俺のスキル『勘違い』が壊れ性能過ぎて吹く

こたつぬこ

文字の大きさ
1 / 12

第1話 いじめじゃなくていじられてんだ!

しおりを挟む
  うららかな春の朝のこと、ガラリと教室のドアを開けた瞬間、俺の頭に黒板消しが直撃した。
 チョークの粉をたっぷり擦り付けられていたのか、大量の粉が舞い俺に降り注ぐ。
 教室から、廊下から、と聞こえる笑い声。

 別にいじめられているわけではない。

 いじられキャラ。というやつだ。
 俺はそう思っている。
 だが、なぜだろうか。この腹立たしい気持ちは。

 頭を軽くはたき黒板消しを黒板に戻した俺は自分の席に向かう。
 ニヤニヤと不快な視線は全て黙殺した。

 机に書かれた『まぬけ』という文字。
 椅子にばらまかれたシャーペンの芯。

 そう。

 いじめなら死ねと書かれているはずだし、椅子にばらまかれているのは画鋲だろう。
 だが、なぜだろうか。

 いつものことであるが腹立たしい気持ちが、心の奥底から間欠泉のように噴き出しそうになるのは。

 シャーペンの芯をありがたいお恵みとして俺のケースの中にしまい込み、机の文字を消す。
 すると前の席の男が俺に向かって体を振り向けた。

 名前は本田雄二(ほんだゆうじ)
 短めの髪に爽やかな笑顔。席が前後だからかよく話しかけてくるのだが。

「ほんといつもいつも幼稚だよな。これ消すの手伝うよ」

 本来はありがたい提案なのだろう。
 だが、俺にはそうは思えなかった。
 なぜ今になってそれをする?
 俺が来る前に気付いてないわけないだろうし、何とでも出来ていたはずだ。

 結局のところ第三者として楽しんでいるだけなんじゃないか?

 そう思ってしまえば不信感は募るだけ。友達何て感情は一切ない。
 もっとも俺はいじめられているわけではないし、いじられているだけなので、本当は気にする必要もないことのはずなんだがな。
 なぜかむかつくんだよ。
 それでも綺麗に無くなるまで消してくれる。よく分からん。

 俺に向かって歩み寄ってくる男も見える。

 名前は篠宮大輝(しのみやたいき)
 クラスカーストの頂点に君臨する茶髪イケメンだ。容姿端麗、スポーツ万能、おつむの方は中の上といったところだが。

「御影くんみたいなタイプがいてくれるとクラスの雰囲気が良くなっていいよね!」

 御影ってのは俺の名前。古谷御影(ふるやみかげ)
 裏があっていっているのならただただ腹立たしいのだが、こいつから感じる笑顔には裏というものを一切感じない。
 もっとも本心からこの台詞を口にしているのだとしたら気持ちが悪い。
 俺がいじられることでクラスの雰囲気が良くなったとして、そこに俺の感情はどこに存在するのか。

「あーーー。またですか! こういうことしたら駄目だっていつも言ってるじゃない!」

 教室のドアが開き入ってきてすぐ俺に向かって駆け寄ってくる女の子。

 名前は湊川遥(みなかわはるか)
 顔立ちは文句なしの整いようなんだが、勝気な性格と活発な行動力が女らしさを軽減している。
 それでも割とおモテになるそうで、高校に入学してから一ケ月で二ケタ台の告白つぶしの回数を叩き出したとか。
 可愛いとは思うし、意外に優しいところもあるんだがな。
 今もハンカチを濡らしてきて、俺の頭にたっぷりとついたチョークの粉を拭き取ってくれている。

 本田と篠宮はそれには触れようともしなかったというのに。

「やっぱさ一緒に登校しようよ。じゃないと心配でさぁ」

 湊川とは別に幼馴染でも家が近いわけでもない。いや、というより家すら知らん。
 いじられキャラの俺をなぜ気にかけてくれるかも知らん。
 これによりクラスの俺に対するいじりが、苛烈化していることを知っているのだろうか。

「それはありが……」

 俺が断ろうとした瞬間のことだ。
 教室全体に広がる青色の光で描かれた幾何学模様。
 俺の脳裏にある単語が浮かび上がる。

 勇者召喚。

 ラノベなんかでよくある展開だ。
 それに巻き込まれるとは……というより、現実にありうるとは思っていなかったのだが、どうやら信じざるを得ないらしい。
 阿鼻叫喚や歓喜の悲鳴が飛び交う中、俺たちは教室から姿を消すことになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

処理中です...