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第3話 職業勘違い男って馬鹿にしてんの?
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暗い部屋を歩くとさらにもう一つ扉があり、それも自動で開いていく。
扉の外。白い部屋から繋がっていた場所は庭園のような場所だった。うちの高校の校庭よりも広い広大な場所。
草木が生い茂り、色とりどりの花が飾られている。
空からは照り返すような光が降り注ぎ、爽やかな風が木々の葉をかすかに揺らしている。
だがただ自然が配置されているだけという訳ではない。
鉄の甲冑やレンガ造りの壁など明らかな人工物と共に構成されており、まるで迷路のようになっている雰囲気。
俺がじっと観察していると、誰からともなくひさじぃに向け声が上がった。
「待てよ! 試練ってことは危険を伴うんだろ!? 俺たちに何ができるって言うんだ!」
「そうだそうだ! こういうのって先に力か何かをくれるもんだろ!」
「う、うん……こわいよね」
「なんかよく分かんないけど、家に帰りたいよぉ」
確かにその通りだと感じた。
今いる場所がどこかはよく分からんが、剣とファンタジーの世界だとすれば、俺たちに出来ることなどないだろう。
魔法、スキル、装備、チート、そういうものがあって初めて現代人は異世界で活躍できる。
何もない異世界人なんて赤子と同じだ。というのは流石に言い過ぎかもしれないが。
「試練……と申し上げました。楽に越えられる試練に何の意味がありましょうか……?
試験ではないく試練。その意味を重々感じ取り、その場所を切り抜けてくださいませ。
そうすればあなた方は、自然と内に秘めている潜在能力を引き出すことになるでしょう」
ひさじぃは柔和な顔を浮かべてはいるが、放つオーラが試験官のような雰囲気に変わっている。
本当に俺たちを試して勇者を選ぼうという気なのだろう。
突然俺たちを召喚して申し訳ないという気持ちは、そこから感じることはできない。
「まず御影が行けよ」「そ、そうだそうだ」「こういう時は御影君が行ってくれるよね?」
(は? 何言ってんのお前ら……? 今はいじりキャラとかそういうのを越えてる状況だろ)
そんなことを思っていたが、俺を先行させようというコールは怒号のように大きく成長した。
「「「「「みっかっげ! みっかっげ! みっかっげ!」」」」」
「ふっざけないでー!! 今はそんな場合じゃないでしょ! みんなで協力しないといけない時なんじゃないの!?」
怒号をかき消すような大声が湊川から放たれる。
訪れる静寂。視線は俺と湊川に向いているのが半々といったところ。
「だ、だがよ。その協力ってのが御影に先行してもらうってことじゃないのか? 先行ではなく先導ってことだよ」
「先導するのはリーダーの役目なんじゃないの? さっき推薦されてたのは篠宮君だったじゃん」
「し、篠宮は駄目だ。ぎせ……、いや、最後尾のほうが危険ってのが常識。そっちを担当してもらうほうがいい」
明らかに犠牲と言おうとしたのをやめたのが分かった。
やはりというか俺を実験台にしようとしているということ。
「あっそうですか! じゃあ、私も御影くんと一緒に先頭を行くことにするよ。別に構わないでしょ?」
(おいおい、なんだそれ。俺の意思は無視して実験台になるの確定しちゃうじゃん)
そんな俺の思いむなしく湊川の言葉は渋々であったが肯定され、二人で先行することになった。
「おいおいおいおい、まじかよ? 湊川、俺と二人で本当に行く気なのか?」
「だ、だいじょーぶだいじょーぶ。でも何かあったら守ってね」
肩を小さく震わせながら俺の腕にしがみついてきている。
後ろからは刺すような視線。役得なのか損してるのか微妙な感じだ。
(つーか、これまじなの? リアル? 実は俺の夢ってオチなんじゃね?)
庭園の迷路を進んでいるとカチリと足元から音が聞こえ、前方から矢が放たれた。
「え、え、やばいよ!」
湊川が慌てふためく。なぜだかその矢は弓矢から放たれた脅威のスピード、というわけではなく視認できる程度の速さだった。
と言っても普通に速い。こんな即死トラップをしかけているなんてやはりこれは夢なのだ。なら命中することはない。俺の夢なんだから。
そう思っていると矢は一人でに軌道が逸れて、俺たちから大きく外れていった。
(ほらな……。こんないきなりゲームオーバーになんてなるわけない。夢なんだから)
「何今の……」
「はは。風でも吹いたんじゃね?」
庭園は周囲を壁のような物で囲まれており風など吹いてはいないが、夢なので局所的に風が吹くということも十分ありうる。
夢だと分かれば怖くはない。
俺はずんずんと進んでいく。湊川の俺の腕を掴む力が強まる。
夢だとわかれば可愛い女の子の存在はただただありがたい。
放たれる矢、ほとばしる火柱、眼前を横断するギロチン、どこから降ってきたのか分からない大岩。
全てを回避して俺たちは迷路の終点までたどり着いた。
そこを抜けると開けた場所になっていて、西洋の甲冑のような物が三体並んでいる。
不審に思いそれに目を向けていると、どこからともなく聞こえてくるひさじぃの言葉。
「よくここまで辿り着きました。それでは最後の試練となります。
甲冑の胸についているペンダントをお取りください。いえ、引きちぎってしまって構いません」
なんだそんな簡単な……と思った瞬間、甲冑がギギと軋むような音をたてて動き出す。
甲冑は次第に盾を構え剣を構えた。
だが別に怖くもなんともない。
なぜならここは俺の夢。夢の中なら甲冑の一つや二つ平気で動き出してサンバを踊るくらい容易い。
「や、やばいよ、御影くん。どうしよう?」
ガシャンガシャン揺らす鎧の動きが本能的な恐怖を煽るのだろう。
俺の夢だというのに妙にリアルな怖がり方だなと思う。
「大丈夫だ。あの鎧の剣は俺たちの横に30センチずれて下りてくる。
だからその瞬間胸のペンダントを引きちぎってやれ」
「え、なにいって……そんなわけ……きゃぁっ!」
甲冑から剣が振り下ろされる。本当に30センチずれた位置に。
夢だから当然のこととはいえ、甲冑の悲しそうな雰囲気があまりに滑稽に思えた。
「よし、今だ!」
大量に吊るされたペンダントを一つ掴みちぎりとる。紐はかなりやわなつくりなのか、あっさりと俺たちの手にはペンダントが収まった。
そのまま甲冑のそばにいるのは夢とはいえ気持ち悪いので、俺たちは先の壁についている扉の横まで駆けて行く。
「ほ、本当に御影くんの言った通りになったね……。どういうことなの?」
「ん? ここ俺の夢だからさ。なんでも思い通りって訳よ」
そういった瞬間、湊川の手が俺の両頬に伸びてきてニュッと肉をつままれた。
「ひたいひたい、なにふんだよ!」
「ほら、痛いでしょ? 夢じゃないって」
ひりひりする頬を撫でながら俺は考える。
本当に現実なのかということを。
(じゃあ、なんでトラップのようなものが俺たちを全て避けていたんだ? 甲冑はなぜ俺の言った通りに30センチ横にはずしたんだ?)
その時ペンダントが光りだし、その形を光と変え俺たちの胸へと吸い込まれてきた。
「は!? なんだこれ?」
「え、え、え」
突如目の前に表示されるモニターのようなプレート。
俺はそれが何かすぐに分かった。出したいと思えば出せるということもなぜか頭で理解できた。
名称 ミカゲ・フルヤ
年齢 16
種族 人族
職業 勘違い男
レベル 1
HP 216/216
MP 330/1030
攻撃力 24
守備力 17
速さ 18
運 36
固有能力 言語理解 鑑定
ユニーク能力 勘違い
スキル なし
魔法 なし
(なんだこの職業、俺の事馬鹿にしてんのか?)
「あははは。御影くん勘違い男って! いじめられてんのにいじられキャラとか言ってるからじゃないの?」
「なんだよ。俺は本当にいじられてると思ってだな……。で、湊川は……」
「あ、きゃー、だめー。見ないで―」
言いながらプレートを覆い隠してしまう。
けれどスキルや魔法がいくつか記載されていたところだけチラと見えた。
俺は両方なしと記載されているというのに、あまりにも不公平だ。
だがそれ以上考える暇もなく、俺たちが越えてきた迷路からクラスメイト達の阿鼻叫喚が聞こえてきたのだった。
扉の外。白い部屋から繋がっていた場所は庭園のような場所だった。うちの高校の校庭よりも広い広大な場所。
草木が生い茂り、色とりどりの花が飾られている。
空からは照り返すような光が降り注ぎ、爽やかな風が木々の葉をかすかに揺らしている。
だがただ自然が配置されているだけという訳ではない。
鉄の甲冑やレンガ造りの壁など明らかな人工物と共に構成されており、まるで迷路のようになっている雰囲気。
俺がじっと観察していると、誰からともなくひさじぃに向け声が上がった。
「待てよ! 試練ってことは危険を伴うんだろ!? 俺たちに何ができるって言うんだ!」
「そうだそうだ! こういうのって先に力か何かをくれるもんだろ!」
「う、うん……こわいよね」
「なんかよく分かんないけど、家に帰りたいよぉ」
確かにその通りだと感じた。
今いる場所がどこかはよく分からんが、剣とファンタジーの世界だとすれば、俺たちに出来ることなどないだろう。
魔法、スキル、装備、チート、そういうものがあって初めて現代人は異世界で活躍できる。
何もない異世界人なんて赤子と同じだ。というのは流石に言い過ぎかもしれないが。
「試練……と申し上げました。楽に越えられる試練に何の意味がありましょうか……?
試験ではないく試練。その意味を重々感じ取り、その場所を切り抜けてくださいませ。
そうすればあなた方は、自然と内に秘めている潜在能力を引き出すことになるでしょう」
ひさじぃは柔和な顔を浮かべてはいるが、放つオーラが試験官のような雰囲気に変わっている。
本当に俺たちを試して勇者を選ぼうという気なのだろう。
突然俺たちを召喚して申し訳ないという気持ちは、そこから感じることはできない。
「まず御影が行けよ」「そ、そうだそうだ」「こういう時は御影君が行ってくれるよね?」
(は? 何言ってんのお前ら……? 今はいじりキャラとかそういうのを越えてる状況だろ)
そんなことを思っていたが、俺を先行させようというコールは怒号のように大きく成長した。
「「「「「みっかっげ! みっかっげ! みっかっげ!」」」」」
「ふっざけないでー!! 今はそんな場合じゃないでしょ! みんなで協力しないといけない時なんじゃないの!?」
怒号をかき消すような大声が湊川から放たれる。
訪れる静寂。視線は俺と湊川に向いているのが半々といったところ。
「だ、だがよ。その協力ってのが御影に先行してもらうってことじゃないのか? 先行ではなく先導ってことだよ」
「先導するのはリーダーの役目なんじゃないの? さっき推薦されてたのは篠宮君だったじゃん」
「し、篠宮は駄目だ。ぎせ……、いや、最後尾のほうが危険ってのが常識。そっちを担当してもらうほうがいい」
明らかに犠牲と言おうとしたのをやめたのが分かった。
やはりというか俺を実験台にしようとしているということ。
「あっそうですか! じゃあ、私も御影くんと一緒に先頭を行くことにするよ。別に構わないでしょ?」
(おいおい、なんだそれ。俺の意思は無視して実験台になるの確定しちゃうじゃん)
そんな俺の思いむなしく湊川の言葉は渋々であったが肯定され、二人で先行することになった。
「おいおいおいおい、まじかよ? 湊川、俺と二人で本当に行く気なのか?」
「だ、だいじょーぶだいじょーぶ。でも何かあったら守ってね」
肩を小さく震わせながら俺の腕にしがみついてきている。
後ろからは刺すような視線。役得なのか損してるのか微妙な感じだ。
(つーか、これまじなの? リアル? 実は俺の夢ってオチなんじゃね?)
庭園の迷路を進んでいるとカチリと足元から音が聞こえ、前方から矢が放たれた。
「え、え、やばいよ!」
湊川が慌てふためく。なぜだかその矢は弓矢から放たれた脅威のスピード、というわけではなく視認できる程度の速さだった。
と言っても普通に速い。こんな即死トラップをしかけているなんてやはりこれは夢なのだ。なら命中することはない。俺の夢なんだから。
そう思っていると矢は一人でに軌道が逸れて、俺たちから大きく外れていった。
(ほらな……。こんないきなりゲームオーバーになんてなるわけない。夢なんだから)
「何今の……」
「はは。風でも吹いたんじゃね?」
庭園は周囲を壁のような物で囲まれており風など吹いてはいないが、夢なので局所的に風が吹くということも十分ありうる。
夢だと分かれば怖くはない。
俺はずんずんと進んでいく。湊川の俺の腕を掴む力が強まる。
夢だとわかれば可愛い女の子の存在はただただありがたい。
放たれる矢、ほとばしる火柱、眼前を横断するギロチン、どこから降ってきたのか分からない大岩。
全てを回避して俺たちは迷路の終点までたどり着いた。
そこを抜けると開けた場所になっていて、西洋の甲冑のような物が三体並んでいる。
不審に思いそれに目を向けていると、どこからともなく聞こえてくるひさじぃの言葉。
「よくここまで辿り着きました。それでは最後の試練となります。
甲冑の胸についているペンダントをお取りください。いえ、引きちぎってしまって構いません」
なんだそんな簡単な……と思った瞬間、甲冑がギギと軋むような音をたてて動き出す。
甲冑は次第に盾を構え剣を構えた。
だが別に怖くもなんともない。
なぜならここは俺の夢。夢の中なら甲冑の一つや二つ平気で動き出してサンバを踊るくらい容易い。
「や、やばいよ、御影くん。どうしよう?」
ガシャンガシャン揺らす鎧の動きが本能的な恐怖を煽るのだろう。
俺の夢だというのに妙にリアルな怖がり方だなと思う。
「大丈夫だ。あの鎧の剣は俺たちの横に30センチずれて下りてくる。
だからその瞬間胸のペンダントを引きちぎってやれ」
「え、なにいって……そんなわけ……きゃぁっ!」
甲冑から剣が振り下ろされる。本当に30センチずれた位置に。
夢だから当然のこととはいえ、甲冑の悲しそうな雰囲気があまりに滑稽に思えた。
「よし、今だ!」
大量に吊るされたペンダントを一つ掴みちぎりとる。紐はかなりやわなつくりなのか、あっさりと俺たちの手にはペンダントが収まった。
そのまま甲冑のそばにいるのは夢とはいえ気持ち悪いので、俺たちは先の壁についている扉の横まで駆けて行く。
「ほ、本当に御影くんの言った通りになったね……。どういうことなの?」
「ん? ここ俺の夢だからさ。なんでも思い通りって訳よ」
そういった瞬間、湊川の手が俺の両頬に伸びてきてニュッと肉をつままれた。
「ひたいひたい、なにふんだよ!」
「ほら、痛いでしょ? 夢じゃないって」
ひりひりする頬を撫でながら俺は考える。
本当に現実なのかということを。
(じゃあ、なんでトラップのようなものが俺たちを全て避けていたんだ? 甲冑はなぜ俺の言った通りに30センチ横にはずしたんだ?)
その時ペンダントが光りだし、その形を光と変え俺たちの胸へと吸い込まれてきた。
「は!? なんだこれ?」
「え、え、え」
突如目の前に表示されるモニターのようなプレート。
俺はそれが何かすぐに分かった。出したいと思えば出せるということもなぜか頭で理解できた。
名称 ミカゲ・フルヤ
年齢 16
種族 人族
職業 勘違い男
レベル 1
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MP 330/1030
攻撃力 24
守備力 17
速さ 18
運 36
固有能力 言語理解 鑑定
ユニーク能力 勘違い
スキル なし
魔法 なし
(なんだこの職業、俺の事馬鹿にしてんのか?)
「あははは。御影くん勘違い男って! いじめられてんのにいじられキャラとか言ってるからじゃないの?」
「なんだよ。俺は本当にいじられてると思ってだな……。で、湊川は……」
「あ、きゃー、だめー。見ないで―」
言いながらプレートを覆い隠してしまう。
けれどスキルや魔法がいくつか記載されていたところだけチラと見えた。
俺は両方なしと記載されているというのに、あまりにも不公平だ。
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