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青い目の人形

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ある学校にはこんな噂があった。
「夜になるとどこからか子どもの泣き声が聞こえてくる」
「その声はママーママーと言っている」
そんな噂だった。

一人の教師が下宿先のお婆さんにその噂について話すと、
お婆さんは何かを知っているようだった。
授業が終わり、生徒がみんな帰った頃、
教師とお婆さんは夜の学校に忍び込んだ。

お婆さんは学校に入ると、迷うことなく裁縫室へ向かった。
そしてお婆さんは裁縫室の天井裏を探るよう教師に頼む。
言われた通り教師が探っていると、そこには青い目をした一つの人形があった。



お婆さんはその人形を抱きしめると、こんな話を始めた。

この人形は昔、戦争が始まる前、
アメリカから友好の証として送られたものだった。
しかし戦争が始まり反米思想が広まると、寄贈された人形たちを焼き捨てることになってしまった。

けれどお婆さんはそれはあまりにもかわいそうで、
教師や兵隊には内緒で天井裏に隠していたんだそう。

戦争が終わっても天井裏に入れられたままの人形は、寂しさから泣いていたのかもしれない。
以降、子どもの泣き声が聞こえることはなかったという。
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