミ〉から両手を空けるために〈陰陽龍の魔甲拳:クウハ〉に装備をあえて切り替えたのも、魔法具を触媒たる集束器にして《魂絶つ刃》を具現化すると、その魔法具が源伝魔法の効力で消滅するからであった。
 愛する母や姉の作った魔法具を、自分の魔法で失うことだけは、命彦も絶対に避けたかったのだろう。

 ミサヤは命彦の心身の消耗状態を敏感に察し、危険であると判断した。
 命彦の額に自分の額をくっ付け、ミサヤは短く呪文を紡ぐ。
「結べ《結魂の儀》」
「み、ミサヤ……それは」
「あとのことは私に任せてくださいと言ったでしょう?」
「……分かった。ありがと、ミサヤ」
 命彦は巫女姿のミサヤのたわわに実る胸へ顔を預け、死んだように目を閉じた。
 精霊儀式魔法《結魂の儀》。陽聖の精霊を魔力へと多量に取り込んで、魔法の使用者と魔法の対象との魂の間に魔力経路を作り、任意の時に思考だけで意思伝達を行ったり、魔力のやり取りを行ったり、互いの五感を高め合ったりする効力を持つ魔法であった。
 本来は融和型魔獣とその身元引受人との間で使われる、効力が長期間継続する契約用の魔法であり、両者が互いに対等の関係に立ち、意志疎通を容易にするための魔法であったが、この本来の効力よりも2次的効力である、魔力のやり取りや五感の同期連動にこそ注目が集まる、異例の魔法である。
 魔力の自力回復手段は本来、休息するか、消費型魔法具を使うか、魔力回復用の魔法を使うかの、3択に限られるが、どれも魔力回復には相応の時間を要した。
 しかし、《結魂の儀》で融和型魔獣と契約した魔法士は、魔獣の余りある魔力を分け与えられ、短期間で魔力が回復するという、4つ目の魔力回復手段が使える。
 魔力のやり取りは、家族のように近しい関係の者同士の間以外では、非常に難しいものだが、《結魂の儀》で契約した魔獣と契約魔法士は、互いの魂を結び付ける魔力経路を伝播する過程で、魔獣の魔力が契約魔法士の魔力へと転換されるため、自分以外の魔力であるにもかかわらず、契約魔法士の持つ魔力が反発せずに、その魔力を容易に取り込むことが可能であった。
 魔力回復量が人間より遥かに多い魔獣から、ある意味自分の魔力が補給されるために、緊急時の魔力回復には打って付けの効力だったのである。
 命彦も魔力消費が多い時には、《結魂の儀》の効力を使い、ミサヤから多少の魔力を分けてもらっていた。
 また、魔獣の五感と自分の五感が同期連動する効力についても、自分の感知不能である精霊を、魔獣の五感から感知することができるため、契約魔法士単独では使用不能である精霊魔法を使えたりする点で、非常に重宝される。
 命彦も、精霊魔法の訓練時にはこの《結魂の儀》を利用し、基心外精霊の使役訓練をしていた。
 ミサヤと契約した6歳頃から、《結魂の儀》の効力は持続しており、命彦とミサヤとの間には魔力経路が作られたままであるため、少量の魔力のやり取りであれば、ミサヤが願うだけで可能だったが、今回は一気に多量の魔力を送る必要があったため、短縮詠唱での魔法の再具現化を行い、魔力のやり取りを行ったらしい。
 ミサヤから一気に多量の魔力が命彦へと送られ、その命彦に注がれる魔力量の多さから、舞子はそれだけ命彦が消耗していることを察し、容態を心配した。
「命彦さん……」
 舞子が不安そうにミサヤに抱き締められて眠る命彦を見ていると、転がっていたミズチの腕や尾の一部を回収した勇子達が歩いて来る。
「ミサヤが《結魂の儀》を使って魔力を一気に分け与え、消耗した命彦の魂を癒しとるんや。心配いらんて」
「今まで通りだったら、数日で目を覚ますでしょうね」
 メイアの言葉に、舞子が目を剥いた。
「ええ! 数日って……その間ずっと昏睡状態ってことですか?」
「そうよ? あのね舞子、源伝魔法を使って数日で眼が覚めるって、実は相当回復が早い方よ?」
「そうだね。普通は源伝魔法を使うと、自力で回復する場合は10日から2週間は昏々と眠るんだ。【始源の魔力】の回復にはそれだけ時間がかかるんだよ。人によっては、そのまま永眠というか、昏睡状態がずっと続く人もいる。命彦が源伝魔法の使用を多少は渋るのも分かる話さ」
 魔力消費でフラフラの空太が、瓦礫の上に座って言うと、勇子も同意した。
「せやね。でも源伝魔法の使用後に、すぐに魔力を分け与えられて消耗した魂を表面領域だけでも癒せば、回復は劇的に早まるんや。【始源の魔力】を生み出す始源領域の消耗は自力でしか回復でけへんけど、表面領域が回復すれば、始源領域の回復も早まる。その点じゃ、ミサヤが傍におって《結魂の儀》を使える限り、そこまで命彦の昏睡状態が深刻化することはあらへん。まあそれでも、源伝魔法の使用には相応の代価、代償がいるってことは確かやけどね?」
「1度の使用で、普通は2週間近く無防備で昏睡することを考えると、どうしても神霊魔法が反則級の魔法系統と思っちゃうよね?」
「せやねえ。源伝魔法と同等の魔法を連続で使える上に、1日ぐっすり寝たら再使用可能とか、破格過ぎるわ。それが上手いこと使えたらええんやけど……」
 勇子と空太がメイアをジトーッと見ると、メイアが目を泳がせた。
「ううっ。もう少し努力します」
 神霊儀式魔法《神降ろし》が不完全であったため、ドリアード戦の時と違って、まだ動ける程度の余力が残っているメイア。
 命彦の源伝攻撃魔法《魂絶つ刃》が具現化した時点で、《神降ろし》が解けてしまっていたメイアは、ミズチの捕縛系結界魔法が解けても、魔法防壁に堰き止められていた神霊の魔力を受けずに済み、1人だけ元気だった。
 魔竜種魔獣と戦闘した後だというのに、現状においてメイアがワリと元気であるということは、それだけメイア以外の誰かが無理をしたということである。
 それを理解しているだけに、メイアは無駄に弁解せず、肩を落としてしょげていた。
 メイアのその様子を見て、勇子と空太は堪え切れず、ケタケタと笑う。
 舞子も苦笑を浮かべていたが、戦場の傷跡を見ると、すぐに苦笑は引っ込んでしまった。
 恐ろしい場面に自分がいたという現実を、思い出してしまったからである。

 命彦の死人のようだった顔色が、僅かに血色を取り戻したところで、ミサヤが口を開いた。
「少しは回復したようですね。ミズチの結界魔法もすでに解けていますし、〈転移結晶〉ですぐに関所へ帰還しますよ?」
「分かったわ。全員集まって!」
 メイアに指示したミサヤが、命彦の〈余次元の鞄〉から消費型魔法具の〈転移結晶〉を取り出し、握りつぶした。
 舞子の見ている前でミサヤの頭上に空間の裂け目が生じ、命彦の手に触れていた舞子達は、その虹色の裂け目に吸い込まれた。その時、舞子は偶然にも目にする。
 廃墟の屋上に突然現れ、自分を見下ろす灰色の髪に4本の腕を持つ、人型の魔獣を。
 その魔獣と視線が合った瞬間、舞子の視界は闇に沈んだ。
 空間の裂け目から、【迷宮外壁】の頂上に降り立った【魔狼】小隊。
 人化したミサヤが、命彦を抱き締めたまま矢継ぎ早に指示を出した。
「ユウコは関所に帰還の報告を。ソラタはマイコからポマコンの映像記録を受け取り、自衛軍の魔法士へと報告してください。メイアはコズエに連絡後、《空間転移の儀》を構築するように。すぐにカミキ邸に飛びます」
「ミサヤ、神樹邸に飛ぶんか? 【精霊本舗】の方が……」
 勇子がミサヤの指示に首を傾げていると、メイアが補足した。
「夕方の時間帯は、【精霊本舗】の衛生管理部に所属する〔魔法医師〕達が、近場の亜人家庭を回診してて、店を留守にしてるのよ。命彦のためとあらば、皆すぐに戻るでしょうけど、幾らか診察を待つ必要があるわ」
「その点カミキ邸では、〔魔法医師〕学科を修了した家令かれいの女性魔法士が常にいます。すぐに診察を受けられる上、今までも診察してもらったことが多々ある。結果もすぐわかるでしょう。私はミツル達に連絡し、マヒコの回復に注力します。メイア、転移の用意が整ったら呼んでください」
 ミサヤはそう言って、魂斬邸に意志探査魔法《思念の声》を飛ばした。
 命彦をお姫様だっこしたまま、虚空を見上げて思念で喋っているミサヤ。
 その後、ミサヤはすぐに命彦をギュっと抱き締め、じっと目を閉じた。
 《思念の声》を切り、命彦を抱き締めて魔力の供給を再開したのであろう。
 その様子を見ていた勇子が、空太を見て言う。
「空太、ウチらも行くで」
「うん。舞子、ポマコンの記録映像を送ってくれ……って、どうしたんだい?」
「え、あ、いえ、少しボーっとしてしまって、ポマコンの記録映像ですよね。すぐ送ります」
「あ、私にも送ってくれる舞子? 梢さんに連絡する時に、ついでに送っておくわ。軍が討伐予定の魔獣だった場合、幾らか報酬がもらえる筈よ」
「はい」
 舞子が、自分のポマコンを操作し、記録していたミズチとの戦闘動画を、メイアと空太へ送る。
「よし、受け取ったよ」
「ほいじゃあ行って来んで?」
「ええ。私もすぐ梢さんに連絡するわ」
 その後、疲労の残る勇子と空太は関所の方へとフラつきつつ歩いて行き、メイアは自分のポマコンで、依頼所にいる梢に連絡し始めた。
 メイアの横で、ボーっと突っ立ている舞子。
 ほとんど放心状態であった舞子は、どうにもさっきから頭が重いと感じていた。
 思考がまとまらず、気を抜けばまるで寝ぼけているかのように、意識が薄れて行く。
 ただ、それがミズチとの戦闘を間近で見た精神的衝撃、心の動揺にあると、舞子自身は思っていた。
 街に帰還した安心感から、戦闘時に感じていた心労が一気に吹き出ているのだと、そう思っていたのである。
 命彦の様子を気にして、舞子が数歩先にいるミサヤに近付こうとした時であった。
 舞子の脳裏に、その声は響く。
(あれに近付くのは止めよ、小娘)
「え?」
 気付くと舞子の足は、後退していた。ミサヤからどんどん離れて行く舞子。
(あのマカミは感知に長けておる。それゆえに、こちらの気配が気付かれにくい転移の発動間際を狙ってわざわざ接触したのだ。この労苦が水泡に帰すのは、さすがに我も腹立たしい)
 脳裏に突然響く自分の声に、舞子は違和感を覚えた。
 舞子の脳裏に響く、舞子自身の声。これはどういうことか。
 舞子が異常を感じ、近くにいるメイアに話しかけようとした時である。
 またしても声が響いた。
(今は何も考えず、ただ我の問いに答えればよい。……さて、では問おうか。源伝魔法とはどういう魔法だ?)
 舞子の意識が一瞬で薄れ、催眠状態にあるように思考がぼやけた。
 そして、舞子が独り言をぶつぶつ小声で言い始める。
「……はい。えーと源伝魔法は、奇跡の魔法系統と呼ばれ……」
 1人で喋り続ける舞子。何者かに憑りつかれたようであった。
 命彦やミサヤが見れば、一目で魔獣に憑依されたと気付くだろうが、残念極まることに、命彦は昏睡状態であり、頼りのミサヤも命彦の回復に意識のほとんどを傾けていて、この時の舞子の様子に気付く者は皆無であった。
 こうして、人類側の魔法の情報が、人知れず抜き取られて行く。
(……ほう? 魂を持つ生物でも、自己の魂の核芯かくしん部、始源領域を認識した者のみが使える、魔法的効力を1つに特化した魔法か。面白い……あの小童の源伝魔法《魂絶つ刃》の場合、その始源領域に1000年以上も伝承された、先祖の力を取り込んでいるため、神霊魔法を凌駕するほどの効力を有すると?)
「はい。歴史ある魔法使いの一族には、親や師の【始源の魔力】を子や弟子に伝え、子や弟子の【始源の魔力】を進化させる秘技があると、メイアさん達は言っていました」
(分かった……礼を言おう小娘。色々と人の魔法について知れた。ついでにこの世界の人間達の思考、文化も、その記憶より学習させてもらった。有意義かつ面白き一時であったぞ? さらばだ)
 舞子の重たかった頭、ぼんやりとしていた頭が、急にすっきりする。
 ただ、どういうわけか、【迷宮外壁】に転移した時から、今までの記憶が抜けていた。
「はれ? 私……」
「どうしたの舞子? 頭を押さえて?」
 梢への連絡を終えて、少し離れた場所に立つ舞子を見たメイアが、キョロキョロする舞子に問う。
「い、いえ。少し記憶が飛んでて」
「記憶が飛んでるって……怖いこと言うわね? でも、魔竜種魔獣と戦った後じゃ、そういうこともあるかしら。熟練の学科魔法士でも、魔竜種魔獣に遭遇したら結構根深い心的外傷を負うことが多いし。いいわ、少し座って休んでて。神樹邸についたら、舞子も診察してもらいましょう。私は《空間転移の儀》の構築に入るから」
「あ、はい。すみません、メイアさん」
 舞子が不思議そうに頭を捻り、メイアの傍に座り込む。
 すると数分後、勇子と空太も関所から出て戻った。
「お待たせ」
「こっちも報告済んだで」
「私も魔力の放出と精霊の使役が済んだわ。ミサヤ!」
「ええ。転移しましょう」
 ミサヤが命彦を抱えてメイアに歩み寄り、その肩に触れると、メイアが呪文を紡ぐ。
「陰闇の天威、陽聖の天威。融く合して虚空を繋ぎ、世界を行き交う魔道の道を造れ。求める地は、神樹邸。飛べ《空間転移の儀》」
 舞子の見ている前でメイアの頭上に空間の裂け目が生じ、舞子達は、その裂け目に吸い込まれた。
 視界が暗転した後、舞子は自分がとある邸宅の門の前に立っていることに気付く。
 神樹梢の実家、神樹邸である。
 メイアが門番代わりの警備用エマボットに話しかけると、玄関の門が開いた。
 ミサヤがさっさと邸宅に入り、メイア達も後に続いた。
しおりを挟む

処理中です...