俺のスキル『勘違い』が壊れ性能過ぎて吹く

こたつぬこ

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第5話 仲間というもの

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 白い部屋の外は階段を含めた通路となっており、城下町まで一本道で繋がっていた。
 左右は高い壁となっていて少し薄暗くじめじめとした風が流れる。

 だが、街はそうではなかった。
 石造りの家屋が所狭しと立ち並び通りを形成している。
 中世ヨーロッパと小説では表現されるが、それはあくまで表現しやすいために使われる言葉だろう。
 実際に見たこともないそれを、俺にはそう置き換えることはできなかった。
 というよりよく分からんだけだけど。

「どうしてこんなことになっちゃったんだろ……」

 街を眺めていると湊川がぽつりと呟くように口にした。俯いた顔から悲壮感が伝わってくる。
 本田が湊川の肩を擦りながら声をかけた。

「皆、もっと冷静になれば切り抜けられていたと思う。
 でも結局皆自分自身が一番大事って言うか……な、篠宮」

「あ、ああ、うん、そうだね。嫌なものを見てしまったよ……二重の意味でね。
 もっと僕がうまくやれていれば……もっと多くのクラスメイトを残せただろうに」

 天を仰いでいる篠宮の眼から、大粒の涙がこぼれ落ち陽光を白く反射させた。
 実際に人死に、しかも、親しい人間がそうなったことを目にして何も感じていないわけがない。
 けれど、

「忘れるな……とは言わねぇ。けど、終わってしまったものはもう戻らないんだ」

「な、なんだその言い草は! 終わってしまっただと!? 御影が先導して俺たちに情報を伝えるのが、本来は筋だったんじゃねーのか!?」

 本田が俺の襟元を締め上げてくる。
 リーダーとして前を向くためにと思って言った言葉だったが、言い方が悪かったのは自分でも反省した。

 けれどあの時情報を伝えるべきだった……?

 実験台のように先行させられ、そして俺はあの時夢だと思っていた。
 俺と湊川が無事に試練を越えることができたのはただの偶然だ。
 そんなことをするわけがなかった。情報を教えて欲しいと言われていたわけでもなかった。
 俺たちが進んだその進行状況を見て判断するのがベストだったはず。何か言われるいわれはない。

「俺たちがもしあっさり死んでたらどうするつもりだったんだ!?」

「そ、それは……」

「も、もうやめてよ、二人とも! ここはみんなで協力する場面なんじゃないの?」

 湊川の言葉に篠宮が同意し俺たちを引きはがしにかかる。

「湊川さんの言うとおりだよ。それに確かに二人を先行させた僕たちにも責任がないとは言えない。
 今までのノリというかで、ああなってしまったが、本来は二人にそんな役目を押し付けてはいけなかったんだ」

 篠宮は意外とまともなんだと感心する。
 もっと早く気付いて欲しいところだがな。

「いいよ、それは気にしてないし。それよりさっきは俺の言い方が悪かったよ。
 ただ過去にとらわれるより、今を見て未来に進んだほうがいいと思って言ったんだ」

「そ、そうだったのか……。わりぃ。俺も胸倉掴みあげたりして」

 本田は俺たち三人の顔を見渡してからさらに言葉をつづけた。

「そうだよな。たった4人残った仲間なんだから手を差し伸べ合うべきだよな」

「そうだよ、そうだよ! ほら、仲直り!」

 湊川が手を中空に差し向けたのでそれに篠宮、本田、俺と手を重ねた。
 三人はじっと俺の事を見つめてくる。

「やっぱ俺がリーダーって向いてないと思うし、おかしいと思うんだけど……。
 とりあえず、協力してやるとするか!」

「「「おー!」」」

 なぜこんなことになったんだろう、そんな思いが俺の胸中をかすめる。
 クラスではいじられキャラで浮いた存在だった。それが今は命を賭ける必要があるのかは知らないが、仲間と共に手を取り合っている。
 友達と思ったこともなかったやつらが、それを飛び越えて仲間だ。
 複雑な心境。けれど、これでやっていくしかないんだと頭で理解することにした。

「で、とりあえずだが……俺たちは金もなければこの世界の知識もない。
 つまり今夜の宿の確保すら危うい状況だということだ」

「だね。服装は……いつのまにか周りの人に合わせて変わっているみたいだけど。ホームレスみたいに道端で寝るのは嫌だからね」

 湊川が薄暗い路地裏をみながらそう言った。
 女の子的に、という意味じゃなくても外で寝るのはまずいだろう。命の危険がありそうだ。

「異世界って言ったら冒険者ギルドみたいなのがあるのが相場だよな?」

「そうだね。簡単な依頼をこなして成り上がっていくってのが多いから、僕たちもその例にのっとるべきだろうか」

 本田と篠宮がラノベを見ていて、こういう展開を知っているということは意外だった。
 慌てふためいたりしている様子がなかったのはそういうことだったのか。

「じゃあ、ギルドの場所ってのが分からないからあそこのお店の人にでも聞いてみる?」

 湊川が野菜か果物か、日本ではお目にかかれないような変わったものを売っているおじさんを指さした。
 八百屋なんだろうか? 頭を剃りこんでいて逞しい両腕が八百屋に似つかわしくないような気がする。
 とりあえず俺は小さく首を振った。

「いや、俺たちは何かを買う金すらない。買わずに物を尋ねるのは…………。
 だがそれは冒険者ギルドに行っても同じか。金がかからないとは限らないか……」

「あのおじさん見た目は怖そうな感じだけど眼は優し気な感じがするよ。お金ないってことを正直に話してそれで聞いてみようよ!」

 湊川の言葉に俺たちは顔を見合わせ頷き、八百屋に向かって歩き出した。
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