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第1話 いじめじゃなくていじられてんだ!
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うららかな春の朝のこと、ガラリと教室のドアを開けた瞬間、俺の頭に黒板消しが直撃した。
チョークの粉をたっぷり擦り付けられていたのか、大量の粉が舞い俺に降り注ぐ。
教室から、廊下から、と聞こえる笑い声。
別にいじめられているわけではない。
いじられキャラ。というやつだ。
俺はそう思っている。
だが、なぜだろうか。この腹立たしい気持ちは。
頭を軽くはたき黒板消しを黒板に戻した俺は自分の席に向かう。
ニヤニヤと不快な視線は全て黙殺した。
机に書かれた『まぬけ』という文字。
椅子にばらまかれたシャーペンの芯。
そう。
いじめなら死ねと書かれているはずだし、椅子にばらまかれているのは画鋲だろう。
だが、なぜだろうか。
いつものことであるが腹立たしい気持ちが、心の奥底から間欠泉のように噴き出しそうになるのは。
シャーペンの芯をありがたいお恵みとして俺のケースの中にしまい込み、机の文字を消す。
すると前の席の男が俺に向かって体を振り向けた。
名前は本田雄二(ほんだゆうじ)
短めの髪に爽やかな笑顔。席が前後だからかよく話しかけてくるのだが。
「ほんといつもいつも幼稚だよな。これ消すの手伝うよ」
本来はありがたい提案なのだろう。
だが、俺にはそうは思えなかった。
なぜ今になってそれをする?
俺が来る前に気付いてないわけないだろうし、何とでも出来ていたはずだ。
結局のところ第三者として楽しんでいるだけなんじゃないか?
そう思ってしまえば不信感は募るだけ。友達何て感情は一切ない。
もっとも俺はいじめられているわけではないし、いじられているだけなので、本当は気にする必要もないことのはずなんだがな。
なぜかむかつくんだよ。
それでも綺麗に無くなるまで消してくれる。よく分からん。
俺に向かって歩み寄ってくる男も見える。
名前は篠宮大輝(しのみやたいき)
クラスカーストの頂点に君臨する茶髪イケメンだ。容姿端麗、スポーツ万能、おつむの方は中の上といったところだが。
「御影くんみたいなタイプがいてくれるとクラスの雰囲気が良くなっていいよね!」
御影ってのは俺の名前。古谷御影(ふるやみかげ)
裏があっていっているのならただただ腹立たしいのだが、こいつから感じる笑顔には裏というものを一切感じない。
もっとも本心からこの台詞を口にしているのだとしたら気持ちが悪い。
俺がいじられることでクラスの雰囲気が良くなったとして、そこに俺の感情はどこに存在するのか。
「あーーー。またですか! こういうことしたら駄目だっていつも言ってるじゃない!」
教室のドアが開き入ってきてすぐ俺に向かって駆け寄ってくる女の子。
名前は湊川遥(みなかわはるか)
顔立ちは文句なしの整いようなんだが、勝気な性格と活発な行動力が女らしさを軽減している。
それでも割とおモテになるそうで、高校に入学してから一ケ月で二ケタ台の告白つぶしの回数を叩き出したとか。
可愛いとは思うし、意外に優しいところもあるんだがな。
今もハンカチを濡らしてきて、俺の頭にたっぷりとついたチョークの粉を拭き取ってくれている。
本田と篠宮はそれには触れようともしなかったというのに。
「やっぱさ一緒に登校しようよ。じゃないと心配でさぁ」
湊川とは別に幼馴染でも家が近いわけでもない。いや、というより家すら知らん。
いじられキャラの俺をなぜ気にかけてくれるかも知らん。
これによりクラスの俺に対するいじりが、苛烈化していることを知っているのだろうか。
「それはありが……」
俺が断ろうとした瞬間のことだ。
教室全体に広がる青色の光で描かれた幾何学模様。
俺の脳裏にある単語が浮かび上がる。
勇者召喚。
ラノベなんかでよくある展開だ。
それに巻き込まれるとは……というより、現実にありうるとは思っていなかったのだが、どうやら信じざるを得ないらしい。
阿鼻叫喚や歓喜の悲鳴が飛び交う中、俺たちは教室から姿を消すことになった。
チョークの粉をたっぷり擦り付けられていたのか、大量の粉が舞い俺に降り注ぐ。
教室から、廊下から、と聞こえる笑い声。
別にいじめられているわけではない。
いじられキャラ。というやつだ。
俺はそう思っている。
だが、なぜだろうか。この腹立たしい気持ちは。
頭を軽くはたき黒板消しを黒板に戻した俺は自分の席に向かう。
ニヤニヤと不快な視線は全て黙殺した。
机に書かれた『まぬけ』という文字。
椅子にばらまかれたシャーペンの芯。
そう。
いじめなら死ねと書かれているはずだし、椅子にばらまかれているのは画鋲だろう。
だが、なぜだろうか。
いつものことであるが腹立たしい気持ちが、心の奥底から間欠泉のように噴き出しそうになるのは。
シャーペンの芯をありがたいお恵みとして俺のケースの中にしまい込み、机の文字を消す。
すると前の席の男が俺に向かって体を振り向けた。
名前は本田雄二(ほんだゆうじ)
短めの髪に爽やかな笑顔。席が前後だからかよく話しかけてくるのだが。
「ほんといつもいつも幼稚だよな。これ消すの手伝うよ」
本来はありがたい提案なのだろう。
だが、俺にはそうは思えなかった。
なぜ今になってそれをする?
俺が来る前に気付いてないわけないだろうし、何とでも出来ていたはずだ。
結局のところ第三者として楽しんでいるだけなんじゃないか?
そう思ってしまえば不信感は募るだけ。友達何て感情は一切ない。
もっとも俺はいじめられているわけではないし、いじられているだけなので、本当は気にする必要もないことのはずなんだがな。
なぜかむかつくんだよ。
それでも綺麗に無くなるまで消してくれる。よく分からん。
俺に向かって歩み寄ってくる男も見える。
名前は篠宮大輝(しのみやたいき)
クラスカーストの頂点に君臨する茶髪イケメンだ。容姿端麗、スポーツ万能、おつむの方は中の上といったところだが。
「御影くんみたいなタイプがいてくれるとクラスの雰囲気が良くなっていいよね!」
御影ってのは俺の名前。古谷御影(ふるやみかげ)
裏があっていっているのならただただ腹立たしいのだが、こいつから感じる笑顔には裏というものを一切感じない。
もっとも本心からこの台詞を口にしているのだとしたら気持ちが悪い。
俺がいじられることでクラスの雰囲気が良くなったとして、そこに俺の感情はどこに存在するのか。
「あーーー。またですか! こういうことしたら駄目だっていつも言ってるじゃない!」
教室のドアが開き入ってきてすぐ俺に向かって駆け寄ってくる女の子。
名前は湊川遥(みなかわはるか)
顔立ちは文句なしの整いようなんだが、勝気な性格と活発な行動力が女らしさを軽減している。
それでも割とおモテになるそうで、高校に入学してから一ケ月で二ケタ台の告白つぶしの回数を叩き出したとか。
可愛いとは思うし、意外に優しいところもあるんだがな。
今もハンカチを濡らしてきて、俺の頭にたっぷりとついたチョークの粉を拭き取ってくれている。
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「やっぱさ一緒に登校しようよ。じゃないと心配でさぁ」
湊川とは別に幼馴染でも家が近いわけでもない。いや、というより家すら知らん。
いじられキャラの俺をなぜ気にかけてくれるかも知らん。
これによりクラスの俺に対するいじりが、苛烈化していることを知っているのだろうか。
「それはありが……」
俺が断ろうとした瞬間のことだ。
教室全体に広がる青色の光で描かれた幾何学模様。
俺の脳裏にある単語が浮かび上がる。
勇者召喚。
ラノベなんかでよくある展開だ。
それに巻き込まれるとは……というより、現実にありうるとは思っていなかったのだが、どうやら信じざるを得ないらしい。
阿鼻叫喚や歓喜の悲鳴が飛び交う中、俺たちは教室から姿を消すことになった。
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