俺のスキル『勘違い』が壊れ性能過ぎて吹く

こたつぬこ

文字の大きさ
6 / 12

第6話 八百屋のおじさんは大抵優しい

しおりを挟む
 八百屋に着いて早々、繁盛していて声が聞き取りにくいだろうと思った湊川は、おじさんに向かって声をはり上げた。

「あのー! すみませーん!」

「んん?」

 湊川が声をかけると、おじさんは鋭い目でこちらを見てきたため慌てて俺は視線をそらす。

(何だよ、この人のどこが優しい眼をしているだよ……!)

 そんなことを持っていると、足元から頭のてっぺんまでじろりとねめつけるような視線を向けられた。

「何だぁ? お前さんたち、ここじゃ見ない顔だな。どこから来たんだ?」

「えぇと……」

 不審な目をして尋ねてくるおじさんに、俺は何も言えなくなり引き下がりそうになったが、湊川はめげずに言葉を返した。

「実は私たち、今日から冒険者になろうと思っているんです。だけど何もかもが初めてで、何からしたらいいのか分からず……。 
 だからまずはお金を少しでも溜めようと思ったのですが、お金ってどうしたら稼ぐことができますか?」

 俺たちの現状を包み隠さず素直に打ち明けた湊川。
 それが良かったのだろうか?
 おじさんは先程の鋭い目つきとは違い、湊川の言った通りの優しい眼をこちらに向けてきた。

「おぉ、そうかそうか。これから活躍してくれる冒険者たちということか!
 悪いけどここじゃ雇う余裕はねぇから、ゴルドを渡すことはできないんだ。 そうだなぁ、冒険者で一番早くゴルドを集めるには、やっぱりクエストをやるのがいいだろうな」

 ゴルドというのがこの世界の通貨単位なのだろう。ゴールドやらゴルドはよくゲームなんかで聞く単位だなと思う。
 もっともそれがどの程度の価値なのかはまるで分からない。
 流石にゴールド=金と直訳するわけにはいかないだろう。

 クエストはギルドで受けれる依頼の事だと予測した。というよりゲームだとそういう意味で使われることが多い。
 先程篠宮たちが言っていたことは、当たっていたということなんだろう。
 小説の世界が異世界で当てはまるってのは何とも奇妙な気がするが。

「クエストですか! そのクエストって、どこで受けることができるんですか?」

「クエストショップに行けば分かる。そこではクエストも受けられるしギルドにも入れる。色々な質問にも応えてくれるから、場所は知っていても損はないと思うぜ」

「クエストショップですか……?」

「この道を真っすぐに進んでいけ。そしたらペンと剣がクロスした看板が目印のでっかい建物が見えてくるだろうから、そこがクエストショップだ」

「ありがとうございます!」

 湊川が大きくお辞儀をしてこの場から離れようとすると、おじさんに呼び止められた。
 まさか果物や野菜を分けてくれるんじゃないか? そんな期待を抱き見つめていると、まさにそのまさかであった。
 おじさんはおもむろに大きな布のような袋を取り出し、適当に果物や野菜を中に詰めていく。
 そのままパンパンになった袋を、湊川の目の前に突き出した。

「これ、持って行きな。タダでくれてやる、餞別だ」

「え、いいんですか?」

「あぁ。お前さんたちの活躍には期待しているからな。俺の期待を裏切るんじゃねぇぞ!」

 そう言って、満面の笑みで俺たちに向けてくる。
 人は見た目で判断してはいけないと改めて思い知らされる。
 だが期待を背負うのもなんとなく重苦しいようにも感じた。

「あの、本当にありがとうございます!」

 再度丁寧にお礼を言い袋を受け取って、俺たちはクエストショップへと足を向けた。 
 道中重そうな袋を持っている湊川に本田が声をかける。

「湊川、それ持ってやるよ」

「あ、うん! ありがと」

 袋を本田に渡すと、本田は肩にかけていたリュックに野菜をしまい込んだ。
 その様子を見て湊川は笑顔を浮かべた。

「これで数日分は、食料に困らないね!」

「湊川は料理なんてしなさそうに見えるけど料理できるのか?」

「失礼ね! できるわよ!」

 俺の言葉に湊川が頬を膨らませて抗議の目を向けてくる。
 深い意味のない軽口だったのだが、じろっと睨まれて俺は視線を逸らす。
 そんな俺たちを篠宮と本田が笑って見ている時、突然俺たちの耳に子供の声と泣き声が聞こえてきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

処理中です...