俺のスキル『勘違い』が壊れ性能過ぎて吹く

こたつぬこ

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第8話 やはり俺だけ不遇過ぎる

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「それじゃこのユニブ街道脇の丘に異常発生しているバレットプラントの討伐ってクエストにします」

 俺が受付のお姉さんにクエストを決めた旨を伝えたのだが、何やら渋い顔つきをされた。
 俺たちは登録したばっかりなので無鉄砲だとでも思ったのだろう。
 しかも装備も何もない。先に剣くらいでも貸してくれたらうれしいところなんだが。

「本来こういったことは言いたくないのですが、初心者の方でしたら、もっと簡単な物から始められたほうがいいと思いますよ」

 俺はチラと湊川に視線を向けたが大きく首を振っていた。
 当然のように横にだ。

「えーと、俺もそうしたいのは山々なんですが……。
 ちなみにこのクエストの詳しい事とか教えてもらえます?」

 クエストリストに載っているのは、クエスト名、場所、期限、報酬、違約金、そして簡単な内容のみ。
 このクエストで言うならばこんな感じだ。

『バレットプラントの討伐』

場所  ユニブ街道脇の丘
期限  24時間以内
報酬  20000ゴルド
違約金 2000ゴルド
内容  異常発生したバレットプラントを20体討伐し、その証明としてバレットプラントの胚珠の納品

 場所も分からなければどんなモンスターかも分からない。
 名前から何となく想像がつくような気がするが、俺の認識とこの世界の認識が合致しているのを確認できないことにはなんともいえないのだ。
 文無しで違約金ってものが発生してもまずい。

「そうですね……説明を聞いて考えていただければと思います」

 お姉さんは真面目な顔で丁寧に説明を行ってくれた。
 詳しい内容を要約するとこんな感じになる。

 ユニバーサルから北へ街道に沿って進むとレジテアという街に辿り着くらしいのだが、その道中通ることになるユニブ山の中腹にバレットプラントが異常発生したということらしい。
 本来はぽつぽつと現れるモンスターであるらしいのだが、大量に発生したことで街道の通行に影響を及ぼしそうな気配がしているのが現状。
 ただ、現在はそこまで差し迫った状況ではなく、強制排除ではなくクエストでの討伐という形をとっているのだとか。
 肝心のバレットプラントについては、やはりというか植物系のモンスターということだ。

「それって動かないってことなんですよね?」

「ええ。動かないのは動かないんですが……」

 と、お姉さんがいいかけたところで湊川が口を挟む。

「いいじゃない、それ! 動かないんでしょ? おいしいよ。それに決めようよ」

 正直少し鬱陶しいと思いつつ、俺は受付のお姉さんと目を見合わせ眉をひそめ合った。
 どちらともなくこぼれる苦笑い。
 それに何かを感じたのかお姉さんは「少し待っててください」と言ってからギルドの奥へと引っ込んだ。
 戻ってきたときに持ってきたのは少しぼろの剣が4本。

「本当は駄目なんですけど……内緒ですよ。できたら無事戻ってきて元気な姿を見せてくださいね」

 ありがたい、本当にありがたいことなのだが、できたら、ってのは付けないでほしかった。まるで俺たちが戻ってこれないかのような。
 そんなことを思っていると篠宮がイケメンスマイルを浮かべてお姉さんにお礼を言った。

「ありがとうございます。僕たち必ず帰ってきますから!」

「そうだな。こんなとこでつまづいているわけにはいかないよな。あいつらのためにも」

「おいおい、本田。辛気臭いこと言わないでくれよ」

「あ、ああ。すまね」

「頑張ろうね!」

 結局三人に押し切られ俺たちは剣を受け取って、ユニブ山というところを目指すことになった。
 賑やかな街並みを抜け、外周を囲っているのか外壁に取り付けられている大きな門をくぐり、街道を歩いていく。

「やっぱ4人の連携って大事だと思うからさ、ステータスを見せ合っとくべきじゃないか?」

 篠宮の言葉に俺はギクリと体が揺れた。
 見せてしまえば馬鹿にされるに決まってるし、足手纏いにされてしまう可能性が高い。
 だからといって連携が大事と言われて断ることもできない。

「お、女の子のステータスを見ようって言うの? それセクハラなんじゃない?」

 湊川が胸を隠しながら抗議の声を上げる。
 胸を隠す必要はないと思うが、女の子らしいと言えるのだろうか。
 なんでもいいが俺にはありがたい助け舟。
 けれど本田は篠宮に乗るようだ。

「でも、篠宮の言うとおりだと思うぜ? お互いに何ができるか知ってないといざという時困るじゃん?」

「えーでも……そうかもしれないけどさ……。じゃ、できる事って言ったでしょ? スキルと魔法だけでいいんじゃない?」

 本田と篠宮は顔を見合わせた。

「それでいいか」

「うん、それでいいよ」

 ちなみに俺は一歩引いて様子を眺めていたのだが、ここに至って悪い流れだと思い至る。
 どちらも、なし、と書かれていた俺には、それだとしても役立たずのレッテルが貼られてしまうだろう。
 だが、ここで異議を唱えるのは流石に無理がある。
 俺は観念することにした。

 篠宮には剣術スキルと自己加速というスキル、さらには光属性の魔法というものをいくつか習得しているらしい。
 典型的な勇者タイプ。俺と差がありすぎて恨みたくなるレベル。

 本田は格闘術スキルと自己回復力増加というスキル。魔法は強化魔法というものを使えるそうだ。

 湊川は魔力回復量増加というスキルだけ、ただ魔法が火属性、水属性、風属性と回復魔法を使用することができる。
 魔術師タイプというよりは賢者タイプというやつなのだろう。

 本田は格闘馬鹿というかんじになりそうだが、他の二人は明らかに勇者的な資質を持っていそうな気がした。
 ステータスもどうせ俺よりもずっと高かったりするんだろう。
 言えない。言いたくない。でも、言うしかない。

「お、俺はスキルも魔法も何もない……」

「え?」

「はぁ?」

「私は見たから知ってるけど……」

 二人の冷たい視線が俺に突き刺さる。
 いや、冷たいという程ではないのかもしれない。呆れているというかなんというか。
 小説で見たことがある程の掌の返し方とかではないのが救いだろうか。

「ま、まぁ、そういうこともあるよね……」

「いや、でもさ。ひさじぃは御影の能力云々でリーダーを決めたとか言ってなかったか? これなら篠宮がリーダーの方が絶対良いだろ」

「あー、んー。どうなんだろ? ま、確かに何か凄い能力でもあるのかなと思ってはいたけれど……」

「だろ? 試練も一番に抜けたことだしな。けど、なに? まぐれだったってこと……?」

 二人で話しているのをよそに、湊川が俺に小声で話しかけてくる。

「言わなくていいの? 本当はスキルがあるってこと」

「あほか。勘違いなんてスキル誰に言えるんだよ。湊川は勝手に見ただけだろ」

 俺は肩を竦めて二人に向き合った。

「いや、俺だってリーダーなんて柄じゃないし、おかしいと思ってたんだ。だから篠宮にリーダーは譲るよ」

 篠宮は快くそれを受け入れてくれると思っていた。
 けれど、俺の言葉に大きく首を振っていた。

「ひさじぃが決めたことを僕らが勝手に変えるわけにはいかない。どういうことかは分からないけれど、そんな気がするんだ」

「はぁ!? なんでだよっ! 何言ってんの? 別に御影のことは嫌いじゃないけどさ、実力のない奴をリーダーとして受け入れられるかってのは別問題だろ!」

「それでもだよ。ひさじぃには何か考えがあったのかもしれないし」

「意味わっかんねぇ」

 本田は道端の石ころを乱暴に蹴り飛ばし、街道をひとり先に進む。
 正直なところ俺も困惑している。
 一体どうすればよいというのだろうか。
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