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第1話 転生と異物
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人の魂が行きつくのはこういう場所になるのだろうか。
終わりの見えない遠い遠い白い世界。そんな場所にまるで染みをつくるかのように2つの影が向き合っていた。
「あっはっはっは~。あなたは死んでしまいました、残念!」
「な、何を言ってるんだ?」
軽い口調で人に死を告げたのは小さな少年の姿だった。
頭にまるでピエロのような帽子をかぶり、瞳の色は青と赤というオッドアイ。
何とも奇妙な容姿をしている。
「言葉の通りだよ? 覚えてないのかな? 自分の死にざま見たい? 武藤雄二(むとうゆうじ)さん」
「ちょっと待ってくれ……頭の中を整理したい」
中肉中背、三白眼に切り整えられた毛髪に僅かな白髪が浮いている男性が、こめかみをぐりぐりとこねて必死に記憶を探ろうとしている。
年齢33歳独身貴族。
中小企業と言えば聞こえはいいが、よくあるブラック系の整備工場で働いていた男だ。
いや、元、と付けた方がいいのだろうか。
彼は死んでしまったようだから。
雄二の努力が実ったのか思い出される生前の記憶。
彼は前日の残業による睡眠不足に億劫としながら朝起きて、それでもいつも通り会社に行き、いつも通り上司にどやされ、いつも通り残業に矜持していた。
残業も自分の業務だと理解し、文句を垂れずにそれに取り組んでいたのだ。
「おい! お前、まだ終わんねーのか! お前が終わらねーと会社の全員が迷惑するって分かってねーのか!?」
「だから必死にやってるんじゃないですか。それに、これ、半分は部長が押し付けてきた仕事じゃないですか。文句言うなら返しますよ」
「お前の受け持ってる取引先には俺が代わりに行っただろうが。つべこべ文句垂れずにさっさとやれ、阿呆!」
雄二は細目で上司であり部長である借田増三(かりたますぞう)を見つめた後、デスクに広がる書類に目を落とした。
内心から湧き上がろうとする不満を抑えつける。
営業は部長が無理矢理自分から行くと言い出したことだった。そしてかわりにと大量の書類、しかも1日で処理する分量の全てを渡された。
当然割が合わない。
しかも、部長は営業に行きその帰りにパチンコに行っていることも知っている。
匂いが服に染み込むのですぐに分かる。気付いてないのは自分だけという残念さ。
それでも立場が上の人間に直接言う人間はいないため、陰口をたたかれる程度でまかり通っているという理不尽。
社長は残念ながらほとんど出会うことがなく、自身がヘビースモーカーのためその匂いに鈍感なのだ。
後ろから罵詈雑言が飛んで来る中必死で仕事を終わらせていく。
それが効率を下げる行為だと理解していないし、自分も手伝えば早く終わるというのにやろうとしない。
僅かにアルコールの匂いも漂う。
就業時間は過ぎてはいるが、会社で酒を飲むなんて阿呆はどっちなのだろうか?
それでも雄二は仕事を終わらせた。
「やーっと終わったのか。一体いつまで待たせんだよ、このぼんくら! じゃ、うちまで送って行って貰うからな」
「はい? 部長の家は俺の家からは完全に正反対じゃないですか」
「詫びだよ、詫び。俺を待たせて、はい、さようなら、で良いと思ってんのか?」
「はぁ~。分かりましたよ……」
「ほら、駄賃にこれやるよ」
「これって……、いや、ありがとうございます」
雄二が渡されたのはぬるい缶コーヒー。
ぬるいとはいえ飲めば甘い味わいが仕事の疲れをいやしてくれるありがたいモノ。
そう。本来はありがたいもののはずなのだが……。
部長は会社に設置している自販機の補充用の段ボールからそれを拾い上げてきたのだ。
(これを受け取って飲んでしまえば共犯者になってしまう)
雄二は部長が先に行くのを確認した後、缶コーヒーを段ボールに戻し会社を後にした。
それを飲んでいれば多少は頭が覚醒し、その後の悲劇は起こらなかったのかもしれない。
もっとも、部長が最初から自販機に金を入れていれば良かった話ではあったのだが。
連日の仕事の疲れ、残業の疲れ、運転の疲れ、精神の疲れ。
そんなものから雄二の判断力は落ちに落ち、部長の家へと向かう途中にあった川沿いの細い土手から車輪を滑らせて二人は命を落としてしまった。
死に際の記憶は残っていないようだが、落ちるとこまでは覚えていたようだ。
「そうか……。思い出したよ、俺は本当に死んだんだな」
「そっだよー。ごしゅうしょうさま~」
「痛みやら恐怖の記憶やらが残ってないのが幸いと言ったところか。ははは、俺の人生なんだったんだろ」
「うんうんうんうん。ま、人生ってそんなもんだと思うよ。…………が、普通なんだけどさ」
小さな少年はあっけらかんな様子から神妙な雰囲気に変化させた。
「そう! 死ねば魂となり穢れを浄化し新たな命にその魂を吹きこまれるのが普通! なのに、それが……覆された!」
「覆された? どういうことだ、俺は一体どうなるんだ!?」
「君と一緒に死んだ人がいるでしょ? その人が異世界転生ってものの対象に選ばれてしまったようでね」
「異世界転生……って小説とかでよくあるやつか。まさか、ほんとにそんなことが……しかし、あの部長が?」
「そうそうー。あの部長が! ん、部長って何? ま、いいや! それでやってくるのが僕の世界なんだ。困っちゃうよ」
「あ、な、そうか、そういえばあんた……いや、あなた様がどなたか伺っていませんでした。神様なのですか?」
「あっはっはっは~。そーんなしゃっちょこばらなくてもいいよ! こっそばゆい! で、神様とはちょーっと違うかな」
「いや、そうか、じゃあ……遠慮なく。部長はあんたの世界に転生してどうなるというんだ?」
「面倒、面倒だよ。うん。僕の世界は普通の世界……って君のいた場所と比べたら随分違うかー」
「もしかして……剣と魔法のファンタジーの世界って言うんじゃ?」
「ファンタジー? 僕からしたら君の世界こそファンタジーだよ。でも、そうだね、剣と魔法……それはあるねー」
「なるほど。で、部長は……?」
「世界を救う勇者に選ばれた……って言えば分かっちゃったりする?」
「いや、分からん。あんたの世界は救わなければいけない世界なのか?」
「そう! そこだよ! 僕の世界はそんなことは必要ない。世界を救うだなんておこがましい! 善と悪ってのは簡単に決められることではないんだから!」
「ん、ふむ。そこに人間がいるのなら俺はそっちの味方をしたいとこだが……」
「それは君が人間だからだよ。もし君がゴキブリだとしたら駆除しようとする人間は敵だろう?」
「ま、まぁ、そうなのかもしれんが……Gに例えるのはやめてくれよ」
「あっはっはっは。別になんでもいいさ! 兎に角さー迷惑なのっ。勇者として選ばれた理由は魔王を倒して来いって理由なんだけど」
「魔王……魔王がいるのか? それは人間からしたら敵なんじゃ?」
雄二の問いかけに少年は少しばかり考えた様子を見せた後、ニヤッと笑ってみせた。
「だからー、それは君が人間だからだって言ってんじゃん。あれれ、僕の見込み違いだったかな?」
「見込み違い……俺に何かを……。もしかして、俺も異世界転生を……?」
「ぴんぽんぴんぽーん! って、察するの遅……。ま、いっか! 人族と魔族は確かにいがみ合った関係だ。しかし! それの何が悪いというのだろうか?」
「いや……戦争は……」
「君の世界でも戦争は行ってたと思うけど? 片方が片方を全滅させるのかい?」
「そんなことはないな」
「でしょぉ~? 自然な流れでどちらかに力が傾くのは仕方がないよ。それが摂理。それが世界。そこに僕たちδΘ¶Λが介在してはいけないんだ」
少年がそう口にした後、白亜とも思える空間が鳴動する。
風もないのに髪がふわふわと浮き上がり、柳眉を吊り上げる。
「なのに。なのにだよ。僕の管轄する世界に他のδΘ¶Λが異物を落とし込んできて良いわけがない!」
δΘ¶Λというのが少年の呼称ということになるのだろう。
それが神かどうかは分からないが、人間と異なる存在であるのは確かだ。
「異物……部長は異物か。ま、確かにな。言っちゃ悪いけど、現世でも異物だったよあの人は」
「あはは。そうなの? ま、その部長とやらに対抗してくれる存在として選んだのが君なんだよ」
「対抗……俺は部長を殺せばいいってことなのか?」
雄二のおそるおそると言った尋ねかけに少年は首を捻る。
「君にそれができるかい? 同族を殺すというのはもんのすごい覚悟がいると思うんだけど?」
「それが俺に与えられた使命ならやるしかないだろう。幸い部長には恨み辛みが溜まっているしな」
「あっはっはっは。でも、無理かな? 異物を投げ入れたδΘ¶Λは自分の世界じゃないからこそ不法を働くことができたんだ」
「不法?」
「ああ、そうだよ。ええっと…………君の知ってる知識で言えばチートってやつ? それを大量に与えて僕の世界グラディールに放り込んでくれた!」
「チート……まじかよ。それであんたはチートを与えることができないという訳か?」
「いやいやいやいや。なわけないじゃん! ただ、限度があるってだけでね。僕が与えられるのは潜在的な能力だけなんだー」
「ええっと……よく分からんが、強くてニューゲームはできないってことだろうか?」
「ええと、ええと……そうだね、強くてニューゲームだね。君の知識で喋られると探すのに苦労するんだよー。分かりやすい言葉使ってよ」
どうやら少年は知らない単語を知るすべを持ち合わせているようだ。
そのことから見るに考えを読んだりは出来ない様子である。
「すまない。だが、スタートラインが違うんじゃ追いつくことができないんじゃないか?」
「できないねー。ま、そこがミソですな! δΘ¶Λは一つミスをした。対抗策を用意される可能性を考慮してなかったというミスをね」
「対抗策……ってのは俺の事だよな?」
「イエス、イエース。そう。もう部長?は飛ばされてしまったわけだよ。だから、君にはその前の時の流れに身を委ねてもらう」
「ほう……。そんなことができるのか? やっぱ、世界の創造主は凄いんじゃないか?」
「はは。創造主じゃないけど……、まぁいいや! とにかくそんな感じです!」
どんな感じかいまいちよく分からないような気がするが、そんな感じらしい。
これからもう少し詳しい話や、潜在的な能力についてが話されるようだ。
終わりの見えない遠い遠い白い世界。そんな場所にまるで染みをつくるかのように2つの影が向き合っていた。
「あっはっはっは~。あなたは死んでしまいました、残念!」
「な、何を言ってるんだ?」
軽い口調で人に死を告げたのは小さな少年の姿だった。
頭にまるでピエロのような帽子をかぶり、瞳の色は青と赤というオッドアイ。
何とも奇妙な容姿をしている。
「言葉の通りだよ? 覚えてないのかな? 自分の死にざま見たい? 武藤雄二(むとうゆうじ)さん」
「ちょっと待ってくれ……頭の中を整理したい」
中肉中背、三白眼に切り整えられた毛髪に僅かな白髪が浮いている男性が、こめかみをぐりぐりとこねて必死に記憶を探ろうとしている。
年齢33歳独身貴族。
中小企業と言えば聞こえはいいが、よくあるブラック系の整備工場で働いていた男だ。
いや、元、と付けた方がいいのだろうか。
彼は死んでしまったようだから。
雄二の努力が実ったのか思い出される生前の記憶。
彼は前日の残業による睡眠不足に億劫としながら朝起きて、それでもいつも通り会社に行き、いつも通り上司にどやされ、いつも通り残業に矜持していた。
残業も自分の業務だと理解し、文句を垂れずにそれに取り組んでいたのだ。
「おい! お前、まだ終わんねーのか! お前が終わらねーと会社の全員が迷惑するって分かってねーのか!?」
「だから必死にやってるんじゃないですか。それに、これ、半分は部長が押し付けてきた仕事じゃないですか。文句言うなら返しますよ」
「お前の受け持ってる取引先には俺が代わりに行っただろうが。つべこべ文句垂れずにさっさとやれ、阿呆!」
雄二は細目で上司であり部長である借田増三(かりたますぞう)を見つめた後、デスクに広がる書類に目を落とした。
内心から湧き上がろうとする不満を抑えつける。
営業は部長が無理矢理自分から行くと言い出したことだった。そしてかわりにと大量の書類、しかも1日で処理する分量の全てを渡された。
当然割が合わない。
しかも、部長は営業に行きその帰りにパチンコに行っていることも知っている。
匂いが服に染み込むのですぐに分かる。気付いてないのは自分だけという残念さ。
それでも立場が上の人間に直接言う人間はいないため、陰口をたたかれる程度でまかり通っているという理不尽。
社長は残念ながらほとんど出会うことがなく、自身がヘビースモーカーのためその匂いに鈍感なのだ。
後ろから罵詈雑言が飛んで来る中必死で仕事を終わらせていく。
それが効率を下げる行為だと理解していないし、自分も手伝えば早く終わるというのにやろうとしない。
僅かにアルコールの匂いも漂う。
就業時間は過ぎてはいるが、会社で酒を飲むなんて阿呆はどっちなのだろうか?
それでも雄二は仕事を終わらせた。
「やーっと終わったのか。一体いつまで待たせんだよ、このぼんくら! じゃ、うちまで送って行って貰うからな」
「はい? 部長の家は俺の家からは完全に正反対じゃないですか」
「詫びだよ、詫び。俺を待たせて、はい、さようなら、で良いと思ってんのか?」
「はぁ~。分かりましたよ……」
「ほら、駄賃にこれやるよ」
「これって……、いや、ありがとうございます」
雄二が渡されたのはぬるい缶コーヒー。
ぬるいとはいえ飲めば甘い味わいが仕事の疲れをいやしてくれるありがたいモノ。
そう。本来はありがたいもののはずなのだが……。
部長は会社に設置している自販機の補充用の段ボールからそれを拾い上げてきたのだ。
(これを受け取って飲んでしまえば共犯者になってしまう)
雄二は部長が先に行くのを確認した後、缶コーヒーを段ボールに戻し会社を後にした。
それを飲んでいれば多少は頭が覚醒し、その後の悲劇は起こらなかったのかもしれない。
もっとも、部長が最初から自販機に金を入れていれば良かった話ではあったのだが。
連日の仕事の疲れ、残業の疲れ、運転の疲れ、精神の疲れ。
そんなものから雄二の判断力は落ちに落ち、部長の家へと向かう途中にあった川沿いの細い土手から車輪を滑らせて二人は命を落としてしまった。
死に際の記憶は残っていないようだが、落ちるとこまでは覚えていたようだ。
「そうか……。思い出したよ、俺は本当に死んだんだな」
「そっだよー。ごしゅうしょうさま~」
「痛みやら恐怖の記憶やらが残ってないのが幸いと言ったところか。ははは、俺の人生なんだったんだろ」
「うんうんうんうん。ま、人生ってそんなもんだと思うよ。…………が、普通なんだけどさ」
小さな少年はあっけらかんな様子から神妙な雰囲気に変化させた。
「そう! 死ねば魂となり穢れを浄化し新たな命にその魂を吹きこまれるのが普通! なのに、それが……覆された!」
「覆された? どういうことだ、俺は一体どうなるんだ!?」
「君と一緒に死んだ人がいるでしょ? その人が異世界転生ってものの対象に選ばれてしまったようでね」
「異世界転生……って小説とかでよくあるやつか。まさか、ほんとにそんなことが……しかし、あの部長が?」
「そうそうー。あの部長が! ん、部長って何? ま、いいや! それでやってくるのが僕の世界なんだ。困っちゃうよ」
「あ、な、そうか、そういえばあんた……いや、あなた様がどなたか伺っていませんでした。神様なのですか?」
「あっはっはっは~。そーんなしゃっちょこばらなくてもいいよ! こっそばゆい! で、神様とはちょーっと違うかな」
「いや、そうか、じゃあ……遠慮なく。部長はあんたの世界に転生してどうなるというんだ?」
「面倒、面倒だよ。うん。僕の世界は普通の世界……って君のいた場所と比べたら随分違うかー」
「もしかして……剣と魔法のファンタジーの世界って言うんじゃ?」
「ファンタジー? 僕からしたら君の世界こそファンタジーだよ。でも、そうだね、剣と魔法……それはあるねー」
「なるほど。で、部長は……?」
「世界を救う勇者に選ばれた……って言えば分かっちゃったりする?」
「いや、分からん。あんたの世界は救わなければいけない世界なのか?」
「そう! そこだよ! 僕の世界はそんなことは必要ない。世界を救うだなんておこがましい! 善と悪ってのは簡単に決められることではないんだから!」
「ん、ふむ。そこに人間がいるのなら俺はそっちの味方をしたいとこだが……」
「それは君が人間だからだよ。もし君がゴキブリだとしたら駆除しようとする人間は敵だろう?」
「ま、まぁ、そうなのかもしれんが……Gに例えるのはやめてくれよ」
「あっはっはっは。別になんでもいいさ! 兎に角さー迷惑なのっ。勇者として選ばれた理由は魔王を倒して来いって理由なんだけど」
「魔王……魔王がいるのか? それは人間からしたら敵なんじゃ?」
雄二の問いかけに少年は少しばかり考えた様子を見せた後、ニヤッと笑ってみせた。
「だからー、それは君が人間だからだって言ってんじゃん。あれれ、僕の見込み違いだったかな?」
「見込み違い……俺に何かを……。もしかして、俺も異世界転生を……?」
「ぴんぽんぴんぽーん! って、察するの遅……。ま、いっか! 人族と魔族は確かにいがみ合った関係だ。しかし! それの何が悪いというのだろうか?」
「いや……戦争は……」
「君の世界でも戦争は行ってたと思うけど? 片方が片方を全滅させるのかい?」
「そんなことはないな」
「でしょぉ~? 自然な流れでどちらかに力が傾くのは仕方がないよ。それが摂理。それが世界。そこに僕たちδΘ¶Λが介在してはいけないんだ」
少年がそう口にした後、白亜とも思える空間が鳴動する。
風もないのに髪がふわふわと浮き上がり、柳眉を吊り上げる。
「なのに。なのにだよ。僕の管轄する世界に他のδΘ¶Λが異物を落とし込んできて良いわけがない!」
δΘ¶Λというのが少年の呼称ということになるのだろう。
それが神かどうかは分からないが、人間と異なる存在であるのは確かだ。
「異物……部長は異物か。ま、確かにな。言っちゃ悪いけど、現世でも異物だったよあの人は」
「あはは。そうなの? ま、その部長とやらに対抗してくれる存在として選んだのが君なんだよ」
「対抗……俺は部長を殺せばいいってことなのか?」
雄二のおそるおそると言った尋ねかけに少年は首を捻る。
「君にそれができるかい? 同族を殺すというのはもんのすごい覚悟がいると思うんだけど?」
「それが俺に与えられた使命ならやるしかないだろう。幸い部長には恨み辛みが溜まっているしな」
「あっはっはっは。でも、無理かな? 異物を投げ入れたδΘ¶Λは自分の世界じゃないからこそ不法を働くことができたんだ」
「不法?」
「ああ、そうだよ。ええっと…………君の知ってる知識で言えばチートってやつ? それを大量に与えて僕の世界グラディールに放り込んでくれた!」
「チート……まじかよ。それであんたはチートを与えることができないという訳か?」
「いやいやいやいや。なわけないじゃん! ただ、限度があるってだけでね。僕が与えられるのは潜在的な能力だけなんだー」
「ええっと……よく分からんが、強くてニューゲームはできないってことだろうか?」
「ええと、ええと……そうだね、強くてニューゲームだね。君の知識で喋られると探すのに苦労するんだよー。分かりやすい言葉使ってよ」
どうやら少年は知らない単語を知るすべを持ち合わせているようだ。
そのことから見るに考えを読んだりは出来ない様子である。
「すまない。だが、スタートラインが違うんじゃ追いつくことができないんじゃないか?」
「できないねー。ま、そこがミソですな! δΘ¶Λは一つミスをした。対抗策を用意される可能性を考慮してなかったというミスをね」
「対抗策……ってのは俺の事だよな?」
「イエス、イエース。そう。もう部長?は飛ばされてしまったわけだよ。だから、君にはその前の時の流れに身を委ねてもらう」
「ほう……。そんなことができるのか? やっぱ、世界の創造主は凄いんじゃないか?」
「はは。創造主じゃないけど……、まぁいいや! とにかくそんな感じです!」
どんな感じかいまいちよく分からないような気がするが、そんな感じらしい。
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