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序章・始まりの冬休み
第8話 黄金の魂
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「着きましたよ」
三並さんに連れられてあまり客のいない喫茶店に来た。あまりというか、客が誰もいない。店に入る時看板にcloseと書かれていたような気がするが気のせいだろうか。
「ロゼリア、紅茶いれてきて」
『仕方ないのう』
三並さんがロゼリアさんに頼むとロゼリアさんは店の奥へと入っていった。
「座ってください。長話になりますから」
「わかりました」
言われるがままに席に着くと、机をはさんだ向かいに三並さんも座る。
「私の身の上話をする前にまず一つ聞きたいことがあります」
「あ、はい」
身の上話するんだ。初対面の人に。
「なぜロゼリアが見えるのですか?」
なぜ見える、といわれてもなぁ。見えるものは見えるとしか言えないわけだし……。というかロゼリアさん他の人には見えていないのだろうか。話の流れ的にはそんな気がするが……。
「なぜ見える、といわれましても……。他のお方にはロゼリアさんが見えないのですか?」
一応確認してみる。
「はい。私のスキルによって顕現している精神体ですから」
精神体。なるほど、黄金之念動力者といわれる彼女の能力の正体はロゼリアさんだったというわけか。
「なるほど……何かわかるかもしれないのでもう少し詳しくお話を聞かせてもらっていいですか?」
「構いませんよ。精神体ということなので……」
話を聞きながら俺は鑑定で自分の鑑定のスキルを鑑定する。もし俺のスキルによる作用で見えているならこの鑑定しかない。俺はまだ鑑定スキルに鑑定を使ったことがなかった。
そもそもそんな考えすら浮かばなかったからな。
【鑑定Lv.3】
・物事の詳細を知ることができる。
・とらえられる世界の範囲を拡張する。
・隠蔽を看破する。
かなり抽象的な一文があるが、多分これが作用してロゼリアさんを見ることができているのだろう。
「奏多さん? どうかしました?」
「いえ、見える原因が分かりました。多分僕のスキルが原因ですね」
「そうでしたか!」
『紅茶を持ってきたぞ~。なんじゃ、話は終わったのか?』
話の区切り目でちょうどロゼリアさんが紅茶を持ってきてくれた。タイミングがいいのな。
「ありがとうございます」
お礼をして紅茶をいただく。実をいうと紅茶はあまり好みではないが、出されたものを飲まないのもよくないのでちょびちょびのんでいくことにしよう。
二人分の紅茶を置いたロゼリアさんは、三並さんの隣に座った。
「話は変わりますが、奏多さんてパーティーを組んでいらっしゃいます?」
「いえ、ソロですね」
まだ探索者になったばかりで探索者の知り合いなんていないからなぁ。
「よかったです。そこで相談なんですけど、奏多さん、私とパーティーを組む気はありませんか?」
三並さんとパーティー? 願ってもない話ではあるが、それは一体どうしてだ?
ネットで調べたところ三並さんは頑なにパーティーを組もうとしない人だって言われていたが。
「理由をお聞きしても?」
『儂が自由に話せるのと連携がとりやすいからじゃ』
「加えて、私たちはソロなのでトラップ等の恐れがある場所では対応がかなり張り詰めたものになってしまいますから、その辺のカバーですね」
「なるほど、つまりロゼリアさんが見えるからパーティーを組みたいと」
大体察した。多分、三並さんは見えない何かと話しているように見えることが気がかりなのだろう。それでロゼリアさんが見えない人とはパーティーを組む気にならなかった。そんな感じじゃないか?
「探せばほかに見える人もいそうですけど、僕でいいんですか?」
「強くて、それでいてロゼリアが見えるなんて好条件はあまりないと思いますし。それに奏多さんは人がよさそうですから」
『儂もそう思うぞ~。多属性の魔法を使えるやつが弱いはずがないからのう』
かなり三並さんたちから好印象を受けているよう。それはそれと俺が多属性の魔法を使えるということをどうやって知ったんだ?
「え、奏多さん多属性の魔法使えるの?」
初耳なんだけどとでも言いたそうに三並さんがロゼリアさんに詰め寄る。三並さんも知らないんかい。
『昨日の一人の魔法使いは彼じゃよ、さっきストーンリザードを討伐した際の魔力波長と昨日の魔力の残滓の波長は全く同じじゃ』
昨日俺なにかしたっけか。
「調査の時の?」
『そうじゃ』
定期的に話についていけなくなるなぁ。
「あの、パーティーの話に戻るんですけど、強制はしないので。気が向いたらお願いします」
おっと調査についての話は打ち切るんですか? そこが少し気になるんだけどなぁ……。まぁいいか。
「いいですよ、僕も組みたいと思ってましたし」
ちょうど俺もこの先に進むならソロは危険だと思っていたところだし。俺の秘密も一部ばれてるわけだしな。
「いいんですか! じゃあこれからよろしくお願いします! 早速探索者協会に申請に行きましょう!」
ずいぶんと急だな。とりあえずこれからパーティーを組むにあたっての能力の詳細だとか、そういう話をしたいのだが……。
「まぁまぁ、まずは少しお互いのスキルやステータスについて話しませんか? 僕の魔法についてもそうですし」
そういうと、三並さんは顔を赤くして落ち着きを取り戻した。
「す、すいません。はしゃぎすぎましたね。じゃあ、ロゼリアもいることですし、スキルのお話をしましょうか」
はしゃいで立ち上がっていた三並さんだったがすぐに席に戻った。
『儂の話かの?』
「そうだよロゼリア。私は少し引っ込むから通訳してね」
三並さんがそういうと、ロゼリアさんの体が空に溶けるように消えていき、三並さんの体が激しく光る。あまりの眩しさに目を瞑る。
目を開くと、そこには黒いドレスを来た銀髪の少女、ロゼリアさんだけが立っていた。
「あれ、三並さんはどこに行ったんです?」
「今のこの体は彩佳のものじゃよ。今は儂が主人格だから儂の見た目になっているだけじゃ」
つまり、今は三並さんの体をロゼリアさんが動かしていると?
「な、なるほど?」
ロゼリアさんは優雅なしぐさで紅茶を口に運ぶ。その様を切り取るとまるで一枚の絵画のようだ。
「うむ、儂のいれた紅茶はうまいのお」
俺も紅茶を一口飲んでみる。
うまい。紅茶はあまり得意ではないけれど、これなら飲めそうだ。
「そうですね。とても美味しいです」
「そうじゃろ? まぁ儂はコーヒー派なんじゃけどな」
同士だった。
「そうでしたか」
「む、彩佳から余計な話をするなといわれてしもうた」
多分三並さん、紅茶派だな。
三並さんに連れられてあまり客のいない喫茶店に来た。あまりというか、客が誰もいない。店に入る時看板にcloseと書かれていたような気がするが気のせいだろうか。
「ロゼリア、紅茶いれてきて」
『仕方ないのう』
三並さんがロゼリアさんに頼むとロゼリアさんは店の奥へと入っていった。
「座ってください。長話になりますから」
「わかりました」
言われるがままに席に着くと、机をはさんだ向かいに三並さんも座る。
「私の身の上話をする前にまず一つ聞きたいことがあります」
「あ、はい」
身の上話するんだ。初対面の人に。
「なぜロゼリアが見えるのですか?」
なぜ見える、といわれてもなぁ。見えるものは見えるとしか言えないわけだし……。というかロゼリアさん他の人には見えていないのだろうか。話の流れ的にはそんな気がするが……。
「なぜ見える、といわれましても……。他のお方にはロゼリアさんが見えないのですか?」
一応確認してみる。
「はい。私のスキルによって顕現している精神体ですから」
精神体。なるほど、黄金之念動力者といわれる彼女の能力の正体はロゼリアさんだったというわけか。
「なるほど……何かわかるかもしれないのでもう少し詳しくお話を聞かせてもらっていいですか?」
「構いませんよ。精神体ということなので……」
話を聞きながら俺は鑑定で自分の鑑定のスキルを鑑定する。もし俺のスキルによる作用で見えているならこの鑑定しかない。俺はまだ鑑定スキルに鑑定を使ったことがなかった。
そもそもそんな考えすら浮かばなかったからな。
【鑑定Lv.3】
・物事の詳細を知ることができる。
・とらえられる世界の範囲を拡張する。
・隠蔽を看破する。
かなり抽象的な一文があるが、多分これが作用してロゼリアさんを見ることができているのだろう。
「奏多さん? どうかしました?」
「いえ、見える原因が分かりました。多分僕のスキルが原因ですね」
「そうでしたか!」
『紅茶を持ってきたぞ~。なんじゃ、話は終わったのか?』
話の区切り目でちょうどロゼリアさんが紅茶を持ってきてくれた。タイミングがいいのな。
「ありがとうございます」
お礼をして紅茶をいただく。実をいうと紅茶はあまり好みではないが、出されたものを飲まないのもよくないのでちょびちょびのんでいくことにしよう。
二人分の紅茶を置いたロゼリアさんは、三並さんの隣に座った。
「話は変わりますが、奏多さんてパーティーを組んでいらっしゃいます?」
「いえ、ソロですね」
まだ探索者になったばかりで探索者の知り合いなんていないからなぁ。
「よかったです。そこで相談なんですけど、奏多さん、私とパーティーを組む気はありませんか?」
三並さんとパーティー? 願ってもない話ではあるが、それは一体どうしてだ?
ネットで調べたところ三並さんは頑なにパーティーを組もうとしない人だって言われていたが。
「理由をお聞きしても?」
『儂が自由に話せるのと連携がとりやすいからじゃ』
「加えて、私たちはソロなのでトラップ等の恐れがある場所では対応がかなり張り詰めたものになってしまいますから、その辺のカバーですね」
「なるほど、つまりロゼリアさんが見えるからパーティーを組みたいと」
大体察した。多分、三並さんは見えない何かと話しているように見えることが気がかりなのだろう。それでロゼリアさんが見えない人とはパーティーを組む気にならなかった。そんな感じじゃないか?
「探せばほかに見える人もいそうですけど、僕でいいんですか?」
「強くて、それでいてロゼリアが見えるなんて好条件はあまりないと思いますし。それに奏多さんは人がよさそうですから」
『儂もそう思うぞ~。多属性の魔法を使えるやつが弱いはずがないからのう』
かなり三並さんたちから好印象を受けているよう。それはそれと俺が多属性の魔法を使えるということをどうやって知ったんだ?
「え、奏多さん多属性の魔法使えるの?」
初耳なんだけどとでも言いたそうに三並さんがロゼリアさんに詰め寄る。三並さんも知らないんかい。
『昨日の一人の魔法使いは彼じゃよ、さっきストーンリザードを討伐した際の魔力波長と昨日の魔力の残滓の波長は全く同じじゃ』
昨日俺なにかしたっけか。
「調査の時の?」
『そうじゃ』
定期的に話についていけなくなるなぁ。
「あの、パーティーの話に戻るんですけど、強制はしないので。気が向いたらお願いします」
おっと調査についての話は打ち切るんですか? そこが少し気になるんだけどなぁ……。まぁいいか。
「いいですよ、僕も組みたいと思ってましたし」
ちょうど俺もこの先に進むならソロは危険だと思っていたところだし。俺の秘密も一部ばれてるわけだしな。
「いいんですか! じゃあこれからよろしくお願いします! 早速探索者協会に申請に行きましょう!」
ずいぶんと急だな。とりあえずこれからパーティーを組むにあたっての能力の詳細だとか、そういう話をしたいのだが……。
「まぁまぁ、まずは少しお互いのスキルやステータスについて話しませんか? 僕の魔法についてもそうですし」
そういうと、三並さんは顔を赤くして落ち着きを取り戻した。
「す、すいません。はしゃぎすぎましたね。じゃあ、ロゼリアもいることですし、スキルのお話をしましょうか」
はしゃいで立ち上がっていた三並さんだったがすぐに席に戻った。
『儂の話かの?』
「そうだよロゼリア。私は少し引っ込むから通訳してね」
三並さんがそういうと、ロゼリアさんの体が空に溶けるように消えていき、三並さんの体が激しく光る。あまりの眩しさに目を瞑る。
目を開くと、そこには黒いドレスを来た銀髪の少女、ロゼリアさんだけが立っていた。
「あれ、三並さんはどこに行ったんです?」
「今のこの体は彩佳のものじゃよ。今は儂が主人格だから儂の見た目になっているだけじゃ」
つまり、今は三並さんの体をロゼリアさんが動かしていると?
「な、なるほど?」
ロゼリアさんは優雅なしぐさで紅茶を口に運ぶ。その様を切り取るとまるで一枚の絵画のようだ。
「うむ、儂のいれた紅茶はうまいのお」
俺も紅茶を一口飲んでみる。
うまい。紅茶はあまり得意ではないけれど、これなら飲めそうだ。
「そうですね。とても美味しいです」
「そうじゃろ? まぁ儂はコーヒー派なんじゃけどな」
同士だった。
「そうでしたか」
「む、彩佳から余計な話をするなといわれてしもうた」
多分三並さん、紅茶派だな。
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