王子に転生したので悪役令嬢と正統派ヒロインと共に無双する

こたつぬこ

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 ダンジョン探索は予想以上にぬるい仕事であった。
 いや、本来はかなりの苦戦を強いられるようなところなのだろう。
 ただ俺がほとんど何もする必要がないほどに、二人が楽々と魔物をなぎ倒していく。
 ライバル関係、なのかよく分からないが、きっちり連携を取って俺に活躍の場を与えてくれない。

 曰く、何かあった時のための保険として俺の力を温存するべきとのことらしいのだが、何となく冒険しているというより二人の凄さを見せられているだけのような気がして悲しい。
 折角こんな剣と魔法のファンタジーの世界に来たんだから、俺だって戦いたいのだ。
 二人が仲良さげだから良しとすることにしたが……。

 今も巨大な蜘蛛と二人で戦っている。
 楽しそうな表情を浮かべていて、貴族の令嬢様は一体どこへ行ってしまったのかと思う程に。

「エリーゼ! 合わせて!」

 魔物の吐き出した糸を容易くよけながら、わざと魔法を外して動きを誘導する。
 それを見計らったようにエリーゼが炎をぶつけた。
 大分奥に進んできた今、魔物の強さが上がるというのはゲーム的過ぎると感じるが、魔法一撃で倒せるような相手ではなくなっているのは事実。
 それでも傷一つ追わない二人の活躍。
 本当は嬉しい事なんだが、俺が暗い中で良いところを見せるという展開は全く来ず、洞窟大作戦は端から失敗だったのだと感じ心が涙を流す。

「アリゼッタ、ナイスアシストでした」

「アウル先生が、連携とは援護するために一歩引くものと言ってたのを覚えてましたの。エリーゼも良い攻撃でしたわよ」

 パチンと手を叩き合い、俺に向かってどうだったかと尋ねかけてくる。
 俺は頭を撫でてやりながら「よくやった、完璧だ」ともう何度言ったか分からない台詞を口にすると、二人とも嬉しそうに口を緩めた。
 けれど心配事もあるようで。

「アウル先生たちは大丈夫でしょうか……?」

「分からない。けど、想像以上に早いペースで進んできているから大丈夫だろ。アウルは強いし信頼してもいいと思う」

 まだ入り始めてから3時間ほどしか経過していない。
 アリゼッタのマップではまだまだ奥があるが、正直もっと慎重でゆっくり進むことになると思っていた。
 既にダンジョンの入り口付近は踏破したし、歩いた距離にして5キロ程は進んでいるはずだ。
 魔物は基本的に瞬殺しているし(二人が)まだ飯時にもなっていない。

「そうですわ。剣の技術じゃまだまだ私達、いえ、エトワイアでも敵わないんだから。
 中で良い物でも手に入れて見せてあげるのが良いと思いますの」

「ああ、そうだな。さっさと陰気な洞窟探検を終わらせて、4人で飯でも食いに行こうぜ」

 言いながらここまで手に入れたものを確認した。それは全て鉱物の類。
 赤く輝くルビーのような石や銀色に光る塊など。
 もともとあるんじゃないかと考えていた魔法鉱物だ。
 宝箱にはあれから出会っていないが、もともとそんなものに期待してはいなかったので構わない。

 だが進んでいるとある奇妙なものが俺たちの目に入った。

「魔物……の死体ですわね……」

 通常なら魔物だって生きているので、死んでいてもおかしくはない。
 だが、一メートル程もあるモグラに角が生えたようなずんぐりむっくりな魔物はまだ黒ずんでいない鮮血を伴い、あきらかに刀で切断されたような傷を負っていたのだ。

「魔物の同士討ちか……?」

 人間がここに入るということは考えられない。
 そんな情報があれば俺の耳に入っているだろうし、入ってなんとかできる猛者もいるとは思えなかった。
 いや、世界は広いし俺の知っている知識がどこまで正確かも分からない。
 けれど、なぜだか俺は妙な胸騒ぎを覚え、洞窟の先に目を向けた。
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